オネエ言葉。

14歳からデビューしているくせに、実はオネエ言葉を話すことが出来ない。
何度も若い頃からやってみたのだけど、なんだかわざとらしく、女言葉への無意識の抵抗がそうさせるのか、とってつけたようになってしまう。
オネエ言葉は、ゲイの一つの誇るべき文化だと思う。
辛辣な言葉も、人を笑いものにするネタも、自分を貶めるネタも、意地悪でさえも、オネエ言葉を使うことによってどこか滑稽に聞こえ、どぎつさがやわらぐ。
昨日、Bridgeで隣に座った30歳の人は、流暢なオネエ言葉を操っていて感心した。外見もとても可愛く、一般的にとてもモテるタイプだと思う。
周りの人も本人も、「オネエじゃなければねえ…」と笑いにしていたけど、彼は、巧みなオネエ言葉ゆえに、特別に面白いキャラクターに感じられた。
同じくオネエの彼氏がいると話していたけど(彼氏の写真もイケメンだった)、二人でいる時は、どんな感じの会話をしているのか、プライベートの時はどんな話し方なのか、セックスの時もオネエ言葉なのか…とても気になってしまった。
身振り手振りで話す姿は、どこを切っても1000%くらいオネエさんだけど、何かの拍子で、ふとした時に男らしさが垣間見えたりしたら、相当グッとくるかもしれないなあ…などと、オネエ全開で話しまくるかわいい顔を見ながら思ってしまった。
オネエ言葉ってかわいいですね。改めて。

ペスト・ジェノヴェーゼ。

はじめて食べた時に、「世の中に、こんなに美味しいものがあったのか!」と、驚いた食べものに、ペスト・ジェノヴェーゼがある。
今でこそ、日本でも一般的になって来ているけど、学生の頃イタリアのジェノヴァからその周り、ラ・スペーツィアやチンクェ・テッレを旅した時に出会ったジェノヴェーゼの味は、はじめて出会った太陽の味がした。
いつもは自分で作るのだけど、自分なりのテイストに傾いている気がして、時々本場のイタリア食材屋さんからペストを買って食べてみる。写真のペストは、イタリアの食通たちが評価しているペスト。
家で作る時は、スイス製のバーミックス(ハンドミキサー)で一気に細かくするのだけど、本場のペストは、すり鉢で擦って作る。熱が入ってバジリコの緑が色褪せないように、ゆっくりと。
パスタは、トロフィエという、先が細くなったショートパスタがとても合う。
どんな時期の、どんな時間に食べたとしても、暑い夏をぎゅっと凝縮したようなバジルの香りに、陶酔してしまう。そして心の中で、我が故郷のイタリアをもう一度思い出す。
「世の中に、こんなに美味しいものがあったのか!」と。

マグレ カナール。

皮目に格子状に浅い切り込みを入れ塩胡椒

アルミホイルに包んで休ませて完成

中秋の名月は、美しい満月だった。家でブリードモーをつまみながら赤ワインを飲んで、何度も月を見に行った。
鴨が好きで、冷蔵庫には、作り置きしてあるコンフィが、冷凍庫には、マグレ カナールが常備してある。
マグレ カナールは、フォアグラを採取した鴨の胸肉。少し大型の鴨なので、胸肉もしっかりと量がある。
このマグレ カナール。食べてみるとわかるのだけど、そこはかとなくフォアグラの風味を遠くで感じるから不思議だ。高級食材と思いきや、実は1300円くらいで買うことが出来る。
ソースは、オレンジソース、バルサミコ蜂蜜ソース、醤油バルサミコなど、甘みを感じるソースを合わせることが多いけど、僕は甘過ぎるソースが苦手なので、バルサミコを煮詰めて赤ワイン少々加えて添えることが多い。
【マグレ カナール】
1.室温に戻した鴨を、皮目に斜めに薄く包丁の切れ目をクロスに入れ、きつめに塩胡椒をして30分以上おく。
2.フライパンに油は引かずに、皮目から焼き色をつけるように焼く。焼きながら、アロゼ(出てきた脂を、スプーンで何度も身にかける)
3.皮目に綺麗な焼き色がついたら、180度のオーブンに入れて、6分から10分(肉の大きさによる)
4.取り出してアルミホイルに包み、10分くらい寝かせて肉汁を落ち着かせる。
5.切り分けて、好みのソースを添える。

