たく庵

かぶと梨の胡麻和え

しらすと青唐辛子のオムレツ

タコとトマトとパクチー炒め

食べログを見ていて、「このお店はきっといい店だろうな…」という嗅覚だけで、四谷三丁目にある『たく庵』を予約した。
カウンターが10席程度だろうか?手前に掘りごたつ風のテーブル席があり6人くらい座れるようになっている。
カウンターの中では、意外に若い大将が寡黙にお料理を作り続けており、その隣に意志の強そうな奥さんがサービスを切り盛りしている。
かぼすサワーをいただくと、うすはりのようなグラスに、見るからに美味しそうなかぼすサワーが出てきた。
ポテサラは、卵の黄身が濃く、塩気もきちっとしてあるし、かぶと梨の胡麻和えは意外な組み合わせだけど妙に美味しい。
しらすと青唐辛子のオムレツは、懐かしい味の中に青唐辛子の辛味が効いていて、そうこうしているうちに素晴らしいお造りが運ばれてきた。
鰤のフライにはタルタルソース、そしてタコとトマトとパクチー炒めは、絶妙な組み合わせがとても美味しかった。
やっぱりこのお店、近くにあったらもっと頻繁に来たいと思う、素晴らしいカウンター居酒屋さんだったのでした。再訪マル必。
⭐️たく庵
03-3357-0543
東京都新宿区四谷3-13-1 大高ビル B1F
https://tabelog.com/tokyo/A1309/A130903/13113268/

バリ島旅行記vol.13(お土産は、Puspita)

全部試着してから買った(ウソです)

バリ島旅行の最後の日に、Kと二人でタクシーを飛ばしてスミニャックの町まで。
お目当ては、『PUSPITAプスピタ』という日本人デザイナーによる女性服屋さん。お店はウブドにもあるというけど、滞在先に近いスミニャックは9時くらいまで開いていて、通りの他のお店もクタとは違ってお洒落なお店が多い。
店内は狭いのだけど、厳選された美しいバリ島ならではのプリントが並んでいる。バリ島のバティックプリントなどは、気をつけないと旅先で良いと思っても日本に帰って着るとなんだかおかしな民族衣装のようになってしまうのだけど、ここのはその辺の計算がきちんとなされている。
母へのプレゼントと女の子の友人の誕生日プレゼントを探しに来たのだけど、僕の陰でKはお母さんへの贈り物を考えている様子。
僕は、女の子の洋服も選ぶのが早い。見た瞬間にこれが似合うだろうと思うからだ。無事にふたりへの贈り物を選んだら、今度はKのお母さんへの贈り物をふたりで吟味する。
僕が、「これは?これも綺麗じゃん!」とすすめる洋服を、「ただしくんのお母さんのように、うちは派手ではないの!」と言って地味な色を探している。
結局、首に巻く美しい水色のシルクのスカーフを選んで、Kはとてもうれしそうだった。
この店、素敵ですよ。
⭐️PUSPITAhttp://www.checkinnbali.com/shop/detail.php?id=279

Bridge 10周年パーティー

僕のホームバーである新宿二丁目のブリッジが、10周年を迎えた。
パーティーは今週末の金曜日・土曜日の二日間。
当日は4000円飲み放題で、今年はマスターやスタッフが7月から猛特訓したミュージカルと映像の合体作品『明日、またBridgeで』が見られるそうだ。
僕も楽しみにしています!
⭐️Bridge10周年パーティー
9月29日(金)・30日(土)
『明日、またBridgeで』
●第1部22時 ●第2部 0時 ●第3部 2時
すべてを見てストーリーが完結するようになっていて、3回ともご覧になるお客さんも多く予想されます。10周年ということもあり、かなり多くのお客さんがいらっしゃることが予想され、各回の30分くらい前には店に入られていることをお勧めします。http://bar-bridge.seesaa.net/s/article/453515181.html

