スター・トレック イントゥ・ダークネス

スター・トレックは、テレビで観たことがあるけど、実は前回の2009年の映画も見逃していた。
それでも、実際に今回の作品を観に行ったら、僕みたいな、スター・トレックに関してほとんど予備知識がない者でも、思いっきり楽しむことが出来た。
それは、スタッフに今までのスター・トレックマニアと、そうでない人たちが両方混在しているということと、監督のJ・Jエイブラムスの意図が、始めてスター・トレックに触れる人でも、きちんと楽しめるようにということだったようだ。
SFという形式ばかり先に立って取り上げられるけれども、もともとスター・トレックは、その時代に対して、常にある種のテーマやメッセージがきちんと込められていたし、今回もとてもハッキリとしたテーマがある。
人間の想像力とそれを創り上げる力に、改めて驚愕した。
そして、これだけ手に汗握り、観たあとにも爽快なエンタテインメントがあの値段で体験出来るなんて、映画館ってなんて有難いのだろう・・・と泣きたくなった。
海がめのように。
★スター・トレック イントゥ・ダークネス http://www.startrek-movie.jp/sp/

素敵な相棒 フランクじいさんとロボットヘルパー

予告編を観ていて、どうなのかな…?と思っていたけど、観に行ったらやはり予告編通りの映画だった…笑
今の映画業界は、なんとかして人を映画館に呼ぶために、予告編で内容を見せ過ぎているのではないだろうか?
近未来のニューヨークが舞台。フランクは年をとり、痴呆が始まっている。息子が心配をして、身の廻りの世話するための高性能ロボットヘルパーを授けることに。やがてフランクとロボットの間に友情が芽生えはじめる…
これは、近い将来に起こりそうな話。ロボットは進化をし続けているし、実際にこれから高齢化が進んだら、人間の手だけでは介護は足りなくなるに違いない。
フロスト×ニクソンのフランク・ランジェラ、リヴ・タイラー、そして、スーザン・サランドンが出ていてびっくりした。
時代のせいか、様々な老人をテーマにした映画が増えて来たけど、この映画も楽しんで観ることが出来て、ちょっぴり老後のことを考えさせられる佳作。
★素敵な相棒 フランクじいさんとロボットヘルパーhttp://sutekinaaibou.com/
☆追記
このブログに取り上げるのは、僕が観て楽しめた映画。だからといって、人によって楽しめなかったり、つまらないと思うことはしょうがないことだと思っている。
その映画を観た時に楽しめなかったら、気分や知識不足や理解力不足や生理的な問題はあるにせよ、それはその人が、『その映画と波長が合わない』だけだ。
僕の考えでは、『映画に良い映画も悪い映画もない』のだと思う。
アメリカに、Rotten Tomatoes(ロッテントマト)と言う映画評論家や映画関係者による映画レビューをまとめたウェブサイトがあるけど、それは映画を語る上で、一つの指標になると思う。
もしその映画を楽しめなかったとしても、その作品を映画業界が評価しているならば、自分のわからない見方や価値観があるということに気づくことが出来る。

トゥ・ザ・ワンダー

今年一番心に残る映画に出会った。テレンス・マリック監督の『トゥ・ザ・ワンダー TO THE WONDER』。
この映画を、あえて言葉で誰かに伝えること自体ナンセンスなことだけど、こういった芸術が今も存在していることを一人でも多くの人に伝えたいと思う。
この映画は、起承転結があったり、メッセージを一方的に押し付けてくるような映画ではない。
何人かの登場人物の思いが言葉となって映像に重なるだけで、物語を説明するものは何もない。
あるのは、圧倒的な光の映像と、美しい音楽だ。
もし、それに身を委ねることが出来れば、今まで観ていた映画とはまた違った体験が出来ると思う。
愛、人生、神、宇宙、生きること…観る人によって、心に浮かぶことはさまざまだろう。
僕は、涙が流れた。
人間とは、なんと弱く愛おしい生きものなのだろう。
光も闇もあり、善も悪もある。この我々の世界とは、なんと不思議なことだろう。
★トゥ・ザ・ワンダー http://www.tothewonder.jp/
余談だが、このタイトルをカタカナにする意味がわからない。タイトルを余計わからなくしているような気がする。

