シー・ラヴズ・ミー

ずっと『Bridge』のMからすすめられていたブロードウェイミュージカルを収めた松竹ブロードウェイシネマ『シー・ラヴズ・ミー』をやっと観ることができた。
もしもまだ、ミュージカルというものをご覧になっていない方がいたら、ぜひ、このブロードウェイシネマでミュージカルを体験するといいと思う。
その作品は、きちんと字幕がついているので、僕のように英語がきちんとわからない人間であっても、より物語が正確に理解出来るからだ。
『シー・ラヴズ・ミー』は、1937年初演の『パヒユーマリー』が原作になったリバイバルミュージカルで、その原作自体は様々にリメイクされていて、トム・ハンクスとメグライアンの映画『ユー・ガット・メール』の原作でもあるそうだ。
優秀作品に贈られるトニー賞ミュージカルリバイバル作品を受賞している本作は、すれ違う男女の恋愛を描いたクラシックな作品。
今のように、メールやスマホや携帯がない時代、新聞の文通欄に手紙を書いて、文通によって知り合ったふたりは、その手紙の中でお互いを少しずつ、深く知っていくようになる…。
見事な舞台装置にアッと言わされ、小気味の良い歌と踊り、どこかで聞いたことのある『バニラ、アイスクリーム』の曲に胸が高鳴る。
舞台が終わっても、このままずっと観ていたいと願う、往年のミュージカルらしい素晴らしい作品。
⭐️シー・ラヴズ・ミーhttps://www.google.co.jp/amp/s/movie.jorudan.co.jp/cinema/37031/amp

東京レインボープライドに、クライアントが。

東京レインボープライドの会場で、『OUT IN JAPAN』の撮影をしていたら、先日テレビコマーシャルとグラフィック広告を納品したばかりの僕の仕事のクライアントのTさんという女性が、突然目の前に現れた。
「ただしさん、こんにちは。」
「え⁈えええ?どうなさったんですか?もしかして前から僕のこと知ってましたか?」
「いや、うちの〇〇が、すぐに周りのスタッフさんのことをネットで調べるので、あ!ただしさんってこんなことしてる!と教えてくれたんです」
普段の仕事をする上で、会社の周りの人間は僕がゲイであると知っているのだけど、クライアントで自分がゲイであるということは、当たり前のことだけど情報として言う必要もないので、そのまま黙って仕事をしている。
Tさんは、他のボランティア団体で昔から協力している人のようで、セクシュアリティはわからないけど、こうやって会いに来てくれたことが本当にうれしかった。
ストレートの人たちには、はじめからわからないだろうけど、僕たちは無意識のうちに、自分のセクシュアリティに踏み込まれないように、常に目の前に薄いベールを張り巡らせながら生きている。
仕事の場においても、こうして僕のセクシュアリティまで知ってもらって自然に受け入れられることは、僕にとっては薄く目の前にあったベールがなくなるようで、開放された気分だった。
その場で一緒に写真を撮って、Tさんはうれしそうに会社に持って帰ってみんなに見せると話していた。

パレードを歩くこと。

影に隠れて映っていませんが。

清貴のコンサート

東京レインボープライドの初日の日曜日に、パレードが行われた。
パレードを歩いた人は、推定1万1000人以上。代々木の会場に来た人は、15万人を越えたそうだ。
僕は、朝から晩まで、『OUT IN JAPAN』のブースで撮影の補助をしていて、時間になるとパレードの隊列に並んだ。
パレードの隊列は、『Marriage for All Japan』のフロートへ。
いつもは、並んだらそんなに時間がたたないうちに歩き出すのだけど、今年は1時間半以上待った後で、ようやく動き始めた。
動き始めてすぐに、なんと、フロートの音源がショートしたように切れてしまい、そのまま僕たちは音のないまま歩き続けた。
音のないフロートというのはなんだか異様で、場がもたないというか、そのうちに皆口々に叫び始めた。
「ドーセーコン!ドーセーコン!」
「マーリーフォー!マーリーフォー!」
『同性婚』という響きに僕たちは大笑いして、『マリフォー』というのも、他の人にはマリモくらいにしか聞こえないだろうなと思いながら、笑いながら歩いていた。
そのうちに前を歩く香川からの原告カップルが、
「ただしさん…なんか、同性婚って、男根みたいに聞こえて恥ずかしいんですけど…」
「僕も、なんか、同性婚という音の響きがなんか昔から馴染めなかったんだよね…ついでに言うと、同性愛という言葉も、自分で言葉に出すのは嫌かも…なんか、罪の匂いがするというか、重たい感じがするんだよね…」
道の途中、たくさんの人がフロートに向かって手を振ってくださった。マリフォーのタオルを振り回して応援していることを伝えてくれる人たちもいた。
パレードで歩くことに、この国で意味があるのかどうかは僕にはわからない。
でも、僕たちは、清々しい気持ちで笑いながら、一緒になって歩くことができたのだった。