カンタンな、SIMフリーへの乗り換え方。

SIMフリーのiPhoneにしようと思ったのは、ドコモの毎月の支払いが1万円を越えていたこと、そのくせドコモショップにお世話になることは皆無なこと。海外に行く時にWi-Fiルーターを借りると馬鹿にならない金額になること。そして考えてみると自分がほとんど電話をしないと気づいたから。(今ではほとんどネット回線で事足りてしまう)
画面がつかめなくなってきているおんぼろiPhone6プラスを見ていたら耐えきれず、バリ島に向かう空港で、発作的にiPhone8プラスをアップルのホームページから買ってしまった。
でも、買ってから気がついたのだけど、実際にSIMフリーのスマホに替えるということが、いったいどんな手続きが必要なのか、どこで契約をするのか、それさえも全くわからなかったのだ。(ゲイは機械関係に弱い)
バリ島から帰るや否や、届いていたiPhoneに焦り、この手のことに異常に詳しい友人Oに『助けて!LINE』を入れた。
そして、Oの信じられないような忍耐強い説明のお陰で、ほんの少し手間取ったけど、なんとか無事にiPhone8プラスに接続出来たのだ。
そこで、新しくSIMフリーのスマホにしようと思っている人のために、参考になればと思いここで簡単に流れを書いておこうと思う。(こんなことはネット調べればわかるのだけど、僕はとにかくこの手のIT関連の文章を読むのが苦手なのだ)
〈カンタンな、SIMフリーへの切り替え方〉
⭐️1.今使っているスマホのバックアップをきちんと取っておく。(いつもはiMac でバックアップを取っていたが、今回はiCloudに繋げてバックアップを取っただけ。これで十分)
⭐️2.LINEのアカウントをきちんと設定しておく。(後から全ての連絡先ややりとりが復元される)
⭐️3.気に入ったスマホを買う。(僕の場合はiPhone8プラスをアップルで買った)これは、次の契約先でも買える。
⭐️4.格安SIMの会社を決める。(この手の各社比較を読むのも嫌なので、Oの言うままmineo (マイネオ)に。ずっとミネオだと思っていた…。ミネオは渋谷のセンター街に店舗がある)
⭐️5.MNP予約番号を手に入れる。(ドコモなりソフトバンクに電話をかけて、今までの電話番号を引き継ぐために、MNP予約番号を教えてもらうこと(今解約するといくらかかるなど脅されるが、怯んではいけない)
⭐️6.クレジットカード、メールアドレス、MNP予約番号、免許証を持って行き契約をしてSIMカードを手に入れる。SIMカードを新しいスマホに入れて、カンタンな設定をして終了。iCloudからはすぐにデータが戻ってくる。
❌SIMフリーにするデメリットとしてあげられることは、ミネオの場合は12時から13時の通信速度が若干遅くなるということ。
また、電話を沢山かける人には不向きという情報もあるけど、10月から10分かけ放題プランや、LaLaコールなどのミネオのアプリがあるので、電話に関するストレスはほぼないと言われている。
⭕️利点としては、僕の場合、毎月の料金が1000円くらいで1年間はすみそうだということ。1年間は毎月900円引きキャンペーンをやっているのだ。(ドコモは毎月11000円なのでこれだけで既に1年間で12万円もお得)
今も、大阪出張の新幹線の中から使っているが、サクサク動いてくれてなんの不満も感じない。
今、心の底から思うことは、「なんでもっと早く、ドコモから切り替えなかったのか…」ということ。

小包。

バリ島から帰ってきた日に、Kのお兄さんから『かぼす』が届いた。
僕がかぼすを好きなことや、料理を僕が作っていることなんかを、もしかしたらお兄さんはKから聞いていて、送ってくれたのかもしれない。
かぼすの小包が届くや否や、今度はそのダンボールを使って、Kが実家にバリ島のお土産を詰めはじめた。
普段はほとんど実家に何かを送ったりしないKが、珍しくバリ島の最終日が近づくにつれて、「どこかでお土産を買いたい。お母さんにお土産を買いたいと」と呟いた。
最後の日に見つけたかわいい洋服屋さんで、女の人の洋服なんて選んだこともないKは、僕が母のお土産を選ぶ時に、誰よりも真剣な目をして一緒に見ていた。
そして、Kのお母さんが身につけそうなシルクのスカーフを慎重に選んで買ったときには、とてもうれしそうな顔をしていたっけ。
そのスカーフや、クッキーを丁寧に詰めて、お兄さんやお姉さんへのクッキーやチョコも詰めてパンパンに膨らんだダンボールを、Kはご両親に送るようだ。
お土産や、贈り物は、人の温もりが詰まっている。

