あたみ桜。

前回、あたみ桜のことは書いたけど、この時期、ほぼ満開になっているというので、ドッグカフェ「RICE BALL」に行った後、糸川沿いを散歩した。

おやつをくれないかとKを見つめる海

あたみ桜はソメイヨシノのように2週間で咲いて散るのではなく、1ヶ月くらい順番に蕾が開いてゆくようだ。

それと、花色のピンクが濃いせいか、ソメイヨシノよりも少し八重桜に近く見えて重厚な印象の桜だ。

コロナで観光客が少ないため賑わいはないが、どこよりも早い春が熱海には咲いている。

熱海城。

熱海には城があって、熱海の景色には欠かせない存在となっている。

海を連れて行ける場所を探していたら、熱海城が犬を連れて入れるとのことで初めて行ってみた。

結果的には城の中には入らなかったのだけど、絶景が楽しめることがわかった。


熱海で絶景と行ったら、この熱海城が良いと思う。

犬の夢。

海は寝ている時に、時々うなされてうめき声や叫び声をあげることがある。

その度に僕は、生まれてからまだ3ヶ月半くらいの海が、「一体どんな夢を見ているのだろう?」と知りたいと思う。

お父さんお母さんや兄弟犬たちと戯れている夢か。

それとも、車に乗って奈良から我が家へやって来た時のように、知らない人たちに連れ去られる怖い夢だろうか?

犬も、人間と同じように夢を見ているのだろうと思う。

犬は、人間と同じ生命なのだ。

悪夢。

夜中に酷い夢を見た。

町中を逃げ回って、最後には悪者に捕まり、首を絞められ身体にのしかかられ、

「もう殺される・・・」そう思って諦めかけた時にびっくりして目が覚めた。

僕の体の左半分くらいに、Kの体が乗っかっていたのだ。

僕は、「もう・・・なんだよ」と思い、身体をなんとか動かしてまた眠りに落ちた。

朝方Kが起きた時にその話をすると、Kはとても楽しそうに笑っていた。

帰ってくるKを。

僕はテレワークなので、毎朝三島の病院に出勤していくKを見送っている。

海を抱きながら階段を降りていくKに手を振る。海はいつも、Kが出かける時に寂しそうに鳴く。

夜になってKが三島から帰ってくる時間になると、僕は料理の手を時々休めて、窓の外を見つめる。

三島から我が家は40分くらいだろうか。暗闇の中、走ってくる車の音が聞こえないかと何度も耳を澄ませる。

ちょうど、Kが車で帰ってくるのを見つけたり、車を置いて歩いてくるKを見つけることもある。

窓を開けて海を抱っこしながら海に話しかける。「Kちゃんが帰って来たよ」海は興奮して喜んでいるのがわかる。

Kが下から僕たちに気づいて何か話しかける。

家には灯がともり、暖房もついている。

僕は、今日もKが無事に帰れたことを感謝する。

チャンピオン直子。

スタンダードプードルは、日本に1,000頭くらいしか登録がないみたいで、海を探す時に静岡近郊だけでなく幅広くブリーダーさんを探した。

ネットでブリーダーのところにいる子犬を見ていると、海のページに「両親ともチャンピオン直子です」と書いてあった。

僕はKに、「チャンピオンなおこ」って、なおこっていうお母さんなのかね?と言っていたのだけど、また別のブリーダーの子犬を見ると、「母親は、チャンピオン直子です」と書いてあった。僕は、「なおこって犬は沢山子ども産んでるのかね?」などと話していたのだけど、実はこれは、「チャンピオンちょくし」と読み、親がチャンピオン犬と言うことを後から知って大笑いした。

不思議なことに、お母さんは白色でお父さんはシルバー。海はほぼ真っ黒で生まれてきたのだけど、顔の周りからどんどんシルバーになってきているのがわかる。

左がお母さん右がお父さん

海はいわゆる、スタンダードプードルが持つ手足が長く胴体の長さと同じくらいで正方形に近いと言われているスタンダードな形や気質を兼ね備えているのだろう。

来た時は、4キロだったのに、1ヶ月半で10キロを超えた。これからぐんぐん大きくなってゆくのを楽しみにしている。

犬を育てる難しさ。

海が来て、1ヶ月と2週間くらいが過ぎた。

ソファーをかじったり掘ったりするので布をかけてしのいでいる

子犬の頃のしつけが大切だとわかっていても、犬は人間のように言葉がわかるわけではなく、コミュニケーションが違うから思ったようには動かないし言うことを聞いてくれない。