渋谷の街が、虹色に。

今年も、東京レインボープライドがいよいよ明日からはじまる。
この時期、渋谷の公園通りは、今年もレインボーフラッグが丸井によって掲げられた。
昨年は、『OUT IN JAPAN』の写真とフラッグがたなびいていたのだけど、今年は、TRPと丸井の旗。
偶然にも、2つの僕が作ったデザインが並んだ。TRPのロゴと、丸井の今年の『ENJOY DIVERSITY』。(TRPの6人のイラストは、僕ではなく著名なイラストレーターの方)
今日は、『OUT IN JAPAN』の撮影会が渋谷で行われ、僕にとっての東京レインボープライドがはじまったのだった。

LGBTカミングアウト・フォト・プロジェクト『OUT IN JAPAN』 新しいビデオが出来ました。

LGBTカミングアウト・フォト・プロジェクトである『OUT IN JAPAN』がはじまって、4年が過ぎた。
4年間という長い年月の間には、さまざまな出来事があったし、撮影したセクシュアルマイノリティの数も1400人は越えている。
プロジェクトのはじめに、ミュージシャンである清貴の『WE ARE ONE』を主題歌としたミュージックビデオの製作をお手伝いしたのだけど、あれから4年経って、また新しい清貴の曲『虹の向こうへ』で、新たなミュージックビデオを製作することができた。
ようやくYOU TUBEで解禁になったので、ご覧になっていただきたい。
⭐️虹の向こうへhttps://youtu.be/nidhT-Oy-LQ

ニューヨークに行くべきか。

今年は、ニューヨークプライドが始まって以来、記念すべき50周年を迎える。アメリカでは、25周年・50周年・75周年・100周年が、大きいお祝い事をする節目だそうだ。
LGBTQが迫害を受け続けていた時代に、LGBTQ当事者たちが勇気を持って立ち向かった1969年のストーンウォール事件から、まだ50年しかたっていないのだ。50年の間には、ヨーロッパをはじめアメリカでも同性婚が認められ、世界も少しずつ変わってきている。
この記念すべき50周年のニューヨークプライドに、僕の周りのアクティビストの友人たちもこぞって参加するようだ。
僕も昨年までは、友人たちと同じようにニューヨークプライドに参加するつもりでいたのだけど、ニューヨーク自体にまったく魅力を感じなくなり、行きたいという気持ちが若い頃のようになくなってしまった今、行こうか行くまいか、どうしようかとぼんやりと考えている。
なかなか休みの取れないKも休みが取れるならば、愛するイタリアやスペインやフランスに連れて行きたい気がするのだ。
50周年の記念的イベントを見ておくべきか。Kにとってはじめてのヨーロッパにするべきか。その間でいったりきたりしているうちに、梅雨明けの沖縄にも行きたいと思い、夢は枯野を駆け巡る。
今の僕の人生で、一番お金を使う価値を感じることは、食事や住居以外には、結局のところ、旅行なのだ。

OUT IN JAPAN #017 東京撮影会 参加者大募集!

OUT I JAPAN の撮影会が、久しぶりに東京で行われる。
フォトグラファーはもちろん、レスリー・キー。
4/27(土)午後渋谷ヒカリエにて
4/28(日)TRPにて
4/29(月)午前中TRPにて
僕も会場にいますので、
お時間のある方は、ぜひご参加ください!
⭐️OUT IN JAPAN #017 東京撮影会http://goodagingyells.net/join/#join-2389