出来事は、自分の心の捉え方が決める。

ランチを食べようと店に入ったら、4人がけの席に座らされ、「もうひと方と相席になるけどいいですか?」と聞かれ、「いいですよ」と答えた。すぐに男性が入って来て、僕とは違う注文をした。
間も無く店員さんが、僕の所に、頼んでいないサラダを持って来て、「お待たせしましたセットのサラダです」と言うので、「僕のではないですよ」と答えた。驚くことに相席の人のでもなかった。
暫くしたら、今度はまた頼んでいない食事を持って僕の前で、「お待たせしました。Bセットです」と言われ、「僕のではないと思います」と答え、結局その品物は相席の人のものでもなく、店員さんは謝りもせずそそくさと奥に引っ込んでいった。
僕も、毎回間違ったものを持って来て、いちいち聞かれることにイライラして、帰りにレジで事の次第を注意しようかとふと考えたら、やがて頼んでいたものが来てくれた。
でも、「僕も疲れていて余裕がなかったんだろうな…」と思い直してみた。
そして。いつも通りに「ごちそうさまでした」と言って店を出た。
店を後にする時に気づいたことだけど、自分の気持ちが不思議なくらいスッキリとしていた。
もしもあの時、店員さんに注意をしていたらどうだっただろうか?
お店は今後、同じようなことが起こらないように努力はするかもしれない。でも、肝心の僕の心の中は、モヤモヤした言いようのない気持ちが残っていただろう…
人の行いを目の前にした時に、良い悪いと裁こうとしたり、怒りや憎しみ、嫉みなどを感じるのは、人間だからしょうがないことだろう。
でも、そんな時に難しいことかもしれないけど、自分の心の状態をじっくり観察してみる余裕が持てたらいいのかもしれない。
大抵、自分の心に余裕がなかったり、疲弊している場合が多いのではないだろうか?
目の前の出来事は、きっと、自分の心がそれをどう捉えるかによって、変わってくるのだろう。
もしも今度、同じようなことがあったら、「次はどんな違うメニューが来るかな!」と言って、笑えたらいいなぁ。(でも、もうその店に行かないというのが賢明かもしれないけど…笑)

あの頃、君を追いかけた

台湾と香港で爆発的なヒットとなったこの作品は、昨年の東京国際映画祭に来ていたのだけど、僕は旅行に行っていて、すっかり見逃していた。
先にことわっておくと、この作品、映画としては先が分かりすぎる脚本と、テレビ的な過剰演出のため、映画好きにはもの足りない作品だと思う。でも、それを差し引いたとしても、この映画を観に行く価値は十分にあると思える。
優等生の女の子と、悪ガキ高校生たちは、やがて進学、大学生活を経て、大人になってゆく。
同じ高校時代を送ったわけではないのに、なぜかわからないけど、この映画を観ながら、自分の高校時代のことを思い出して胸がせつなくなっていた。
この映画を観る人はきっと、この映画の中に、ある種の『普遍的な青春像』を感じて、僕と同じようにせつなさを感じるのではないだろうか?
あれほど純粋で、輝いていた時間が、かつて自分にも確かにあったのだ…と。
★あの頃、君を追いかけたhttp://www.u-picc.com/anokoro/
追記:
台湾映画では、なぜかこの手の『甘酸っぱい青春系映画』がジャンルとして確立しているように思える。数年前に観た『九月に降る風http://asia-republic.com/9wind/』は、今まで観た台湾青春映画でベストの作品だと思う。

