口ぐせ。

僕が30代の頃10年間ともに生きたMの口ぐせは、『かわいそう』だった。
それも、本当にかわいそうに思った時に言うというのではなく、僕がMに何かを押しつけたり、意地悪なことを言ったりした時に自分につけて言うのだった。
「かわいそう…Mくん…」
それはどこか幼く頼りない子どものようで、Mの純粋な心を映しているような言葉に思えた。
それと、「してあげて!」と言うのもMの口ぐせだった。これは、何かを僕にやってくれとお願いする時に使う言葉で、例えば、レストランの予約や旅行の予約なんかを僕にやらせる時に言う言葉だった。
「京都のホテル予約してあげて!」
これも今思うと、子どもが母親に頼んでるように聞こえる…笑。
先日、今つきあっているKが、何の気なしに僕に言った。
「ただしくん、熊本のホテル、早く予約してあげて!」
そういえば先日、
「かわいそう…Kちゃん…」と言うこともあって、ハッとさせられたのだ。
知らないうちに僕がMの口ぐせを話していて、Kは、僕の話し言葉を聞きながら、自然にMの口ぐせを話していたのだ。
Mは、昨年亡くなってしまったのだけど、僕の毎日の中に、口ぐせとなってひょっこり現れることがある。
Kの口から出たMの口ぐせを聞くと、やさしいMが、今でも僕のすぐそばにいるような気がする。
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