カルボナーラ。

パスタの中で一番好きなものは、トマトソース、カルボナーラ、アーリオオーリオの順番かもしれない。
ローマの肉市場の所に、『ケッキーノ・ダル1887』という、イタリアで一番の肉類を扱って来た店がある(ローマ法王がいるため、ローマには最上の物が入る)。そこで食べたカルボナーラの、ブカティーニの芯の残るか残らないかの絶妙な茹で具合いと、余分なものの入らない濃厚な玉子ソースは忘れることが出来ない。
本場ローマのカルボナーラは、日本中で食べられているような生クリームソースではなく、玉子とチーズのみで作られるネットリとしたソースなのだ。生クリームなどは一切使わない。
随分前に、友人に、カルボナーラの作り方を聞かれていたのだけど、久しぶりに作ったのでここに書いておきます。
【カルボナーラ】
1.フライパンにオリーブオイル小さじ1に、グァンチャーレもしくはパンチェッタ60gを食べやすい大きさに切り、焼き目をつける(あまりいじらない)。
2.焼けて芳ばしくなってきたら、白ワインまたはシェリー酒大さじ2を入れてから火を止めておく。
3.パスタ90g(太めのスパゲティかブカティーニ)を茹ではじめる。
4.ボウルに卵黄2個(または全卵1個、これは、好みでいいと思います)を入れ、ペコリーノロマーノを大さじ2と、パルミジャー・ノレッジャーノ大さじ2(なければ、パルミジャーノのみ大さじ4)を入れ、黒胡椒をたっぷり引き、軽くかき混ぜてゆるいジャムのようにする。
5.フライパンに火をつけて、水分が無ければ茹で汁大さじ1を足す。茹で時間の2分前に上げたパスタをフライパンに入れて、全体を軽く和えたら火を止めてフライパンをまな板(もしくは濡れ布巾)の上に置く。
6.ボウルからヘラを使って玉子ソースをパスタの上にあけて、フライパンに火は入れずに全体を軽く混ぜ合わせる(火を入れると素人は必ず失敗して玉子が固まりモロモロになります)
7.器によそい、オリーブオイル(あればトリュフ入りオリーブオイル)を軽く風味程度に回しかけ、荒目の黒胡椒を引いて完成!うまいよ!

そして父になる

邦画はほとんど観ることがないのだけど、ブリママ(Bridgeのママ)がすすめていたので、観に行った。
6年間育てた男の子が、実は生まれた時に病院の手違いで、別の子と取り違えられてしまっていた二つの家族の話。
説明を最小限に省き、映像で間合いを持って眈々と見せていく演出は、やがて観ている人を巻き込み、知らぬ間に自分の立ち位置が迫られる。
親子という血の繋がりを取るか。
6年間育てて来た絆を取るか。
最初から最後まで、ずっと親の目線で語られながら、子どもの存在が鮮やかに浮かび上がる演出が見事だ。
こんな監督が日本にいるなんて、誇らしい。
★そして父になるhttp://www.gaga.co.jp/sp/cinemas/detail/soshitechichininaru
カンヌで審査員賞、サンセバスチャン国際映画祭では観客賞、ハリウッドでスピルバーグによってリメイクが決まったそうです。

