人生、ブラボー!

考えられないくらい酷いポスター

この映画が前から始まっているのは知っていたけど、無視していた。タイトルもポスターもあらすじも、あまりにも行く気を失くすパワーに満ちていたから…。
でも、今日は、どんなに見渡しても他に観たい映画がやっていなかったので(「塀の中のジュリアス・シーザー」は途中で出てしまった…)、ダメもとで観に行ったら、意外と笑えたのでびっくり。
42歳のダビッドは、超ダメ人間。借金まみれで仕事にも時間にもだらしなく、恋人にも愛想をつかされている。
若い時に、精子を提供するバイトをして、533人もの子どもが生まれ、その後、子どもたちが結託して彼らから告訴されてしまうという呆れるような内容。OMG!
今までは適当に人生を生きていたダビッドだけど、一人また一人と自分の子どもに出会ううちに、少しずつダビッド自身が変わってゆくというお話。あーバカバカしい…
僕もそう思いながら観ていた。でも、そもそも普通の人の人生における優先順位と、ダビッドの優先順位が、面白いほど違っている。いや、違いすぎているのだ。
これは、僕も時々どうやら優先順位が違うと周りに言われることがあるから、人ごとに思えなかった。笑
カナダの有名コメディアンという主人公を含め、恋人役もとても魅力的な配役になっている。知らないうちに、このろくでもない主人公ダビッドのことを、好きになっているから不思議だ。
ハリウッドやインドでリメイクが決まっているということから、こんなにバカバカしい話でも、多くの観客が僕のように笑ってひととき楽しんだということだろう。見終わった後にほんのり生温かい、アメリカのヒューマン系テレビドラマのような映画。
★人生、ブラボー! http://jinseibravo.com/news/
シネスイッチ銀座にて

ジビエの夜に、カミングアウト。

ドラキュラの家みたい…

猪や鹿がぶら下がっている

青首鴨

若い肉は、ハリがあって美味しいけど、熟成肉がこのところ話題になっている。これ、男の話ではなく、ジビエの話。
中目黒の商店街をまっすぐ抜けて、商店街が終わる突き当たりの地下にそのお店はある。入り口には、鹿の剥製がこちらを見据えていて、まるで、ドラキュラの館のようだ。中に入ると、猪や鹿など様々なお肉が迎えてくれる。店内に入ると、フランスやベルギーの田舎町のレストランに迷い込んでしまったよう。
メニューは、アラカルトでシェアして食べれるから嬉しい。鴨が半羽出て来ても、ふたりでシェアすれば食べられるから。ワインの品揃えも素晴らしい。泡から、白ワインをグラスでいただき、最後にボトルでシャトー・ヌフ・ド・パープをいただいた。
会社の女の子Yが、結婚したというので、久しぶりにゆっくり食事をしようと来たのだけど、ロスに住む彼女のお兄さんの話になると、「実はゲイなんですよ!」と早々に言われ、僕もおもむろに、「これ、俺の恋人…」と言ってKと写っている写真を見せた。彼女は、アメリカで育ったせいか、全く驚く様子もなく、「素敵、彼何歳ですか?かわいい!」と言ってすかさず、「私、このことは、誰にも話さないから安心してください」と言って笑った。
その後Yとは、今まで以上にお互いのプライベートの話をすることが出来たし、距離がぐっと縮まった気がする。この頃、会社の妹のような後輩Gのせいで、社内での僕の勝手なアウティングが進んでいるのだけど、今日のように、言っても、それを理解し受け入れてくれる土壌があれば、社内でのカミングアウトもありだなと思った夜だった。
お肉が食べたくて食べたくて堪らない野獣のような夜におすすめ。
★ラ・ブーシェリー・デュ・ブッパ 「La Boucherie du Buppa」
http://dubuppa.com/