台風の一日。

日曜日は『元永』の後、台湾映画祭に行き、一本『台湾人生』という映画を鑑賞、その夜に、本州へ向かう台風のどさくさに紛れて帰って来た。
福岡空港は、何便か遅延および欠航が続き、熊本からの東京便が欠航して、その分の乗客が福岡空港に押し寄せたり到着便が遅れて、いったい帰れるのかどうかと思ったが1時間遅れで酷い揺れの後、夜中に羽田空港に到着した。
僕が小さな頃は、東京にも台風がよく上陸したと思うのだけど、最近では久しぶり、しかも超大型。京都の川が氾濫したり様々な映像を見ていると、自然の力の凄まじさを改めて思い知る。
一日中家にいて、家にあるだけの食材で色々工夫して料理をするのは、僕にとってはとても楽しみなことだ。しばらく家を空けていたので、葉ものの野菜はないものの、根菜はあるし、冷凍庫に肉類はあるし、乾物はいつもこんな非常事態の味方だ。
ゴルゴンゾーラのピカンテが買ったままあったので、久しぶりにゴルゴンゾーラのソースでフジッリを食べてみた。昔、ゴルゴンゾーラを初めて口にした時に、『世の中に、こんなに美味しいものがあったのか?』と思った食材だ。ジェノベーゼを初めて口にした時も、同じように思ったのを憶えている。
料理を作りながらワインを飲んだり、本を読みながら好きな音楽をかけて家でのんびり過ごす時間は、究極に贅沢な時間だと思える。外は台風なのだ。こんな日に、あえて外に出かけてゆく必要などなにもない。
日頃は自然のことなんてすっかり忘れて毎日を過ごしているけれど、じっくりと自然の驚異を感じながら、家の中で過ごす休日もなかなかいいものだと思う。
願わくば、家に暖炉があって、大型犬がいて、ロッキングチェアがあって、隣に恋人がいて欲しいところ。

元永。

唐津の赤ウニと焼きなすのジュレ

アワビの天ぷら

松茸と鱧のお吸い物

最後のご飯は、昨夜の『欧割烹 清水』と並んで今回楽しみにしていた『元永』へ。このお店、福岡の食通の間では、常に話題になる店で、予約もなかなか難しかった。
赤坂のケヤキ通りを入った小さな店は、大将一人でやっている。6席しかない店内は、お昼は一回転、夜は二回転するらしい。
1.焼きなすと冷たい唐津のウニのジュレは、唐津の赤ウニがなぜこれほど愛されているのかがわかる。ウニ自体がしっかりとしている。
2.アワビの天ぷらは、肝と細かなオリーブがソースとして奥行きを与えている。周りの野菜の天ぷらも香ばしい。
3.松茸と鱧のお吸い物は、丁度傘が開く松茸のみが持つ柔らかさを残している。レタスと大根がアクセント。
4.天然の焼き蛤は、手を加えなくても十分に美味しい。
5.クエの刺身。
6.赤むつ鱧の卵ソースがけは、思わぬ一品。赤むつと豆腐が、鱧の卵ソースにより渾然一体となっていた。
7.焼き野菜と揚げ野菜。パルミジャーノのようにかかっているのは、栗の実だった。面白い発想。
8.海鰻のスモークは、スモークすることにより、鰻独特の臭みを感じさせなくすることと、驚くほどの柔らかさを表現していた。
9.松茸ご飯。傘の開いた柔らかい松茸。
10.梨のデザート。
新しい料理を探求している姿勢がとても面白い店。コスパも素晴らしい。京都の板前割烹と比べてはいけない、新しい創作和食のお店だ。
大将の謙虚な人柄は、また来店したいと思わせる温かさを感じさせる。
★元永http://s.tabelog.com/fukuoka/A4001/A400104/40028372/?lid=header_restaurant_detail_review_list

