桜。

毎年楽しみにしている熊野神社の枝垂れ桜。

「あまりにも素晴らしい季節に日本に帰って来たので、去り難いことこの上なし」
メキシコに駐在している古くからの友人Tが一時帰国していて、週末に二回ほど会えたのだけど、桜の美しさに心奪われFacebookにあげていた。
世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし
在原業平
春風の花を散らすと見る夢のさめても胸のさわぐなりけり
西行
いくつになっても、この季節には、心穏やかではいられないものだ。

娘の就職祝い。

先日、若いゲイの友人のQから、LINEで写真が送られて来た。写真は大学の講堂で正に卒業式が行われている様子。
「お母さん!今日は大学の卒業式です!」
無事に卒業式を迎えて、明日の研修、そして明後日の入社式から社会人として働きはじめる。Qは台湾人で、台湾の大学を出た後、この春日本の大学院を卒業した。
今日はそのお祝いを兼ねて、新宿髙島屋の『鼎泰豐(ディンタイフォン)』で食事をした。
Qは、台北では、鼎泰豐はあまりにも混んでいるため行かないと言う。今日の髙島屋では30分で入れたけど、長い列を見て諦める人も多いかもしれない。
色々なメニューを食べながら、「これは台湾のものと同じです」「これは、ちょっと日本ナイズされています」と説明してくれるのがかわいい。
チマキを食べながら、懐かしそうに美味しいと言って食べる姿を見ていていたら、僕までうれしくなった。
「明日から入社だという夜に、お母さんは何をしていましたか?」と聞くQに、
「全然憶えていないけど、多分、二丁目で飲んでいたと思う…」と遠い目をしながら答えた。
外では桜が咲き乱れ、春の嵐に枝を揺らしている。
明日から始まる社会人生活の不安と期待が入り混じって、Qの胸がドキドキしているのが僕にまで伝わって来るような夜だった。
(もしかして、本当にこの子のお母さんなのかもしれない…)

SUZU BAR

僕の弟的存在のFが、新宿のゴールデン街に『SUZU BAR』をオープンさせた。
名前は彼の実家が経営しているとんかつ屋『すずや』から来ている。
彼のお婆さんは、華さんと言って、歌舞伎町の名付け親の人。今やとんかつ茶漬けで有名な『すずや』は今年で60年。昔から様々なアーティストや作家が来ていたらしい。
芹澤先生の鈴の絵をモチーフに、僕がロゴとシンボルを作らせてもらったのだけど、その昔の面影や日本の民芸的な温かさをたいせつにして、『SUZU BAR』はオープンした。
オープニングパーティーには様々なセクシャリティを超えて、たくさんの人々が駆けつけて祝っていた。
★SUZU BAR 新宿区歌舞伎町1-1-10 G1

昔、好きだった人。

昨夜遅く飲んでいたらLINEが入った。
「今、銀座にいるんだけど、日帰り出張のつもりが帰れなくなり、おまけに東京のホテル、年度末のせいかどこも空いてないんだ…」
それは僕が大学生の頃、燃えるような恋をして、ちょっとつきあいかけたHさんだった。今は大阪に帰っていて、時々東京には出張で来ているのだ。その後、外苑前駅で待ち合わせ、そのまま弟的存在Fのやっている『BAR緑』に。
Hさんは、誰よりもホモフォビアが強く、昔は、「ゲイである自分は一生幸せにはなれない」「いつかは女性と結婚する」などと、呪文のように僕に繰り返していた。
僕はそんな言葉を聞くたびに、「僕と一緒に幸せになろう」「本当の自分を隠して女性と結婚して生きるなんて、その女性のことも幸せには出来ないと思う」などと答えていた。
Hさんは結局、その後も女性とは結婚はせず、一人の人とつきあいを続けていたのだけど、いつ会っても相変わらず根強いホモフォビアに、僕もなんとかならないかな…と思っていた。
そんな思いを感づいたのか、Fは、自分がFtMであることや、それゆえに苦労して来たこと。手術をして胸を取ったこと。彼女とのことなど、隠すことなく話し続けてくれた。
恐らく、HさんはFtMなどと言う言葉も、トランスジェンダーなどと言う言葉も始めて聞いたのだろう。呆気に取られてFの話に聞き入っていた。
店を出てHさんは、「彼は凄いね。そのまんまだね。まるでパワースポットみたい…」とつぶやいた。
昔、燃えるような恋をして、あれほどセックスしたいと思っていたのに、20年ほど経った今は、Hさんのことをまるで親戚のおじさんを見ているような目で見ている自分がいるのも不思議だった。
時の流れと、僕たちの愛情なのか友情なのかわからない関係を、愛おしく感じた夜だった。

僕の失敗。

僕の恋人のKは、旅行中も毎日僕がブログを書いていることを知っているけど、アドレスは知らない。Kがいつも言うことは、「どうせ自分はかっこつけてて、僕の笑い話ばかり書いているんだろうけど、Tさんの失敗談も書いてあげて!」。そんなことを思い出したので少し書いてみようと思う。
<その1>
Kとふたりで熊本城に行った時に、天守閣を見学していた。
熊本城には2つの天守閣があって、昔の着物を着た人たちが城内を案内している。メインである『大天守閣』を見学した後、サブ的な『小天守閣』を見ようと思い、着物を着た案内人に道順を尋ねたのだ。
「あの~、”こてんしゅかく”はどっちですか?」
 
