春菊

昔、会社の先輩に、「一番好きな味噌汁の具は何?」と聞かれて、迷わずに、
「春菊!」
と答えたら、「お前、やっぱり変わってるな・・・」と言われた。
僕の家では、晩秋から春先までよく春菊が登場した。先輩に言われてから周りの人に聞いても、春菊の入った味噌汁を食べた人はいなかった。恐らく僕の母が春菊を特別に好きだったのだろう。
このブログでも書いた覚えがあるのだけど、何年か前に、タラコのアーリオオーリオのスパゲッティを作っている時に、仕上げに余っていた春菊を茹でて一緒に入れたらとても美味しくて驚いたことがあった。
春菊の独特の香りは、タラコのコクと味わいにとても合うようだ。
そこで先日、明太子をほぐして、茹でた春菊と和えてみたのだけど、これがとても美味しかった。それ以来我が家では、春菊は茹でて明太子かタラコに和える頻度が増えたのだ。
⭐︎春菊の明太子和え(タラコでもよい)
<材料>
春菊 1束
明太子かタラコ 1/2腹
マヨネーズまたはオリーブオイル小さじ2
<作り方>
1,春菊の根元を切り、水に漬けてしゃんとさせる。
2,明太子かタラコの皮を切ってほぐし小さなボールなどに中身を出しておく。
3,鍋に湯を沸かし、春菊をゴムで束ねて根元から茹でる。15秒くらいしたら葉の部分も入れて、全部で45秒くらいでざるに引き上げて、水につけずにそのまま冷ます。
4,粗熱が取れたら、3センチくらいの食べやすい大きさに切って水気をよく絞り、2のボールの中に入れて、マヨネーズもしくはオリーブオイルを入れて和えたら完成!(仕上げにゴマをふっても美味しい)

小さくて、役に立つもの。

僕の家では、朝はほとんどすべての窓を開け放って、空気を入れ替えることからはじまる。
幸いなことに、三方が窓になっている家なので季節を通して風通しがよく、うっかりそのまま出かけてしまって帰宅すると、風が強い日はドアが閉められていることも少なくはない。
ドアの前に籐で出来た籠を置いておいたりしたこともあるのだけど、それも籠の存在感が通る時に邪魔になり、どうしたものかと思っていたところ、久しぶりに覗いた『LABOUR AND WAIT』で小さなドアストッパーを見つけた。
木のドアストッパーは、廃材を利用して手作業で作られているため、ひとつ一つ長さや木材の模様が違っている。
場所を取らない作りといい、素朴な味わいといい、僕の小さな家にぴったりと馴染んでくれて、風の強い日もきちんとドアを動かさずに機能してくれるのだ。
小さくても、役に立つものに出会うと、これを考えて作った人はすごいなあと感心する。
果たして僕は、今までの48年間の人生の中で、何か誰かの役に立つものを作れたのだろうか・・・と。
⭐️LABOUR AND WAIThttp://bshop-inc.com/news/6354/

家族に何か起きた時に。

晩ご飯を作っていたら、Kがぽつりと話し出した。
K「ただしくん・・・お母さんがね、電話で言い出したんだけど・・・
お父さんの尿道が悪いみたいで、再検査をするらしいんだ。
今も痛みがあって、尿道結石ではないみたいなのだけど・・・」
僕「前にも言ってたよね・・・お父さん、大丈夫かな・・・」
K「それでね・・・お母さん、自分のことのように心配し出して、
今回は11月に東京にくるのやめようかって言ってるんだ」
僕「お父さんはなんて言ってるの?
具合が悪いなら仕方ないけど、慌ててキャンセルしなくても、
検査の結果を見てからでもいいんじゃない?
キャンセル料かかっちゃうね・・・」
K「お母さん、お父さんより大騒ぎしていて、
話したらお父さんは来るつもりなんだけど、
お母さんは癌かもしれないって言い出して・・・」
僕「まあ、検査をして様子を見て、
その日に判断してキャンセルすればいいじゃん。
まだはっきりわからないのに慌てなくてもいいのにね・・・」
このところ、Kの腫瘍の疑いがあったり、僕の甥っ子の脳腫瘍が見つかったり、家族の中で病気の疑いが次々と現れて来た。
Kは先日ここに書いたように、ほぼ良性のようだとわかりほっと胸を撫で下ろしたところ。
脳腫瘍の疑いが見つかった僕の甥っ子は、東大病院で検査を進めていて、MRIを見たところ良性の腫瘍ではないかという話も出てはいるが、ハッキリとした診断の結果まで予断をゆるさない状況。兄やお姉さんの心情は生きた心地がしないと思っている。
生きていくということは、突然目の前に予期せぬ出来事が起こって、その場その場で対処してゆかなくてはならないこともあるのだけど、家族がいてくれるということが、何よりも心強いことなのだと改めて感じている。