欧割烹 清水。

アワビとヒジキのハーモニー

フグとジャガイモとタプナード

高森牛トモサンカク

素晴らしい店だ。
最初の数品をいただきながら、この店、もしかしたら福岡一かもしれない…と期待に胸が膨らんだ。
『欧割烹 清水』は、大将がたった一人で切り盛りしていて、カウンター8席、一日三組限定のお客さんをもてなす。
素晴らしい野菜と、日本ならではの食材を生かしながら、日本料理で根幹をなす出汁の生かし方を、コンソメを使い、自由で新しい料理を実現している。58.4度で90分火を入れるという、フレンチの肉の火の入れ方を取り入れ、トモサンカクをメインで出すことで有名だ。
1.カボチャのジュレとウニのハーモニーは、驚かされる組み合わせ。
2.アワビとヒジキの微妙な磯の香りが重なり、日本人魂に訴えかける味。
3.フグの皮まで使った食感の違いを取り入れたお造りは、ジャガイモとタプナードで新しい料理を思わせる。
4.28の雑穀と松茸の蒸し寿司は、酸味が程よく食欲を刺激する。
5.コンソメで茶碗蒸しにした蒸し物は、黒胡椒で中華風に。
6.高森牛トモサンカクは、低温調理により驚くほど柔らかい。野菜が添えてあるけど、コンソメの味に浸されている。(これは野菜の味が死んでいるように思えた)
7.自家製麺を昆布の出汁で仕上げた煮麺は、最後に日本人には喜ばれる懐かしさ。
難点をあげるとすると、店は大将一人で切り盛りしているため、サービスは期待出来ない。
こういう変わった店特有の、食材や独自の調理法に対する自信からか、尊大な印象を与える(話をすると、そうでもない)。
付け合わせの野菜が、調理法に凝るあまり、野菜本来の力を失ってしまっているように感じる。(イタリア料理の真逆にある)
それでも、この店に予約をして行く価値があると思わせてくれる。今後どうなるのかとても楽しみな店だ。
★欧割烹 清水http://s.tabelog.com/fukuoka/A4001/A400105/40030996/

能古島(のこのしま)。

福岡の港からフェリーで10分の所に能古島という小さな島がある。
1周12キロという小さな島は特に何もないけど、小さいがゆえに人間の開発も少なく、豊かな自然が残る島だ。緑は生い茂り、海の青さも印象的だ。
朝からバスに乗り港に出て、フェリーに乗るとぐんぐん小さな島が近づいてくる。桜島のような雄大さはないものの、こじんまりとした島は不思議な温かさに包まれている。
檀 一雄に愛され、井上陽水の歌にもなったこの島は、行ってみるとその不思議な魅力を感じることが出来る。
人間が壊す前の美しい自然が残るこの島にいると、日本のかつての経済発展を重視してきた闇雲な生き方ではなく、自然との共生を考えた穏やかで賢い生き方が出来ないものかと思わざるをえない。
特産のアサリの出汁のしみたご飯を食べながら、緑や海を見ているだけで心がほどけていった。

Kが博多に来た。

特上刺身

明太子入り出し巻き卵

アラカブ

大分で仕事が終わったKが鼻息荒く、20:30頃博多に到着した。
食いしん坊のKは昨夜、「僕が行くまで、美味しいものは食べないであげて!」と、我儘なメールを送りつけていた。
9時くらいに『磯ぎよし』へ。
この店、福岡の魚系居酒屋の中では人気の店で、なかなか予約が取れない。
特上刺身は、様々な種類の新鮮な魚介類が乗って出てくる。Kは興奮して、カウンターの下で僕の手を握りしめてくる。
お寿司屋さんも大好きなようで、カウンターに並んで座ると、いつもカウンターの下で嬉しそうに僕の手を握ってくる。僕は、お店の人に見えるだろうなあ…と思いつつ、そのままにしておくのだけど、ちょっと恥ずかしい。
出し巻き卵も、明太子をトッピングしたり、居酒屋ならではのメニューも美味しい。
アラカブの煮付けが出る頃には、Kはほろ酔いで顔も赤くなり、満足そうに骨の隅々までしゃぶり尽くしていた。
Kは、美味しいものさえあれば、他は何も気にしない。
ほんとに単純な性格だ。
★磯ぎよしhttp://s.tabelog.com/fukuoka/A4001/A400104/40018853/