車海老を探して。

煮ると紅白になる車海老。

おせち料理は、だいたい三日間かけて作るようにしている。
29日は、甘くて保存の効くもの。
30日は、肉類や巻き物。八幡巻や伊達巻など、手のかかるものを焦らずに完成しておく。
31日は、新鮮な魚を買いに行き魚中心の料理と、実は下処理が素材ごとに面倒な煮しめを。
今朝は新宿高島屋の開店に行き、車海老を買うことにしていた。朝ごはんを食べてKとふたり張り切って高島屋に行くと、なんと、海老はロシアやインドネシアの冷凍のものしかないというのだ。
何も買わずにその足で地下鉄を乗り継ぎ日本橋の三越を目指した。
三越本店は、日本一の百貨店。車海老なんて絶対にあるはず。
三越について、店員さんに聞くと、今日はもうロシアの冷凍ものしかないとのこと…。ここで普通諦めるか、ロシアのデカイ海老を買うかだと思うのだけど、その足で今度は銀座の三越へ。
このあたりでKは、半ばあきれ疲れた様子を見せたのだけど、そんなKをなだめすかし銀座三越の売り場に行くと、案の定生きた車海老があったのだった!
日本橋の三越に入っている同じ吉川水産なのに、銀座三越とは品揃えが違っていたのだ。
巨大なデパートと違って、銀座三越は何がどこにあるのかすぐにわかるし、混んでいると行っても並べば10分と待たずに買うことが出来た。
これで無事に、予定していたおせち料理全てが完成出来そうです。

数の子の下ごしらえ。

この皮をむくのが面倒くさい

日本料理は、下ごしらえに尽きる。
それは、おせち料理を作っていると感じること。
なますを作るために大根や人参をこれ以上ないくらい細く千切りにしたり、里芋の皮を六角に剥いたり、面倒くさいと思える作業の連続だ。
おせち料理を作る上で最も面倒くさい作業は、数の子の薄皮むきではないだろうか?
3回くらい塩水を換えながら塩抜きをした数の子を、ひとつひとつ手に取り丁寧に薄皮をむいてゆく。
僕はこの手の作業にイライラしてしまうため、今年もKを向かいに座らせて手伝わせながら一緒に数の子の皮むきをした。
いつもはキッチンペーパーを使って皮を端っこに手繰り寄せていく作業をするのだけど、ふと思いついて、キッチンペーパーではなくリネンでやってみたらキッチンペーパーよりも皮を寄せやすかった。
Kは素直な性格なので、言われた通り忍耐強く数の子の皮をむいてくれる。
きっと美味しいものが食べられる時間を想像しているのだろう。

雪辱の伊達巻。

オーブンから出したところ。

昨年作ったおせち料理の中で、唯一失敗したのが伊達巻だった。
伊達巻に合う適当な大きめの卵焼き器がなかったのでオーブンウエアで焼いたのだけど、皿に着いたまま鬼すに綺麗に落とすことが出来ず、グシャッとなって落ちてきた時には家の中で悲鳴をあげてしまったのだった。
その失敗を今年こそはリベンジしてやろうと、今年はオーブンペーパーをバットの上に敷いてその上に卵液を流し込みオーブンで仕上げることにした。紙が下に敷いてあれば、落ちないわけにはいかないだろう。
本来ならば甘鯛がいいのだけど、東京で甘鯛はほとんど並ばないので、大分県産の鯛を買ってきて、卵を五個と出汁や醤油、みりん、ほんの少しの片栗粉をミキサーで撹拌。バットにペーパーを敷いて流し込み、オーブンへ入れておよそ20分。
ここまできた時に、「今年は成功だな…」と思って悦に入っていたところ後半になり、ふとオーブンを覗き込むとオーブンの中はパンのお化けが膨らんだような物体になっていたのだった。
「なんか、お餅が焼けて膨らんだみたい…」
そしてオーブンから出した途端に、今まで膨らんでいた物体はヘニャヘニャと急に萎みはじめた。
すかさず鬼すに落とし、端からなんとか綺麗に巻くことが出来た。
今はまだ、鬼すに巻いたままで、切るのは元旦になるのだけど、一度はどうなるかと思った伊達巻も、なんとかうまく出来たような気がする。
オーブンから出したばかりの写真をKに送ると、「かわいそう…」という返信があった。Kも昨年の僕の失敗を覚えていたのだ。
料理は失敗すると悔しいけど、失敗の原因をきちんと分析して、次回にリベンジ出来るととても達成感のあるものだ。

