三人で過ごす大晦日。

僕たちの家にはテレビがないので、Kが車からナビを外して来て、家で小さなテレビを見れるようにした。

僕は「帯状疱疹」のため、おせち料理も作らないと決めていたのに、やはりほんの少しはおせちが食べたいと思い、たたきごぼうと黒豆と数の子と栗きんとんは作りながら時々テレビに目をやる。

海はソファの下で、僕のセーターを乗せて眠っている。

伊勢丹で買った手編みのセーターが海のものに。

テレビが好きなKは、時々声をあげて笑っている。

やがてKの大分の実家から、鰤が送られて来た。

お酒を飲みながら三人で見る紅白歌合戦。

幸せは、今ここにある。

モビール。

熱海の雑貨屋さん「kichi」から電話があり、前にお願いしてあったモビールが入荷したということで取りに行ったのは随分前。

家の引越しの片付けが終わらずほったらかしにしていたのだけど、Kが見つけ出してリビングに仮に取り付けてくれた。

エアコンの風に揺れるモビールを見ていると、宇宙船のように見える。

ゆっくりと動きのあるモビールは、思いがけず静かな部屋にゆるやかな時間を運んで来た。

海、2回目のワクチン。

今日は海にとって、2回目のワクチン接種の日。

Kと二人で熱海ではなく、函南の動物病院に車で連れて行った。

動物病院には、猫も来るし大きなゴールデンレトリバーものしのし歩いて入って来て、クレートの中の海は初めて見る猫や大型犬に怯えていた。

耳の中の毛をむしりとることや、おちんちん周りの毛の処理、今後の去勢手術のことなどを聞いて安心して病院を後にする。去勢手術に関しては、もっと調べてみないとな・・・。

函南は、三島の手前の町なのだけど、野菜が安く正月前に野菜を買い込んだ。大きな白菜や小松菜、どれも100円。びっくりするくらい野菜を買っても、850円でびっくりした。

家に帰って来たら、ワクチンで疲れたのか、海は寝てばかりいた。

海を抱きかかえるK。

ここ数日は、海とずっと一緒に過ごすことができたのだけど、28日だけは最後の仕事納めで東京に行かなければならず、Kも最後の病院勤めに行かなければならず、海を7時間くらい一人にしなければならなかった。

11時に家を出る時に海は鳴いていたけど、バスに乗り遅れないように急いで出かけた。東京での編集作業が終わって、帰りの新幹線に飛び乗り、しばらくして先に帰ったKから電話が入ったときには心臓が止まるかと思った。電話があるなんて、海に何かあったのかと思ったのだ。

K「海、またうんちまみれになっちゃった・・・」

僕「よかった・・・元気でいてくれたらいいよ。帰ったら僕が洗うから」

K「海、かわいそう。ずっとひとりぼっちで・・・生まれてまだ2ヶ月なのに・・・」

僕「うん・・・でも少しずつ慣れていけたらいいね・・・」

タクシーで家に帰ってリビングのドアを開けると、Kがパンツ一丁で濡れてまだ乾いていない海を抱えてうずくまっていた。

僕「どうしたの?大丈夫?」

K「海、かわいそう・・・」

僕「大丈夫だよ。海は僕たちがいつか帰ってくること、そのうち学んで耐えられるようになるから」

ケージの中は、うんちを踏んだ足で走り回ったのか、そこらじゅうにウンチがつけられているので、シートやおもちゃを持って僕はそのままお風呂場へ行き、汚れを洗い流す。シートを干して、おもちゃを拭いて、リビングに戻ると、Kも少し元気が戻って来た。

海は帰って来た僕に精一杯の歓迎のしっぽを振ってくれる。海にとってもショックだったのだろうけど、Kにとってもショックだったのだろう。犬を飼うのが初めてのKはいろいろと驚くことばかりのようだ。海をひとりぼっちにさせてしまって、自分を責めているようにも見えた。

海も、少しずつ学んでいってくれると思う。

そして僕たちも、ゆっくりと成長していくことができれば・・・と思ったのだ。

海と海辺をお散歩。

スタンダードプードルの海が家に来て、2週間が経った。

海はまだ2回目のワクチンが終わっていないため外を散歩させることはできないのだけど、家の中以外の外の世界に触れさせることも大切なようで、今日は海を連れて熱海の海辺を抱っこしながら散歩した。

海は家にばかりいたのでかなり内弁慶になっていて、車を見たり、人を見ながらちょっと緊張しているのがわかる。カモメの声に驚いたり、子どもの声や元気に走る様を興味津々で見ていた。

海が家に来て思うことは、僕とKに海と言う赤ちゃんが加わり、生活が一変したと言うこと。

おしっこやうんこの始末、朝方早起きして鳴き出す海をなだめること、甘噛みしまくったり噛んで欲しくないものを噛んだりするのをどうやっておもちゃに差し替えるかなど、明らかに自分たちの時間の多くが海との時間に割かれている。

手がかかるし面倒臭いと思うこともたくさんあるけど、海が家族に加わって、今までは自分たちのことばかりだった僕たち二人も、確実に成長している気がするのだ。

君の心に刻んだ名前

台湾のLGBTQ映画で、台湾史上最高の観客動員数を誇ったという映画「君の心に刻んだ名前」を、ネットフリックスで観た。

せつなく、胸が痛くなるような素晴らしい青春映画だったのでここではストーリーに触れないけれども、多感な高校生が自分の同性愛に気づいてゆく中での葛藤や純粋な恋心を見事に表現した作品だった。

この映画を見て、自分の高校の頃のことを懐かしく思い出した。体操部の先輩が好きだったり、サッカー部の先輩が好きだったりしたけど、決して誰にも言うことはできずに自分を押し殺して生きていた高校時代。

