フェアウェル

オークワフィナは「クレイジー・リッチ」でぶっ飛んだ友達役をやって印象に残っていた女優。この映画によってアジア系で初めて、ゴールデングローブ賞の主演女優賞を獲得した。

制作は、このところヒットを飛ばしまくっているスタジオ「A24」。わずか4館の上映から始まり、それが全米トップ10入りするまでに拡大したという話題作。

オークワフィナ演じるビリーは、NYで暮らす中国系移民。親戚や祖母は中国で暮らしており、大好きだった祖母に癌が見つかり、余命わずかだという宣告を祖母本人には知らせずに、家族が祖母にとって幸せな時間を過ごさせてあげようと画策する。

この映画の興味深い点は、全て白昼の元にさらけ出して、本人に余命を伝えることを良しとする欧米の考え方と、本人には知らせずに、気遣いながら楽しい時間を過ごさせてあげようとする、どちらかというと家族の思いを優先するアジア的な考え方を対比させながら、観ている我々に考えさせるところ。

笑いながら、じっくりと考えさせられた素晴らしい作品だった。

⭐️フェアウェルhttp://farewell-movie.com

TENET

「ダークナイト」「インセプション」「ダンケルク」と、大作を次々と世に送り出して来たクリストファー・ノーラン監督の「TENET」は、頭の中で時間軸を逆行して考えながら見る不思議な映画だった。

冷戦下、第三次世界大戦の危機が迫り、核兵器により地球が滅亡するという最悪の事態を回避するため、命がけで任務に取り組む主人公。

物理学を応用し、タイムトラベラーとなり次空を駆け抜けながら進む物語は、頭の中がこんがらがる感じがするけど、見ている時は十分に楽しめるエンタテインメント作品。

見終わって、わからなかった部分が幾つもあるのだけど、もう一度見ようとは思えないのは、見ている時に手に汗握り、見終わったらクタクタに疲れていたから。

でも、時空を超えた計算が負に落ちない方、探求好きの方は、何度でも繰り返し見ることをお勧めできる。

⭐️TENEThttps://wwws.warnerbros.co.jp/tenetmovie/index.html

行き止まりの世界に生まれて


アメリカでもっとも失業率が高く惨めな町と言われているイリノイ州のロックフォード。そこで暮らす3人の少年たちの成長を追ったドキュメンタリー映画「行き止まりの町で」は、アカデミー長編ドキュメンタリー賞とエミー賞をノミネートされている。

この映画は、淡々としたロックフォードの若者の生活を追いつつも、アメリカという巨大な国が抱える問題をまざまざと見せつけている。

人種の間にある隔たり、アジア人の生きづらさ、白人であっても生まれた境遇、父親の暴力の影響など、根底にあるのは格差社会の問題だ。

丁寧に12年間、3人の少年の成長を追った素晴らしいドキュメントフィルム。

⭐️行き止まりの世界に生まれてhttp://www.bitters.co.jp/ikidomari/

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー

見ている時はKと二人大笑いして、見終わった後には胸がスカッとした。

映画「ブックスマート」は、今時のアメリカの高校生の卒業前夜のたった一日を描いた映画なのだけど、絶妙なキャスティングとよく考え抜かれたシナリオに唸らされた。

生徒会長のモリーと親友のエイミーは、勉強一筋で高校生活を生きてきた。やっとのことでイエール大学という有名大学入学が決まり、卒業式の前日に、勉強もせずにパーティー三昧だった周りの同級生を見回すと、勉強一筋だった自分たちには、やり残したことが膨大にあるような気になってしまう。

多様な人種やセクシュアリティにも配慮されており、現代高校生の生き様がとてもうまく表現されている。細部にまで作り込まれている素晴らしい脚本とキャスティング。

⭐️ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビューhttps://longride.jp/booksmart/

幸せへのまわり道

アメリカで、1968年から2001年にかけて放送された子ども向け番組「Mister Rogers’ Neighborhood」で知られる司会者のフレッド・ロジャースを、トム・ハンクスが演じて久しぶりにアカデミー賞にノミネートされた映画。と言うことだけ知っていて映画館に見に行ったのだけど、この映画、今年もっとも心に残る映画になった。

事実を元に脚本が作られているようで、雑誌のエスクワイアの記者でもあるロイドが、編集長の命令でフレッド・ロジャースの紹介文を頼まれる。渋々引き受けたその仕事によって、彼自身に思いもよらぬ変化をもたらす。

人生の中で、もっとも難しいことは「許すこと」ではないだろうか。

複雑な生い立ちを持つ主人公の身の上に、自分の身の上を重ねながら見て、胸が締め付けられる思いだった。何年後かに見返したいと思うとてつもなく美しい映画。

🌟幸せへのまわり道https://www.misterrogers.jp

2分の1の魔法

予告篇を見てからずっと楽しみにしていたディズニー映画『2分の1の魔法』は、予想を裏切るストーリー展開だった。

このところ、映画の予告編って、かなりsトーリーがわかってしまうくらい見せているのが残念に思うのだけど、この映画は思っていたものとちょっと違って、いい意味で裏切られた。