アヒージョ。

遅めに家に帰って来て、「今日はよく働いたなぁ…」と冷蔵庫を開けてキンキンに冷えたシェリー酒を注ぎ先ずは一口。同時にオーブンを200度につける。
1.マッシュルームを冷蔵庫から取り出し指で石突きを取り、耐熱皿に並べる。
2.ニンニクひとつを微塵切りにして、マッシュルームの傘の中に散らし、塩胡椒。
3.あれば、生ハムやアンチョビを千切って乗せる。
4.オリーブオイルをたっぷりかける。マッシュルームの半分くらいに。
5.オーブンに入れて、部屋をざっと片付けて15分。パセリを散らしアヒージョの完成。
ボルドーを開けて、熱々を、ハフハフ言って火傷しそうになりながら食べる頃には、今日一日の疲れはどこかに吹っ飛んでいました。

アカデミー賞の一日。

毎年この日の朝は、お休みをいただいて、M&Kカップルの家に急ぐ。一年の内でも、最もドキドキするアカデミー賞授賞式の日だ。
今年はKが料理を作ってくれるので、チーズと簡単なサラダと、ワインを持って出かけた。
今回、作品賞10本の内、4本はまだ観ていないのだけど、それでも、どの作品や監督、俳優たちが授賞するのかは毎年のことながら本当に楽しみだし、映画を愛する人々の祭典は、映画好きの僕らにも、夢や希望を与えてくれる。
監督賞を、アン・リーが授賞したのはとても嬉しかった。アジア人という枠を超えて世界で活躍し続けるアン・リーは、僕が尊敬している監督だ。
レミゼのパフォーマンスは感動的だし、助演女優賞で、アン・ハサウェイが授賞して、本当に嬉しかった。Kとはじめて福岡で観た思い出の映画だったから。
今回、アン・ハサウェイはスピーチの最後に、自分の役のような人生を送る人が、いつかいなくなることを願うと言ったことに、胸を打たれた。
そして、作品賞を取った「アルゴ」は、昨日偶然観たのだけど、とてもよく出来た映画だと感心した。監督でもあるベン・アフレックが、どんなにハリウッドから干されようとも、不屈の精神で映画を撮り続けたという情熱に心動かされた。
これからも、いつまでも、映画好きの友人たちとともに、こうして毎年、ワイワイ飲みながら、アカデミー賞を観ることが出来たら、幸福だなぁと感じた一日だった。
MとKに、感謝です。
いつも、ありがとう。

Antonio Calros Jobim

敬愛するアントニオ・カルロス・ジョビン(愛称トム)のドキュメンタリーというので、字幕無しでも構わないと思い駆けつけたら、ドキュメンタリーというよりも、トムと関わった様々なアーティストの映像を集めたトリビュート映画だった。
エリス・レジーナ、ジュディ・ガーランド、フランク・シナトラ、サラ・ヴォーン、アンリ・サルヴァドール、エラ・フィッツジェラルド、カエターノ・ヴエローソ…錚々たる顔ぶれのアーティストたちが、トムの曲を歌ったり、演奏している。
沢山有名な曲があるトムの楽曲の中で、一番知られているのは、「イパネマの娘」だろうか。
僕はボサノヴァに学生の頃出会ったのだけど、トムの曲には、言葉に出来ない陰翳や哀愁を感じてしまう。
ボサノヴァに出会ったことで、時々行ったことのないリオデジャネイロに想いを馳せることがある。
カーニバルで熱狂して死ぬ人さえいる国。町中に愛が溢れ、抗い難い快楽の誘惑に溺れる…
映画に使われていた、すべての曲を知っていた自分に驚き、改めてボサノヴァを築いたアントニオ・カルロス・ジョビンという偉人を思い、恍惚の時間をすごした。
★「大人の音楽映画祭〜レジェンドたちの饗宴〜 http://www.sugarman.jp/festival/」アントニオ・カルロス・ジョビン (角川シネマ有楽町にて)
☆Elis Regina and Antonio Calros Jobim
https://www.google.co.jp/url?sa=t&source=web&cd=1&ved=0CD4QtwIwAA&url=http%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fwatch%3Fv%3DsrfP2JlH6ls&ei=axAqUc7zFIL3mAXJoYHADw&usg=AFQjCNGgi0ElB_Zmzo2qbtQWaPAuzLrD4Q

