la table de province

野菜のテリーヌ

ジャガイモとサツマイモのビシソワーズ

的鯛のポワレ

福岡のフレンチで、常に上位にランクされる『ラターブルドプロヴァンス』でランチ。
店は赤坂の駅のほぼ真上で、大通りに面した店内は、奥行きがありゆったりとしている。
前菜の野菜のテリーヌは、野菜の甘みを閉じ込めていてまだ暑い季節には美味しく感じられた。テリーヌの写真をKに送ったら、「なにこれ?」っていう返事が来た。笑
ビシソワーズは、ジャガイモとサツマイモの二つの食材を使い、上に玉ねぎのホイップクリームが乗っていて、爽やかな野菜の持つ甘みを感じさせてくれた。
的鯛のポワレは、鯛自体がプリプリとしていて、脇に添えたリゾットも美味しかった。
東京の小洒落た場所に普通にある感じのフレンチレストランだ。メートルの自信満々なオーラがいい意味でサービスにも出ている。
★la table de province http://provence-fukuoka.com/

太郎源。

お造り

赤むつ(のどぐろ)の塩焼き

キスの天ぷら

福岡に仕事で来た。
長い間、毎年2回は博多に来ているし、スケジュール帳を見たら、この1年では6回くらい来ているみたい。福岡の店もかなり詳しくなってきたかもしれない。
魚料理に特化した店も、アラやフグを扱う高級店から居酒屋まで幅広いのだけど、そんな中で、手頃な値段で鮮度のいい魚を食べさせてくれる居酒屋が、福岡には沢山ある。その中の一つ、駅から近い『太郎源』にお邪魔した。
この店、立地もあるのか、いつ行っても常に満席だ。優しさが全身に滲み出ている大将と、後は学生の女の子のアルバイトが3人くらい着物を着て外を切り盛りしている。カウンターが数人座れて掘りごたつになっており、広間は畳。
お店の印象は、かなりラフでお客さんも大声でワイワイ食べている感じだけど、その日ごとにお造りの中身も違うし、季節によって様々な魚を食べることが出来る。
今回のように、僕が一人で行ったとしても、大将は気を遣って1/2の量とかで料理を作ってくれる。
接待に使うようなこ綺麗な店ではないけど、会計の時には大将が出てきて、丁寧にお見送りしてくれるところも素敵だと思う。
実は昨夜、Bridgeで隣合わせたTに、「おれ、明日から福岡なんだ」と言ったら「僕も明日は福岡なんです!」と言うので、夜は、東京の友人Tと一緒に「七男鳥」と「Compact」で飲んだ。
東京だと、僕は早い時間に飲んでいて、Tは遅い時間に飲みに出るので、二人で飲むこともほとんど無かったのだけど、こんな偶然ってなかなかいいですね。
Tからはいつも、エルメスの香水のような複雑な香りがしていた。

結婚したいと思える人。

後輩のWは、理系で、東京大学の大学院を出て、僕の会社のクリエーティブに配属された。長野県出身、まっすぐで嘘をつかず、天パーで、外見はとても地味だ。
Wと打ち合わせをしているとほっとするし、長く一緒にいても心地よくいられる。
Wは、入社以来彼女が出来ず、彼女が出来てもあまりにも酷いふられ方をするので、酒の席では、いつもWのふられ話でみんなで盛り上がったりしていた。
そんなWのことを周りは心配して、一緒に洋服を買いに行ったり、僕もカバンや洋服をあげたことがある(東大の男は、かなりの確率で服も髪もダサい)。
ところがそんなWに、ここ最近かわいい彼女が出来たようだ。そのWの彼女は、Facebookで1000人以上と繋がっているらしい。
Wは人気者の彼女に、手玉に取られているのではないかと周りは心配している。
Wは僕のことを、お兄さんのように慕ってくれているので、僕と一緒に行ったレストランに連れて行ったり、外苑前界隈をデートで訪れたりしているという。(そのうち、ピンポンと家のブザーが鳴るのではないかと心配している)
打ち合わせのたびに、彼女と今度行く旅行の話などをしてくれるWを見ていると、本当によかったなあと思うし、そんなWを見ていると、「こいつと結婚する人は、幸せな人だなあ」と思える。
一生を添い遂げようとする人を選ぶ時に、何で決めるのかと考えた時に、やはり、その人の『心』なのではないかと僕は思う。
Wは、全く自分のタイプではないけど、ノンケとかゲイとか置いておいて、Wと結婚出来るか?と問われたら、僕は出来ると答える。
そんな風に思える人が今までの人生の中で何人かいた。不思議なことに、性別やセクシャリティーは様々だった。
先日の映画『わたしはロランス』で描かれていることは、こんなことなのかもしれない。
セクシャリティーは、人間の一つの特徴であるけれども、その人自身とは、その人の『心』なのではないだろうか。

