アタック・ナンバーハーフ・デラックス

実は、シネマート新宿で、ひっそりと『アタック・ナンバーハーフ・デラックス』がはじまった。
チラシを見ていた僕は、はじまりと同時にKを連れて映画館へ駆け込んだ。
『アタック・ナンバーハーフ』は、2001年に流行ったゲイが主役のタイのバレーボールチームの映画。
実話に基づいて作られたこの映画は、笑いなくして見られないのだけど、今回も、わけのわからないゲイや女装・トランスの世界へ引きづり込まれ、大笑いした。
『サトリーレック』というゲイや女装・トランスが集まって結成された謎のバレーボールチームが、地方大会で見事に勝ち抜き、全国大会で優勝を納めるべく奮闘する話。
話の中には、保守的な家で自分がゲイだと言えない男の子や、ゲイと女装の恋愛、ゲイとバイの恋愛など、なかなか一筋縄ではいかないセクシュアルマイノリティの生き様が描かれているが、全編を通してはお笑いにまとめられている。
また、女装やトランスに対する差別や偏見、ホモフォビアも描いており、実際の社会を、ちょっと俯瞰で引いた形で見ているような気にもなるから不思議。
色とりどりの変な格好をした集団を見ているうちに、「僕は、こんな、バラバラな変な人たちに囲まれて生きている方がラクチンだし、楽しいなあ…」と思ってしまった。
★アタックナンバーハーフ・デラックスhttp://attackdx.com

台湾からMがやってきた。

Mは、台北にあるゲイバー『Goldfish』の店員さんで34歳。僕は台北を訪れる時にはいつもGoldfishに顔を出すので、その度にいつも気さくに僕の相手をしてくれる。
Mにとってははじめての東京のようで、LINEで張り切って連絡が来た。「東京にはじめて行くから、時間があったら会いましょう!」会う前に、何が食べたいかと聞くと、
「ラーメン!」
という答えが帰ってきて笑ったのだけど、ラーメンは飲んだ後に場所を教えるからと言って『神場』にした。
『神場』に入り、まずお酒の注文を何にする?と聞くと、Mは、「???…だって、ごはん食べるんでしょ?」と聞いてきた。
僕「日本では、こんな風に友達なんかと晩ご飯を食べる時に、お酒を飲む人はお酒をまず頼むし、アルコールを頼まない人ももちろんいるよ」
M「へー、そうなんだ?じゃあ、カクテルにしたい…Goldfishはいつもりカクテルが沢山あるから」
僕「あ、この店は…というか、ほとんど日本のご飯を食べるお店では、カクテルはないんだよ。カクテルは、バーにはあるけど…」
そこで、一番Mが飲めそうな梅酒にした。
いくつか料理が運ばれてきて、2時間くらい経っただろうか…Mがなんだか元気がなくなってきた。
僕「M、大丈夫?なんだかあまり食べてないみたいだけど…」
M「ごはんを食べるだけで2時間もかかるなんて思わなかった。もうこれ以上食べられないよ…台湾では、ごはんに時間をかけないし、ほんの少し食べて、1日に何度も食べる感じだから…」
台湾人がみんなMのようだとは限らないけど、言われてみれば、日本の食事の仕方と台湾の食事の仕方は、大きく違っているのかもしれない。
その後、二丁目を歩きながら案内をして、Bridgeへ。新宿二丁目の店の多さにも驚いたみたいだったけど、それぞれの店の狭さにも驚いたみたいだった。
僕は、Mが台湾との違いに驚くたびに、はじめての日本を、Mが帰る頃には好きになっていて欲しいなあと思いながら笑って見ていた。

スポットライト 世紀のスクープ

ボストン・グローブ紙が2002年1月に報じた、地元ボストンでのカトリック協会の神父による児童への性的虐待事件。70人にも登る神父たちによって性的虐待を受けた児童は、わかっているだけでも1000人以上にも及んでいた。
それらの事実を長きに渡り隠蔽し続けたカトリック教会の大罪を暴くために、グローブ紙のスポットライトチームは巨大権力に立ち向かったという実話に基づいた映画。
アカデミー賞の作品賞、脚本賞をW受賞したということは、名実ともに昨年一番評価された作品と言ってもいいだろう。
マーク・ラファロ、マイケル・キートン、レイチェル・マクアダムスなど華やかなキャストを使いながら、一寸先も読めない見事な展開は、素晴らしい脚本のなせる技。
次第に暴かれていく巧妙で汚い手口と、それを隠そうとするカトリック教会のしたたかさに、目はスクリーンに釘付けになり、息をつく暇もなかった。
見終わった後に、きっと思うだろう。
「こんなことが、本当に起きていたなんて!
それも、神の名を語る人がしていたなんて!」
ボストン・グローブ紙が、巨大権力を敵に回してまでも告発しようとした勇気に拍手を送りたくなるに違いない。
★スポットライト 世紀のスクープhttp://spotlight-scoop.com/index.php

