ジュリアン

この映画のことを知ってはいたのだけど、
実は見ること自体をためらっていた。
それは、自分の過去の記憶が蘇ってくることが怖かったから。
グザヴィエ・ルグラン(グザヴィエ・ドランではない)監督による初の長編映画『ジュリアン』は、ベルリン映画祭で銀の獅子賞を受賞し世界的な評価を受けた作品。テーマは、家庭内のDV(ドメスティックバイオレンス)。
物語は、重々しい家庭裁判所での父母のやりとりからはじまる。11歳になる息子ジュリアンの供述書が読み上げられ、弁護士の見解が続く。夫婦の離別の話だけではなく、子どもの親権をめぐる争いは他人から見て判断がつきづらく、裁判所の判断は見ている我々の願いをあっさりと翻してしまう。
これは、夫婦の間の関係性が崩れ去り、誇りや自尊心を失くしボロボロになった父親と、その父親の暴力のはけ口になってしまっている家族の物語。
父の信じる愛情は、もはや愛情ではなく、物語はやがて、恐ろしい展開へと突き進んでゆく。終盤は、手の握りこぶしをぎゅっと握りしめ、全身でじっと縮こまっている自分がいた。そんな僕の手を、Kは隣でしっかりと握りしめていた。
今年、もっとも強烈な1本。
★ジュリアンhttps://julien-movie.com/#top

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