ある日、母から電話があった。「一度宮古島に行こうと思うの…どんな生活なのか見ておこうと思って…」
「お母さん、まだまだリフォームしてる最中だから、もう少し落ち着いてから遊びに来て」
するとまた数日後に、「今見てみたら宮古島のツアーがあったから3月末に行こうかしら。とにかく見たら安心するから。2泊3日1人7万円で安いのよ」
「それならこっちで飛行機とホテル手配するからちょっと待ってて」
千葉市に住む母と父は、80歳と84歳。あちこち旅行に行っているけど飛行機は久しぶりのようだ。
千葉から羽田空港に出るのはちょっと時間もかかるので、成田空港からのジェットスターを予約した。
予約をしておきながら、両親をLCCに乗せるなんて大丈夫だろうか…と思い、先日東京に行った際に千葉に行き、成田空港の第3ターミナルへの行き方やチェックインの仕方を教えたのだ。
両親ともガラケーでメールも使わないのでジェットスターのチケット情報やバーコードの入ったメールは送れない。
それらをコンビニでプリントアウトして、成田空港の地図をプリントアウトして、第2ターミナルから第3ターミナルは650m離れているからバスに乗るか歩くこと、着いたらジェットスターの人に声をかけてそのプリントを見せてチェックインをしてもらうことを念入りに言い聞かす。
ジェットスターの搭乗時間は朝7時半頃で、朝イチの電車に乗った父と母は、空港に着いたら電話すると言っていたのに6時過ぎても電話がないので僕からの電話は繋がらずしばらくして母からかかってきた。
「お父さんが機械を通るところで引っかかっちゃって、結局コルセットだったみたいだけど丸裸みたいにされちゃったの…」そう言いながら母は半分裸の父を見て笑っていた。
「教えたように、フードコートでちゃんと食事したの?」
「いや、急いで中に入った方がいいって言われて今入っちゃったのよ…中に何かあるでしょう?」
「第3ターミナルは中に入ったら何にもないよ…まだまだ時間あるのに…」
「いいわよ。何か適当に買って食べるから」
下地島空港に迎えに行き出口で待っていると、やがて2人の老人が姿を表した。すぐにこちらにやってくるかと思ったらドアの向こうのベンチに座って服を脱いで着替えはじめた。千葉は寒かったけど宮古島の暖かさに驚いたみたい。
久しぶりに晴れた宮古島で、まずは「古謝そば屋」に連れて行きソーキそばや宮古そばを食べる。初めて食べる沖縄そばを口に運びながら母は、「お肉もとっても美味しいし、スープが美味しいわね!」とても喜んでいる。
「本当に美味しいわ。このうどん」
「お母さん、これは沖縄そばで、うどんもじゃないよ」
「あら、これ、そば粉じゃないでしょう?どう見てもうどんじゃない」
その後、せっかく晴れているからと「与那覇前浜」に連れて行き、美しい白砂のビーチと青い海を眺める。
日差しが強く、サングラスを忘れた事を後悔する母。
家に連れてきて、久しぶりに海やKに会うと喜んで興奮した海がひっきりなしに母にじゃれついた。
リフォーム中の室内を見ながら大工さんに挨拶をして、ゆっくりとリビングに座って寛ぎながら、母はホッとしたようで、「本当にいいおうちね…ここで何にもしないでのんびりと暮らせたらいいわね…」とKに話しかけた。
「今は本当に僕たち何にもしていないんですよ…」と笑っているK。
ずっと曇りや雨の予報だったのに、母の来島に合わせて奇跡的に神様が太陽を呼び出してくれたような、天気に恵まれた美しい一日だった。
⭐️古謝そば屋
0980-72-8304
沖縄県宮古島市平良字下里1517-1
https://tabelog.com/okinawa/A4705/A470503/47000106/