ふたりで暮らすこと。3

Kのお母さんからメールが入った。
「東京に行って1ヶ月になるけど、大丈夫?何か困ったことはない?」
Kは、「元気にしてるよ。大丈夫だよ」と答えたらしい。
Kが仕事を辞めて、大分から東京に引っ越してきてから、1ヶ月が過ぎた。僕にとってもはじめてのふたり暮らしが、いったいどうなのかと聞かれると、「なんでもっと早くふたりで暮らしはじめなかったのだろう…」と思っていると答える。
僕たちの毎日は、日常のことをこなしているうちに、あっという間に過ぎて行く気がする。中でも毎日、僕の頭の中のほとんどを占めているのは、『ごはん』のこと。
朝起きては、「朝ごはんは何にしよう…」と考えながら、30分くらいで仕上げなければならないし、夕方家に帰る頃には、「今日の晩御飯は何にしよう…」と考えているのだ。
それも毎日のこと。
冷凍庫と冷蔵庫の中身をアイフォンのメモに残しておき、電車の中でメモを見ながら考える。Kは質素で倹約家なので、毎回の豪華な食事よりも、冷蔵庫の残り物などでさもない料理をすると喜んでくれるから。
料理をする時は、Kは横で僕のサポートをしてくれる。
使ったスプーンやお皿を流しに置くと、その場で洗ってくれるし、「豆腐の水切りをして」とか「万能ネギをみじん切りにして」などの細々としたことも、僕の言いつけ通りにしてくれる。
前はあまり気がつかなかったことなのだけど、Kはとても素直な性格だということがふたりで暮らしはじめてからわかった。
一度教えたことは、きっちりと言われたようにこなすし、たとえば、「大根を擦って」というと、そのままずっと擦っているような、そんな素直さなのだ。(実際には途中で、全部擦るの?と聞くと思うが)、基本的に疑うことを知らず、僕から言われたことを信じて一生懸命にやり遂げようとするのだ。
そんなKを見ていると、僕は47歳にして改めて、宝物を手にしたように思えてくる。
愛する人がいるということ自体、神様からの贈りものだ。
こんな僕に、一緒に暮らしてくれる恋人がいるということが、奇跡のように思えるのだ。

バラの匂い。

今年最初のバラ、『マダム・アルフレッド・キャリエール』が咲きはじめた。
象牙色のような、仄かにピンク色がかる花弁に、爽やかな香りをまとったバラ。
花の形は野趣があり、自由に枝が伸びてたっぷりと花が咲く姿は、どこかフランスの貴婦人を思わせる。
「バラが咲いたから、香りを嗅いでみて!」
僕とつきあいはじめてから、ベランダでも花屋さんでも道端でも、花や葉の匂いをしょっちゅう嗅がされるKは、時々、困ったなあ…といった顔をしながらも、僕の言われるままに花に顔を近づける。
「いい匂い…」
これから様々なバラが咲き乱れる僕の家のベランダは、この季節、ここは天国なのではないか…と思うような幸福感を感じさせてくれる。

LGBTを知る100冊 in 紀伊國屋書店本店

今年も、東京レインボープライドがやってくる。
毎年のことなのだけど、4月半ばを過ぎる頃、TRPのポスターやらチラシ、様々な制作物の入稿に追われる毎日を過ごしている。
今年は、紀伊國屋書店本店の3階レジ前において、東京レインボープライド主催『LGBTを知る100冊』という括りで、売り場にLGBTコーナーが出来上がっている。
5月22日まで、たっぷり1ヶ月かけてやっているので、新宿に立ち寄りの際は、ぜひ覗いてみていただきたい。
僕も、どんな100冊が選ばれているのか、とても興味津々でいるところ。
★紀伊國屋書店本店3階レジ前『LGBTを知る100冊』東京レインボープライド主催

