Hくん。

3人でお泊まりのお客様には小学3年生の男の子Hくんがいて、その子が天使のように素直でいい子であることに気づいた。

Hくんはとても動物好きで、すぐに僕たちの暮らす母屋にやってきては上がり込み、海や太陽と遊び始めた。

朝ごはんの後は食器を下げにやってきてくれてそのまま部屋に戻ろうとしないでずっと遊んでいる。

その後、お母さんが呼びにきてやっと海に遊び二いくといった感じ。

朝は6時前にはドアの前で待っていて、海の散歩に一緒についてくるのだ。

何よりも、会話をしていると本当に素直で人の話をよく聞くし、犬や猫の強引さやわがままにも怒らずに対応している。

Hくんを見ながら、僕は子どもを育てることができなかったけど、こんな子どもだったら一緒に暮らしたいなあ・・・と思ったのだ。

子どもの成長をそばで見ながら毎日生きてゆくことって楽しいだろうなあ・・・と改めて思ったのだった。

レンタカーとレストランの予約に追われる。

今日お見えになったお客様は宿にタクシーでやって来られた。

女性「予約は子どもと2人でしたが3人になりました」

予約は大人1人子ども1人だったのに、彼女と子どもの横には荷物を持った外国人の男性が立っていた。

慌てて一人追加分のタオルやグラスなどをご用意していると矢継ぎ早に言われた。

「この島はどこか行くのにバスはありますか?近くにレストランはありますか?」

「公共交通機関はほとんどないのでバスはあてになりません。移動は基本的に車ですが、急にレンタカーも借りられなければ今日は行きたい場所へ私がお連れします」

「それではレンタカーを手配してください。それと、晩ご飯のお店もお願いします」

文章にするとキツイ印象のやり取りだけど、お客様は外国人であまり宮古島の下調べをされてこなかったもよう。

運よくレンタカーが手配できて、あとは行きつけのイタリアンを予約することができた。

これから5泊するご家族の滞在に、初日からどうなるんだろう?と少し心配になった。

2部屋、2家族と子どもたち。

僕たちの宿は2室しかないのだけど、その両室をご予約していただいたご家族がKのご家族とは入れ替わりで到着された。

ひとつの部屋はご両親と小学生の娘さん2人、幼児の女の子が1人。もう一つの部屋は、ご両親と幼児の男の子一人。合計で8人の大所帯で朝食付きなので準備に色々と苦労した。

というのは、ここ数組のお客さんの傾向ではじめて分かってきたことなのだけど、大人と子ども(小学生)の食べるものが基本的に違うこと。それから幼児にお出しする食事は用意しないという条件なのだけど、幼児もやはり同じ時間に同じ食卓を囲むことになるということ。

色々考えた挙句、小学生には苦手そうな食材は少なめにしたり、ご飯を減らしたりした。幼児には食べられそうな甘いパンをお出ししたり、ご飯とだし巻き玉子なんかは大人と同じように用意したり。

そうやって工夫して朝ごはんをご用意したことで、ご家族にとても喜んでもらうことができた。

家族揃って夕日をみに行かれたり、満点の星空をみに散歩に出かけたり、思い出に残る夏休みになったようで、僕たちもとてもうれしかったのだ。

Kの家族。その3

Kの家族が帰る日、チェックアウトの前にやっとお父さんお母さんに挨拶することができた。

僕「いつもお世話になっております。ただしです。今後ともどうぞ、よろしくお願いします」

僕は、いつものお礼と、Kがとてもやさしいということをお話しするとご両親もとても喜んでいた。

甥っ子屋姪っ子がいたから僕はあまりご家族の前には出なかったのだけど、精一杯朝食を作ることで喜んでもらえたらと考えていた。

晩ご飯も一緒に食べることはできなかったけど、それはまた次の機会があったらで良いのだ。

少しずつご家族にも認めてもらえるようにとこれからも努めていこうと思う。

Kの家族。その2

初日の朝食は、子どもたちが食べられそうな鶏肉のそぼろ丼にした。
そぼろ丼に温泉卵を乗せ、ピーマンの炒め物を添えて味噌汁を。

Kは朝からご家族と一緒に出たっきり、ビーチ屋景勝地を1日係で案内する予定だった・・・
でもお昼すぎに電話があり、今から帰ってくるとのこと。

結局家族の間でちょっとした言い合いのようなものがあり、みんなでいったん宿に戻ってきた。
その後、一部のご家族は他の宿に移動して2つに分かれて行動するようになった。
12人での旅行は家族とはいえなかなか難しいのかもしれない。