堂山の夜。

昔から堂山には飲みに行っていたけど、いつも同じ店(サルーテかBreastかMarketかSHIFT)しか行かないので、Aさんが他の店に連れて行ってくれた。大阪に行く人のために、簡単にお店の感想を書いておきます。
★Relax
元GOGOのIchiさんがやっている店。前はPump Upにいたけど、今はこの店にいる。Ichiさんに会うのは久しぶりだけど、相変わらずセクシーでかっこよかった。Ichiさんは僕に会うなり、「東京のお店のママさんですよね?」と言うので笑ってしまった。
大柄でムキムキな身体につい見惚れてしまうけど、Ichiさんと話していると、周りの人に対して気を遣うやさしい人なのだということがわかる。お母さんのことをとても大切にされている愛情深い人だ。
★Book Mark
店内は照明が暗く、JAZZが流れている。ちょっと2丁目のBridgeに雰囲気が似ている。ワインを飲んでいるお客さんも多く、お通しの種類も豊富でとても美味しい。オーナーは関西人らしいデカイ声で大きく笑うおじさん。店の外にいて恋人らしい30代後半くらいの子にやらせている。
綺麗なお店だし、ワインもお通しも美味しいけど、お店は器ではなく、人なのだと、改めて思ってしまった。
★Be Be Cafe
77歳になるマスターがやっているゲイバー。カラオケがあり、暗く昭和の雰囲気の漂う感じ。お通しを丁寧に作るマスターを見ているだけで、感慨深いものがある。その人に会うために行きたくなるようなお店。
★Market
東京でも行く人が多い店。店員さんがかわいくてみんな行きたがるみたいだけど、僕はこの店、なんだかつるんとしていてつまらないのでいつもすぐに出てしまう。
★SHIFT
マスターが少しやさぐれている感じのいい男。ワインがとても美味しい。チーズの盛り合わせなどのお通しも美味しい。いつ行っても居心地がいい店。
もし、大阪に住んでいたら、僕が飲みに行く店はおそらく、RelaxとSHIFTだと思う。(あとは怖いもの見たさで、時々サルーテに顔を出すくらいかな)
また行きたいな。堂山。

永楽。

鱧と縞鯵とイカのお造り。

パンの天ぷら。中には海老クリーム。

世界一の天茶。

大阪最後の夜は、少し年上の友人Aさんと会うことに。
Aさんは、大阪出身、大阪在住でありながら東京に恋人がいる。仕事の都合で頻繁に東京と大阪を行き来している。
Aさんのお父様やお兄様お姉様など、ご家族も行きつけという北新地の天ぷら屋さん『永楽』に連れて行ってもらった。
ここの天ぷら、京都で修行されたようで、油も菜種油が主体、そのせいか東京の天ぷらとは全然違って軽く、素材をそのままいただく感じがする。
先付けからして、柿の白和えなんかが出てくるし、鱧のお造りも素晴らしい、松茸の土瓶蒸しは香り高く、お出汁と海老や鱧の出汁が混じり合い、秋を濃縮したような味がした。
海老は軽く揚げてありあくまで甘く、イカは外側は香ばしく、中身は生で仕上げる技。淡路島の玉ねぎは苦味がなく、写真などに収めることも忘れ、鼻息荒く次から次へと平らげてしまった。
Aさんが世界一の天茶だという一品は、海老を細かく砕き、熱いお茶をかけていただく。お茶漬けそのものにまったく興味のない僕でさえ、じんわりとくる海老とお茶の不思議なコンビネーションに、改めて和食って凄いなあと唸ってしまった。
大阪に来たら、必ずまた来たいと思いました。
ありがとう!Aさん!
★永楽(ネットにはほとんどこの店の情報は無いですね…)

初めて好きになった人。

10代のある日、稲妻が落ちたようにMを好きになった。Mは僕より5歳年上で、物静かで、瞳の奥にどこか寂しさをたたえた人。
恋人のいるMとの関係は、ジェットコースターのような毎日であり、時々胸は膨らんでも、急に突き落とされ傷つくことを繰り返していた。
そんなMとの関係も、Mの大阪転勤であっさりと幕は降りたのだけど、その後、偶然町で会ったのをきっかけに、東京や大阪にどちらかが来る時には時々会って一緒に飲んだりしていた。
今回、僕の出張が数日あったため、久しぶりにMに会うことが出来た。居酒屋で乾杯をして、若かった頃の話や、今のお互いの仕事の話、親の話など、どんなことでも話が出来る。
Mは、極度のホモフォビアを抱えて生きてきた。
『ゲイである自分は、絶対に幸せにはなれない』と言い、周りを気にして、いつか結婚したいといつも言っていた。
今でも社内ではゲイを隠しているけど、会社では家族連れのイベントなどもあり、やりにくいことが沢山ある。出世に関しても結婚していないことが不利に働く環境だと言う。
Mのようなゲイが、もしかしたら日本のゲイの典型的な姿なのかもしれない。
人によっては結婚していて、男が好きでありながら、それを公には出来ずにひた隠しにしながら顔では笑って生きている。
10年後や20年後、ゲイやセクシャルマイノリティにとって、日本はもっと生きやすい国になっているだろうか?
その頃Mが、ゲイであったけど、幸せな人生だったと思っていたらいいなぁ。