オンシジューム。

いつもならば、年末は早めに仕事が片付いていって28日ともなれば余裕で休んだりしていたのだけど、今年はどういうわけか仕事納めの日の夕方までバタバタしていた。
帰りがけ、明日から三日間でこしらえるおせち料理の材料を買いに銀座三越に寄り、その後新宿二丁目の仲通りの入り口にあるお花屋さんへ。
昨年と同じように南天の枝を3本と、緑色の菊を5本、門松用に松の枝を二本買った。
そこで店の人と話していると、奥の方にとても綺麗なオンシジュームが目に入った。
「今日のオンシジュームはとてもいい状態ですよ」
その一言に負けてオンシジュームを3本一緒に持ち帰った。
正月飾りや正月花は、12月27日や28日に飾るのがいいようで、今年はなんとか28日に飾ることができた。
リビングダイニングには、南天と菊で正月らしく豪華に。
玄関には、繊細なオンシジュームの花を飾った。
オンシジュームの花は、まるでチェンバロの音色のように、今まで家になかった華やかさを演出してくれている。

Kのハッピーバースデー。

12月22日が僕の誕生日で、24.25日とクリスマスがあり、27日はKの誕生日。
僕たちはつきあいだしてから、大抵一緒に誕生日をお祝いしているので、今年も27日になる頃にはケーキを2回くらい食べていたので、誕生日にはケーキはいらないと言われていた。
27日の午後に、晩ごはん何にしようか?とKに聞くと、「アスパラとベーコンのクリームパスタ」という返事が返ってきた。このところ仕事でバタバタとしている僕を、簡単なメニューで気遣ったのだろう。
帰りがけ、近所のケーキ屋さんを覗くと、小さなロールケーキがまだ売れ残って並んでいた。甘い物好きのKの顔を思い浮かべたら、きっとケーキがあったら喜ぶだろうな…と思い、買って帰ることに。33歳を祝うために、ロウソクも3本。
イタリアンを手早く料理しているとすぐに帰ってきたKは、喜んでアヒージョやロメインレタスのサラダ、アスパラとベーコンのパスタを食べてくれた。
洗い物をした後に部屋の電気を消して、小さなロールケーキに3本のロウソクを刺して灯をともした。
僕の下手くそなハッピーバースデーの歌を聞きながら、うれしそうにKはロウソクの火を消した。

KLEEN KING

愛用している『クリステル』のステンレス鍋が、ひとつ焦げ付きがあり、何をやっても取ることが出来ず諦めかけていたところ、先日三越本店に行った時に販売員さんからいい情報を得た。
「『クリステル』の焦げ付きを取るなら、他社の出しているクレンザーが傷がつかなくていいですよ。たとえば、VITA CRAFT とか、WMFとか」
元々普通のクレンザーは、多重式のステンレス鍋には不向きとされていたので驚いたのだけど、お店の人が言うのならばやってみる価値はあるかもしれない。
お店で売っていないので、ビタクラフトのものをネットで頼み、届くなり夕食の後に半信半疑で試してみると、今まではビクともしなかった焦げ付きが、驚くほど綺麗に落ちていった。
鍋の焦げ付きが落ちていくだけで完璧な幸福感に浸っている僕を見ながら、Kは半ばあきれていた。