五鉄。

おでん

レバー

にゅうめん

昨日書いた新プロジェクトの仕事で、大阪に日帰り出張に行って来た。
そしてもちろん、我々の最大の関心事は、『大阪で何を食べるか・・・』だった。
僕は京都が好きなので、大阪出張でも、迷わず京都に行き、京都で食事をしてから帰ることが多いのだけど、今回は飛行機での日帰り出張だったため、大阪駅近辺の店に。
大阪の食事は、庶民的な料理のレベルに関して言えば、東京なんかよりコスパも含めて断然高いと思う。その中で高すぎず、居酒屋というほどくだけていなくて、店のポリシーの感じられる店がいいなあ・・・ということで、今回は『五鉄』へ。
カウンターのみの営業は、自信を感じさせる。若い大将が真ん中で七輪で焼き物をしたり、揚げ物をしたりしてくれる。さらに若い店員さんが一人、てきぱきとお造りを切ったり、盛りつけたり、たった二人なのに、不思議な師弟関係で息がぴったり合っている。(余談だが、マスターはもしかしたらこっちの人かもしれない)
湯葉の刺身をいただき、料理はお任せで適当にお願いすると、時間を見計らっていい具合に料理を出してくれる。
『お造り』『焼き鳥』『おでん』『馬刺』とかなり絞られた料理だけど、どれもとても美味しい。特筆すべきは、『澄みきった甘くないおでんのお出汁』と『鮮度のいい鶏肉』であろうか。馬刺もきちんとたてがみまで用意してある。日本酒の品揃えも面白く、『篠峯』『百楽門』『秋櫻』『雄町』をいただいた。
最後のしめに、『特製にゅうめん』を小鉢で。これが、お出汁かと思ったら、いい具合にかものスープがたっぷりと入っていてさっぱりとしながらコクが感じられる一品だった。
幸福になって、大阪をあとにした。再来週に大阪に長めの出張に行くので、その時に再訪したいと思うほど素晴らしいお店でした。
★五鉄http://tabelog.com/osaka/A2701/A270101/27000211/

スタッフィング。

僕の仕事は、プロジェクトごとに毎回スタッフィングをする。
少しでもいいものを作るために、どんなスタッフが最適なのか。毎回毎回頭を悩ませる。人間だから、人の”合う合わない”もあるし、人数が何人かに増えるとその中での微妙な化学反応が起きるからだ。
できれば優秀なスタッフをと思うのは、クリエーターとしては当たり前のこと。自分の作る物が評価され、ひいては次の仕事に繋がってゆくから。
今回、少し大きなプロジェクトがあって、僕はぎりぎりまでカメラマンを決めかねていた。入社以来何度もお世話になっていて手堅い仕事のKaさんにするか、業界の中で売れっ子の引く手数多の新人で、自分がまだ一緒に仕事をしたことのない人で挑むか、何日か迷い続けていた。
僕の仕事人生の中で制作をするのも実は限られて来ている。永遠に同じ仕事は続けられないからだ。残された時間の中で出来るだけいい仕事をしたいという思いを、どちらを選ぶことで実現出来るのだろうか?と。
さんざん迷ったあげく、結局僕は、昔から一緒に仕事をしてきたKaさんにお願いすることにした。決めた後に、すぐにKaさんに電話を入れた。「また、よろしくお願いします!」
僕にとって、その選択の迷いは、言うなれば、
『情に生きるか。利に生きるか。』
といった人生の中での選択だった。
僕は、今まで一緒にやってきたKaさんと、今回の新しいプロジェクトを進める決断をしたことを、それでよかったと思っている。
僕たちは、スペシャルなものはもしかしたら作り出すことはできないかもしれない。でも、またいつものみんなで、ワクワクするような時間を過ごすことが出来る。
スタッフは、僕の宝ものだ。

