愛しのモッツァレラ。

食品偽装の問題が、また日本中で話題になっている。これは無いだろう?と思うものから、これくらいはまあ、あってもしょうがないのでは?というものまで。人の口から入るものだからこそ、厳しい管理がされて当然なのだけど、日本の規定は、恐らく世界一厳しいのではないだろうか。
本来、モッツァレラは水牛のチーズが本物なのだけど、巷でカプレーゼを頼むと、出て来るモッツァレラは、99%牛のチーズだと思って間違いない。これは偽装ではなくて、イタリア本土でもかなりの確率で水牛でないモッツァレラが出てくるのでいたしかたない。
もともとモッツァレラ自体、味が強いチーズではないので、それ自体で物凄い違いがあるわけではないとされるものの、それでも、イタリア人(特に南部)が愛してやまない水牛のモッツァレラは、どこがどんな風に美味しいのか、たまに確かめてみたくなりませんか?
僕の冷蔵庫にはたいてい写真のモッツァレラが入っていて、急なお客さんなんかの時には、ワインを開けながらでも5分も経たずに出すことが出来るから重宝している。日持ちがいいのもよい所だと思う。先日も、Kが来た時に、外出先から結局外食を諦めて家に戻り、ご飯を食べようと思った時に、すぐに出せて、しかもその早さと美味しさに驚いていた。Kはきっと、はじめて水牛のモッツァレラを食べたのだと思う。「カプレーゼって何?」って聞いていたから。
さて、このモッツァレラ、よく豆腐に例えられる柔らかさと繊細な味を持ち、仄かに香る風味までイタリアだ。小さな大きさの少し違うモッツァレラが4つ入っているのだけど、食べ方は僕の場合、選んだトマトを横に(これが重要)まっ二つに切って、その切り口上に軽く塩をふり、それと同じくらいの大きさに切ったモッツァレラを乗せてほんの少し塩をふり、オリーブオイルをたっぷりとかけてからバジルの葉を乗せる。
口に頬張ると、口の中いっぱいにえもいわれぬハーモニーが広がり、ナポリやソレントやアマルフィイ海岸の懐かしい思い出が甦るようだ。
モッツァレラ、トマト、バジル、オリーブオイルという完璧な組み合わせは、いったい誰が思いついたのだろうか。それぞれの素材が美味しいため、手をかけずに組み合わせるだけでさらに美味しい一品に仕立て上げる。和食にも似たイタリアを封じ込めたかのようなこの一品を、僕はこのうえなく愛している。

カブとカニ玉煮。

昼間は26度くらいあった台北から月曜夜に東京に帰国して、東京は晩秋に入ったのだなぁと肌寒く感じた。
週末を台湾で過ごしたので、家での最初の食事は和食が食べたくて、油を使わずさっぱりしていてじんわり温かい『カブとカニ玉煮』を作った。
なぜだか分からないけど、『鴨とネギ』のように、素材同士の組み合わせがピッタリ合う食べ合わせがあると思う。
僕が思う、『カブとカニと玉子』も、完璧に思える調和。
★カブとカニ玉煮。
1.カブ1株は、厚めに皮を剥き、食べやすい大きさに切る。カブの葉一株分を、細かく切っておく。カニの缶詰を開けておく。
2.鍋に出汁600ml、塩小さじ1、薄口醤油小さじ1、みりん小さじ2を入れて、温める。
3.カブを入れて再び熱くなったら、10分から12分加熱する。
4.カブに火が通ったら、カニを入れて、全体を軽く混ぜ合わせる。
5.切ったカブの葉を入れ、すぐに片栗粉小さじ2を同量の水で溶いたものを回し入れ、軽く混ぜる。
6.卵2個を箸で溶き、箸を伝わせ流し入れ、玉子にふんわり火が通ったら完成。

エッグベーカーという幸せ。

僕の家に来て、エッグベーカーで作った目玉焼きを食べると、「私もこれ欲しい!」と言う人がいる。
目玉焼きをフライパンで美味しく作るのは、実は難しい。
下はカリッとして、白身は柔らかく、程よく黄身に火を通すには技術がいるからだ。
その点エッグベーカーは、一人分の目玉焼きも、簡単に、あっと言う間に美味しく出来る。
エッグベーカーにオリーブオイルか胡麻油を入れ、全体に行き渡らせ、玉子を割り入れ火にかけるだけ。4〜5分で火を止めて蓋をして1分くらい。
蓋を開けると、白身はあくまで柔らかく、黄身に程よく火が入っている。ほんの少し醤油を垂らしてスプーンですくって口に運ぶと、きっと驚くに違いない。
玉子って、こんなに濃厚で美味しいものなのかと。