釜喜利

エビ天うどん

ごぼう天うどん

福岡に来たら、やっぱりうどんだよね・・・
そう思ってしまうのは、福岡のうどんの美味しさを知っているから。
福岡ではラーメンが一番人気だとは思うけど、地元の友達に話を聞くと、うどんの人気もかなりのもので、それぞれに好きな店があるようなのだ。
福岡のうどんは、総じて、お出汁がアゴやいりこを使っているのだろうか、鰹の風味ではなく、醤油にもあまり頼らない澄んだ色をしている。うどん自体は、香川県のコシを第一にすえたうどんの評価軸とは異なり、コシがなく柔らかいのが特徴だ。それでいて、伊勢うどんのふにゃふにゃとは違っている。
代表的なお店は、『かろのうろん』などなのだろうけど、僕は、タモリが贔屓にしているという『うどん平』がとても美味しいと思っている。
福岡の最終日、Kもうどんが食べたいと思っていたようで、天神から歩いて赤坂に向かい、『釜喜利』という店に入った。
店内は清潔で、ありようからしておいしいだろうと推測出来る。ごぼう天うどんと、エビ天うどんを頼む。ごぼうは程よく厚みがあり、さくさくと揚がっている。エビはかりっと揚がり、ともにうどん自体のコシが比較的しっかりしている。
出汁は澄んでいて、塩の味でごくごく飲める美味しさ。
うどんを食べながら、昼からビールを飲んで、心の底から幸せだと感じた。
★釜喜利http://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400104/40034851/

いとしき糸島。

hummingjoe

KURUMIAN

糸島くらし×ここのき

福岡にはもう、何十回となく来ているのだけど、今回はじめて糸島に行ってみた。
糸島は、福岡の人が週末のデートで訪れることで有名な場所。能古島のようにぽっかりと海にある島ではなく、海に向かってせり出た小さな半島といったところだろうか。
博多の町から20キロくらいしか離れていないのに、糸島に入ってくると、右手にのんびりとした海が見えてくる。糸島独特ののんびりとした空気は、都会で暮らす人にとって、どこか心穏やかになれるに違いない。
お洒落なカフェやレストランも所々に点在する糸島で、何を食べるのかとても難しかったのだけど、今回はスパイスをふんだんに使ったカレー屋さん『spoonsong』へ。
かなりこだわりの強いシェフは、独特のスパイスを配合させてカレーを作り、更に新商品の開発を続けている。基本のカレーはチキンカレーだけど、さらりと食べやすいが、じわじわとスパイスの辛味が効いてくる感じ。
糸島というと、なぜかお洒落な家具屋さんや雑貨屋さんが所々にあって、陶芸家や工芸家、職人さんたちがこの地に住み着いていることを知らされた。
『hummingjoe』は、北欧の家具を中心に扱うお店。チェストやテーブル、椅子などを買い付けて、修理をし、販売をしている。建物は山に囲まれた場所にあって、素晴らしい庭と建物の独特の作りに、ここはヨーロッパなのではないか…と思ってしまうほど、美しい佇まいだ。
『KURUMIAN』は、不安になるくらい山の中にある雑貨屋さん。クルミなどの様々な木で作ったカッティングボードや、木の器、陶器、土鍋を扱っていて、独特の感性のセレクトショップ。
『糸島くらし×ここのき』は、『Tana Cafe』というカフェを併設した雑貨屋さん。一言で言うと、糸島に対する愛に溢れたお店だ。
糸島で暮らす木工作家が、糸島の様々な木を使い器やカトラリーなど、生活の用を足すものたちを作り、ここで売っている。また、醤油や蜂蜜、ビスコッティなど、糸島で作られる調味料なども販売している。
糸島を訪れていると、この町の人たちが都会に対してコンプレックスも何も感じていないことにホッとする。
愛する糸島で海に囲まれて暮らしながら、自分たちの信じるものを作り、集め、生活の生業にしている姿を見ていると、ここが宇宙の真ん中なのではないかと思ってしまう。
こんな風に山や海に囲まれて暮らすことが、僕には堪らなく羨ましく感じられて、「いつか、糸島に家を買って暮らそうか…」とつぶやいた。
運転をしていたKは一言、「ただしくんがこんな田舎に住むことなんて出来るわけないよ」と言った。
「いつかこんなところに住めたらいいなあ…」
帰り道に、またすぐにでも糸島に再訪したいと思ったのだ。
★spoonsong
092-325-2569
福岡県糸島市二丈松末1253-2
http://tabelog.com/fukuoka/A4009/A400901/40025371/
★hummingjoe http://www.hummingjoe.com
★KURUMIAN http://www.kurumian.com/
★糸島くらし×ここのきhttp://www.coconoki.com

