友人たちとの食事会。

『新宿ダイアログ』にて、友人たち何人かとまとめて食事会をやるというので行ってみると、他の友人カップルも来ていて、「あれ?どうしたの?ダイアログ見に来てくれたの?」と聞くと、話が違うらしい。
どうやら僕たちがいよいよ婚姻届を出すらしいという話が広まって、食事会に駆けつけてくれたみたい。
そんなこととは知らず、Kも参加しない食事会だったのだけど、友人の計らいで、思いがけず楽しい食事会になった。
2月1日に僕たちが婚姻届を出しに行く予定なのだけど、その婚姻届は同性によるものという理由で不受理になるそうだ。
いったいこの国で同性婚が認められるのは、いつになるのだろうか?
5年後だろうか?10年後だろうか?僕が生きている間に、認められるのだろうか?
いつか笑いながら、「あの頃、こんな戦いに挑んだんだよね…」と、みんなで懐かしく昔話が出来たらいいと思う。
そしていつか若い人たちが、「この国も、男同士が結婚できない時代なんてあったんだね…」と話していたらいいな。

トモちゃんとマサさん

先日ここにご紹介した、タックス・ノットのタックさんとそのパートナーによる芝居『トモちゃんとマサさん』が、ハフポストに記事になって出た。
この記事を読むと、70歳を越えたゲイの生きざまがありありと感じ取れると思う。
年をとっていく上での漠然とした不安はあるのは仕方のないことだろうけど、こうした先輩たちの生き方を知ると、年をとること自体を受け入れていく下地ができるかもしれない。
Youtubeで公開されている芝居を、ぜひご覧ください。
⭐︎「死を思いながら、マイムマイムを踊ろう」70歳のゲイが提案する老後の生き方https://www.huffingtonpost.jp/soushi-matsuoka/gay-old-age_a_23657245/

新しいファミリー。

ここ数年、子どもへの虐待のニュースが増えて来ているように感じている。
映画『万引き家族』にしても、描いているのは万引き自体ではなくて、幼児虐待を含む現代の日本の『家族』の問題点だった。
驚いたことに日本では、約6割の親が、子どもをしつける際にある程度の暴力を容認しているというデータがあり、先進国の中では異常な数値と知り愕然とした。スポーツ業界でも暴力は長い間黙認されて来たということが知れ渡る事件が起こり、これは日本の長い歴史の中である種の慣習のようなものなのかもしれないと思えるのだ。
親は、「愛しているから」と、子どもに暴力を繰り返し、死に至るケースも頻繁に起こっている。
これは、血の繋がった親子であるがゆえに周りからはなかなか見えづらく発見しづらい状況があるからなのだろう。
そんな時代の中、僕たちの周りでは、新しいファミリーが誕生している。
トランスジェンダーとその恋人のストレート女性との間に赤ちゃんが生まれた。子どもの父親は、彼らの親友のゲイであり、緩やかに3人が子育てに関わっているのだ。
血の繋がりがあろうとなかろうと、子どもを愛し続けることが出来て、ずっと寄り添いながら育てていける人たちが、子どもを持てる世の中になって欲しいと思う。
新しいファミリーが、これから先もどんどんこの国に増えていったらいいな。
⭐︎ゲイとトランスジェンダーと母と子 新しいファミリーが生まれたhttps://www.buzzfeed.com/jp/daisukefuruta/congrats-on-new-baby?utm_source=dynamic&utm_campaign=bfsharecopy&utm_term=.nbmV5mmYk

2018年の映画。

いろとりどりの親子

ゴッズ・オウン・カントリー

ザ・スクエア 思いやりの聖域

来週辺りにキネ旬のベストテンが発表されるということもあり、2018年に観た映画に、久しぶりに自分の好きな順番をつけてみた。
昨年もたくさんいい映画を観ることが出来たのだけど、その中でも特に印象に残った映画がここに上げた映画作品。
こうして見てみると、僕自身の昨年の好きな映画の傾向としては、社会性メッセージを含んだものや弱者を扱ったものだったように思える。
2019年も、間も無くアカデミー賞の受賞式だけど、今年はどんな映画を観ることが出来るのか、本当に楽しみにしている。
いろとりどりの親子
ゴッズ・オウン・カントリー
ザ・スクエア 思いやりの聖域
レディバード
彼の見つめる先に
シェイプオブウォーター
君の名前で僕を呼んで
判決、ふたつの希望
しあわせの絵の具
サーチ
ナチュラルウーマン
モリーズゲーム
バッド・ジーニアス
ワンダー君は太陽
顔たち、ところどころ
2月2日(土)から、シネマート新宿他でロードショー!
⭐︎ゴッズ・オウン・カントリーhttp://finefilms.co.jp/godsowncountry/