イタリア煮浸し。

台風のせいで、蒸し暑い日が続いているけど、少しずつ秋の気配は深まって来ている。
寒くなって来ると、おでんもいいよなぁ…と思いながら、さっぱりとしたイタリア煮浸しを作った。
なぜイタリアなのかというと、トマトと絹厚揚げと万願寺とうがらしが、イタリアの赤、白、緑の国旗の色と同じだから。(勝手に僕がそう名づけただけなのですが…)
イタリアの国は、一つの大きな国というよりも、小さな別々の国の寄せ集めのような所がある。
この三種類の組み合わせも、驚くほどそれぞれが個性的に違った味わいをしている。そして、出汁が個性的な三種をつないでくれている。
★イタリア煮浸し
1.出汁600mlを温め、薄口醤油大さじ1、酒大さじ1、塩小さじ1/2を入れてかき混ぜる。
2.小さめのトマト5個の背に軽く十字か一字に包丁を入れ、沸騰したお湯に浸し、直ぐに引き上げ、粗熱が取れたら皮を剥く。ヘタをくり抜く。
3.万願寺とうがらしを、縦二つに割り、種とワタを取り出し、横に切る。
4.絹厚揚げ2個を食べやすい大きさに切り、すべてを熱い1の出汁汁の中に入れる。5〜6分そのまま煮て、火を止めて味を含ませる。
温めても美味しく、冷蔵庫で冷やしても美味しい。

イタリア展。

スカンピ

久しぶりにのんびりと東京で過ごす日曜日、伊勢丹のイタリア展に行った。
今の時代、ほとんどどんな食材でもインターネットで買うことができるけど、イタリア展だけは、鼻息荒く乗り込んでしまう。
生ハム、チーズ、オリーブオイル…どれも自分の目で見て、匂いを嗅いだり、試食できるということは、僕にとっては重要なことだ。
この時期特有のフレッシュなポルチーニがあって、うまそうだなあ…どうやって食べようかな…などと思い巡らしたり、イタリアから空輸されているフイノッキオやアーティチョークなどを見ながら、どっぷりとイタリアに浸った…。
帰りがけ、スカンピが目に止まった。昔、10年間つきあった人は、このスカンピが大好物だったなぁ…なんて思いながら、無駄な情に流され思わずスカンピを買ってしまった…
家の冷凍庫に入っている少し変わった食材をここに書くと…
エスカルゴ。フォアグラ。マグレカナール(フォアグラを採取した後の鴨)。キャビア。ボッタルガ。ラム。イベリコ豚の各部位…(もちろん牛肉の切り落としや、タラコや、納豆や、サンマの干物も入っています)そこにスカンピが加わり、もう、いつ帰って来ても、家でスカンピが食べられる!笑
その後、新宿ピカデリーで、『ティファニーで朝食を』を鑑賞。オードリーがスクリーンで観られると聞いたら、やっぱり観たくなってしまった。
『ローマの休日』のオードリーは本当に綺麗だと思うけど、晩年、彼女は、世界の貧しい国々に自ら赴き様々な活動をしながら、更に輝くように美しくなっていったように思う。
オードリーは、銀幕の中で永遠に生き続けるのだろう。
★スクリーン・ビューティーズVol.1 オードリー・ヘプバーン『ティファニーで朝食を』『パリの恋人』『麗しのサブリナ』http://www.screenbeauties.com/audery_movies.html