ブレードランナー2049

前作のブレードランナーを観ていなく今回のブレードランナー2049を見に行ったとしても、思う存分に楽しめる作品に仕上がっている。今回の映画館での上映を決して見逃してはならない素晴らしい出来栄えだ。
ストーリーはかなりシンプルでわかりやすいのでここでは敢えて触れない。ブレードランナー、それは、人間と見分けがつかないアンドロイド(レプリカント)を、取り締まる警察官のこと。
2049年の地球は、人間とレプリカントが共存する世界に変わり果てている。映画は、K(我らがライアン・ゴズリング)というひとりのブレードランナーの心情をただひたすら追い続けて行く。
ハリソン・フォードは久しぶりだったけど、やっぱりすごい存在感だった。AIとの絡みは、少し『HER』という映画を思い出させなくもないが、こんな映画を作り上げてしまう人間の想像力が素晴らしいと思わずにいられない。
このSF映画を観ているうちに、手に受ける太陽の日差しや、顔に受ける激しい雨さえも、愛おしく感じて来たし、隣で一緒に映画を観ている僕のパートナーのKの頬を何度も何度も右手で触ってみたくなった。
今、この瞬間を生きているということが愛おしく感じられる映画。
絶対に劇場で、できればIMAXで観るのをおすすめします。
⭐︎ブレードランナー2049http://www.bladerunner2049.jp/sp/

ふたりで眠ること。

Kとふたり、ベッドで寝るときは、天井を向いた状態で僕が右側に寝てKが左側に寝る。僕はいつも横向きになって眠ることが多いようで、右側を向いて寝ているようだ。Kは寝相が悪く、あっちこっち動きながら寝ている。
先日ネットで読んだのだけど、寝るときの横向きの姿勢は、右向きよりも左向きの方が身体の様々な臓器や器官にとって血液が回るようでよいようだ。
そこで僕もKが寝ている左側を向いて寝てみようとトライしたのだけど、僕が左を向いて寝ようとすると、Kが僕の方を向いて眠っていることが多く、Kの鼻息が顔にかかり全然眠れないのだ。そこで朝起きた時にKに言ってみた。
僕「Kちゃんの方を向いて寝ようとしたけど、Kちゃんの鼻息攻撃で眠れなかったよ。ただしくんに向かって二酸化炭素攻撃しないでね・・・」
K「ただしくんこそ、いつもいつも左側向いて鼻息攻撃をKちゃんにしてくるんです!」
どうやら僕も、時々左側を向いて寝ていたみたい。笑

ゲイであるということ。

物心ついた時から男の子が好きで、小学生の頃にハッキリとそうなのだと辞書なんかを調べながら自覚したのだけど、自分にとって『ゲイである』ということは不思議なことに、
「周りの友人たちのように、奥さんや子どもを持って幸せで円満な家庭を築くことはできないんだ…」という言い表し難い哀しい気持ちと同時に、
「自分はほかの男とは違っているんだ。影に隠れて甘美な人生を味わいながら生きてゆくのだ…」という密やかな悦びの気持ちが確かにあったのだ。
そして、後者の気持ちを十分に満たしてくれたのが『新宿2丁目』であり、2丁目で週末のたびに一緒にお酒を飲む、本名を明かさずに源氏名(呼び名)で呼び合う友人たちだったのだ。(30年以上前の2丁目では、本名がバレることを恐れて、ほとんどの人が用心深く別の名前やあだ名を使っていた)
そして今改めて思うのは、ゲイであるということは、人には言えない人生の重荷を背負わされたということではなく、ストレートの男性では決して味わえないような、僕たちにしかわからない密やかな愉しみを享受することが出来るということに思える。
本当かどうかはわからないけど、人生とは、生まれる前に自分でストーリーを考えて役柄を選んで生まれてくるそうだ。
もしもそうだとしたら、今回の僕の人生は、ゲイであるということを通して、普通では味わえないようなさまざまな経験をすることなのだろう。
ちょっと変わった主人公だからこそ、人生も味わい深いものになるのかもしれないと思うのだ。

