古宇利島と美ら海水族館。

那覇のゲイバーで飲んでいる時に、沖縄の人がポツリと言った。
A「東京に行っていた時、友達に連れられて湘南に遊びに行ったんですよ。
こんなこと言ってはいけないと思うんですが…あの海の色を見たら、正直、泳ぐのはもちろん、足をつけられなかったんです…」
B「あ、俺も、神奈川よりも千葉の海がきれいだからと言って、九十九里に行ったんですけど、これできれいって…
我々からしたら、驚いてしまって…」
そんな話を聞きながら、そんなものなのか…と思っていた。ホテルのある那覇市から車でおよそ1時間半、古宇利島を目指して車を走らせ、海が見えて来た頃には、彼らの言っていた意味がわかり始めたのだ。
「何これ?日本じゃないみたい!」
エメラルドグリーンの水が見え隠れして、やがて一本の美しい橋が見えて、その向こうに古宇利島が見えて来て、我々は車の中から絶叫していた。
「おおお!すげー海が青い!タイなんか行く必要ないじゃん!」
2年前に出来たという古宇利大橋を渡り、オーシャンタワーへ。およそ日本とは思えない美しい眺めを見たあとは、近くのビーチへ。
砂浜は白く、波は穏やかで、水温は暖かい。ビーチパラソルを借りて、時々海にぽっかり浮かんだりしながら、オリオンビールを飲み、『The 夏』を堪能した。
海でひとしきり遊んだ後は、アジア一、世界一とも言われる『沖縄美ら海水族館』へ。
海の上から、ゆっくりと館内を周りながら下へ降りてゆく設計といい、珊瑚の部屋、サメの部屋…などと、沖縄の海をテーマごとにわかりやすく展示している構成といい、この水族館を作った人たちの考えを知り、圧倒された。
「まるで、海の中に魚たちと一緒にいるみたい…」
沖縄本島に行くことがあれば、絶対に行くべき素晴らしい水族館だった。
★沖縄美ら海水族館http://oki-churaumi.jp

まーちぬ家。

地ダコ

二ガナ

イカスミジューシー

午後の便で、はじめての沖縄へ。
二丁目の店で、カウンターで飲んでいる時に友人Xが言った。
X「ただしちゃん、Jet Star安いよ。沖縄とか見てみようか?」
その場でJet Starで検索すると、片道9千円だった。
僕「安い!沖縄行ってみる?Kも誘って4人で…
Xもそれまでに新しい恋人探せばいいから…」
しかし、結局Xに新しい恋人はできぬまま、沖縄へ出発する日に…。
X「いいわ。現地で若い子を調達するから…」
それはともかく、はじめて降り立った那覇は、風が吹いていて東京よりもむしろ涼しく感じられた。
夜は、沖縄料理の『まーちぬ家』へ。
島らっきょうの自然の旨味に驚き、海ぶどうの食感に顔がほころぶ。
二ガナという苦味のある野菜炒めは、お酒に合う大人の味わい。
テビチという豚肉の煮込みは、沖縄を濃縮したように感じる。
地ダコの刺身がぷりっぷりで、ソーメンチャンプルーは、甘くなくあっと言う間になくなってしまった。
そして一番楽しみにしていたのは、真っ黒なイカスミジューシー。コクがありイカスミのパエリヤよりもずっと濃い出汁がきいている。
はじめての沖縄で、初日からこの地に恋をしてしまったようだ。
★まーちぬ家
098-863-5159
沖縄県那覇市前島2-7-14
http://tabelog.com/okinawa/A4701/A470101/47003193/