わたしはロランス

フランス映画祭に来ていた時に、面白そうだなと思っていたトランスセクシュアルを題材にした映画『わたしはロランス』を観た。
この映画、”変わったセクシャリティの映画”ではなくて、完全で純粋なラブストーリーだった。監督は撮影当時23歳、恐ろしい才能だ。今年観た映画の中でも、僕にとって最も心揺さぶられた映画の一つになった。
トランスセクシャルの生き様を見ているうちに、もしかしたら、『この人は自分とは違う』という感覚だけで入っていけない人もいるかもしれない。でもゲイである僕は、自分も彼女たちとあまり変わらない人間だな・・・と思い彼女たちの苦悩を想像して涙が流れた。
人を好きになるということは、その人の何が好きなのだろう?
セクシャリティとはいったいなんなのだろう?
そもそも男とか女とかってなんなのだろう?
僕は自分らしく生きているのだろうか?
本当の自分らしさとはいったいなんなのだろう?
観る人に、様々な疑問をまっすぐに投げかけて来る秀作。
恋人役の女性の演技は、アカデミー賞の候補になって欲しいほど素晴らしい。
★わたしはロランス http://www.uplink.co.jp/laurence/

大統領の料理人

エリゼ宮で、2年間ミッテラン大統領の料理人を務めていた女性シェフの話が映画化された。予告編で観ていて、最も観たい映画だったので、初日に映画館へ駆け込んだ。
時代とともに変化を遂げて、装飾過多になってしまったフランス料理に飽き飽きしていたミッテランは、ジョエル・ロブュションの推薦する田舎の村に小さなレストランを持つ女性を、プライベートキッチンを任せるシェフとして雇うことにする。
フランス料理とは、様々な地方料理の寄せ集めなのだろう。郷土色豊かな料理が目の前で作られるところを観ているだけで、まるで長い食事を堪能しているように楽しむことが出来る。
見てくれや飾りではなく、素材を最大限に厳選し生かしつつ、手を加える彼女の料理は、『本当に美味しいもの』とはどういうものなのか、改めて教えてくれる。
そして、その『本当に美味しいもの』が、確実に大統領の毎日を支えていたのがわかる。
昔から伝わるフランスのおばあちゃんの手料理。それがいかに贅沢なものか。この映画で、存分に味わって欲しい。
★大統領の料理人 http://daitouryo-chef.gaga.ne.jp/#

イランイランノキ。

日本橋三越の屋上に、チェルシーガーデンという園芸ショップがあって、僕はほぼ、毎週そこを覗いている。
近くに得意先があるのと、都会の真ん中でありながら、緑に囲まれてベンチもあるので、一息つくには絶好の場所だ。
バラの季節には、バラの愛好家が押しかけるし、バラにとても詳しい有島さんという方がいるので、質問をしてもきちんと答えてくれる。
今日は、思いがけず、イランイランノキを見つけた。自然が作った不思議な造形に心奪われるとともに、近くによると、なんとも言えない甘い香りがした。
このような植物に会うたびに、宇宙の神秘を感じずにはいられない。この完璧な線の選び方、造形、香りは、暫く眺めていても飽きることはなく、想像力が働いてしまう。
勝手にイランの原産かと思ったら、インドネシア原産で、イランイランと言う名前は、『花の中の花』という意味のようだ。アロマテラピーに使われたり、新婚の初夜を迎える時にベッドに置かれたりするらしい。
まだ行ったことのない国の、はじめて目にした植物と、その土地の人との関わりを知ると、頭の中でまた、いろいろなイメージが膨らみはじめる。