結局その後もご家族で食事に行き、ご両親とはきちんと挨拶できないまま。

Kは家族の揉め事に翻弄されて疲れてしまったよう。

僕は明日の朝ごはんの準備を粛々と進めたのだった。

Kの家族がやってきた。

お盆の時期にかけて、Kのご両親とご兄姉のご家族がやってきた。なんと総勢12名。

初日はご両親と叔父様叔母様は別のホテルをとり、2日目はみんなでうちの客室に泊まるようだ。

僕はこの日に備えて朝食のメニューを考えて、仕込みを済ませた。

僕としてはシーツもきちんと客室のシーツを使いたかったのだけど、Kがその後の予約状況を見て、クリーニングに出したら戻ってこないかもしれないから足りなくなるのは嫌だから客室のシーツでなく僕たちのシーツを使うと言って聞かなかった。

お兄さん、お姉さんはそれぞれ子どもが二人ずついて、大人たちは僕の存在夜間系を知っているけど、子どもたちには伝えていない。

だから僕はあまりご家族の前には出ないようにして客室への出入りもKが一人でこなしている。

まdご両親とはきちんと挨拶ができていないのだけど、少しずつ距離を縮められたらいいかな・・・と思っていることろ。

夏が戻ってきた。

7月はずーっと晴れていて天国のような宮古島だった。

それが、8月1日から台風がやってきて、島中の木々に殴りかかり、葉っぱを吹き飛ばし、花々を掻っ攫っていった。

その後、天気はずっと不安定で、梅雨時のように急な土砂降り担ったり、曇り空ですっきりしない敵が続いていた。

それが、台風がやっと遠かったのか、ようやく海も落ち着いて、平穏な夏がまた戻ってきた。

あれほど荒れていた海も、今は凪いでいて美しい。

海と一緒に行く散歩でも、こんなに美しい海を見られるだけでなんて幸せなんだろうと、毎回思うのだ。

宮古島の夏は、暑いけど天国です。

静かなワンちゃん。

久しぶりにワンちゃんが泊まりに来た。

ボーダーコリーだけど、鳴き声がまったく聞こえないくらい吠えないワンちゃんだった。

海は犬の気配を感じていちいち吠えそうになるのだけど、そのワンちゃんは躾が行き届いているようでとても静かだ。

ご家族はワンちゃんも家族として一緒に暮らしていらっしゃるようで、明日はサップをワンちゃんも一緒にやるとのことだった。

これだけお利口なワンちゃんなら、海での遊びも楽しいだろうなあ。

うちの海はサップなんか乗せたら狂ったように吠えるに違いない。

スーパーの棚。

台風は過ぎ去ったのでスーパーに買い出しに行ってみると、見事に空っぽの棚が並んでいた。

台風の時には10日分以上の買い物を済ませておいた方がいいということは昨年学んだばっかりだったのだけど、やっぱり今回の台風でも同じことを考えさせられた。

これは、台風が去っても今回のように沖縄本島に向かって行った場合、宮古島に物流が入ってこない状態がまだまだ続くからなのだ。

沖縄本島の海が静かに収まって、その後になってようやく物流が食料を中心に始まる。

だからそれまでの間、家族が問題なく食い繋いでいけるような食料を確保しておかなければならないのだ。

幸い僕たちは宿をやっている関係で食糧をいつも多めにストックしてある。よほどの停電がない限りはそれらを食べていけるのだけど、ふと入ったスーパーの棚がやっぱり空っぽだったことに少なからず驚かされた。

沖縄の人たちは台風の時にどうするのか、身をもって知っている。自分の家に準備をしておいて、あるもので食い繋いでいく。こんな時にないものを求める必要はないのだ。

台風の後の庭。

台風は、庭の一番大きく育っていたバナナの木を薙ぎ倒して行った。

海の塩分を多く含んだ雨は植物の葉を茶色に枯らし、強い風は全ての葉っぱを根こそぎ吹き飛ばしていった。

台風の前は、家の庭が天国のように多様な花々が咲き乱れていたのだ。

でも台風が去った後の庭は一体どこから手をつければいいのかわからないくらいに荒れ果てていた。

でもそんな中、急に咲き始めた花もある。

玉すだれという花で、球根になっていて自然に増殖する植物だ。

なぜだか宮古島のこの辺りに自然に生えていて、雨の後に真っ黄色の美しい花を咲かせる。

荒れて何もかもボロボロズタズタになった庭で、急に咲き始めた真っ黄色の美しい花を見て、小さな勇気をもらったような気持ちになったのだ。