マジック・マイク

友人たちの間ではあまり評判のよくなかった映画、『マジック・マイク』は、観るタイミングを逃していたのだけど、実際に観に行ったらとてもよく出来たアメリカ映画だった。
今をときめくチャニング・テイタムは、若い頃ストリッパーの経験があるらしく、その経験を元に制作された映画だという。
助演の俳優二人も素晴らしいし、チャニング・テイタムが今や世界のスーパースターになってゆく素養があるのが、ダンスシーンを観ればハッキリとわかる。
この映画に、ドリーム・ガールズや、シカゴのようなダンスやミュージカルを期待してはいけない。この映画は、あくまでも、観ている間だけ完全に楽しめるただのアメリカ映画だ。
スティーヴン・ソダーバーグにしては、軽やかな作りなので、デートや友人と観に行っても十分に楽しめると思う。
売春婦が世界ではじめての職業と言われるように、我々人間のセックスに対する欲望は不条理でありながら、抗い難いほど強烈なものだ。それをうまく利用して、目を惹きつけずにはいられない巧妙な演出は、さすが、スティーヴン・ソダーバーグ。
★マジック・マイクhttp://magic-mike.jp/

バーニー みんなが愛した殺人者

思いのほかよく出来ていて、映画としてとても面白かった『バーニー みんなが愛した殺人者』。久しぶりに、シャーリー・マクレーンの姿を観れたのもよかった。
96年にテキサスの田舎町で起こった殺人事件を、実際に本人たちを知る住民へのインタビューを交えて映画化した作品。
葬儀屋に務める39歳の“町一番の人気者バーニー”が、81歳の“町一番の嫌われ婆さん”を殺害した事件の一部始終を描いている。
この、みんなに愛されているバーニー。オペラやミュージカルが好きで、飛行機のファーストクラスで贅沢三昧。裁縫が趣味とくれば、どこからどう見ても、1000%ゲイだ。
みんなに愛されるバーニーが、見事な演技だったので圧倒された。シャーリー・マクレーンは、表情に人間のやさしさみたいなものが滲み出てしまうので、もしかしたら他の女優でもよかったかもしれない。
殺人までしたバーニーを、町中の人が必死で救おうとしていたという現実が凄いし、我々も、いつの間にか救われるのではないかと思い始めてしまう演出が凄い。はじめから終わりまで、目が放せなくて、適度にコミカルで笑えるし、思う存分楽しめるとてもよく出来ている映画だ。
★バーニー みんなが愛した殺人者http://bernie-movie.com/

25年目の弦楽四重奏

今年観た映画の中でも、最も好きだった内の一本。クラシックが嫌いではなかったら、きっと楽しめる映画だと思う。
結成して25年経つカルテットが、ベートーヴェンが亡くなる半年前に完成した曲『弦楽四重奏第14番』をコンサートで演奏する話。
ここでは、敢えてストーリーには触れないけど、四人がそれぞれの人生を生きる、その生きざまが、音楽のように重なり、四重奏を奏でている。
老いて我が身に困難がふりかかろうとも、周りを慈しむクリストファー・ウォーケンの抑えられた演技が素晴らしい。
自尊心をかけて激昂する、フィリップ・シーモア・ホフマンの演技は、観終わった後に改めて恐ろしい俳優だということを思い知らせてくれる。
久しぶりに観たキャサリン・キーナーは、憂いを帯びた賢い女を魅力的に演じている。
緻密な脚本と、巧妙な演出、個性溢れる演技と、壮大な音楽の結晶に、深く心動かされた。
★25年目の弦楽四重奏http://25years-gengaku.jp/

もうひとつの世界

2010年に観た160本くらいの映画の中で、最も好きだった映画が明日から公開される。イタリア映画祭で上映されたジュゼッペ・ピッチョーニ監督『もうひとつの世界』。
修道女のカテリーナと、クリーニング店を経営しているエルネストという二人が、偶然知り合い、それぞれの世界が少しずつ変わってゆくという話。
本当に地味な作品だけど、この作品を観ただけで、イタリア映画がいかに才能あふれる布陣で映画作りが行われているかが分かると思う。
イタリアの至宝マルゲリータ・ブイ(生きている女優の中で、ジーナ・ローランズに次いで僕が好きな女優)と、シルヴィオ・オルランドという名優が主演をつとめている。
両俳優の卓越した演技力と、繊細な演出によって丁寧に作り上げられたこの作品は、見終わった後に、いつまでも心に残る宝もののような映画だ。
人間の不完全さを描きながら、いくつになっても人間は変わることができるのだと思わせてくれる。
同時に公開される他の作品、『ハートの問題』は、観た後にさわやかな感動に浸れる。『最後のキス』はまだ観ていないので、観に行くつもりです。
★VIVA!イタリアhttp://www.vivaitaly-cinema.com/