笑う故郷

「岩波ホールで面白い映画がやってるよ」
いつものようにBridgeのMからLINEが入り、今週末までということでKとふたり、仕事の後に待ち合わせて神保町へ。
学生の頃から通っている岩波ホールは、普通ではなかなか観られないような世界中の映画をこれまでに上映してきているのだけど、その時に見逃すと後ではなかなか観られなかったりする映画ばかりなのだ。
『笑う故郷』は、久しぶりに度肝を抜いた映画だった。
故郷のアルゼンチンを長く離れていた作家がノーベル賞を受賞したのちに、自分のルーツがあるアルゼンチンの田舎町に数日間帰るという話なのだけど、そのストーリー展開が見事で、一寸先のことすら想像できないワクワクする作りになっているのだ。
人生というものをアイロニーを交えながらどこか俯瞰で見ていて、映画全体を見終わった時には「してやられた!」と思う爽快感。
日本の今の映画界には決してない、大人のウイットに満ち溢れている傑作。
⭐︎笑う故郷http://www.waraukokyo.com/

TAIWAN PRIDE 2017

毎年10月の最後の土曜日に開催される台北のパレードに行くことを、僕はこの10年間くらい毎年楽しみにしていたのだけど、今年はなぜかあまり行きたいという気持ちにならず、Kも仕事があるということもあり見送ることにした。
毎年、東京レインボープライドのTシャツのデザインをさせてもらっていて、写真が今年のデザインの表裏になる。
いつもは日本と台湾の友好を掲げてデザインしていたのだけど、今年のデザインは更に拡大して、アジア最大のパレードで、アジアの人たちがひとつになって歩こう!といったものになった。
今年の『台湾PRIDE』では、東京レイボープライドのフロートに、歌手のMISIAさんが乗ることになり、そのフロートの飾り付けなども考えさせられた。少ない予算もあるので、思ったように豪華にはならないかもしれないけど、銀色のスパンコールのイメージで行く予定だ。
台湾パレードに行く方は、ぜひ楽しんできてください。
東京の空の下、台湾パレードの成功を願っています!

赤ちゃん。

昨夜、この記事を見つけて、動画を何度も何度も再生してしまった。
⭐️https://www.youtube.com/watch?v=-_Q5kO4YXFs#action=share
映像に出てくるチャーリーちゃんは、重度の聴覚障害を持って生まれて来たそうで、映像は、そのチャーリーちゃんがはじめて補聴器をつけた時のもの。
赤ちゃんは、耳も聞こえなかったはずだし、まだ言語を学んでいないのに、お母さんの様々な言葉に反応して繊細で多様な表情を見せる。
この映像を見ていると、赤ちゃんは生まれながらにひとりの人間であり、きちんと人格を持っていると思わせてくれるから不思議だ。
お母さんが後半に話しかける時の表情を、見逃さないでいただきたい。
僕は泣いてしまった。

さよなら、ぼくのモンスター

ゲイであることをカミングアウトしている若干26歳のカナダ人の監督『ステファン・ダン』が、自分の体験をもとに制作した自伝的映画『さよなら、ぼくのモンスター』を、やっと新宿のシネマカリテで観ることが出来た。
観たあとに、『さよなら、ぼくのモンスター』という邦題の意味が全然わからなくて、これであれば最初からもともとのタイトル『CLOSET MONSTER』とつけていたらわかりやすいのに・・・と思ってしまったのだけど、この映画は、自分の本当のセクシュアリティに目覚めてゆくひとりのゲイの少年の話だったのだ。
主人公のオスカーは、物心ついた時から両親の仲が悪いことを感じ取っており、ハムスターだけが心を許せる友だちのような男の子。愛情と所有欲の強い父親は、激しいホモフォビアを持っている。
そんな中でオスカーは、本当の自分のセクシュアリティに目覚めはじめ、学校や家族、社会の中でもがきはじめる。
ゲイであることだけで苛められたり、信じられないような暴行事件が世界中のあちこちで起こっている。この映画は、ホモフォビアによるいじめや暴力を、映画の真ん中にテーマとして据え置き、自分の本当のセクシュアリティのことを誰にも言えずに苦しみ続けている少年の心のもがきを丁寧に描いている。
映画は荒っぽいし、ファンタジー的な演出に着いていけない人もいるかもしれない。それでも僕は、26歳の青年が自らの過去に向き合いながらまっすぐに作ったこの作品を評価したいと思う。
⭐️さよなら、ぼくのモンスターhttp://qualite.musashino-k.jp/movies/2865/