二◯加屋長介 中目黒店

胡麻マグロ

ハムカツ揚げ

ゴボ天うどん

東京に帰って来てまず思ったことは、「博多のうどんが食べたい…」ということだった。
Kとふたり鼻息荒く、中目黒に出来ていた『うどん居酒屋 二◯加屋長介 中目黒店』へ。
メニューには、炙り明太子やら、いわし明太やら、もつ焼きやら、博多らしい料理が並んでいる。
いつもは、胡麻カンパチが売りのようだけど、この日は入荷ぎなく胡麻マグロ、自慢のキャベツの千切りのサラダ、手羽先の唐揚げ、ハムカツ揚げ、博多焼きとん、焼きピーマンなんかを頼む。
お酒を飲むにはとてもいいサイドメニューだと思う。胡麻マグロは、胡麻サバや胡麻カンパチとは違っていて、マグロと胡麻がなんとも溶け合っていなくてイマイチだった。
うどんは、Kは〈わかめうどん』、僕は福岡らしい『ゴボ天うどん』を。
うどんを食べたKがポツリと呟く。
「なんかちょっと麺がちがう…」
「どれどれ?ほんとだ。普通にコシがあるね」
僕たちは、福岡の『うどん平』に代表される、少し柔らかい(かといって伊勢うどんのようにブニョブニョではない)うどんを頭の中いっぱいに思い描いていたのだった。
それからすると、『二◯加屋長介 中目黒店』のうどんは、粉っぽいコシを残したどこにでもあるうどんだったのだ。
他のメニューがなかなか良かっただけに、少し拍子抜けして店を後にしたが、普通に飲むにはとても使いやすい居酒屋さん。
⭐︎二◯加屋長介 中目黒店
03-6452-4170
東京都目黒区上目黒3-5-29
https://tabelog.com/tokyo/A1317/A131701/13201618/

バリ島旅行記vol.12(バリの洗礼。その3)

海に捧げられるお供物

〈バリの洗礼。その3〉
ビーチで『世界一の時間http://jingumae.petit.cc/banana/2732824』を過ごした後、僕たちはヴィラに帰って来た。タクシーのせいで昼ごはんが遅くなったので、予約していた素敵なお店での夕飯もキャンセルしていた。
晩ごはんまで時間があるので、Kがお土産を買いたそうだったので、9時まで開いていそうなスミニャックの町までタクシーで出かけることに。この日は祭日のためブルーバードは満車。ホテルで呼んだタクシーはブルーバードではなく、案の定ホテルを曲がったところで僕たちに聞いて来た。
運転手「スミニャックまで200(1800円)だよ」
僕「100ならいいよ。でも、それ以上ならここで降りるぜ」
運転手「わかった。100(900円)だな」
Kは僕の横で、僕の手をギュッと握っていた。つきあいはじめて気がついたことだけど、Kは喧嘩や言い争いが嫌いなようだ。(もちろん、僕だって誰とも言い争いになんかなりたくはない)
お店に着いて、僕がタクシーの運転手に100を渡し、「ありがとう」と言うと、運転手も「ありがとう」と言った。
僕「彼らは、毎回値段交渉するのが日常なんだよ。悪気なんてサラサラないし、僕たちの国とは、ただ、違うだけなんだよね。面倒臭いけど」
K「うん。でも、いちいちたいへんだね」
お店では素晴らしいお土産が買えた(今度アップしますね)。そしてまたタクシーを捕まえて、この町で一番人気のインドネシア創作料理の店を目指すことに。タクシーを捕まえるとなるとまたKが緊張しているのがわかった。
行きたい方向のタクシーは来なかったので、今度は果敢に反対方向のタクシーに手を挙げると、若いタクシーの運転手と目が合って、クラクションを鳴らして止まってくれた。僕たちは車を止めて、反対車線に渡って行ってドアを開けた。
車に乗ると、運良くブルーバードタクシーだった。運転手さんは目がキラキラしていて、僕たちに日本人ですか?と訪ねて来た。そうだと答えると嬉しそうに片言の日本語を話し、そして英語で色々話し始めた。
運転手さんはどうやら、北海道の学校にアニメを勉強するために留学していたらしい。そして、雪を見てどんなに感動したか、僕たちに熱く話しかけるのだった。
僕は、先ほど会った運転手とのやりとりをざっと話した。300を200に交渉して乗った挙句、今度は目的地の手前で降ろして400と言って来たこと。レストランの前では、人がいるから問題になると考えたであろうことなど。
運転手さんはびっくりして、と言うよりも驚いて、「ブルーバードタクシーでは考えられない値段だ。彼はクレイジーに違いない」と言った。
その後も、ブルーバードはインドネシア全土にあり、圧倒的に一番で、一人ひとりきちんと教育されていることなんかを話してくれた。Kは彼の話を聞きながらうれしそうに僕の手を握っていた。
バリ島から帰って来て今思うことは、どんな国にだって、いい人と悪い人がいるということ。今回のバリ島のでの出来事は、インドネシアと日本とのあらゆる違いを考えさせてくれるいいきっかけになったとも思っている。
色々な経験をしてひとつ言えることは、それでも僕たちは、バリ島に恋をしてしまったということだ。
〈おしまい〉

