蓮華寺。そして、権兵衛へ。

蓮華寺

グリル フレンチの茄子の挟み揚げ

権兵衛のしっぽくうどん

夕方に東京に帰るまで、京都ではいつものんびりと過ごすことにしている。午前中はホテルで寛ぎ、ランチは『グリル フレンチ』へhttp://s.tabelog.com/kyoto/A2602/A260203/26000658/。
二条城のそばにある一軒家の二階がお店なのだけど、カウンターは予約で埋まっている。ワインを飲みながら、茄子の挟み揚げや牛肉をいただく。
午後は『蓮華寺』へ。モミジの多い蓮華寺の庭は、『そうだ、京都いこう』のCMにもなった。
出町柳から大原へ向かう途中にある蓮華寺は、少し遠いこともありほとんど常に空いている。小さな門をくぐると、新緑のモミジが目の前で風に揺れる。
中に入ると、目の前に広がる庭は大きくはないけれども、ある種の完璧な美しさを表現しているように感じる。
少し下がって座って全体を見ても美しいし、縁側に出て座っても美しい。極楽浄土を現した庭は、池の周りを歩くことが出来て、緑の濃淡が目にやさしい。
蓮華寺を後にして、再び祇園へ。原了閣などを見ながら、久しぶりにうどんが食べたくなり、『権兵衛』へhttp://s.tabelog.com/kyoto/A2603/A260301/26001337/。
祇園には、うどん屋さんが何気にいくつかあって、夜遅くまでやっているのは『新橋 常盤』。でも、僕が前につきあっていた人が好きだったうどんは、この『権兵衛』の『しっぽくうどん』。うどんの中に、蒲鉾なんかが入っている。
『しっぽくうどん』はKに、僕は、『きざみうどん』を食べた。
鯖などが入っているような複雑で美味しい出汁は、あの頃ふたりで食べた時と同じ味がした。

ホテルのベッド問題。

Kとふたりで旅行するためにホテルを予約する時に、いつも考えることはベッドのこと。
クイーンやキングサイズのベッドが一つあるのが理想なのだけど、日本のクラシックなホテルは、たいていツインのベッドで、ダブルの部屋がないところも多い。
僕はツインのベッドならば、一人ずつ寝たらゆっくり眠れるだろう・・・と思うのだけど、日頃なかなか会えないせいか、Kはいつも同じベッドにふたりで寝るのが当たり前だと思っているふしがある。
福岡ではオークラがお気に入り(グランドハイアットが好きだったけど、オークラの方が立地がよく素晴らしいサービス)だし、京都でも京都ホテルの会員なので、京都ホテルオークラに泊まるのだけど、鴨川を望む部屋はツインばかり(一度友人にハイアットリージェンシーをすすめられて泊まったのだけど立地が悪いのと壁が薄くて貧乏臭かった)。
120センチくらいのベッドにふたりで眠るのは、時々狭いなあ・・・と思うのだけど、すぐに寝てしまうKはそんなことはおかまいなしなのだ。寝ている時も一度も起きないし、そのくせやたらとベッドの上で動き回る。
僕が右側に寝て、Kは左側に寝るのだけど、決まってKは右腕も上に上げて、右肘を曲げて僕の顔に肘を突き刺してくる。僕は寝ていると急に固い肘を顔に当てられて夜中に目を覚まし、当たらないようにもっと右側によるのだけど、今度は右足を僕の上に乗せて来ていびきをかいて熟睡しだす・・・。
その右腕の肘で僕を突き刺すことを、『肘攻撃』と呼んでいるのだけど、Kもそのくせを自分で気づいたらしく、朝起きると、「また肘攻撃してた?」と僕に聞いてくる。
ためしに僕が左側に寝たら、右ひじを曲げても関係ないからあたらないかな・・・と思って寝てみたら、今度は左肘を曲げて僕に肘攻撃して来た・・・。
「ツインの部屋では、別々に寝ようか?」と僕が聞けばいいのだけど、そんなこと言ったらきっと、目をうるませて、「かわいそう・・・」と言うのだろうと思うと、なかなか言い出せないでいる。