もう一度生まれ変わるとしたら、ゲイとしては生まれて来たくないとずっと思っていたけど、不思議なことに今となっては、もう一度ゲイで生まれて来てもいいかもしれないと思っている。

自分のセクシュアリティのことを、人に言えずに苦しんだ青春時代でさえも、今となってみればそれはそれで人とは違った愉しみもあったように思うのだ。もう一度青春時代をゲイとして生きるのも悪くないと思える。この映画を見てそんなことを考えた。

⭐️君の心に刻んだ名前https://www.netflix.com/jp/title/81287844

中島水産市民市場

熱海には、スーパーらしきものは、イオン系列のマックスバリュがあるくらい。

熱海市民は大抵このマックスバリュで買い物をするか、隣町の湯河原にあるエスポットまで足を延ばすかだと思う。このマックスバリュの近くに、大きくはないけど、とても感じのいい魚専門のスーパー「中島水産市民市場」というものがあって、新鮮な魚が手に入る。

この魚屋さん、お寿司も売っていて、鮮度のいいお寿司を低価格で楽しむことができる。この年末は、「帯状疱疹」の治療に充てるため、おせちも作らず家でのんびりと過ごす僕にとって、こんなスーパーがあることはありがたい。

太刀魚のうまいこと!

お店の店員さんが、いかにも魚屋さんぽくてぶっきらぼうなのも、僕は気に入っているところ。

⭐️中島水産市民市場http://www.nakajima-suisan.co.jp/kouri.html

原因不明の病。

あまりないことなのだけど、一昨日から左下の歯が痛くて、詰めたところが取れたのかと思い、歯科医の予約を取ろうと電話をしていた。

昨日は左側の耳を押さえると痛く、おまけに左側後頭部も時折り痛く、下顎周りも変な違和感を感じていた。

家に帰って僕の顔を見たKは、「変なニキビが口の周りに出来ている」と言うので、鏡を見るとニキビのようなものがいくつか出来ていた。

翌朝、耳の奥の痛みと頭痛が治らないので、原因は歯なのではないかと思い、熱海の歯科医を訪れるも、虫歯はないし歯が原因ではないと言われた。

午前の診療が終わりそうな大学病院に電話をかけて、耳鼻科の予約をなんとか取り付けタクシーで向かう。

耳鼻科の先生に見てもらうや否や、「これは皮膚科だ。すぐに皮膚科に電話して!」と。皮膚科に回されて判明したのは、どうやら病気は、「帯状疱疹」とのこと。

「すぐに入院していただきたい」と言われるも、来週月曜日の編集は休めないのでなんとか入院はせずに治せないかと相談する。

ウイルスを抑える飲み薬と痛み止めをもらって帰り、家に着いたら力が抜けてしまった。

「帯状疱疹」とは、昔やった水疱瘡のウイルスが未だに身体の中に残っていて、免疫力が落ちて来た時に再び身体の表面に出て来て神経を刺激する病気らしい。

40歳以上が圧倒的に多く、80歳になると三人に一人は帯状疱疹の経験者だそうだ。

この一年、身体的にも精神的にもとてもしんどかつたので、ここへ来て免疫力が落ちてしまっていたのだと思う。

まもなく年末になることもあり、今年の年末はゆっくり過ごすようにと神様がはからってくれたのかもしれない。

仕事から帰って来たKは、心配そうに僕の顔を何度も覗き込んでいた。

家族のもとへ。

駒沢で撮影が終わったのはほぼ予定通りの4時半過ぎ。普段ならば撮影の余韻に浸ったり、クライアントとしばし歓談をするのだけど、僕は挨拶をして一目散にタクシーに飛び乗った。

駒沢大学駅から電車に乗り継いで品川に着いたのは4時56分。品川発のこだまは、5時4分。ダッシュでこだまに駆け込み、熱海駅に着くと、そのまま迷わずタクシーに飛び乗った。

昨日はKが休みを取り、海と過ごしてくれていたのだけど、今日は僕が帰るまでおよそ9時間も海はひとりでケージの中で過ごしたのだ。

家に着くと、海は玄関を開けた途端に鳴き出した。ケージの中は荒れた様子もなく、それでもうんちを踏んでしまった足跡があったので、そのままお風呂場に直行してシャワーを浴びさせる。

そこにタッチの差でKが帰って来て、僕たちのシャワーを覗き込む。

海は、やっと会えたうれしさのあまり興奮しているけど、それと同時に嫌いなシャワーを浴びながら複雑な顔をしている。

お風呂から上がって海を抱きしめた。

そして二泊ぶりにKの顔を見て、ほっとした。

たった三人の家族だけど、こうして一緒にいるだけでとても温かい。

ひとりの誕生日。

誕生日はほとんどいつもKと一緒に過ごして来たのに、今年は離れ離れで過ごさなくてはいけなくなってしまった。

僕の仕事の撮影が22日23日と早朝から続けてあるため、21日の夜から東京に泊まらなければならなくなったのだ。

21日は家でのんびり晩ごはんを食べた後、Kが8時半頃車で熱海駅まで送ってくれた。

東京について外苑前のホテルに行くも、どこにも行く気にはなれずにそのままホテルで寝てしまい、誕生日は早朝から撮影をしたのち、新宿のホテルに到着。

久しぶりに「ぺんぺん草」に顔を出すも、すぐに退散。

ホテルに帰ってKとやり取りしながら、海が今どうしているかばかり気になってしまう。明日は僕が帰るまで、海は今までの最長時間のお留守番をしなければならない。

Kが海と一緒に誕生日祝いのビデオを撮って送ってくれた。

ビデオを見ながら、早く帰りたいなぁと思う。

たった2泊離れただけで、堪らなく会いたくなってしまうのは、海よりも僕が家族離れ出来ていないようだ。