すると案内人は、「”しょうてんしゅかく”はあちらの道をまっすぐです」ときっぱりと答えた。
Kは吹き出して、今でも僕のことを時々”こてんしゅかく”と呼んでいる。
<その2>
先日3/22にこのブログに上げた、小倉にある和食の名店『佐藤』に行った時のこと。
九州一と評判の店だったので、玄関を開ける時に少し緊張していた。ところが、開けるとすぐに目の前に広いコの字型のカウンターが広がり、男性の店員さんがこちらを見て挨拶するやいなや、「こちらです!」と左側の小さな部屋を指すので、そのままずんずん小さな茶室のような部屋まで上がって座ろうとした・・・。するとKの叫び声が。
「Tさん!靴!靴脱がないといけないみたい!」
店員さんも驚き、『佐藤』の大将もその声を聞きつけて、ものすごい形相で睨みながら、「お靴は脱いでおあがりください」(ピシャリ!)
たいへん申し訳なかったと思うのだけど、床と靴を脱いで上がるところの段差が3センチくらいしかないように低く、「靴は脱いでおあがりください」というマークが膝下くらいの位置にあったのでわからなかったのだ。これには、もう、何度も謝りながら、それでもなんだか笑うしかなく、Kはお腹を抱えて笑いっぱなしだった。
その後、トイレに立った時も、トイレ用に用意されていた下駄を穿いて外に出て、また段差のない部屋まで下駄を穿いたまま戻って来ていて、帰る時に気がついて、またしても店員さんとKは大笑いだった。
※小倉の『佐藤』に行かれる時は、必ず入り口で靴を脱いでお上がりください。^^;
★佐藤http://tabelog.com/fukuoka/A4004/A400401/40000240/

もしもの時に。

先日、友人であり16年間僕の髪を切ってくれていた美容師さんMが、パチンコをしている最中に倒れ救急車で運ばれてそのまま心不全で亡くなった。このブログでも先週、彼のことを僕なりにしのび、記した。
知らされたのは僕が次の予約を取る時に連絡がつかなかったため、美容室にかけたからなのだけど(いつもはMの携帯でやりとりしていた)、僕自身受け入れることが出来ず、少し時間がかかってしまった。
周りの友人には僕が連絡をしたのだけど、みなMの本名も知らないしご家族とも面識がないため、直接連絡をいただくことが叶わなかったのだ。葬儀は知らぬ間に終わっていて、未だに線香をあげることもお花を供えることもできぬまま・・・。
Mには、沖縄出身の若い恋人であり同居人Aがいた。Mは沼津の出身だけど、お兄さんとは喧嘩をしていたようだし他の血縁のご家族とも疎遠で、もちろんMはカミングアウトなどしておらず、私生活はご家族には知らされていなかったようだ。
同居人であるAが最初に知らされたのだけど、Aは美容室といくつか残っていたアドレスとご家族に連絡を取るのが精一杯で、ご家族が静岡からやってきて病院や警察の手続きを済ませ、遺体も持ち去り、結局葬儀にさえAは出ることも出来ぬまま、賃貸マンションも契約を終わらせる手続きをさせられ放り出された。
これは、MとAの話だけれども、僕たちにとっても人ごとではないだろう。
たとえば僕が倒れて、集中治療室に入るようなことになったらKはどうするだろうか・・・。
『LINEの返信が来ないなあ・・・などと思い、その日はKはおおらかなので深く考えずに寝てしまい、次の日も来ないとなると、きっとBridgeにでも電話をかけるのではないか?(Bridgeに聞けば、たいてい僕の居場所がわかる)。BridgeのMは僕に連絡をLINEでよこすけど返信はなく、手当り次第に僕の周りに連絡をして、やっと僕の妹的存在のGに連絡が入り、Gは会社が一緒なので、慌てて会社の総務課に連絡をよこして事の次第を知る』
それを知ったところで、集中治療室のそばにいけたり、手術などの大切な決断を下すことの出来るのは、血のつながった家族だけだ。僕の血縁に紹介していないKは、病室に入ることも叶わないかもしれない。
出来ることならこんなことにならないように、きちんと緊急時の連絡がすぐにつくようにしておきたいと思う。それと、そういうカードを配っているNPOがあったけど、小さな紙に、『緊急時は、この人に連絡をしてください』と連絡先を書いておき、財布の中にでも忍ばせておくべきだろう。
『結婚』という法律で守られていない我々は、自分たちのことは自分たちで守るしかないのだ。