鞍馬寺と貴船の川床。

鞍馬寺の新緑

貴船川の川床

朝からレンタカーで鞍馬へ。鞍馬寺は深い山の中腹にあり、パワースポットとも言われている。
途中までケーブルカーを使い、そこからよっこらしょと息を切らせながら登ると本殿が見えてくる。
ここは、牛若丸でも有名な場所だけど、奥の院までそこからおよそ1キロ近く山道があるので、すべて周りたい時には、滞在時間を3時間くらい取らないと回ることは出来ない。
この時期の京都には久しぶりに来たのだけど、美しいモミジの新緑と乾燥した気候に胸が弾む。
その後、山を降りて隣の貴船へ。貴船川の川床でランチをすることに。
普通、床というと、鴨川の川辺の店を思うけど、貴船川の川床は、昔からお忍びで有名人が訪れるほど、鴨川とは比べようもないほど素晴らしい。
美しい清流の真上に床があり、川の音を聞きながら、のんびりと食べる食事は時々爽やかな風が吹き抜けていき、まるで川の真っ只中に浮かんでいるような感覚に陥る。
京都には何度も来ているけど、これほど風流で贅沢な食事は生まれてはじめての経験だった。

前田。

木屋町の櫻川にいた前田さんが独立して店を構えたのは、つい最近のこと。新進で勢いのある割烹ということで行ってみた。
建仁寺に面して、祇園の南側に位置する店は、すっきりとしていて装飾がなく、トイレも石鹸さえも置かない徹底ぶり。カウンターは、アメリカンチェリーの一枚板というのも珍しい。
大将ともう一人だけで、10人くらいのカウンターをさばくサービスはさすがだ。
写真撮影禁止と言われていたけど、緊張する店ではないのは、大将の謙虚で穏やかな笑顔の成せる技。
どの品も京都らしい美しさに溢れていて、思いのほかクラシックな料理を見せ方で工夫している感じだった。
品数も多く、後半は満腹になること間違いない。
しいて言わせていただくと、ここでしか味わえない一品が欲しいと思うけど、素晴らしいお店。
お品書き
青梅
稚鮎とこしあぶらの天ぷら
鯵寿司
ホワイトアスパラ、うど、インゲンの胡麻ソースアーモンドがけ
ぐじと蓮根饅頭のお吸い物
鯛とウニのお造り(エビ塩)
くちこ、ゆべし、鯛の白子
賀茂茄子、煮ハマグリ、ずいき、絹さやの煮物
うなぎ
スナップエンドウの擦り流しとんぶり添え
小芋の蒸しもの。伊勢海老の揚げ物。新海苔がけ
じゅんさいと蒸しアワビ
アナゴの飯蒸し
ピンクグレープフルーツ、イチゴ、マンゴー、パッションフルーツ
わらび餅白あん入り
★前田 http://s.tabelog.com/kyoto/A2603/A260301/26020923/

緒方。

アワビとホワイトアスパラ

花山椒すき焼き

食通の間で、確かな評価を重ねて来た京都の『緒方』へ。『緒方』は、ミシュラン二つ星で、大将は和久傳のご出身。
お品書きは、以下。
梅のお寿司
アブラメ (アイナメ)

岩清水 (じゅんさいのお吸い物)
ハマグリの天ぷら
桜海老のかき揚げ
煮アワビとホワイトアスパラ
八幡巻
花山椒すき焼き
蕎麦
焼きわらび餅
京都の吉兆とは違う流れのお料理は、見かけの煌びやかさや美しさよりも、素材そのものの味で勝負しているように感じられる。
アブラメ(アイナメ)は、炙って香りと甘みを出し、鰹は、釣ってすぐに殺した鰹ではなく、生きたまま持ち帰り、捌いた鰹。
当然赤身の色も違うし、臭みなど全くない。切り方も、ごろっと大きく、旬の鰹を食べる満足感がある。
じゅんさいのお吸い物を食べながら京都に来たと思い、アワビとホワイトアスパラのコンビネーションに驚いた。
すき焼きは、この時期にしか食べることの出来ない花山椒をたっぷりと使った、鞍馬を彷彿とさせる一品。
焼いたわらび餅の香りと触感に浸る頃には、「この店、また来たいなあ〜」とじんわりと思っていた。
大将と女将さんのお人柄が滲み出ているため、お客さんを緊張させることがないというのも、この店の実力だと思う。
★緒方 http://s.tabelog.com/kyoto/A2602/A260201/26012136/

