愛、アムール

「愛」をテーマに扱った映画は、あまたあるけれど、
ここにまた、新たに「愛」を描いた恐ろしい作品が生まれた。
今日は、友人Mに誘われて、アカデミー作品賞、監督賞、
主演女優賞、脚本賞、外国語映画賞などにノミネートされている
ミヒャエル・ハネケ監督による、「愛、アムール」を試写会で観た。
80歳を超えた音楽家の夫婦が暮らすパリの瀟酒なアパルトマン。
人生の幸福も苦渋もともに味わい、乗り越えて来たふたりは、
老齢にさしかかり、目の前にまた新たな困難が立ちはだかる。
ミヒャエル・ハネケの作品は、
はっきりとした社会性のあるテーマを持ち、
観た後にとても重たい何かを残す。
観た人はそれを容易に流すことができず、
後々まで映画のことを頭の中で思いめぐらす。
感傷をいっさい省いたハネケの演出は、冷徹であるけれど見事だ。
ジョルジュ役のジャン=ルイ・トランティニャンの献身的な愛を、
息を呑みながらひたすら見守ることしか出来なかった。
年老いたアンヌ役のエマニュエル・リヴァの、
こちらをじっと覗き込むような瞳に、何度も目頭が熱くなった。
なぜなら彼らは、
僕の母であり、僕の恋人であり、将来の僕であったからだ。
カンヌ映画祭 パルムドール、ゴールデン・グローブ賞 外国語映画賞
★「愛、アムール http://ai-movie.jp/」3月9日(土)〜全国ロードショー

ライフ・オブ・パイ

この映画を観た後に、長い小説を堪能したような読後感に包まれて、呆然としてしばらく席を立てなかった。
アン・リーは、イギリスのブッカー賞も受賞している小説「パイの物語」を、3Dという手法を使うことによって、見事な映像作品を作り出した。
このところ、3Dは単なる「技術」という枠を超えて、映画の世界に大きな可能性を拓いて来ている。この映画も、3Dや高度なCG技術があったからこそ、実現出来た作品だ。それ故に、この映画は、DVDなどで観てはいけない。必ず劇場で大画面の3Dで観ないと価値がないだろう。あの体験を、2100円で味わえるのなら、なんて安いことだろうか。
「虎と漂流した227日」という副題にもあるように、少年と虎という不思議な組み合わせが、大海原を漂流する突拍子も無い話は、「少年の成長を描いた物語」であり、「人間と神の物語」でもある。
何よりもこの作品で心地よいのは、主題をハッキリと伝えるのではなく、観る人それぞれにゆだねているところだ。
生きること、宗教、人生、運命、神、動物、野生、神秘、宇宙・・・この映画を体験して、あなたは何を思い、何を考えるだろうか。

最強のふたり

水蛸やツブ貝

一月なので、お餅入りのお澄まし

鮑の磯焼き

今日は、Kも早く起きたので、伊勢丹の、「分けとく山http://s.tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13004310/」でランチ。大将の今村さんとは、このお店が開店してからのお付き合い。定番の、鮑の磯焼きに、始めて食べたKも大喜び。
その後、武蔵野館で、映画「最強のふたりhttp://www.gaga.co.jp/sp/cinemas/detail/saikyo-2」を鑑賞。東京国際映画祭でグランプリを取ったフランス映画で、未だにロングランが続いている。実は、僕がこの映画を観るのは二回目で、Kがどう思うのかな?と思ってこの映画に。不完全な二人が、寄り添うことによって、お互いの日々が鮮やかに色づき始めるという物語は、実話であるが故に、一層温かな気持ちになる。
映画を二人で観終わった後に、お互いにどんなふうに感じたか、そんなたわいもない話が出来ることって、それだけで幸せなことだと感じた…
夜は、家でしゃぶしゃぶを。牛肉のしゃぶしゃぶだったので、昆布出汁にお酒と塩を少し入れて、ポン酢と胡麻だれでいただいた。水菜と芹をたっぷりと。とにかく肉が好きなようで、びっくりするくらい食べてくれる。二人で軽く四人分食べたみたい…
その後、赤ワインを飲みながら、話をしているうちに、幸福な眠りに。

恋のロンドン狂騒曲

シートに埋もれて、ウディ・アレンの映画が始まる時の、あの幸福感はなんだろう…あの幸福感を味わうために、映画館に行くと言っても過言ではない。
今回は冒頭に、「人生は剣幕ばかりの空騒ぎ 意味など何ひとつない」というシェイクスピアの言葉を引用しているように、アンソニー・ホプキンス、ナオミ・ワッツ、アントニオ・バンデラスなど、豪華なキャストが繰り広げるそれぞれのドタバタ人生は、滑稽なようでありながら、知らないうちに誰かに肩入れしたり、罪悪感を共有したりしてしまう・・・。
77歳のウディ・アレンならではの、人生に対する深い洞察が込められた本作は、観客の人生観を試すかのような不思議な味わいを持って迫って来る。
先日、短い間公開されていたドキュメンタリー映画『 映画と恋とウディ・アレン』も合わせて観ると、作品それぞれに生きることや人生をテーマに描いて来たことが分かり、77歳で今も創作意欲溢れるウディ・アレンに敬意を表したくなるに違いない。