ついにKを、ぺんぺん草に。

実は、Kが東京にやって来てから、僕はぺんぺん草に顔を出していなかった。
Kが東京にやってきて、3ヶ月めに突入したのだけど、ほとんど会社の用事がない限り、仕事が終わればまずまっすぐ家に帰り、ご飯を作り、ふたりでご飯を食べながら、夕方から夜の時間をのんびりと家で過ごすようにしていたからだ。
僕にとって、Kが東京の生活に慣れるまでの期間は、きちんと気を遣わなくてはいけないような気がして、僕の行動の中でも、なによりもKのことを最優先してきた。そしてそれは、朝起きてから夜寝るまで、ほとんど一緒にふたりで過ごすことであったのだけど、考えてみたら、こんなに長く一緒に誰かと過ごすなんて、自分の親以外になかった気がする。
ぺんぺん草には、そのうちに連れて行こうとは思っていたのだけど、中にはうるさい輩もいるので、常連客でごった返す時間は避けたいと思っていたのだ。
ぺんぺん草のひろしさんが、いったいどんな反応をするのだろうか・・・
「この女はね・・・ろくでもない人間なのよ。あんたはこの女にだまされてるわ!」
と、Kに言うに違いない。(笑)ぺんぺん草の違法建築の階段を上がると、ひろしさんはちょっと驚いた顔をした。
「あれ?この子なの・・・?
私はもっとデブかと思ったわ」
なんでも、以前ここにあげたKがソファに寝ている写真を覚えていたようで、身体しか写っていないのに、どうやら太っている人だと思っていたようだ。
「まあ・・・いいわね・・・
つかの間の幸せって・・・」
そんなひろしさんのセリフを聞いて、僕もKもゲラゲラ笑って、周りにいたお客さんも一斉に笑っていた。
久しぶりのぺんぺん草は、相変わらずの常連客ばかりだったのだけど、どうやら無事にKのお披露目が済んだのでした。

立吉

新宿三丁目のルイ・ヴイトンの入っているセゾンビルの横のビル9階にあり、場所がとても便利なのだけど、予約が出来ない串揚げ屋さん『立吉(たつきち)』は、いつも混んでいる。
ただ、実際に並んでみると、串揚げは結構回転が早く、20分くらいで座れることが多いようだ。(週末の人で溢れている時は、50分待ちなどと言われる)
50分待ちはともかく、20分くらいなら、それをしてでもここで並んで串カツや串揚げを食べる価値は十分にある。
清潔なカウンターに座ると、お通しが出され、その後、揚げ物が一つずつ運ばれてくる。一つ食べ終えたら、少しして出してくれる間合いもいい。(串の坊だと、次から次へ出て来るので、焦らされることがある)
アスパラも、エビも、キスも文句無く美味しい。
一本一本の串が、串の坊のように凝り過ぎていないのもいいのかもしれない。重たすぎず、違う種類の串を本数多く食べることが出来る。
何杯もお酒を飲み、楽しいおしゃべりをしながら串揚げをつまむ。お会計は二人で7500円くらいだっただろうか?これでも大阪に比べたら高いのだろうけど、東京でこの値段で串揚げが食べられるのならとてもリーズナブルなのではないだろうか?
★立吉http://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13011911/

西門食房

点心

台湾風唐揚げ

空芯菜

食通の台湾人の友達と台湾通の友人が揃ってオススメしていた台湾料理店『西門食房』へ。
場所は新宿西口、ビルの2階。このビルの4階は、行ったことはないのだけどゲイバーだということだ。
店内はとても清潔で、人の良さそうなおじさんがホールにいる。この人だけが日本人で、厨房もホールも、他は全て台湾人だという。
まず特筆すべきは小龍包。鼎泰豊のように皮は薄くはないが、中身もスープもとても美味しい。小龍包以外の点心も、それぞれ美味しい。
大根餅は柔らかく、素朴な味わい。
台湾風唐揚げは、台湾に来たのかと思うような香りがする。
空芯菜の炒め物は、干しエビが入っていて、塩味も薄めでちょうどいい。
事前にコースを予約しておくと、10パーセントの割引が適用される。たらふく食べて、飲み放題までつけて一人4500円。なんと豊かでリーズナブルな店だろうか。
台湾料理が食べたくなったら、迷わずここへ来るといい。
★西門食房
03-3227-0120
東京都新宿区西新宿7-11-16 新宿プラスワンビル 2F
http://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13137585/