僕の夜食。

肉と野菜のさっと煮。

食事をしっかりしていないのに、飲みに突入してしまうような日がたまにある・・・。飲んで余分なカロリーは摂っているものの、家に帰ってもお腹が空いて眠れそうにない・・・
そんな夜はラーメン屋などに行かずに、家で簡単な夜食を摂るようにしている。うどんなども美味しいけど、炭水化物はなるべく避けてタンパク質を出来るだけ摂るように心がけている。
小腹が減っている程度ならば、ゆで卵が最強の夜食メニューだと言える。白身はこれ以上無いくらい良質なタンパク質だから。黄身の摂り過ぎを気にする人は、白身だけ多めに食べればいいと思う。
先日うれしいことに、このブログを見ている方から、美味しいものや食べ物のことをもっと書いて欲しいというリクエストをいただいた。酔って帰って来ても、速攻で簡単に作れる夜食を1品書いておきますね。
★肉と野菜のさっと煮
(お肉は牛肉、豚肉、鶏肉などなんでもよいが、火が通りやすい厚さがよい。薄切りの肉はすぐに解凍できて便利。野菜もなんでもよい。組み合わせとしては、牛肉×ネギ。豚肉×小松菜。鳥のささみ×水菜・・・などなんでもよい)
1.冷凍庫から出汁400mlを取り出し、鍋に開けて火をつける。そこに、薄口醤油大さじ1、みりん大さじ1、塩ひとつまみ(3本指で)を入れてかき混ぜておく。
2.お肉をひらひら一枚ずつ入れる。灰汁が出たらすくう。すぐに火が通るので、野菜も後を追うように入れる。あれば豆腐なども入れる。
3.器によそって、黒七味(これが重要。無ければ普通の七味)をかけていただく。
追記:
◎出汁は、週末に大量に引いて、400mlずつ小分けにして冷凍にしておくと使いやすい。
◎肉は火が通ると固くなるので、火が通るか通らないか、しゃぶしゃぶくらいでいただくと美味しい。
◎どうしてもがっつり食べたい時は、別の鍋にたっぷりのお湯を沸かし、冷凍うどんを茹で器にあげて、上記の肉野菜を出汁ごとかければ、美味しいうどんが出来上がる。

カルボナーラ。

パスタの中で一番好きなものは、トマトソース、カルボナーラ、アーリオオーリオの順番かもしれない。
ローマの肉市場の所に、『ケッキーノ・ダル1887』という、イタリアで一番の肉類を扱って来た店がある(ローマ法王がいるため、ローマには最上の物が入る)。そこで食べたカルボナーラの、ブカティーニの芯の残るか残らないかの絶妙な茹で具合いと、余分なものの入らない濃厚な玉子ソースは忘れることが出来ない。
本場ローマのカルボナーラは、日本中で食べられているような生クリームソースではなく、玉子とチーズのみで作られるネットリとしたソースなのだ。生クリームなどは一切使わない。
随分前に、友人に、カルボナーラの作り方を聞かれていたのだけど、久しぶりに作ったのでここに書いておきます。
【カルボナーラ】
1.フライパンにオリーブオイル小さじ1に、グァンチャーレもしくはパンチェッタ60gを食べやすい大きさに切り、焼き目をつける(あまりいじらない)。
2.焼けて芳ばしくなってきたら、白ワインまたはシェリー酒大さじ2を入れてから火を止めておく。
3.パスタ90g(太めのスパゲティかブカティーニ)を茹ではじめる。
4.ボウルに卵黄2個(または全卵1個、これは、好みでいいと思います)を入れ、ペコリーノロマーノを大さじ2と、パルミジャー・ノレッジャーノ大さじ2(なければ、パルミジャーノのみ大さじ4)を入れ、黒胡椒をたっぷり引き、軽くかき混ぜてゆるいジャムのようにする。
5.フライパンに火をつけて、水分が無ければ茹で汁大さじ1を足す。茹で時間の2分前に上げたパスタをフライパンに入れて、全体を軽く和えたら火を止めてフライパンをまな板(もしくは濡れ布巾)の上に置く。
6.ボウルからヘラを使って玉子ソースをパスタの上にあけて、フライパンに火は入れずに全体を軽く混ぜ合わせる(火を入れると素人は必ず失敗して玉子が固まりモロモロになります)
7.器によそい、オリーブオイル(あればトリュフ入りオリーブオイル)を軽く風味程度に回しかけ、荒目の黒胡椒を引いて完成!うまいよ!