アナと雪の女王

ディズニーのアニメーションが始まると、観るのが待ち遠しくなる。
子どもの頃から慣れ親しんだ『物語』の世界に、どっぷりと浸ることができるからだ。
『アナと雪の女王』は、王国に住む2人姉妹のお姫様の物語。
アンデルセンの『雪の女王』をもとに作られたというが、話自体は大きく変更されている。全編を通してミュージカルで構成されたアニメーションは、観ていてテンポがよく飽きさせない。特筆すべきは昨年全米で最も売れた主題曲を始め素晴らしい音楽だろう。3Dで表現される雪の世界は美しく、出てくるキャラクターもよく練られている。
子ども向けの映画だと馬鹿にする人も多いかもしれないけど、ディズニーのアニメーションは、子どものためだけに作られたものではない。物語の中には、人間の奥深くに根差したテーマがしっかりと表現されているからだ。ミュージカル好きな僕はすっかり物語に魅せられて、何度も涙を流してしまった。
ディズニーのアニメーションを馬鹿にしている人ほど、ぜひ一度観て欲しいと思う秀作。
タイタニック、アバターに次ぐ興行収入を獲得している。
★アナと雪の女王http://ugc.disney.co.jp/blog/movie/category/anayuki

赤間茶屋 あ三五。

芝海老の天ぷら

春野菜の天ぷら

さらしなそば

福岡で、素晴らしい蕎麦屋を発見した。『赤間茶屋 あ三五(あさご)』は、蕎麦気狂いの大将がいる店。
そば懐石もあるらしいけど、昼だったので、お酒と適当につまみを頼むと、他の接客をしていた大将が来て、「適当につまみを出すから、ゆっくり飲んで!」と言う。
昔ながらの蕎麦屋さんが、現代にあったらこんな蕎麦屋さんになるのかもしれない。
『更科は、とても難しいんだよ。十割は誰が作っても簡単』
『うちのそばがきは最後に食べないと、味が口にまとわりついて後の蕎麦の香りがわからなくなる』
『芝海老の天ぷらは、タレのついていないもの。半分ついたもの。全部浸したものと楽しんで』
23歳から42年間、ずっと蕎麦一筋で生きてきた大将は蕎麦気狂いだし、明らかに変人だと思う。でも、それだけの食に対する情熱があるからこそ、この素晴らしい蕎麦屋が存在しているのだ。
ここへ食事に来ると、蕎麦だけでなく日本の食全般の勉強になるに違いない。
また、来月もこの蕎麦屋へ足を運びたいと思わせてくれる、東京にも長野にもない、本当に素晴らしい蕎麦屋だ。
★赤間茶屋あ三五http://s.tabelog.com/fukuoka/A4001/A400104/40003973/

きはる。

ゴマ鯖

牡蠣のコンフィ

焼き鯖チャーハン

何十回か訪れている福岡で、好きな居酒屋をあげるとすると、『さきと』『きはる』『旦過』。それぞれに魅力あるお店だけど、『きはる』は、五島列島の鯖を様々な料理に展開させている驚きの店。
僕が必ず頼むものは、
1.ゴマ鯖
2.牡蠣のコンフィ
3.焼き鯖チャーハン
炙り穴子もコリコリしているし、焼き鯖コロッケも変わっていて美味しい。玉子焼きも黄身が濃厚に感じられる。
しめの焼き鯖チャーハンを頼む頃には、ああ、また来たいなあ…と思っているだろう。2人で8000円くらいで飲んで食べられるところも素晴らしい。
中の男子店員さんたちは寡黙で、冷たく見えるかもしれないけど、作ることが専門で潔い。予約は必ずした方がよい(滞在時間の間、10組以上の当日客が覗いては断られて帰って行った)
★きはるhttp://s.tabelog.com/fukuoka/A4001/A400103/40004429/

佐藤。

天然のフグ

白子の茶碗蒸し

鯛の潮汁

食通の間では、九州一の和食の店と言われている小倉にある『佐藤』へ。
昼だったのだけど、春を感じさせる素晴らしい料理だった。
大将は小太りで(恐らくオネエサン!)、すべてに細かく気配りを行き届かせていて、ひそひそ声もすべて聞き取っている感じ…笑
つくし、春蘭、ワラビ、こごみ、タケノコ、ウド、ホワイトアスパラガス…早春の山菜を35種類集め、名残りのフグを存分に味わう料理の品々。フグは、秋分から春分までと言われる魚だからだ。
フグの白子を焼いて、茶碗蒸しに入れた一品はこちらでたまに出てくるけど、申し分のない一品。
鯛のうしお汁は、塩気がきつくなく、鯛の身自体もほろほろとして素晴らしい。
タケノコご飯は、フグの出汁で炊いて、しみじみと甘みが感じられる。しめの葛切りまで料理はどれも申し分ない。
そこをあえて一言言わせていただくと、大将の神経が行き届き過ぎているせいか、不思議な緊張感があり、お客さんがなかなか気が緩まない。
これは、今や日本一と言われている京都の『未在』でも感じたことだけど、料理がどんなに素晴らしくても、あまりにも緊張する店では、全体としてその店で味わう体験も、今ひとつの感じがする。
僕の考える一流の店は、料理は一流でありながら、お客さんに緊張感を与えないような心配りの出来る店だ。
本当にもう一度訪れたいと思える店は、そんな温かさを感じさせる店だと思う。
★佐藤http://s.tabelog.com/fukuoka/A4004/A400401/40000240/