ジュリアン

この映画のことを知ってはいたのだけど、
実は見ること自体をためらっていた。
それは、自分の過去の記憶が蘇ってくることが怖かったから。
グザヴィエ・ルグラン(グザヴィエ・ドランではない)監督による初の長編映画『ジュリアン』は、ベルリン映画祭で銀の獅子賞を受賞し世界的な評価を受けた作品。テーマは、家庭内のDV(ドメスティックバイオレンス)。
物語は、重々しい家庭裁判所での父母のやりとりからはじまる。11歳になる息子ジュリアンの供述書が読み上げられ、弁護士の見解が続く。夫婦の離別の話だけではなく、子どもの親権をめぐる争いは他人から見て判断がつきづらく、裁判所の判断は見ている我々の願いをあっさりと翻してしまう。
これは、夫婦の間の関係性が崩れ去り、誇りや自尊心を失くしボロボロになった父親と、その父親の暴力のはけ口になってしまっている家族の物語。
父の信じる愛情は、もはや愛情ではなく、物語はやがて、恐ろしい展開へと突き進んでゆく。終盤は、手の握りこぶしをぎゅっと握りしめ、全身でじっと縮こまっている自分がいた。そんな僕の手を、Kは隣でしっかりと握りしめていた。
今年、もっとも強烈な1本。
★ジュリアンhttps://julien-movie.com/#top

天才作家の妻 40年目の真実

グレン・クローズ主演と聞いて、公開を心待ちにしていた映画『天才作家の妻 40年目の真実』は、夫婦の心理戦を見事に描いたサスペンスだった。
長年連れ添った夫がついに念願のノーベル文学賞を受賞する。授賞式に出席するために冬のストックホルムで過ごすうちに、少しずつ夫婦の関係性が揺らぎはじめる。
この映画は、夫婦の関係性を表現しながら、長い間西洋の国でさえも当たり前だった女性軽視・女性差別を描いている。
映画を観ているうちに、「なんでこんなろくでもない男と結婚したんだろう…」と思ってしまうのだけど、それもこれも、グレン・クローズと、夫役のジョナサン・プライスの演技が上手いからだろう。
今生きている中で恐らく最も演技がうまいと言われている女優のひとりであろうグレン・クローズは、どちらかというと舞台が多かったためか、トニー賞は三度も受賞しているのに、驚いたことにアカデミー賞は受賞していなかった。
今年こそグレン・クローズが取るかもしれないと思わせてくれる素晴らしい作品だった。
⭐️天才作家の妻 40年目の真実http://ten-tsuma.jp/

赤いパンツ。

おそらく20年くらい昔だろう。
ニューヨークのマディソンアベニューにあるラルフローレンで鮮やかな発色のコーデュロイのパンツを見つけて、赤・緑、紺色の3本を大人買いして帰ってきたことがある。
赤と緑に関しては、ちょっと普通のお店には売っていないような鮮やかな色で、コーデュロイのためか光が当たるとより彩度が高く見えるパンツ。
冬になると寒い日にはそのパンツを履きたくなり、会社の上司はそのパンツを見ると、
「今年もそのパンツの時期がやってきたんだな…」
と言うくらい、ちょっと目立つ色なのだ。
先日この赤いパンツを履いて、紺色のスタジャンを着て、水色のマフラーをしてクライアントから会社に戻ってきたのだ。
地下の入り口から会社に入るエレベーターに乗ろうとしたところ、警備員に呼び止められた。
「あのー、こちらは〇〇会社なのですが、こちらの会社に何か御用でしょうか?」
僕はゲラゲラ笑ってしまったのだけど、社員証を見せると、警備員の方に何度も頭を下げられた。
自分の会社に入るのに呼び止められるなんて、よほど洋服が変だったのだろう…。笑