貴賎。

平目、鱧、カマス、イカ、ウニ、秋刀魚。

鱧の天ぷら

鱧鍋

朝一の飛行機で仕事で大阪に来た。
新商品の撮影なのだけど、撮影の直前で、その新商品の『作り手』から案の変更を求められていて、懸案事項が沢山あった。正直、今まで積み上げて来たものを大きく変更しなければならないし、撮影の直前ということもあり、問題はこじれつつあった。
でも、実際に三人の職人さんたちと膝を付き合わせて彼らの意見に真摯に耳を傾けてみると、なるほどと思うことも沢山あった。丁寧に、熱意を持ってこちらの意図を伝え、撮影の計画を伝えると、最後には彼らにも納得してもらうことが出来た。
撮影の間中、我々の仕事を熱心に見守る姿を見ながら、ものづくりの職人である彼らを、眩しく見つめてしまった。
彼らにしてみれば、『作品』は、彼らの『我が子』のようなものであり、愛するがゆえに、想いは溢れ、それが我々に違ったカタチで届いていたということがわかった。
彼らのように、自分の仕事に誇りを持ち、真摯に生きている姿を見ていると、職業に貴賎はないという言葉があるけれど、貴賎は、その職業に関わる人の姿勢が決めるのかもしれないと気づく。
どんな職業であれ、自分の仕事に、誇りを持っている人は、貴い。
そんなことを、彼らの姿勢から学んだ一日だった。
追記:
夜は北新地の『馳走や 純平』へ。鱧尽くしのコース料理をいただき、今日一日をねぎらった。鱧の包丁の入れ方、お造り、お出汁、どれをとっても素晴らしいお店だ。冬はフグが食べられるらしい。
★馳走や 純平 http://www.chiso-ya.jp/

富士山。

晴れてよし 
曇りてもよし 
富士の山
もとの姿は
変わらざりけり
山岡鉄舟
山岡鉄舟が悟りを開いた時に詠んだと言われる歌。
なんて強く、美しい歌だろうか。

母の誕生日。

鯛の昆布締めとチーズの酒盗。

天ぷらと胡麻和え。

定番、鮑の磯焼き。

9月21日は母の誕生日だった。
旅行好きな母は、長野に旅行に行っていたので、今日、一緒に、いつもの伊勢丹の『分けとく山』でランチをした。
72歳になる母は、相変わらず元気だけど、一年に数回しか会わないと少しずつ年をとっているのがわかる。
長野を旅行して買って来たぶどうと日本酒を持って現れた母は、味噌も梅干しも自分で漬けるし、今は、『酵素』作りにはまっているようだ。
毎日欠かさず新聞を読み、朝ごはんは5時。ウオーキングをして、畑仕事をして、昼は11時。絵画教室や鎌倉彫の教室に通い、夜は4時に食べて、7時ごろには眠るらしい。7時ですよ!!!
母は、蕎麦懐石のグループに参加していて、日本中の蕎麦を食べ歩いたり、一年中各地を旅行している。
今の母を見ていると、こうして好き勝手に旅行して色々なものを食べ歩いている今は、本当に幸福そうに見える。
いつか、年をとり、動けなくなる日が必ず来ることを思うと、「美味しい」と言った時の無邪気な笑顔さえ、僕にとってはかけがえのないもののように思える。
手を振りながら別れる時に、何度も振り返る小さな姿を見ながら、こんな日々が、いつまでも続いてくれますようにと願った。
★分けとく山http://s.tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13004310/

