しわ

『老い』を描いたスペインのアニメーション映画『しわ』を観た。
エミリオは、銀行の支店長を務めた生真面目な男。次第に痴呆が進み、息子夫婦からも疎んじられ、老人養護施設に入ることになる。
同室のミゲルは、身寄りもなく、呆けていく隣人たちから、小銭を騙し取り、のんきに暮らしている。
オウムのように同じ言葉を繰り返す男。いつも、家に帰ろうと電話を探しているお婆さん。自分はオリエントエクスプレスに乗っていると信じているお婆さん。沢山の子どもや孫がいながら、誰も面会に来ないお婆さん。アルツハイマーが進む夫に付き添いながら、共に過ごす老夫婦…
誰もが、それぞれに『老いの問題』の真っ只中にいる毎日の中で、エミリオもまた、アルツハイマーが進んでゆく…
このところ、『愛 アムール』をはじめ、『老いの問題』を真っ向から捉えた映画がいくつか公開されるようになって来た。
『しわ』の凄いところは、アルツハイマーが進むエミリオの意識が、次第に幼少期の記憶と現実とがごちゃ混ぜになっていったり、ある単語を完全に忘れてしまったりすることが、ごく自然に描かれていること。観ている我々が実際にアルツハイマーになった時の気持ちを想像出来るところだろう。
老いてゆくことで、揺らぎだすプライド、自分が思っていることが正しいのか、自分がおかしいのか、もはやわからなくなってゆく不安を描きだすことに成功している。
誰もが目を背けたくなる『老い』を、アニメーションという技法によって、観る人に共感させ、考えさせることができる作品に仕上げている。
最後に、変わってゆく人物の描き方が見事。
★しわ http://www.ghibli-museum.jp/shiwa/

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