世界にひとつのプレイブック

アカデミー賞8部門にノミネートされている「世界にひとつのプレイブック」を観た。
ブラッドリー・クーパーも好演だったけど、ジェニファー・ローレンスが圧倒的な可愛さを放っている。今回のアカデミー賞主演女優賞の最有力候補と言われているのも頷ける。
人生のたいせつなもの、ほとんどすべてを失ってしまっている二人が出会い、助け合ううちに、やがて惹かれ合ってゆく恋愛映画。
不可抗力なのか、自分のせいなのか分からないけれども、不思議なくらい人生には色々な出来事が起こる。時には酷く傷つき、頭がおかしくなり、すべてが滅茶苦茶になってしまうようなこともあるかもしれない。
過去に囚われてばかりいて、なかなか前に歩き出せない主人公の気持ちも、歯がゆいくらいに分かる気がした。純粋で不器用なふたりを見ているうちに、いつの間にか、このろくでもない状態のふたりを応援している自分に気づく。
まっすぐな子どものような性格の、ブラッドリー・クーパーがなんともかわいい。
そして久しぶりに、クーパーのお父さん役のロバート・デ・ニーロが好演。お母さん役のジャッキー・ウィーヴァーもいい味を出している。
間違いなく、見終わった後に、清々しい気持ちになれる、アメリカ映画らしい解放感に満ちた映画。
★世界にひとつのプレイブック http://playbook.gaga.ne.jp/

ZANNA

久しぶりに、日本でミュージカルを観た。田中ロウマ主演の、ゲイやレズビアンがテーマになったミュージカル「ZANNA」は、ストレートとゲイの世界があべこべのお話。
男は男同士、女は女同士で恋愛、結婚をすることが当たり前で、異性愛は禁じられているという世界なのだ。
そこでは、アメリカンフットボールよりも、チェスがみんなの人気だったり、飲み物も、アルコールよりもミロが強かったり、何もかもが逆の物差しで計られ存在している。
6日間限定公演ということもあり、美術や照明など安っぽかったり、所々で荒っぽさが残るし、演出も残念ながら稚拙に感じられた。
それでも、歌はきちんと唄えているし、話の着想はとても興味深いと思う。何よりも、こんなゲイネタのミュージカルを日本で公開したこと自体、初めての試みに違いない。
もしも僕たちがマジョリティだったら世界はどんな風に感じるのだろうか・・・そんなこと今まで考えたことも無かったけど、こんなミュージカルを、ストレートの人たちが観て、その中の何人かが、ほんのちょっとだけでもゲイやレズビアンなどのことを想像することがあるとしたら、とてもいい機会になると思う。
それにしても、田中ロウマ、オネエキャラ全開だったなぁ。
★明日23日まで
「ZANNA http://www.tohostage.com/zanna/」