妖精の世界で暮らす兄弟が、亡くなったお父さんに会うために旅に出ると言う話なのだけど、妖精の世界ではマジックはもうほとんど使われなくなってしまっていて、人々はもうマジックなど信じずに暮らしている。

ストーリー展開は単調なのだけど、様々なキャラクターがとてもおもしろい。兄弟の声優にはクリス・プラットとトム・ホランドと言うのもみていて臨場感が増す。そして、クライマックスでは思わず涙が頬をつたってしまった。

軽く楽しいデートにはもってこいの映画。

⭐️2分の1の魔法https://www.disney.co.jp/movie/onehalf-magic.html

ロープ

なんと、1948年に作られたアルフレッド・ヒッチコックによるゲイ映画「ロープ」を観た。

この映画は、「レオポルドとローブ事件」として実際に1024年に起こった殺人事件を元に作られており、殺人犯の二人の男性はユダヤ人の裕福な家庭のゲイだった。ニーチェの超人思想の信奉者であり、隣人の遠い親戚にあたる16歳の少年を殺害し終身刑になった。

実際には、舞台が先にあったものを映画化、1948年当時、ゲイなどというものを公に出せない世の中において、ヒッチコックがギリギリのところで緊張感を表現している。

殺害の動機が、ニーチェの超人思想であることや、彼らが人を殺しても全然平気で入られたことなど、奥に隠された心理をとても知りたくなる不思議な映画。

⭐️ロープhttps://eiga.com/movie/50961/

風の谷のナウシカ


宮崎駿監督の作品を、TOHOシネマズで上映していて、宮崎駿監督作品の中で僕の一番好きな作品である「風の谷のナウシカ」をKと一緒に見に行った。

「風の谷のナウシカ」をご覧になっていない方はいないと思うので、ここではストーリーは省くけど、この映画を見た時に僕はまだ16歳だったようだ。

それから36年経ったあとで見る「風の谷のナウシカ」は、がっかりするのではないかと思っていたのだけど、あの頃と同じように心が動き、後半はずっと泣いていた。

今の時代にも色あせない底に流れるテーマに唸らされ、ナウシカのありようがキラキラと輝いて見えた。

ちなみに、今回次の日に「千と千尋の神隠し」を見たのだけど、見ている時は楽しめたのだけど、見終わった後に「風の谷のナウシカ」のようには、心に強く残るものがなかった。また、数年前に見た「風立ちぬ」などには全く心が動かなかった。同じ監督の作品でも、感じ方は全然違うものだ。

同じ映画でも時間を経て、中身はほとんど忘れてしまっているし、自分も成長して変わったのではないかと思いながら見ることの面白さを改めて感じさせられた。

ぶあいそうな手紙

何も前知識もなく観に行った映画「ぶあいそうな手紙」は、ほっこりするようなかわいいブラジルの映画だった。

78歳のエルネストは妻を亡くした後、一人でひっそりと大きな家に暮らしている。年々視力が落ちて来ていて、今ではぼんやりとした輪郭しか見えない毎日。隣家のおじいさんが、毎朝気にかけてくれている。

息子は都市に住んでいて、父親のことを心配しながら、古い家を売っぱらって一緒に住もうとしている。

そんなある日、散歩から帰って来たおじいさんは、たくさんの犬を散歩させていた若い娘に出会う。おじいさんの元には昔の友人から手紙が送られて来ていて、その手紙を若い女の子に読んでもらうことから、人生が思いがけない方向に転がり始める。

カエターノ・ヴェローゾの艶やかな歌声と、美しいブラジルの詩が重なる。目の見えない78歳のおじいさんと23歳の女の子は、年齢の差を超えて、人生を膨らませていく。

ストーリーの行方のわからない展開の、とてもよくできた脚本。

⭐️ぶあいそうな手紙http://www.moviola.jp/buaiso/

在りし日の歌

久しぶりに、ある意味「完璧」と思えるような映画を見た。

中国の映画『在りし日の歌』は、3時間以上ある長尺であるにもかかわらず、映画の中に入り込み、中国が経済発展を遂げていく激動の80年代から現代までの30年間くらいの年月を彼らとともに過ごしたような気がする。

見終わった後、あの夫婦に会って、しっかりと抱きしめたいと思った。

ヤオジュンとリーユンという夫婦、そして一人息子のシンシン。そして彼らの周りで暮らす友人夫婦たち。80年代の中国では多くの人々がまだ貧しく、工場でのきつい労働を強いられる中、「一人っ子政策」が国から強制的に発動されている。

貧しいけれど、友人夫婦とともに肩を寄せ助け合いながら過ごしている毎日、そんなある日、突然事件が起きて、夫婦の生活は地獄に叩き落される・・・。

絶望の淵にたどり着いた時に、夫婦は言葉少なく、息を殺しながら毎日を重ねていく。大切なものをもう二度と失わないように。

辛抱強くこの映画を見続けたならば、物語の後半に光を見るだろう。

それは、人間の信じられないようなやさしさと強さであり、美しさだ。

⭐️在りし日の歌http://www.bitters.co.jp/arishihi/