せいもん払い

ゴマサバ

真鰯の刺身

蛸の天ぷら

今まで行ったことのある居酒屋で、どこが最高の居酒屋ですか?と聞かれたら、僕は、「福岡の、せいもん払い」と答えると思う。
何が最高かというと、魚の質と鮮度、牛肉、豚肉、鶏肉の中でも絞ってあるお肉類の料理。そして、居酒屋らしいサイドメニューの数々だろうか。
Kが大分から東京に出てきておよそ1ヶ月が過ぎた。東京での暮らしにKはまだまだ馴染んではいないと思うのだけど、そろそろ九州が恋しくなったのではないかと思い、午後の便で福岡に飛んだ。
「せいもん払い」は、夕方6時半までならば予約が出来るのだけど、それ以降は、お店に来た順番に入ることができる。7時半頃行ったのだけど、今回はほとんど待たずに入ることが出来た。
食べたいものがたくさんあって、残念ながらふたりで頼む料理の品数は限られてしまうのだけど、「ゴマサバ」「真鰯の刺身」「ざる豆腐」「蛸の天ぷら」…どれを取っても申し分なく、福岡に来たんだーという喜びが込み上げてくる。
「糸島の豚肉ロース」も美味しくて、満腹でもう食べられない…と思いながらも、「ああ、またここに食べに来たいなあ…」と思ったのだ。
福岡、最高!
★せいもん払い
092-281-5700
福岡県福岡市博多区上川端町5-107 シャトー川端 1F
http://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400102/40000029/

マグロの誕生日。

カンパチの頭

Gは、僕にとって妹のような存在。アクティビストなので日頃から忙しく飛び回っており、仕事でもしょっちゅう海外に行ったり、日本でもほとんどじっと休んでいる間がないくらいに動き続けている。
そんなGのことを、僕は『マグロ』と呼んでいるのだけど、みんなの前で「Gはマグロだからなあ…」と言うと、Gは、「そっちのマグロじゃないんです!」と言って弁解する。(本当のところ、Gがベッドでマグロなのかどうなのかは知らない)
この一年、Gとともに、『OUT IN JAPAN』の撮影会をこなし、色々な町にも撮影のために訪れた。その都度、あまりにも忙しい中、Gは現地のスタッフとのやり取り、撮影の手配やレスリーたちとの打ち合わせなど、いつもご飯もほとんど食べないで動き続ける。周り中に気を遣い続けながらもニコニコ顔でみんなに会い、指示を出し、対応をしている。
そんなGを見ていると、「シャイニーゲイでいることも大変なんだなあ…」と他人事のように思うのだけど、これにはみんなが知らない別の顔があって、帰りの新幹線なんかで僕とふたりきりになると、すかさず「東京まで寝ていいですか?」と言ってすぐに眠ってしまう・・・。
電車に乗っても、ふたりでいると、ほとんど横ですやすやと眠っていて、僕はいつも、「この寝顔を何度見たことか…」と思うのだ。
そんなGから、仕事中にLINEが入った。
「今日が30代最後の日なんです…」
そこで急遽、30代最後の食事を一緒にすることに。なにが食べたいのかと聞くと、「炭水化物以外」と答えが返って来て、新宿三丁目の名店『鼎http://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13000879/
』へ。『鼎』のことはここにも書いたことがあるけど、本当に素晴らしい『THE 居酒屋』だ。
急に決まった晩ご飯だったのだけど、店に向かいながら何気なく弟のようなFにも声をかけてみると、すべての予定を払いのけて、Fも飛んできた。
ふたりは誰もが知るLGBT業界のアクティビストで、日々めまぐるしくマグロのように動き続けながら暮らしている。それでも忙しい合間をぬって、時々こうして一緒にのんびりと食事できるのは、僕にとっても幸福な時間だ。
僕の恋人のKもいるので4人で楽しい食事となったのだけど、GもFも、一緒にいるだけで寛いでいるのが伝わってくる。
やがて深夜が近づく頃、行きつけの『Bridge』に行き、みんなでGの40歳の誕生日をお祝いした。
マグロ、お誕生日おめでとう!