笛を吹く人。

毎朝会社に行くのに、国立競技場前の駅から行くのだけど、入り口から入って1段エスカレーターを降りたところに、縦笛を吹いているおじいさんがいる。おしいさんといっても、おじさんとおじいさんの間くらい65歳から70歳くらいだろうか?
以前は入り口付近の外のベンチに座って吹いていたのだけど、冬になって寒くなってきたのか、地下鉄内に移動してきたようだ。
おじいさんは、笛の音色を誰かに聞かせようとしているのではなく、自分で練習をしている感じに見える。縦笛は、僕たちが小学校で習った縦笛ではなく、もうふた回りくらい大きな感じで、僕が楽器に疎いからわからないだけで、もしかしたら呼び名があるのかもしれない。
それでも、朝の急いでいる地下鉄に降りてゆく時に、どこからかのどかな笛の音が聞こえてくると、思いがけず「いいものだなあ・・・」と思えたのだ。
例えて言うならば、汚く混沌としたニューヨークの地下鉄構内で、思いがけず大好きなバッハの曲を弾いているチェロを聴いた時のような静かな感動とでも言おうか。
縦笛の音色はなんというか、とても柔らかな質感の音色というか、おおらかでやさしい音色というか。楽器は、そのものだけでも音色を奏でるものなのだろうけど、その楽器を吹いているおじいさんの心のありようも音になって出ているように感じられた。
それ以来、「今日はおじいさんはいるかな?」と、エレベーターを降りる時におじいさんを探している。

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