ペスト・ジェノヴェーゼ。

はじめて食べた時に、「世の中に、こんなに美味しいものがあったのか!」と、驚いた食べものに、ペスト・ジェノヴェーゼがある。
今でこそ、日本でも一般的になって来ているけど、学生の頃イタリアのジェノヴァからその周り、ラ・スペーツィアやチンクェ・テッレを旅した時に出会ったジェノヴェーゼの味は、はじめて出会った太陽の味がした。
いつもは自分で作るのだけど、自分なりのテイストに傾いている気がして、時々本場のイタリア食材屋さんからペストを買って食べてみる。写真のペストは、イタリアの食通たちが評価しているペスト。
家で作る時は、スイス製のバーミックス(ハンドミキサー)で一気に細かくするのだけど、本場のペストは、すり鉢で擦って作る。熱が入ってバジリコの緑が色褪せないように、ゆっくりと。
パスタは、トロフィエという、先が細くなったショートパスタがとても合う。
どんな時期の、どんな時間に食べたとしても、暑い夏をぎゅっと凝縮したようなバジルの香りに、陶酔してしまう。そして心の中で、我が故郷のイタリアをもう一度思い出す。
「世の中に、こんなに美味しいものがあったのか!」と。

マグレ カナール。

皮目に格子状に浅い切り込みを入れ塩胡椒

アルミホイルに包んで休ませて完成

中秋の名月は、美しい満月だった。家でブリードモーをつまみながら赤ワインを飲んで、何度も月を見に行った。
鴨が好きで、冷蔵庫には、作り置きしてあるコンフィが、冷凍庫には、マグレ カナールが常備してある。
マグレ カナールは、フォアグラを採取した鴨の胸肉。少し大型の鴨なので、胸肉もしっかりと量がある。
このマグレ カナール。食べてみるとわかるのだけど、そこはかとなくフォアグラの風味を遠くで感じるから不思議だ。高級食材と思いきや、実は1300円くらいで買うことが出来る。
ソースは、オレンジソース、バルサミコ蜂蜜ソース、醤油バルサミコなど、甘みを感じるソースを合わせることが多いけど、僕は甘過ぎるソースが苦手なので、バルサミコを煮詰めて赤ワイン少々加えて添えることが多い。
【マグレ カナール】
1.室温に戻した鴨を、皮目に斜めに薄く包丁の切れ目をクロスに入れ、きつめに塩胡椒をして30分以上おく。
2.フライパンに油は引かずに、皮目から焼き色をつけるように焼く。焼きながら、アロゼ(出てきた脂を、スプーンで何度も身にかける)
3.皮目に綺麗な焼き色がついたら、180度のオーブンに入れて、6分から10分(肉の大きさによる)
4.取り出してアルミホイルに包み、10分くらい寝かせて肉汁を落ち着かせる。
5.切り分けて、好みのソースを添える。

トリュフオイル。

トリュフの香りのオリーヴオイルがある。その名も 『tarutufo olio タルトゥッフォ・オーリオ』(余談だが、タルトゥッフォという言葉を聞いただけで、イタリア語が世界一美しい言語だと思わずにいられない)。
トリュフの香りをふんだんに使ったオリーヴオイルなんて、その存在自体が、”虚栄なゲイ”を思わせるけど、このオイルをほんの1滴振るだけで、さもない料理がぐっと香り立ち、格上げされるから凄い。
料理をすればするほど、調味料の一つ一つを吟味して、少しでも美味しい塩、美味しいオリーヴオイル、美味しい醤油、美味しいみりん、美味しいバター・・・を使うようになって来る。調味料を厳選することは、料理全体を底上げすることになるからだ。美味しい塩があれば、あとは素材の力で十分に美味しさが引き出されるということが分かるようになる。
このトリュフオイルの使い方だけど、たとえばカルボナーラやキノコのパスタにほんの少し振り入れるだけで、皿全体から香りが立ち上り、鼻腔を刺激して幸福感を感じさせてくれる。
先日は、グリーンアスパラを斜めに切って、サッと茹でた後、オリーヴオイルと美味しい塩、かぼす汁で和えた後、仕上げにこのトリュフオイルをほんの少し振ってみた。食いしん坊のKは、素材なんて気にしないしよく分からないけど、珍しくその違いに気づいて「美味しい!」と喜んで頬張っていた。もしかしたら、故郷のかぼすの香りに心躍らせただけかもしれないが・・・。
人間が食欲をそそられたり、美味しいと感じる『香り』は、人間の本能に直接的に訴えかけるとともに、料理全体のグレードを確実に引き上げてくれる一つの要素なのだろう。