急にお客さんがやってきた。

お昼ご飯を食べた後にKとのんびりソファでくつろいでいたところ、メールが入った。

お客さんから予約が入ったという通知。

よくよく見ると、なんと、今日からチェックインのお客さんだった。

大晦日から正月にかけてお客さんが両室予約が入っていたのだけど、2週間前くらいに突然キャンセルされてしまい、その後は一室を閉めていた。

「もう正月はのんびり過ごそうね…」そう言って家族だけで過ごす正月のつもりでいたのだ。

でもこれからお客さんが来るのであれば、急いで部屋を掃除してシーツを敷いたりセッティングしなければならない。

おせち料理の最後の追い込みをするつもりが、急きょ予定が変更になってしまった。

結局紅白歌合戦を見ながら最後のおせち料理を作り、鴨ロースを作りだし巻き卵を巻いて年越し蕎麦を食べる。

久しぶりに食べる日本そばのなんと美味しいことか。

おせちも無事に終わり今年も一年家族が健康で過ごせたことにふたりで感謝したのだった。

Eさん。

クリスマスの日、玄関のベルが鳴ったので出てみるとEさんがいた。

Eさんは、74歳の女性で東京から随分昔に移住して来た。

「前の夫が亡くなった時に、自分の好きな沖縄の海に骨を撒いてくれって言われてたから、宮古島に骨を撒きに来たの」

その後宮古島に移住したEさんは74歳とは思えないほど陽に焼けてとても元気に見える。

Eさんはご自分で作ったというケーキを持っていて僕たちにクリスマスにプレゼントしてくれた。

時々うちに上がって海や空をかわいがってくれるEさんは、僕たちのことを遠くから気にかけてくれているのがわかる。

宮古島に移住する時に知り合いはほとんどいなかったのだけど、今はこうして少しずつ知り合いが増えて色々な人と繋がりはじめている。

ありがたいな。

おせち料理をつくる

このところおせち料理を作るのは、年末最後の三日間になって来ている。

2日でやろうとした年もあったけど、2日間だと他のことは何も出来ずにおせち料理作りだけの時間になってしまう。

初日の今日は前日からぬるま湯に浸しておいた黒豆を8時間煮はじめる。

数の子を薄い塩水につけて塩抜きをする。

大きな鍋に水を入れて出汁を取るための昆布を浸ける。

栗きんとんをつくる。

田作りをつくる。

紅白なますをつくる。

たたきごぼうをつくる。

あまり無理をせずこれくらいでやめておくのも重要。

面倒な気持ちになると美味しい料理は出来なくなるからだ。

幽霊

先日シンガポールから友人のゲイカップルが宮古島に遊びに来ていたのだけど、晩ご飯の時に急に彼らが聞くのだ。

「ただし、今までに幽霊見たことある?幽霊を信じる?」と。

「見たことないけど、幽霊は普通にいると思う」

そうして彼らは幽霊を見た日のことを話し始めた。

場所は彼らのセカンドハウスがあるペナンのゲイバーで僕とKも遊びに行ったことのあるお洒落なお店。

そこでふたりで飲んでいた彼らは、友人たちと話していた時に急に外から中国の着物を着た年配の男が入って来たという。

その年配の男は脚が見えなくて、すごい速さで様々な客の前や後ろに飛ぶように動いてはあっという間に店の外に消えていったそうだ。

ふたりは同時に見ていたのでお互いが見たことを確認し、念のため店のオーナーにも聞いたところオーナーもその幽霊のことは知っていた。

でも不思議と怖いとか嫌な感じはなく、その場所を楽しんでいるような感じだったとのこと。

普段幽霊のことなんて全く話さない2人が真剣に話すので、きっと幽霊はいるのだと思う。

僕もそんな幽霊なら見てみたいな…

Kの39歳の誕生日。

時々スーパーでKと一緒に買い物をすると、鶏むね肉が何枚か入ったパックをカゴに入れられる。

鶏むね肉は家に帰った後、Kがすべて細かく切って茹でてからオーブンで焼きあげる。

オーブンでからりと焼きあげた鶏むね肉ができる頃、部屋中に漂う鶏肉の香りを待ちきれず、海や空や太陽がキッチンに集まって来てまだかまだかと待っている。

Kはそんな彼らに作ったばかりのおやつを一つ一つ手渡しで食べさせてあげる。

お肉を使った料理をする時に、僕は何も考えずにすべて調理をしてしまう。

でも時々Kがやってきて調理をする前の何も味付けのしていない肉を取り分けることがある。

ふたりで晩ごはんを食べる頃、Kはキッチンに立って取り分けたお肉を別の鍋で茹でて細かく切る。

僕たちが晩ごはんを食べている時に、Kはそのお肉をうれしそうに海や空に一つ一つ手渡しで食べさせてあげる。

Kのやさしさは毎日のそこかしこに溢れている。

僕はそんなKを見ながら、なんて僕は幸せなのだろうと思う。

僕の恋人になってくれて本当にありがとう。

そして、39歳の誕生日おめでとう。

新しい年も、Kをもっともっと幸せにできますように。

友人の入院

宮古島にも泊まりに来てくれた友人が難病を患い、入院していたことを突然SNSで知った。

100万人に3・4人しかかからないような難病で、手術を終えて今は順調に回復してきているのを知り安堵した。

健康診断で頭痛が気になるとお医者さんに告げたところ、お医者さんの判断からMRI検査したことで判明したようだ。

検査で見つかって本当によかったと思う。

もしそこでお医者さんに頭痛のことを相談していなかったら、MRIを取っていなかったら、病気の発見はもっと遅れたかもしれない。

彼の詳しい病気の内容や経過を読んでいると、こうして自分たちが今日も呼吸をして身体中を血液が回り、食事をして普通に生活していられること自体が奇跡のように思えてくる。