バリ島旅行記vol.11(バリの洗礼三部作。その2)

KUTAのビーチ

〈バリの洗礼。その2〉
車に乗り込むと運転手は、「スミニャックまでなら、今日は道がものすごい混んでいるから、300(2700円)だね」
僕「それじゃあ、いいや」
運転手「わかった。200(1800円)で手を打とう」
僕「しょうがない。200ね。」
運転手「俺はタバコがないと行きていけないから吸ったままでいいか?」
確かに道は激混みだった。混んでいるから道の途中で、運転手は何度も舌打ちをしたり、こんなに混んでたら2時間かかっちまうよ」などと呟いていた。
目的地のレストランが近づいて来ると、運転手が僕たちに言った。「混みすぎているから手前の交差点で降ろしてもいいか?」僕は「いいよ」と答え、車は交差点を曲がって止まった。不穏な空気を感じた僕は、Kを先に降ろした。
僕「はい。200ね。ありがとう」
運転手「道が混んでたから400だ」
僕「乗る前に200と決めただろ。それが嫌なら、今すぐ警察呼ぶぞ!」
運転手「400」
僕「ふざけんな!お前なんか200でも高過ぎだ!警察行こうぜ!」
運転手「わかったよ。わかったよ。じゃあ200でいいよ」
僕は怒って車を降りた。Kは車の中で何があったのかわからずに怯えていた。
僕「ああいうろくでもない奴がいるのも、バリ島の現実なんだよ。K」
昼ごはんは素晴らしく、歩いてヴィラに帰り、シャワーを浴びてKはそのままベッドに横になってしまった。そして、「Kちゃん、すごく疲れちゃった・・・こなままだと脱水症状になりそうだから、しばらくここで休みたい」と言った。
僕はそのまま海に向かいたかったけど、Kがバリ島での衝撃的な騙し合いに疲れてしまったことがわかり、一緒にヴィラでしばらく横になった。
恐るべし・・・というよりも、毎回交渉しながら値段を決めていくバリ島の習慣がひたすら面倒臭く感じられた。
<その3につづく>

バリ島旅行記vol.10(バリの洗礼三部作。その1)