いつか、誰もが、平等の権利を。

知人が先週末に、くも膜下出血で亡くなった。
このたびは、誠にご愁傷さまでした。謹んでAさんのご冥福をお祈りいたします。
16年間つきあってきたふたりは一緒に住んでいて、昨年、日本で結婚式をあげたばかりだったのだけど、55歳のAさんの突然の訃報に僕も信じられない思いだった。
自宅で朝起きたら、Aさんは椅子に座ったまま天を仰いでいたそうだ。くも膜下出血は、脳の中で血管が破裂してしまう病気で、必ずしも高齢の人に起こる病気ではなくて、40代50代60代が多く前兆もさまざまあるらしい。
家で人が亡くなった場合には、警察が検視をして死因をくだすことになるのだけど、警察は同性愛者であるパートナーのKeiさんに、『タチですか?ネコですか?』と尋ねたそうだ。
それは、Aさんの職業がDJだったから様々な憶測を呼んだのかもしれないけど、同性愛者への明らかな偏見と差別があったように思われる。
たとえば、HIVが陽性かどうかなどを疑ったにせよ、人のセックスの仕方まで聞く必要があるのだろうか?最愛の人を喪って、悲しみに打ち拉がれている人に『タチかネコか?』など尋ねるとは、どんな神経をしているのだろうか?
そして、検視の間中も、家族ではないためか、なかなかそばにいることを許して貰えなかったという。2時間おきに遺体のそばに行くことを許可されて、そのたびに遺体に寄り添ったらしい。そんな話を聞きながら、僕は怒りが心頭していた。
ただ黙っていても、世界は変わらない。
いかなるセクシャリティであろうとも、誰もが平等に権利を与えられる日まで、僕たちの戦いは終わらない。

31歳とか32歳の友人たち。

31歳の友人Mと行きつけのイタリアン『EMILIAhttp://s.tabelog.com/tokyo/A1306/A130601/13099554/』で晩ご飯を食べた。
Mはずっと外資の金融で働いた後、会社をやめてフリーになった。
仕事の内容は、ネットを使った様々な分野に及んでいて、外国人向けの不動産から、生ハムやワインの販売まで一言では言えない幅の広さだ。
小さくても新しい企業を立ち上げるということは簡単なことではなくて、様々な横槍が入ることもあるし、いちゃもんをつけられることもあるようだった。
「今までは、会社に守られていたのに、今は僕個人の会社を潰そうとするかのような圧力さえかかることがあるんです・・・」などと、業界で生き残るためには熾烈な戦いが繰り広げられていることを語る。
それでも、大企業に所属している僕にとってみれば、Mの英断はかっこいいし、これからの日本は、こんな勇気のある若者が切り開いていくのだろうなあとうらやましく思える。
そして、ふと我に帰ってみたのだけど、僕の周りには、なぜだか急にこの31歳、32歳くらいの若者がたくさんいることに気づいた。
弟のように一緒に過ごしているFは32歳だったと思うし、irodoriのシェフのMOは31歳。irodoriを作ってくれたMIは32歳。その誰もが、僕がそばにいても尊敬してしまうような仕事ぶりを発揮していて、周りの人たちを明るく照らし輝き続けている。
「Tさんは、今の仕事はどうなんですか?これからどんなお仕事をされたいんですか?」
真っ正面から真剣にMに聞かれながら、「僕は、広告の仕事はもう一通りやったかなと思っていて、・・・会社にはこのまま居続けると思うんだけど、実は今後やっていきたいことがあって・・・」
まだ、誰にもはっきりと話していなかった将来のビジョンをほんの少し話してみる。
「31歳や32歳がこんなに夢に向かって生きているのだ。
僕ももう一度、自分の人生を新しく生きることができるだろうか・・・」

僕のトレーナー その2。

僕のパーソナルトレーナー(レスラー)は、先ずはじめに僕の体調を尋ね、睡眠時間を尋ねる。いつもレスラー(元日本代表選手)は、僕の顔を見ながら、眠そうだとか、二日酔いですか?などと聞いてくる。僕の体調を考慮しながらウエイトを増減してくれるのだ。
このところの『irodori』のオープンで疲れが溜まっていたのか、レスラーは会うなり、「大丈夫ですか?Tさん?」と聞いて来た。僕は、「なんか、眠たいんだよね。」と答える。
僕があまりにも疲れて見えたのか、レスラーは急に、「あのーTさん、ペットとか、飼われたらいいんじゃないですか?」と言う。
僕は、「え?なんで???」と聞くと、自分のスマホから、自分が飼っている亀の写真を見せてくれる。
レスラーは、「ハラガケ カメ
とサルビンオオニオイカメ
です^_^ 大きくなっていくのが楽しいんです」と言う。
色々な他のカットも見せながら、「太っていてかわいいんです…」と言う。それは、まるで子どもの写真を見ている人のよう…
トレーニングを終えて家に帰った夜に、レスラーからLINEで亀の写真が届いた。
★生きているという実感。http://jingumae.petit.cc/banana/2142502
★僕のトレーナー その1。http://jingumae.petit.cc/banana/2166948