シミ。

40歳を過ぎてからジムに行きはじめて、何気なく鏡を見て驚いた。
「ぎゃー! 何この背中!!!」
今までの人生、鏡を見ても、太って来たかな…、腹が出て来たかな…など自分の正面はわかっているつもりだったのに、自分の背中はまったく見えていなかったのだ…。
40歳を過ぎた僕の背中には、シミがいくつもあったのだ。
なんというか、白人のそばかすに近い感じのシミだった。
せっかくの美白が…_| ̄|○
やがて45歳を過ぎた頃、顔にもシミが現れはじめた。
「年を重ねてゆくということは、こういうことでもあったのか…」
シミを受け入れ、シミとともに生きていると、シミは、肌のずっと奥深くから時間をかけてゆっくりと浮き出て来て、少しずつ色が濃くなり、やがてまたゆっくりと薄くなってゆくようだった。
それはまるで、小さな頃、夏休みに家族で遊んだ記憶が、忘れかけていたけれども遠くに確かに残っていて、今になって時々浮かび上がってくるようにも思えた。
母とは喧嘩ばかりしていた父が、溺愛する子どもたちをなんとしても失うまいと、僕たちを毎週のように海に連れて行った夏休みは、今でも僕の中に留まり、宝物のように残り続けている。

PRIDE。

朝、銀座線で通勤している時に、ふと少し前に立つ若者に目が止まった。
20代はじめだろうか。澄んだ瞳。はち切れんばかりの若い体躯。金城武の若い頃のような精悍な顔立ち・・・。
「若いって、それだけでものすごい価値だよなあ・・・」と何気なく見つめていると、ふと左腕の手首に目が釘付けになった。
それは、レインボーカラーのゴムのリストバンドだったのだ。
もしかしたら7色のただの虹色かもと思い、注意深く色数を数えようと見ると・・・ゴムのリストバンドには『PRIDE』の文字が刻印されていた。これは数えるまでもなく6色のレインボーカラーに違いない・・・。
服装は、クールビズ的な半袖に長ズボンだけど、背中に大きめのリュックを背負っていて、水筒も着いている。もしかしたら外国人(台湾人とか台湾系アメリカ人)かもしれない・・・などと思いながら、目をそらせずにいた。
あと二駅で新橋に着いてしまう・・・その前に、何か話しかけたい・・・
でも、なんて話しかけたらいいんだろう?
「それ、いいですね!」と言って、リストバンドを指差す・・・
「cool!」と言って、わかっているんだよ的なアプローチをしてみる・・・
 
金城武がおもむろにタオルで汗を拭く姿を見ながら、
「ああ、あのタオルになりたい・・・」などと妄想しながら、胸は千々に乱れ、気がつくと新橋に電車は突進していた。
心穏やかではいられない、夏の朝。

美味礼賛。

メゾンサンカントサンク

鳥の胸肉

会社関係の食べ物好きが集まって、時々『美味礼賛の会』なるものをやっている。
持ち回りで幹事を決めて、それぞれが得意とするジャンルの店にみんなを連れて食べにいくのだ。それは、決して高級なレストランではなくて、「手頃な値段だけど、これって美味しいよね!」というような店を選ぶようになっている。
今回は、代々木上原散策となり、『メゾンサンカントサンク』というビストロで食事をした後、沢山のシェリー酒を取り揃えているという『ウエルファンカフェ』へ。
『メゾンサンカントサンク』は、駅からすぐの小さな一軒家を1階から3階までビストロにしている店。まるで誰かのお家に遊びにきたような素敵な雰囲気のお店は、ナチュラルな野菜、オーガニックのワインに拘った人気店。夕方から夜中までお客さんがひっきりなしに押し掛けて来ていた。
『ウエルファンカフェ』は、メゾンサンカントサンクから歩いて5分くらいの住宅街にあるカウンター中心のお店。シェリー酒が沢山あり、つまみもスペインの生ハムからアヒージョ、パエリヤまで置いてある。このお店も、夜中であるにも関わらず、若い人たちが次々に訪れ、好みのシャリーを頼んでいた。
代々木上原は、昔友人が住んでいた頃は時々訪れたのだけど、ここ10年くらいほとんど降りることはなかった。今回、久しぶりに代々木上原を歩いてみて、多くの人がこの町に住みたがる気持ちがわかったような気がしている。
★メゾンサンカントサンクhttp://tabelog.com/tokyo/A1318/A131811/13114658/
★ウエルファンカフェhttp://tabelog.com/tokyo/A1318/A131811/13007227/