木の器。

先日、三谷龍二さんの木の器が欠けてしまい、ご親切な読者の方から作家さんに修理をお願いしてみてはというアドバイスをいただき、作家さんにメールを差し上げ、見事に修復されて戻ってきたという出来事があった。
その後、工房の方からご丁寧なメールをいただいたので、僕が使ってきた家にある三谷龍二さんの木の作品を集めて写真を撮り送ったところ(ちょっとストーカーみたいですね)、またご丁寧にメールをいただいた。
長くたくさんの器をご愛用いただいているのですね。とても嬉しいです。
サラダサーバーも三谷の作品です。
大きなボウルも長皿もみんなすごく良い経年変化が出て来ていて素敵ですね。
引き続きご愛用いただけたら何より幸甚です。
また何かお困りの事等ございましたら、何なりとご相談下さい。今後ともどうぞよろしくお願い致します。
三谷さんの木の器で、最も古いものは恐らくバターケース。ファーマーズテーブルという雑貨屋さんが、まだ表参道の同潤会アパートにあった頃のものだと思う。
それ以来木の器に魅せられて、少しずつ三谷さんの作品を揃えていったのだ。
四角形の木の器は、焼き魚を載せて食卓に上がることがほとんどで、長年使い続けているうちに、角が少し欠けてしまったのだけど、それはそれで味わい深いものだと思っている。
木の器は、乾燥しないように時々オイルを塗ってあげるといいようだ。
サラダサーバーは、オリーブオイルを使うので特にオイルを塗らなくてもいい感じに色艶が保たれている。
木の器のよさは、手に持った時の温かみだろうか。そして保温性もあること。熱いものを入れて器に口をつけて使う文化は、日本以外にあまり見られないようだ。
手作りの木の器は、使い込んでいくうちにたった一つの特別なものに変わっていく。

エンボカ

前菜

白子の昆布チーズ焼き

ふきのとうのピザ

代々木上原にある『エンボカ』は、食通ならば誰もが知っている予約困難なことでも有名なピザの店。ずーっと前から行きたいと思っていたのだけど、友人家族が食事会を開いてくれて念願かなって食事をすることができた。
緑に溢れた内装は、インテリアもセンスがよく、マダムの審美眼がすごいなあと思える。
懐石風な前菜は、野菜を中心に生ハムやマス、からすみなども混じっていてお正月を思わせる見事な一皿。
そのあとにはどかーんと芽キャベツが鈴なりになった状態の株を真っ二つにぶった切って焼いた大皿が。
続く焼き野菜の盛り合わせは、タケノコやソラマメなど、春の野菜がワイルドに盛り付けられている。
そのあとの白子の昆布焼きは、昆布に乗せた白子をチーズをかけて焼き、上にまた昆布の旨みを散らした一皿。
スペアリブはグリルした豚肉の味わい深さを教えてくれる。
ふきのとうのピザ、野沢菜のピザ、最後にマルゲリータと、何もかもが美味しかった。
心の底から「美味しい」って、どういうことなのかと改めて教えてくれる、日本が誇る素晴らしいピザ屋さんだった。
★エンボカ

関連ランキング:ピザ | 代々木上原駅代々木八幡駅代々木公園駅

笛を吹く人。

毎朝会社に行くのに、国立競技場前の駅から行くのだけど、入り口から入って1段エスカレーターを降りたところに、縦笛を吹いているおじいさんがいる。おしいさんといっても、おじさんとおじいさんの間くらい65歳から70歳くらいだろうか?
以前は入り口付近の外のベンチに座って吹いていたのだけど、冬になって寒くなってきたのか、地下鉄内に移動してきたようだ。
おじいさんは、笛の音色を誰かに聞かせようとしているのではなく、自分で練習をしている感じに見える。縦笛は、僕たちが小学校で習った縦笛ではなく、もうふた回りくらい大きな感じで、僕が楽器に疎いからわからないだけで、もしかしたら呼び名があるのかもしれない。
それでも、朝の急いでいる地下鉄に降りてゆく時に、どこからかのどかな笛の音が聞こえてくると、思いがけず「いいものだなあ・・・」と思えたのだ。
例えて言うならば、汚く混沌としたニューヨークの地下鉄構内で、思いがけず大好きなバッハの曲を弾いているチェロを聴いた時のような静かな感動とでも言おうか。
縦笛の音色はなんというか、とても柔らかな質感の音色というか、おおらかでやさしい音色というか。楽器は、そのものだけでも音色を奏でるものなのだろうけど、その楽器を吹いているおじいさんの心のありようも音になって出ているように感じられた。
それ以来、「今日はおじいさんはいるかな?」と、エレベーターを降りる時におじいさんを探している。