休養を十分にとって、少しずつ回復していくことをKとふたりで心から願っている。

回復したら東京で美味しいものを一緒に食べてたくさん笑って美味しいお酒を飲みたいな。

クリスマスにはローストチキン。

丸鶏を一羽買い求め、昨日から0.8%の塩とニンニクのすりおろしをを全体に満遍なくすり込んで冷蔵庫の中にラップをせずに置いておいた。

鶏のお腹の中には詰め物はしない。

今日の3時過ぎから110℃のオーブンで2時間低温調理し、食べる前に250℃に上げて10分焼き目をつけた。


ローストチキンは高温で一気に焼くよりも低温でじっくり焼いた後に焼き目をつける方が美味しいことがわかった。

ももにナイフを入れると柔らかく、たっぷりと肉汁が滲み出てくる。

2人で2キロの丸鶏は食べ尽くせなかったけど、残りはまたサンドイッチなんかにすればいい。

これにタルトタタンで今年はクリスマスらしいクリスマスになった。

さようなら。神社。

うちには小さな神棚があって、伊勢神宮や地元の神社のお札を飾って置いてあった。

でも、今年になってふと気づくと神棚がなくなっていた。

「Kちゃん、神棚どうしたの?」

「ああ、もうお札やお守りにお金払うのバカらしいからやめた」

「確かに、僕たちのことを認めてくれないのなら、こっちから願い下げだよね…」

僕は神社が好きで、旅行の時には近くの神社でお詣りすることを楽しみにしていたし、時々行く伊勢神宮では厳かな空気を心地よいと感じていた。

でも、神道政治連盟による文書が発覚してからはもう神社に興味がなくなってしまった。

もちろん、神道や神社に関わる人全てが神道政治連盟と同じ考えではないと思うのだけど、この団体と神社は密接に関わりがあるようなので、もう神社への愛情は醒めてしまった。

神道政治連盟埼玉県本部によって、2022年4月に県内各支部に送られた「埼玉県 性の多様性に係る理解増進に関する条例(仮称)の骨子案 問題点・疑問点(事務局作成)」との文書によると、

同性愛や両性愛について「生まれつき同性愛・両性愛である人はいなく、環境要因に基づくことが明らかになっている」と記載。

LGBTQについては「幼少期での虐待、性的虐待、家庭内暴力、両親の不仲、親の薬物依存、アルコール依存、思春期での同性愛行為など環境要因による精神疾患(統合失調症や双極性障害等)であることが明らかになりつつある」「行動療法や宗教などで『治癒』する」などと書かれており、科学的に全く誤ったことが書かれている。

なぜ世界で明らかにされてきた科学的な根拠を蔑ろにして全く間違った知識を信者に伝え続けているのだろうか?

高校も神道の学校だったし、一神教ではない神道を好ましく思って生きてきたのだけど、もう僕たちはそんな神社に別れを告げる時が来たことを知ったのだった。

きのう何食べた?season2

ゲイのテレビドラマ「きのう何食べた?season2」を、週に一度晩ごはんの後にKと一緒に見るのをとても楽しみにしている。

今日はとても残念なことに最終回を見たのだけど、胸の奥が痛くなってまたしても泣いてしまった。

このドラマを見ながら泣いてしまったことは何度かあって、僕たちゲイカップルの日常がとてもうまく表現されていると感心させられる。

史朗さんのお母さんが恋人の賢ニを正月に招いた後に、疲れるからもう会いたくないと言い出した時。

史朗さんの昔の恋人が史朗さんに酷い扱いをしていた時。

そして今回、史朗さんが遺産を賢ニに遺したいと言い出して、「賢ニがいつか誰か他の人を好きになったとしてもちゃんと遺産が賢ニに遺るように…」と心の中でつぶやいた時。

自分たちの日常と鮮やかに被り、胸が痛くなった。

西嶋さんの演技が素晴らしいので毎回泣かされるのもあるのだと思う。

いつかまたseason3が始まる日を今から心待ちにしている。

55歳になりました。

朝起きたら宮古島も寒く、気温は14度だった。

14度でも沖縄では強い北風が吹くと体感温度としてはとても寒く感じるものだ。

寒いのでのんびりと過ごしていたら母からいつものようにお祝いの電話が入る。

毎朝の日課となっているお散歩に海と空を連れて行き、帰ってから先日食べたキャベツとジャガイモのスープと「ヤンソンさんの誘惑」を厚切りの食パンに載せて朝ごはんを食べる。

晩ご飯はお寿司屋さんで持ち帰りのお寿司を買って帰り家でゆっくりと日本酒を飲みながらお寿司をいただいた。

Kは無印良品のガトーショコラを作ってくれてとても美味しくいただいた。

海と空と太陽とKがみんな健康でいてくれるだけで、僕は本当に幸せなのだとしみじみと思う1日だった。