濱田屋

クリスマスには、なぜか鶏肉が食べたくなる。
昨年は福岡で、『蕎麦喰 いまとみ』へ鴨鍋を食べに行ったのだけど、今年は『濱田屋』で、水炊きにした。
この『濱田屋』、前回仕事で訪れた時にも来たのだけど、大将は昔水炊きの名店『水月』
にいた料理長だそうで、上質な水炊きが食べられる。
学生さんのアルバイトはとても話しやすく、店内はクリスマスで混んでいたのだけど、全く日本語のわからない外国人に対しても、「浮き上がって来て三分間たったら食べられますから」などと、完全な日本語で説明していて笑ってしまった。
コースにすると、唐揚げや鴨ロースがついてくるし、全体的に見てほかの水炊き屋さんよりも量がしっかりあると思う。
ポン酢ではなく、山口の橙を使った白い梅酢のようなものがほんの少し酸味が強いけど、アッサリとしていて食べやすい。
⭐️濱田屋 店屋町店
050-5570-6520
福岡県福岡市博多区店屋町3-33
https://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400101/40033524/

ピッツェリア・ダ・ガエターノ

生ハムと水牛のモッツァレラ)

ガエタ

ラザニアと言う名のピザ

クリスマスイブは、毎年のように訪れている薬院にある『ピッツェリア・ダ・ガエターノ』へ。
ナポリ近くのイスキア島にあるピザの名店『ダ・ガエターノ』が、世界で唯一認めた店だという。
ランチは予約はできないので、開店前11時半少し前に行くと、お客さんはちらほら待っていた。
お店に入ると、まるでイタリアに来たような空気感に鼻息が荒くなる。
メニューを広げると、何を食べようか毎回迷ってしまうのだけど、今回は、生ハムにモッツアレラと、コロッケを前菜に。
ピザは本日のピザであるアンチョビやケーパーの乗っている『ガエタ』と、迷った挙句『ラザニア』という名のピザを。
このお店は、店員さんと話しながらメニューやワインを選ぶのが楽しいのと、何を選んでも美味しいので感心する。
「美味しい」というのは、こういうことなんだと、食べた時に感じることがたまにあるけど、このお店もそんなお店のひとつ。
いつもいたイケメンの店員さんが退職していたのが残念。
⭐️ピッツェリア・ダ・ガエターノ
050-5869-3400
福岡県福岡市中央区渡辺通り2-7-14 パグ ーロ薬院1階
https://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400104/40028105/

ツインの部屋で眠る時に。

ツインの部屋のホテルで眠る時は、眠るベッドをひとつ決めると、トイレに行く僕が通路側に寝て、壁側にKが寝ることになる。
ベッドはふたつあるのに、Kはいつも当たり前のように一緒に寝ようとする。
ホテルによってはベッドは小さく、大の男ふたりで寝るには小さくて寝返りも打ちにくいと思うようなベッドでも、Kは気にすることもない。
時々Kの脚が僕の足の上に乗っかってきたり、肘が僕の身体に当たったりして夜中にトイレに立つ時も、Kは起きることもなくスヤスヤ寝ている。
そんな寝顔を見ながら、僕たちがまだ東京と大分に離れて住んでいた時の、Kの部屋のベッドを思い出す。
幅が120センチくらいしかないKのシングルのベッドにふたり仲良く寝た日々を。
僕が落っこちてしまわないようにと、壁側に僕を寄せて、僕たちの顔の上には、Kのまだ乾いていない洗濯物がかかっていた…。
これから先、ふたりが年をとっても、いつまでもこうして、小さなベッドでふたりで眠れるようであったらいいな。

七男鳥で、ハッピーバースデー。

七男鳥で飲んでいたら、こないだの夏に七男鳥のみんなで行った壱岐旅行で知り合った人たちが何人かいてみんなが温かく迎えてくれた。
その中のGさんが突然言い出したのだ。
「ただしさん、そろそろ誕生日だったよね?あれ?もしかして今日?」
「え?そんな話したっけ???
実は、今日なんです…」
「ほらね!やっぱり!前に聞いたから…」
その後しばらく楽しく飲んでいたら、いきなりドリカムのクリスマスソングがかかって、小さなケーキが運ばれて来た。Gさんが誰かにケーキを買いに行かせたのだ。
予期せぬ誕生日の温かいお祝いに驚きながらも、福岡のみんなのやさしさに触れた一夜だった。