二郎は鮨の夢を見る

すべての人にすすめることが出来ると思う映画は、1年に何本もないけど、「二郎は鮨の夢を見る」は、僕の周りのすべての人にぜひ観て欲しいと思う珍しいドキュメンタリー映画だ。
「すきやばし次郎」はミシュランで6年連続三ツ星を獲得している寿司店。87歳の大将、二郎は、ミシュランの最高齢三ツ星シェフとしてギネスにも登録されている。そんなすきやばし次郎の大将を追ったドキュメンタリーは、アメリカ人の監督により製作され、昨年数々の賞を総なめにした。
映画は、二郎の変わらない日々を丁寧に追ったドキュメンタリーだけれども、二郎を取り囲む人々をも映すことによって、二郎の人生全体が見えてくるようになっている。
一番大きなテーマは、二郎と二郎の二人の息子たちの関係だろう。この映画の監督自身のお父さんが、メトロポリタン・オペラの総師であるためか、偉大な父を持つ子どもたちの生き方にも焦点が当てられている。
また、お米屋さんや、築地市場のマグロ業者、海老専門、たこ専門の人にまで迫って行き、普段は目にする事も出来ないような、築地市場の中のマグロの競りの臨場感までカメラに捉えられ、巧妙に編集されている。
そしてなによりも、二郎を毎日、影になり支える弟子たちの、職人ならではの下ごしらえに明け暮れる毎日も忘れる事は出来ない。彼らは10年間下積み生活を強いられ、その後に、やっと卵焼きを焼かせてもらえるようになるという。
この映画を観ることは、日本が誇る偉大な寿司職人の生きざまを知るということであり、それと同時に、自分の今までの生き方を省みて、これからいったいどうやって生きてゆくのかと、改めて自分自身に問い直すことにもなるかもしれない。
★「二郎は鮨の夢を見る」http://jiro-movie.com/

ケメックスのコーヒーメーカー。

ケメックスのコーヒーメーカーに出会ったのは、僕がまだ、高校一年生の頃。高校も外苑前だったのだけど、表参道の同潤会アパートに、「Farmer’s Table http://www.farmerstable.com/home/index.html」という雑貨屋さんがあって、放課後、当時つきあっていた彼女に連れて行ってもらった。
その頃のファーマーズテーブルは、本当に小さなアパートの一室で、表参道から日の光が差し込む中、様々な手づくりの作品や海外の雑貨が並べてあり、ワクワクしたのを覚えている。
さて、このケメックスのコーヒーメーカー、僕はコーヒーは飲まないので、もっぱら花器として使っている。MoMAのパーマネントコレクションにもなっているシンプルな形は、ガラスと持ち手の木、それを結ぶ革の紐の質感の違いが質素で美しい。
先日は粉雪が舞い、まだ寒さの続く中、チューリップを10本買って帰ってきた。小さくほとんど緑色だった蕾は、暖かい部屋でゆっくりと黄色に萌え出しはじめた。リビングで奔放にカラダを広げながら、春の訪れを僕に告げている。

カレー部。

ビリヤニプレート

オススメのエリックミールス

ひとつ大きなプレゼンが終わったので、帰りに上司と後輩と軽く飲んで食事をした。東京駅に続く地下道にある南インド料理屋「 南インドカレー&バル エリックサウスhttp://s.tabelog.com/tokyo/A1302/A130202/13130363/?lid=header_restaurant_detail_review_list 」へ。(場所は、ブリジストン美術館の地下の辺りと言えばわかりやすいかも)
最近、カレー屋やインド料理屋が増えていると感じるのだけど、ここも手頃な値段で、数種類のカレーやスープを食べることが出来る。
会社の局内にカレー部というのがあり、僕も上司も、カレー部で、東京のカレー屋さんを、たまに何人かで食べ歩いている。カレー部入部の条件は、「カレーとラーメン、どっちが好き?」という何気ない質問に対して、瞬時に「カレー!」と答えられること。ほとんどの人は躊躇するか、ラーメンと答える。
後輩に聞いた話だけど、以前テレビで、インド人に「CoCo壱番屋」のカレーを食べさせたら、「美味しい!」と言って食べながら、「で、これは、いったい何ていう料理ですか?」と聞いたそうだ。
日本に浸透している日本的カレーは、彼らの頭の中のカレーとは、全く別のものに思えたのだろう。
カレーがインドやネパールだけでなく、様々な国に多様な形で存在し、今も進化を続けているのは、スパイスを効果的に使った食べものが、時々、無性に食べたくなる不思議な魅力に満ちているからだろう。