浴衣という愉しみ。

今年は、トロントでのパレードで浴衣を着たのと、週末にJFと一緒に浴衣を着たので、この夏すでに2回浴衣に袖を通したことになる。
浴衣は、できれば毎年1着は作りたいと思うくらい好きなのだけど、気がつくと今年ももう盛夏を過ぎたので、出来上がる時間を考えると、今年も浴衣を作ることはないのだと思う。
写真の浴衣は、数年前に伊勢丹で企画され作られたもの。江戸時代の日本画家、伊藤若冲の日本画を、白と黒のはっきりとしたデザインで現代に浴衣として蘇らせたもの。モチーフは、カブトムシとトウモロコシだ。
浴衣を着ると、その柄によって、洋服以上に自分の気持ちが変化するのがわかるものだ。それは、布1枚で構成された着物と帯だけの組み合わせなので、より端的に柄がその人の顔に反映されるからであろうか。ちなみに、この若冲の激しい夏らしい浴衣を身につけると、「紅白の大トリ?」などと言われてしまう・・・。
普段、浴衣は、銀座の『もとじ』であつらえる。京都の『えん』という飲み屋で飲んでいた時に、『もとじ』のご主人と隣り合わせになったのがご縁となっている。
今年の夏も、あと数週間。週末に東京にいられる日も限られている。そう思うと、いく夏を惜しむかのように、着ていない浴衣を着なくては・・・と思うのだ。
★もとじhttp://www.motoji.co.jp/otokonokimono/

こころむすび。

鱒、クエ、のどぐろ、鰹、穴子

焼き野菜

カニ味噌チーズとカラスミ

モントリオールからの友人JFが、いよいよ明日カナダに帰ると言うので、みんなで浴衣を着て食事をした。
大の日本好きであるJFにとって、浴衣を着ること自体、とてもワクワクする経験のようで、新宿のレンタル浴衣屋さんから大はしゃぎしていた。
新宿二丁目の『こころむすび』は、お魚と野菜と日本酒にこだわった居酒屋さん。僕はこの店が、二丁目で一番美味しいのではないかと思っている。
魚は築地から仕入れているし、料理の仕方もとてもシンプルに焼くとか炙るとかだし、品数も厳選されていてどの料理もお酒に合うように考えられている。
カナダ人のJFにとって、日本の食事は本当に驚きのようで、食材が出てくるたびに好奇心旺盛で質問してくる。
まず、お通しで出された鴨ロースに感嘆の声をあげる。「なんて豊かな味わいなんですか?」鴨を沢山食べている彼らにしても、日本の鴨ロースは魅力的なようだ。
鰹の刺身を味わい、鮎のしんじょうに驚き、カラスミを不思議そうに食べながら、海老クリームコロッケは舐め尽くしておかわりしそうなほど美味しいと言って喜んでいた。
そして、中でも一番驚いたのは、フグの白子だったようだ。食べたとたん、「これは、鴨ですか?」と聞いてくるので、魚の白子だと説明したら目をまん丸にして驚いていた。「恐るべし…日本…」とでも言うように。
JFは、今まで7回も日本に来ていて、その度に日本に魅せられて、また次にいつ日本に来られるのかとスケジュールを立てている。
外国からの友人が、この国のことを少しでも知って好きになってくれるのは、僕にとってもとても嬉しいものだ。
★こころむすび
03-3355-3577
東京都新宿区新宿2-8-17 SYビル 1F
http://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13039210/