普段はおとなしい海も、散歩に行けないもどかしさと溢れるエネルギーを発散させることができない不満から、時々手が追えないくらい走り回ったり、甘噛みがひどい時がある。

そんな時に何度もやめさせようとしたのだけど、海のように強気な犬は逆に抑え込まれると反発するようなところもあり、難しさを感じ落ち込むこともあった。子犬相手に怒り過ぎて自己嫌悪になり眠れない夜もあった。

でも、犬のいいところは、人間のように過去のことをいつまでも恨んでいたりしないことだ。朝起きるとまたやさしい海に戻っていて、僕自身ももう一度今度は違う方法でやってみようと思えるのだ。

犬は素直だ。その時、今、自分のしたいことに忠実に生きている。

こんなに小さな海から学ぶことが日々あって、僕もKも毎日毎日悩みながら、海と向かい合っている。

千葉の母の家へ。

10月に会って以来しばらく会えずにいた母に会いに、Kと海と車に乗って千葉に向かった。

母は今年80歳になるのでコロナのことを考えて会わないようにしていたのだけど、母が海を見たいと言うのと海の社会化も重要と考えて千葉行きを決断した。

静岡県の熱海から、東京を飛び越えて千葉県千葉市まで行くには4時間くらいかかるかと思っていたら、なんと2時間40分で到着できた。

海は、母にはすぐに懐いたようで、髪の毛を噛もうとしたり、じゃれかかって行っていたが、父には吠えてばかりいて時々唸り声をあげたりしていた。

父(僕の実の父ではない)は、犬好きと言っていたのだけど実は潔癖症のようで、犬に舐められたりするのが苦手ですぐに手を洗うようなタイプ。犬に触りたそうだったのでおやつをあげてほしいとお願いしたのだけど、手渡しであげるのを嫌がり、投げてあげたりからかったりしていたことがどうやら海には好きになれなかったのだろう。

母は僕とKのためにたくさん食事をこしらえてくれていた。Kはニコニコしながら食べていたが、母もKのことを名前で呼びながらどんどん料理を進めていた。最初はゲイのことを受け入れられなかったであろう父も、だんだんKに慣れてきたようで普通に会話していた。

僕と僕の恋人のKと父母と一緒に食事をしているなんて、数年前であれば考えもしなかった光景だ。

先日他界された郁さんたちのことで改めて思ったのだけど、僕にもしものことが起こった時に、僕の父母とKが面識がなかったら、いくらKがパートナーだと言っても受け入れることも信じることも難しいと思うのだ。

パートナーと揃って、実家の父母と食事をしているだけなのに、こんなことができるまで本当に時間がかかってしまった。

これもみんな、勇気を出してカミングアウトをしたからこそ見える景色なのだろう。

3人でお散歩。

東京に編集作業のため出かけていたのだけど、作業が思いの外早く終わったので、Kが帰ってくる前に僕が東京から帰って来た。

5時間くらい一人でお留守番をしていた海は、トイレシートを噛みちぎっていたけど、うんちまみれということはなく、ほんの少し足で踏んでしまっているようだった。帰って来た僕は海を連れてお風呂に向かい、ついでに丁寧に全身のシャンプーをした。

シャンプーの後は海は少し興奮していたのだけど、しばらくして落ち着いたので白菜の鍋を作っていると、ちょうどKが家に帰って来た。Kは、海が荒らしていなかったか心配していたようだけど、それほど散らかってなかったと知るとホッとしたようだった。

ご飯を食べて、暗い近所を懐中電灯を持って散歩に出かけた。

海は3回目のワクチンが終わっていないため、本当はまだあまり外を歩かせてはいけないのだけど、家の周りの歩道の上ならば良いだろうと、少しずつ散歩をし始めたところなのだ。

首輪とリードがついているのに、走りたくてたまらない海は時々ダッシュして走ろうとする。それをKが静止しようと声をかける。その回数も、少しずつ減って来て、僕やKの顔を時々振り返りながら歩くようになって来た。

3人でゆっくりと歩く散歩ははじめてなのだけど、こうして3人が一緒にいるだけで海が幸せそうに喜んでいるのがわかる。

そんな海やKを見ながら、僕もささやかな幸せを感じていた。