トリュフオイル。

トリュフの香りのオリーヴオイルがある。その名も 『tarutufo olio タルトゥッフォ・オーリオ』(余談だが、タルトゥッフォという言葉を聞いただけで、イタリア語が世界一美しい言語だと思わずにいられない)。
トリュフの香りをふんだんに使ったオリーヴオイルなんて、その存在自体が、”虚栄なゲイ”を思わせるけど、このオイルをほんの1滴振るだけで、さもない料理がぐっと香り立ち、格上げされるから凄い。
料理をすればするほど、調味料の一つ一つを吟味して、少しでも美味しい塩、美味しいオリーヴオイル、美味しい醤油、美味しいみりん、美味しいバター・・・を使うようになって来る。調味料を厳選することは、料理全体を底上げすることになるからだ。美味しい塩があれば、あとは素材の力で十分に美味しさが引き出されるということが分かるようになる。
このトリュフオイルの使い方だけど、たとえばカルボナーラやキノコのパスタにほんの少し振り入れるだけで、皿全体から香りが立ち上り、鼻腔を刺激して幸福感を感じさせてくれる。
先日は、グリーンアスパラを斜めに切って、サッと茹でた後、オリーヴオイルと美味しい塩、かぼす汁で和えた後、仕上げにこのトリュフオイルをほんの少し振ってみた。食いしん坊のKは、素材なんて気にしないしよく分からないけど、珍しくその違いに気づいて「美味しい!」と喜んで頬張っていた。もしかしたら、故郷のかぼすの香りに心躍らせただけかもしれないが・・・。
人間が食欲をそそられたり、美味しいと感じる『香り』は、人間の本能に直接的に訴えかけるとともに、料理全体のグレードを確実に引き上げてくれる一つの要素なのだろう。

父として生きるゲイ。

なぜか最近よく隣で飲むことが多いSさん(気がつくと、ふっと隣に座ってニヤニヤしている)は、妻帯者で、高校生になる娘さんがいる。
一緒に飲んでいても、「今晩は、娘と話す日だから、早めに帰ります」などと言って、颯爽と帰ってしまう日もある。(娘さんには、自分がゲイであるということは知られていないという)
「娘にだけは、かわいそうな想いを絶対にさせたくはない」というSさんを見ていると、守る者を持つ父親の顔に、自分にはない父性を感じて素敵だなあ…と思う。
Sさんのように結婚をしているゲイは、実はこの日本のゲイ全体の割合からすると、7割とか8割いやもしかしたら9割くらいなのではないだろうかとさえ思う。
東京、大阪、名古屋、福岡、札幌などの大きな都市に住む限られたゲイを除いたら、日本の他の町で暮らす人々は、結婚を選ばざるをえない周りの状況が、今までの日本にはあったに違いない。
昨夜もBridgeで、『この日本において、我々ゲイの世界は、20年前と何か変わっただろうか?』という話になった。
僕は、少しずつゲイが顕在化し始めていると思うし、何よりもゲイであることをポジティブに捉えている人が周りに増えて来ているように思う。昔は、何だか『日陰者』のような雰囲気が2丁目全体を厚く覆っていた気がする(それはそれで楽しかったのだけど)。
この国で、同性婚が認められるなんて、物凄い先の話のような気がするし、みんながみんなオープンになってゆく必要はないと思うけど、様々な町で暮らすゲイの人たちが、それぞれに、少しでも暮しやすくなっていくことが出来たらいいだろうなあと思う。
ゆくゆくは、アメリカのように、ゲイであろうがビアンであろうがバイであろうがトランスであろうが、子どもを育てる力を持ち、育てたいと思う人が、子どもを育てることが出来る社会になれる日が来るのを願っている。