スノーホワイト 氷の王国

シャーリーズ・セロンが、意地悪く恐ろしい(ゲイ好みな)女王をやっていた前作のスノーホワイトが面白かったので、今回もKと楽しみに見に行った。
今回は前作より更に前の話で、スーパービッチのシャーリーズ・セロンに、美しい妹(エミリー・ブラント)がいたというお話。
スノーホワイトというタイトルだったので、お姫様好きの僕としては、白雪姫(クリスティン・スチュワート)も出てくるのかと思ったら、白雪姫は一切出てこないのだった。
なんと、名女優ジェシカ・チャスティンとオーストラリアが誇る美男子クリス・ヘムズワースの純愛を基軸に、美しく儚い氷の女王とスーパービッチのシャーリーズ・セロンの姉妹の恐ろしいストーリー。
この映画を見て思ったことは、お姫様と王子様の出てくるおとぎ話も素敵だけど、酷く傷つき孤独になり、絶望の淵で生きる氷の女王の話は、また別の形で人の心を捉えて離さない、ある種の人間の普遍性が潜んでいたということ。
マレフィセントの制作スタッフが関わったと言うけど、マレフィセントよりも断然良くできていると思う。先の読めない脚本も素晴らしい。
シャーリーズ・セロンの恐ろしい魔女ぶりは更に凄みを増しているし、エミリー・ブラントの美しさは彼女の背負っている悲しみを際立たせている。
クリス・ヘムズワースの笑顔は胸を掴むし、ジェシカ・チャスティンはどんな映画に出ても、その役になりきっているところがすごい。
最後まで息をつかせぬほど楽しませてくれる、エンタテインメント映画。
★スノーホワイト 氷の王国http://snow-movie.jp/sp/

小さなカレンダー。

先日、福岡県の糸島に行った際に、日めくりカレンダーを買い求めた。
毎日、この日めくりカレンダーをめくるのが楽しみで、今日は何が書いてあるのだろう…と思う。
それは、糸島に住む虫や動物のことであったり、その時にやった方がいい植物の手入れだったり、旬の食べ物の話だったりする。
小さなカレンダーは、ほんのささやかな糸島のことばかり書いてあるのに、それを読んでいると、自分たちがこの広い地球でたくさんの虫や動物や植物たちと生きているのだということを思い出させてくれる。

ふたりで作るごはん。

もう20年近く使っている中川一辺陶の黒楽

家では、いつも僕がご飯を作る。
Kは僕の作業する姿を見ながら、自分が出来そうな部分はすかさず手伝ってくれる。
僕がお米を精米機にかけると、Kがボウルを出してくれる。精米したお米を計量カップで測り、ボウルに入れると、Kが水を入れお米を研いでくれて、浸水時間のタイマーをしかけてくれる。
僕がメインの魚や肉の料理、煮浸しなんかを作っていると、Kは、僕の横で豆腐を水切りしたり、豆腐を切ってお皿に盛りつけたり。生姜を擦ったり、わさびを擦ったり…。
時間が来たら、土鍋にお水を測って入れてお米を入れて、強火にかけてくれる。
僕は、料理を着々と仕上げていて、ちょうどご飯の炊き上がりに合わせようと料理を段取り良く進める。
メインの魚や副菜が出来て、味噌汁も煮立てないように味噌を溶かした時にちょうどご飯が蒸らし終わり、Kが土鍋の蓋を開けて、ご飯をしゃもじでかき回した時に言った。
K「あれ?今日のごはん、水分が多くてお粥みたい…」
僕「あれ?Kちゃん、お水の量、測り間違えたんじゃない?」
K「あ、ただしくん、精米したお米、1号入れ忘れたんじゃない⁇」
僕「え?!じゃあ、1号のお米に、2号分の水で炊いたってこと???」
ごはんは確かにお粥のように柔らかく、水分をたくさん含んでいた。そして僕は、そのごはんを口にするなり言った。
「あれ?このごはん、美味しい…」
僕たちは、そんなお粥のようなごはんを、「美味しいね」「美味しいね」と言って食べたのだった。
普通ならこんなごはんが出来たら、「あああ、今日のごはんは失敗したー!」と残念に思うのだろう。でも、土鍋で炊いたごはんは、たとえ分量を間違えて柔らかく炊いてしまったとしても、お米自体がほのかに甘く、なんとも言えない旨味が感じられるのだ。
ふたりで作るごはんは、いつも美味しい。
★中川一辺陶http://www.kumoi.jp