口ぐせ。

僕が30代の頃10年間ともに生きたMの口ぐせは、『かわいそう』だった。
それも、本当にかわいそうに思った時に言うというのではなく、僕がMに何かを押しつけたり、意地悪なことを言ったりした時に自分につけて言うのだった。
「かわいそう…Mくん…」
それはどこか幼く頼りない子どものようで、Mの純粋な心を映しているような言葉に思えた。
それと、「してあげて!」と言うのもMの口ぐせだった。これは、何かを僕にやってくれとお願いする時に使う言葉で、例えば、レストランの予約や旅行の予約なんかを僕にやらせる時に言う言葉だった。
「京都のホテル予約してあげて!」
これも今思うと、子どもが母親に頼んでるように聞こえる…笑。
先日、今つきあっているKが、何の気なしに僕に言った。
「ただしくん、熊本のホテル、早く予約してあげて!」
そういえば先日、
「かわいそう…Kちゃん…」と言うこともあって、ハッとさせられたのだ。
知らないうちに僕がMの口ぐせを話していて、Kは、僕の話し言葉を聞きながら、自然にMの口ぐせを話していたのだ。
Mは、昨年亡くなってしまったのだけど、僕の毎日の中に、口ぐせとなってひょっこり現れることがある。
Kの口から出たMの口ぐせを聞くと、やさしいMが、今でも僕のすぐそばにいるような気がする。

HENRI SALVADOR

暑い暑いと思っていたら、7月23日は『大暑』だそうだ。一年で一番暑い時期なのだから無理もあるまい。
いつも会社に着替えを持って行くのだけど、会社に着く頃にはシャツは既に汗ばんでいる。
青空に高層ビルを見上げながら、一番暑い時期は、フランス人のように1カ月くらいヴァカンスを取れたらいいのに…と思う。
こんな暑い時期、僕は、『アンリ・サルヴァドール』を聴いている。
アンリ・サルヴァドールは、7年前に90歳で亡くなってしまったフランス人のミュージシャン(正確に言うと、フランス領ギアナ出身)。ジャズを学び、ブルースをこなし、42年にボサノヴァに出会い数々のアーティストに影響を与える。
若い頃の歌声も素晴らしいけれども、82歳の頃出されたアルバム『chambre avec vue』は、アンリのフランス語が心地よい素晴らしいアルバムだ。
荒れ果てて、しわがれたような、それでいてやさしく撫でるような、人を包み込むような歌声を聴いていると、歌って、別に完璧な声を出さなくても魅力的なのだと思わされる。
そしてこのアルバムを聴いていると、なぜだか無性に旅に出たくなるのだ。
ブルゴーニュからコート・デュ・ローヌをワインを飲みながら巡り、コートダジュールへ。地中海の小さな町で、ピカソの美術館なんかを見ながら、のんびり美味しいものを食べ歩く…。
海を見ながらのんびり過ごす夏は、どんなに暑くても幸福に違いない。
★J’AI VUhttp://youtu.be/VOQQ98u3D0k

きびなご。

帰ってきて、お酒の飲みはじめに、すぐにつまめるものが食べたい時がある。
そんな時は、冷凍の塩干ししたきびなごをフライパンで炙るのはどうだろうか?
このきびなごは、近所のとても感じのいい酒屋さんに置いてあったもの。
何の気なしに買って帰って冷凍庫に入れておいたのだけど、ある日、日本酒を飲みながら軽くつまみが欲しくなった。
言われた通り冷凍庫から出して”そのまま”、温めたフライパンに食べたい量を入れて、色が変わるまで炙る。(僕の場合は、仕上げにお酒を振る)
それだけ。
絶妙な塩味と、きびなごの微妙な苦味と、時期によっては卵が混ざり、このまま日本酒を片手に何本でも食べ続けていられると思う美味しさなのだ。
僕もある程度年をとって、こんな干しただけの魚がどれほど美味しいものなのかと、改めて噛み締めている。
★日笠山水産http://www.suemaru.jp/sp/
冷凍のものは生のきびなごで、塩干しというものが使いやすい。