2002テロ襲撃事件のモニュメント

被害者の中には日本人が2名いた

〈バリの洗礼。その1〉
バリ島での出来事が、すべて夢のように素晴らしかったわけではない。日本とは全く生活水準も宗教も習慣も違うインドネシアのバリ島というだけあって、ちょっと驚くようなことがあった。
最後の日に、僕たちは日本人の旅行客が集まるというKUTAという町に行った。KUTA自体はずいぶん昔に、波がとても高いことからサーファーが集まるようになり、その後に観光客が世界から押し寄せ、言うなれば日本のブーム時の熱海のようになった場所。
それが今では、バリ島の中心はKUTAからどんどんずっと北へ移動してしまい、今やKUTAは、時代に取り残された観光客相手のレストランか、ニセモノ屋しかないというのだ。
僕にはKUTAに対する興味はなかったのだけど、Kが見てみたいと言うのでタクシーを飛ばして行ってみた。ヴィラの手配で行きは真面目なブルーバード。それでもバリ島の祭日だったようで道が滅茶苦茶混んでいたので700円払った。
KUTAの町をしばらく歩いていると、通りの向こうからササっと巧妙に我々の前に歩み寄って来たおっさんが話しかけて来た。
おっさん「こんにちは。これからどこに行くんですか?」
K「あ、こんにちは。ビーチに行ってみようかと思って」
おっさん「海で泳ぐなら、KUTAよりもヌサドゥアの方がいいですよ。実は私は、横浜に住んでまして・・・」
僕「K!あっち行くよ!」
K「おじさん、横浜に住んでるんだって」
おっさん「あれ?僕は悪い人じゃないですよ。そっちの人は急に向こうに行っちゃいましたね」
僕「K!早くおいで。行くよ!」そこでKが仕方なくこちらにやってくる。
K「なんで?あの人日本に住んでるんだって日本語上手だよ・・・」
僕「海外で、日本語で話しかけてくる人は、まず間違いなく何かしらの思惑があるの。急に親切そうに日本語で話しかけて来て、巧妙に話題を変えて、結局は僕たちを騙してお金を取ろうとする人がほぼ100%だと思って間違いないからね」
そんなやり取りがあり、Kはシュンとしてしまった。勿論、日本語で声をかけてくるすべての外国人が悪い人でないかもしれない。でも、海外ではまず完全に疑ってかかることが重要だと僕の経験からは思っている。
パチくさいもの(偽物)だらけのお店と、観光客相手の不味そうなレストランの連続に飽き飽きしてビーチに着くと、これまた、サーフィンをしないか?パラソルで休まないか攻撃がはじまった。暑い太陽が照りつける中、2002年のバリ島のテロ事件があった慰霊碑まで行き、ふたりでお祈りをした。「これから先、二度とこのような事件が起こりませんように」
フラフラに歩き疲れて、KUTA自体にうんざりしてしまった僕は、なるべく早くこの町を離れて、僕たちの過ごしているスミニャックやクロボカンに帰ろうと思ったのだが、町中が異常な渋滞で、道を変えて探し回っても、一向に空車のタクシーが見つけられないのだ。
喉もカラカラに乾き、Kは呆然となったまま、僕たちはなんとかホテルを見つけてホテルに入って行った。そこで、フロントでタクシーを呼んでくれと頼んだのだが、数分後にやって来て、「今の時間はすべて満車のようで、全く捕まえられません」と言われて、またタクシー探しがはじまった。
今度は広い通りに出て、やっとのことで駐車場に止まっているタクシーを見つけたのだ。運転手は35歳くらいだろうか?タバコを吸いながら面倒臭そうに『どこまで?」と聞いて来た。
<その2へつづく>

バリ島旅行記vol.9(世界一の時間)

昔、あるブランドの海外におけるローンチ広告の仕事で、『世界一幸福な時間』が、地球上の同じ時間に、様々な都市で起きていたらいいなあ…とコンセプトを考えて、立案したことがある。そのキャンペーンは、『世界同一時刻』というテーマで実現された。
その時に、世界中を飛び回り、撮影をしながら思ったことは、「世界一の時間というものは、いったいどこにあるのだろう・・・」ということだった。
黄昏時のクロボカン(スミニャックの北)の浜辺で、僕たちはいつものようにバリ島最後の夕暮れの時間を過ごしていた。
犬を連れて白髪混じりの男と若い女のカップルが散歩をしている。
小さな子どもは、いつものように凧を夢中で上げている。
お母さんは、2歳くらいの小さな子どもを連れて、砂浜で遊んでいる。子どもは言うことを聞かずにすぐに好奇心のままに歩いて行ってしまう。
白人の女の人が、集まってきたたくさんの野犬に囲まれてパンをあげている。
おばあさんは今日もまた、バティックプリントの布を広げて、観光客に売ろうとしている。
サーフィンを教える真っ黒なバリ人の男は、海の家の片付けを手伝いながら、犬にいたずらをして自分のお尻を噛まれて逃げ回っている。
夕陽が最後の力を振り絞って、雲の間からその完璧な姿を見せ始めた時に、白人のおじいさんが僕に、「このスマホのカメラが今おかしくなっちゃったんだけど、わかるか?」と聞いて来た。見ると、スマホは勝手に動いていて、彼の娘や孫たちの撮り溜められた写真を自動的に再生していた。
僕はそのスマホを手にとってあれこれいじって何とかカメラモードを立ち上げ渡すと、おじいさんは写真を撮る前につぶやいた。
「ああ、美しさがいってしまう・・・」
おじいさんはこれほど年を取ってもまだ、目の前の海に沈んでゆく完璧な夕陽をなんとかカメラに収めたかったのだった。
それは、僕やあなたの、目の前で起こっていること。
夕陽を見つめているKの頬を撫でてみる。
世界一の時間は、僕たちのすぐ目の前にある。