しま村の合わせ味噌。

家の味噌は、旅行の時に美味しそうな味噌に出会ったら、買い求めるようにしている。
しょっちゅう違う味噌を買い求めては、試してみるのがとても面白いし、旅行で行った場所に思いを馳せるのが好きなのだ。
味噌は保存が効くので、もし食べてみて合わない場合は、味噌床に使えばすぐに消費出来る。
そんな中で、我が家の定番になりつつある味噌は、京都で出会った『しま村』の合わせ味噌。京都と言えば、白味噌文化なのだけど、ここの合わせ味噌は、濃すぎず、甘すぎず、それでいて豊かな味わいがあり、飲んだ後にもすっきりとしている。
後で知ったことなのだけど、僕が京都で20年近く訪れている『なかひがし』の大将も、ここの合わせ味噌をおすすめしているとのこと。
★しま村http://www.simamura.com

道具。

これ、なーんだ?
(上の刃が、実は二枚刃になっている)
答えは、グレープフルーツ用のナイフ。
真っ二つに切ったグレープフルーツの断面を、まずは、センターから甘皮を二枚刃で挟みながらナイフを入れる。
1回転甘皮を切ったら、今度はナイフを裏返して、周りの皮と身を話すようにナイフをグレープフルーツの丸みに沿わせるように入れてゆく。
なんだか工程が面倒くさく感じられるけど、実際にやってみると、とても簡単にグレープフルーツの身が外れるのだ。
お酒を飲んだ翌日に、グレープフルーツが食べたくなるのは、僕だけだろうか…。

お墓参り。

週末、金曜日はMのお母さんのお通夜、土曜日は元恋人のお墓参り、日曜日は、義父の病死した前妻のお墓参りという、はからずとも死者を弔う三日間だった。
よく晴れた日曜日、母の家に向かった。
母は、僕が高校の時に父と離婚をして、その後、僕が働きはじめてから今の義父と再婚をした。子どものいない義父は、最初は抵抗があったであろうが、日頃から僕と兄を気遣い、自分の子どものように見守りながら、少しずつ距離を縮めてきたのだ。
お墓は穏やかな高台にあり、鳥がさえずり鳴いていた。お墓参りののち、義父は苑内を案内しながら、最後に無縁仏のあつまる大きなお墓の前に来た。
「ただしさん、ただしさんの後に、もし誰もお墓を見守る人がいなくなった時に、私たちをこの無縁仏のところに移してくださいね」
義父は、僕がもう女性とは結婚しないであろうことを勘づいていたのだ。
子どもの頃は、お墓参りが嫌いで、祖母が朝から張り切っているのを横目に見ながら、こないだ行ったばかりなのに、なんでまた誰もいないお墓なんかに行くのだろう・・・と疑問に思ったものだった。
やがて年を重ね、自分の周りのたいせつな人を亡くすようになってから、やっとお墓参りの意味が少しずつわかりはじめてきた。
自分にとってたいせつな人は、亡くなったからといって自分の中から完全にいなくなるわけではないのだ。むしろ、自分の中に静かに留まり、いつもそばにいるような気さえする。
お墓参りは、そんなたいせつな人に思いを馳せ、自分の今の人生を報告するような、そんなことだったのだ。

一保堂の麦茶。

京都の寺町通に、『一保堂』という老舗のお茶屋さんがある。
煎茶や抹茶が甘みがありとても美味しいのだけど(番茶は少し濃いので好みではない)、実はここの麦茶を昔から愛用している。
2ℓのお湯を沸かし火を止め、そこへ大さじ5杯の麦茶を入れて蓋をする。30分置いて別の容器に麦茶だけ移し替えて、冷めたら冷蔵庫へ。
煮出した麦茶だと渋みや苦みが立って来るのだけど、この麦茶はすっきりとしていて苦みが少なく、飲んだ後も残らない。
これからの蒸し暑い季節、炭酸水とともに一保堂のすっきりとした麦茶が冷蔵庫にあるとほっとするのだ。