メニューできました。

いよいよ『irodori』は、通常営業がはじまりました。
当分の間、18時から24時(23時ラストオーダー)という営業時間になります。
メニューは沢山考案された中から厳選された25品。どの品も『irodori』ならではの独創的なお料理になっているのは、『irodori』のメニュー構成を考えてくれているもっちゃんが元々フレンチの出身ということもあり、味の骨格を作ってゆく時に熟考され何度も何度も試食を重ねて今までになかった一品になるから。料理の開発を手伝ってくれているさのちゃんも、センスのいい不思議なアジアンを提案してくれます。
その中でも絶対に食べて欲しい一品が、『フレッシュハーブのグリーンカレー』。東京のタイ料理屋さんで食べるグリーンカレーって、どれもおんなじ味がしませんか?それはおそらく、どこの店も業務用のグリーンカレーペーストを使っているから。簡単だし、コストのことも考えてのこと。
『irodori』のグリーンカレーは、新鮮なバイマックルーやレモングラスやカーを、乳鉢でたたき、潰し、ハーブそのもののチカラを使ってペーストを作っているのです。
僕も以前にバンコクへ旅行に行った時にタイ料理教室に通ったのですが、レッドカレーペーストを作る際に、当たり前のように新鮮なハーブ類を乳鉢でたたき潰すことから始まります。『irodori』のグリーンカレーも手作りのペーストのため、食べる時に香りが立ち上がり、すっきりとした辛みの中にほのかな甘みが感じられます。この甘みはパーム・シュガーを使っているから。食べた後にすっきりとしていて口の中に嫌な雑味が残らないのは、科学調味料にたよっていないためかもしれません。
この『フレッシュハーブのグリーンカレー』を、オープニングパーティーの時にスタッフが大量に作ったのですが、大量のハーブを乳鉢でたたき潰す作業は、おそらく、自分が奴隷になったように感じられるくらい大変な作業だったと思われます。
オープン初日、友人が連れて来られた方に、ほんの一口と思いこのグリーンカレーをオーダーしたのですが、「おいしい!おいしい!」と言って全部平らげていただけました。

ありがとうございました。

二日間続いたオープニングパーティーを、無事に終えることが出来ました。
お忙しい中ご来店いただき、誠にありがとうございました。この場を借りて、厚く御礼申し上げます。
初日のパーティーの後、僕は3時頃に帰ったのだけど、スタッフたちはその後もミーティングを朝までしたらしく、背中を丸めて帰る姿が、Facebookに上がっていた。
みんなから『お母さん』と呼ばれて親しまれている『もっちゃん』。もっちゃんがいなかったら、イロドリの美味しくて身体に優しい料理は無かったし、イロドリは無かったです。
店長という重荷を背負って、泣きながらがんばってくれた『いけちゃん』。純粋な心がイロドリの心です。
一番面倒くさいお金のことを一手に引き受けてくれているカズマ。連日の睡眠不足で顔を真っ白にしながらがんばってくれました。
新しい料理の開発や、大量の料理を一生懸命作ってくれたサノちゃん。
おびただしい数の食器やグラスを運び、下げて、洗ってくれたゆうこちゃん。
スタッフではないのに、洗い場をもくもくとこなしてくれたノンちゃん。
もっちゃんを影で支えながら、イロドリ全体をやさしく支え続けてくれているカタラオちゃん。
ストレートだけどこの企画に加わり、力強い応援をしてくれているモガ。
みんなに愛想を振りまきながら走り回っているチロル。
そして、今回のイロドリをともに作った、毎日のように一緒に過ごしている妹のようなGと一番男らしい弟のようなF。希望を抱くこと。夢を語ること。思いつきや意思がどんどん形になっていく過程を家族のように一緒に経験して、忘れられない日々を過ごすことが出来ました。
学園祭の準備をしているようにワクワクして、全然寝てないけど、みんなに会うと楽しくて…そんな毎日をありがとう。
みんなの思いが重なり合って、僕たちの店『irodori』が出来たことに感謝します。