インポッシブル

2004年に起きたスマトラ島沖地震で被災した、家族の実話が元になった映画『インポッシブル』。
幸せなクリスマスを過ごすためにやって来たタイのリゾート地で、突然の津波によって家族がバラバラに引き裂かれ、離れ離れになるという話。
正直、震災の時の映像で、僕も相当滅入ったので、津波の映像を観ることを躊躇していた。津波の恐ろしさは、どんな映像を駆使しても描き出すことは出来ないと思ったのと、わざわざあの無力感に襲われた日々を追体験したくはなかったから。
それでも、先日Bridgeで飲んでいたら、『インポッシブル』の話になって、観た人が皆、良いと言っていたので、重い腰を上げて観て来た。
映画としては、やはり予告編の通りの映画だ。だけど、アカデミー主演女優賞にノミネートされた、ナオミ・ワッツが素晴らしい。彼女を観るためだけにでも、観てよかったと思った。
この映画を観て、泣かない人はいないと思う。
どんな人にも、愛する人がいる。
誰もひとりでは生きていけないのだから。
観終わった後に、きっと、愛する人をぎゅっと抱きしめたくなるに違いない。
★インポッシブル http://gacchi.jp/movies/impossible/sp/index.html

しわ

『老い』を描いたスペインのアニメーション映画『しわ』を観た。
エミリオは、銀行の支店長を務めた生真面目な男。次第に痴呆が進み、息子夫婦からも疎んじられ、老人養護施設に入ることになる。
同室のミゲルは、身寄りもなく、呆けていく隣人たちから、小銭を騙し取り、のんきに暮らしている。
オウムのように同じ言葉を繰り返す男。いつも、家に帰ろうと電話を探しているお婆さん。自分はオリエントエクスプレスに乗っていると信じているお婆さん。沢山の子どもや孫がいながら、誰も面会に来ないお婆さん。アルツハイマーが進む夫に付き添いながら、共に過ごす老夫婦…
誰もが、それぞれに『老いの問題』の真っ只中にいる毎日の中で、エミリオもまた、アルツハイマーが進んでゆく…
このところ、『愛 アムール』をはじめ、『老いの問題』を真っ向から捉えた映画がいくつか公開されるようになって来た。
『しわ』の凄いところは、アルツハイマーが進むエミリオの意識が、次第に幼少期の記憶と現実とがごちゃ混ぜになっていったり、ある単語を完全に忘れてしまったりすることが、ごく自然に描かれていること。観ている我々が実際にアルツハイマーになった時の気持ちを想像出来るところだろう。
老いてゆくことで、揺らぎだすプライド、自分が思っていることが正しいのか、自分がおかしいのか、もはやわからなくなってゆく不安を描きだすことに成功している。
誰もが目を背けたくなる『老い』を、アニメーションという技法によって、観る人に共感させ、考えさせることができる作品に仕上げている。
最後に、変わってゆく人物の描き方が見事。
★しわ http://www.ghibli-museum.jp/shiwa/

きっと、うまくいく

港で評判の・・・
ではなく、巷で評判のボリウッド映画、
『きっと、うまくいく』を観た。
(昔、僕の会社のエライ上司が、プレゼンで、クライアントに、「港の噂では・・・」と得意げに言ったことが語り継がれています。因みに、他の上司は、『団塊の世代』のことを、『だんこんの世代』と会議中みんなの前で何度も言い、笑いをこらえるのが大変だった)
インドで歴代興行収入no.1を獲得し、
すでに海外でのリメイクも決まっているインド映画。
インド映画は、『ムトゥ踊るマハラジャ』のヒット以降、
日本でも定期的に上映されるようになって来ているけど、
この作品も趣向を凝らした脚本に、
豪華な役者陣、そして壮大な撮影をこなして、
人生をドラマティックに描いている。
世界一の映画大国インドで作られる映画は、
ある種の典型的な構造があるのだけど、
歌や踊りをふんだんに取り入れた手法は、
完全にエンタテインメントに徹していると思う。
敢えてストーリーには触れないが、
3人の大学生の友情をテーマに、
親子愛、男女の恋愛、夢や将来、就職など、
人生を描いた大作映画。
3時間という時間も飽きさせず、思う存分楽しめて、
所々ほろっとして、爽快感を味わえる。
観終わった後に、余韻に浸るというよりも、
観ている時に、200%楽しめる映画。ぜひ!
★きっと、うまくいくhttp://bollywood-4.com/index01.html