ゲイダー。

周りのストレートの人には全くわからないけど、「私はゲイです」と、ゲイ同士の間ではわかる印のようなものがあったらいいのに…と、昔はよく思ったものだ。
ゲイは、昔から自分以外のゲイを、なんとか普段の生活の場から探し出そうと、無意識に周りの男性を自分なりのゲイダーを使ってチェックしている。自然の摂理に従って、自分のセックスの相手や恋人を探し続けているのだ。
なぜそうなのかというと、10人にひとりくらいの割合がゲイだと言われているけれども(「世界が100人の村だったら」では、89人がストレートで、11人が同性愛だそうだ)、ストレートに比べて圧倒的に少ないからだ。
世界では、左耳にピアスをするとか、ズボンの後ろポケットにハンカチを見えるように出しておけば、どちら側かによってタチかウケかがわかるとか、色々なサインのことは聞いたことがあるけど、どうやら日本ではそれは通用しないようだ。
毎朝、駅までの道を歩きながら、先方から向かってくる通勤途中の男性を、無意識に自分のゲイダーが選り分けている。
ストレートの人は簡単で、僕たちが、女性を目で追わないのと同じで、決して男性を目で追うことはないので、僕と目が合うことはまずない。
でも、ゲイは、ガン見をしてくる場合もあるし、目だけ動いてこちらをチラ見したり、これが一番怖いのだけど、通りの反対側を歩きながら、身体は前を向いているのに、首だけこちらを向けてしっかりと見る人がいる。
もしくは、遠くから向こうから歩いてくる人がゲイだとわかると、敢えて絶対に見ない人もいる。自分は見ないでおいて、相手がこちらを見ているのがわかると、密かに、「勝ったわ…」と優越感に浸る人もいるのだ。
今日も毎朝会う、ガチムチのキックボードに乗ってくるゲイとすれ違った。
ガチムチはキックボードを漕ぎながら、毎朝僕を見つけるとチラ見をしてくる。
僕はガチムチ君を、敢えて見ないことにしているのだけど、向こうは100%僕がゲイであると、気づいているのがわかる。
僕は、そんな僕たちゲイが自然に身につけた生きるための知恵というか、ゲイダーが、たまらなく愛おしく感じるのだ。

Kがひとりで誰かに会いに出かけた。

Kは、大分から東京に出てきて、東京には昔、大分でつきあったことのある友人が働きに出てきているだけで、他に友達はいない。
新宿2丁目で会う僕の友人たちは、たとえKに興味があったとしても、僕の友人であるから遠慮してしまうのか、(僕が恐いと思うのか)、お互いに連絡先を交換するようなこともない。
そんなKが、随分前にお店の周年パーティーに僕と行った時に知り合った人がいて、なぜ知り合ったかというと、毎朝Kが勤め先の病院へ行く道ですれ違っていたようで、その後もその人とは時々家の近所ですれ違っていたようだ。
Kは時々その人と会うと僕に話していたのだけど、LINEを交換したらしく、今度ご飯に誘われたというので僕の出張の日に会いに行ったのだった。
ふたりは僕たちがよく行く新宿三丁目の店で食事をしたらしく、「楽しかった?」と聞くと、「うん」と短く言うだけだった。
僕「その人、恋人いるの?」
K「20代の恋人がいるんだって」
僕「へー、そうなんだ。また飲みにでも行ってきたら?」
K「うん」
Kが東京に来て3年が経ったのだけど、こんなことははじめてなので、はじめはちょっと胸の中がザワザワしたけど、こんな風にたまには自由に僕の知らない人と会うのもいいことだろうと思ったのだ。

ある少年の告白

映画『ある少年の告白』は、『同性愛矯正施設』という同性愛を強制的に異性愛にする施設のお話。
僕が本当に驚いたことは、これが遠い昔の話ではなくて、現在のアメリカにおいての話であり、これまでに70万人もの人々がその施設に入り、そのうち35万人は未成年だったというからだ。
敬虔な牧師であり保守的な父親のラッセルクロウと、それを支えるニコール・キッドマン。たった一人の息子ルーカス・ヘッジズが、実はゲイであるということがわかり、なんとかその息子を矯正施設に入れて、「息子を正常な男に治そう」と奮闘するお話。
映画を見ながら、僕は何度も泣いてしまった。隣で見ているKも、普段はあまり泣かないのに涙をぬぐっていたようだった。
父親も母親も、それが息子のためだと思ってやっていること。息子は、もしかしたら治るかもしれないと思い、両親に従っている。
親子の愛がそこにあるがゆえに、問題は更に難しく、せっかくの親子関係さえも歪めてしまう。
これは、遠い昔に起きた話ではなくて、今のアメリカで実際に起こっていること。
泣きながら、僕の中の闘志がふつふつと湧いてくるのがわかった。
ゲイであれば、この春必見の映画。
⭐️ある少年の告白http://www.boy-erased.jp/