ライフ・オブ・パイ

この映画を観た後に、長い小説を堪能したような読後感に包まれて、呆然としてしばらく席を立てなかった。
アン・リーは、イギリスのブッカー賞も受賞している小説「パイの物語」を、3Dという手法を使うことによって、見事な映像作品を作り出した。
このところ、3Dは単なる「技術」という枠を超えて、映画の世界に大きな可能性を拓いて来ている。この映画も、3Dや高度なCG技術があったからこそ、実現出来た作品だ。それ故に、この映画は、DVDなどで観てはいけない。必ず劇場で大画面の3Dで観ないと価値がないだろう。あの体験を、2100円で味わえるのなら、なんて安いことだろうか。
「虎と漂流した227日」という副題にもあるように、少年と虎という不思議な組み合わせが、大海原を漂流する突拍子も無い話は、「少年の成長を描いた物語」であり、「人間と神の物語」でもある。
何よりもこの作品で心地よいのは、主題をハッキリと伝えるのではなく、観る人それぞれにゆだねているところだ。
生きること、宗教、人生、運命、神、動物、野生、神秘、宇宙・・・この映画を体験して、あなたは何を思い、何を考えるだろうか。

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