鼎。

昨夜、新宿2丁目で出会って、町を案内したスペイン人2人と、晩ご飯を食べた…(ありえないですよね…)
彼らはあと2週間あって、日本の地方の町を周りたいという旅程の相談にのるのが主な目的。日本風な店がいいだろうと思い、3丁目の老舗居酒屋『鼎』へ。
築地が休みだから、魚が無いものもあると聞いていたけど、十分に美味しい料理の数々に、彼らも大喜びだった。
なんでそんなに興奮したように喜んで写真を撮っているのか?と思って聞くと、この居酒屋特有の、エキゾチックな日本に驚いたみたい。
彼らに、「昼間は何を食べたの?」と聞いたところ、「マクドナルド」という答えが帰って来た。「本当はマクドナルドなど入りたくなかったけど、日本のお店に入っても、メニューが全然わからないから…」
確かに、『鼎』なんかの居酒屋も、英語のメニューなんてそもそも存在しないし、外国人だけで入って来ても、彼らが入店出来るのかどうかわからないな…と思った。
これから日本のお店に入って困らないように、「オススメ」という言葉を教えてあげた。どんなお店に入っても「osusume」と言えば、きっとその店のオススメを適当に出してくれるのではないか?という安易な考えなのだけど…
タコの天ぷらを食べながら、「天ぷらのルーツはポルトガルなんだ」と言ったり、刺身を食べながら、「日本の食べ物とスペインの食べ物は似ている」と言ったり、居酒屋の料理をとても喜んでもらえた。
こんな風に、知らない外国人と偶然出会って、翌日食事もするなんて、僕たちも相当変わっていると思うけど、ゲイであるというだけでぐっと親密になれるのが不思議だ。
楽しい旅行になるように!
いつかバルセロナで再会出来ますように!と言って別れた。
★鼎http://s.tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13000879/

新宿2丁目と外国人。

Gで飲んだ後、店を出てマスターと立ち話をしていたところ、その店に白人の外国人2人が入って行ったけど、そそくさと出て来た。
どうしたの?と聞くと、入店を断られたらしい。お店の言い分は、
1.彼らは日本語が通じないし、店側は英語が話せない。
2.日本独特のチャージ料を説明出来ないし理解してもらえない。
それを聞いて、僕は愕然とした。同じことを海外でやられたら、とても悲しい気分になるに違いない。
外国人というだけで入店を断るなんて、人種差別にも思えるし、オリンピックも控えた国際都市としてあり得ないことだと思う。チャージのシステムは、英語で書いて店にメニューと一緒に置いておけばいいことだ。
断られた外国人は、とても寂しそうな顔をしていたので、僕たちが店を案内することに。多くの外国人で賑わうGBに連れて行ったところ、日本人の店に行きたいというので、結局またBridgeへ。
スペインから来たカップルは、一人はポーランド出身の建築家だった。彼らの日本で行く色々な場所のプランを聞きながら、僕がスペインへ行った時の旅行話をしたら嬉しそうに聞いていた。
彼らと別れて帰り道、仲通りにいつも止まって商売している、トルコ人のケバブ屋さんと立ち話をした。彼は、オリンピックが東京に決まったことをとても喜んでいた。
そして、カッパドキアで殺された日本人の大学生のことに話を向けてみると、顔色が変わって僕に懇願するように、「本当に申し訳ない。日本人にあんなことをするなんて、彼はもう、生きていられないと思う」と言った。トルコは、台湾に次ぐ親日国だ。多くのトルコ人は、今回の事件を、日本人であるがゆえに、特別に重く捉えているという。
いつものように、トルコ語で挨拶して別れたのだけど、新宿2丁目もかなり外国人が来るようになって来ているし、彼のように働いている外国人も出て来たし、台湾人、韓国人、中国人などのゲイバーも出来ている。
これからも日本に興味を持ち、旅行に来る外国人に対して、少しでも開かれた新宿2丁目であって欲しい。