ふたりで作るごはん。

もう20年近く使っている中川一辺陶の黒楽

家では、いつも僕がご飯を作る。
Kは僕の作業する姿を見ながら、自分が出来そうな部分はすかさず手伝ってくれる。
僕がお米を精米機にかけると、Kがボウルを出してくれる。精米したお米を計量カップで測り、ボウルに入れると、Kが水を入れお米を研いでくれて、浸水時間のタイマーをしかけてくれる。
僕がメインの魚や肉の料理、煮浸しなんかを作っていると、Kは、僕の横で豆腐を水切りしたり、豆腐を切ってお皿に盛りつけたり。生姜を擦ったり、わさびを擦ったり…。
時間が来たら、土鍋にお水を測って入れてお米を入れて、強火にかけてくれる。
僕は、料理を着々と仕上げていて、ちょうどご飯の炊き上がりに合わせようと料理を段取り良く進める。
メインの魚や副菜が出来て、味噌汁も煮立てないように味噌を溶かした時にちょうどご飯が蒸らし終わり、Kが土鍋の蓋を開けて、ご飯をしゃもじでかき回した時に言った。
K「あれ?今日のごはん、水分が多くてお粥みたい…」
僕「あれ?Kちゃん、お水の量、測り間違えたんじゃない?」
K「あ、ただしくん、精米したお米、1号入れ忘れたんじゃない⁇」
僕「え?!じゃあ、1号のお米に、2号分の水で炊いたってこと???」
ごはんは確かにお粥のように柔らかく、水分をたくさん含んでいた。そして僕は、そのごはんを口にするなり言った。
「あれ?このごはん、美味しい…」
僕たちは、そんなお粥のようなごはんを、「美味しいね」「美味しいね」と言って食べたのだった。
普通ならこんなごはんが出来たら、「あああ、今日のごはんは失敗したー!」と残念に思うのだろう。でも、土鍋で炊いたごはんは、たとえ分量を間違えて柔らかく炊いてしまったとしても、お米自体がほのかに甘く、なんとも言えない旨味が感じられるのだ。
ふたりで作るごはんは、いつも美味しい。
★中川一辺陶http://www.kumoi.jp
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