包丁を研ぐ日。

研ぎ終わった包丁

砥石

時々ふと、「明日は包丁を研ごう…」と思って、砥石をキッチンに出しておくことがある。
朝起きて、軽く朝ごはんを食べながら、砥石を水に浸ける。洗い物をしたら、砥石を置いて、ゆっくりと包丁を研ぎはじめる。
〈包丁の研ぎ方〉
予め水に濡らして置いた砥石は縦に置く。包丁は、刃を手前に向けて上から見た時に斜め45度くらいに持つ。
歯に、力が満遍なく入るように指を丁寧に添える。砥石と包丁の当たる角度は、十円玉2枚入るように15度くらいの角度をキープする。
押し出す時には力を入れて、力を抜いて引き戻す。そしてそれをリズミカルに繰り返す。
表を7研いだら、裏を3くらいの気持ちで研ぐこと。そしてこれを、更に細かい砥石でもう一度繰り返し研ぐこと。
最後に新聞紙で磨きをかける。
包丁の研ぎ方は、文字にして書くとなんだかとても難しそうだけど、やってみると意外と出来るものだ。
ちなみに僕は、包丁を研ぐような地味な作業がとても好きで、包丁をひたすらに研いでいる間、気がつくと無心になっていることがある。まるで、瞑想のように。
そして研ぎ終わったあとに切れ味を確かめたくて、俄然お料理を作りたくなるのだ。

Miele

家に帰ると、Miele からダンボールが届いていた。
先月Mieleの掃除機を買ったことはここに書いたのだけど、その掃除機はちょうどキャンペーンをやっていたのだ。
中を開けると、掃除機用の紙パックが入っていた。なんと、8年分!
Mieleの掃除機はまず故障をしないし、吸引力もまったく変わらずに20年間は軽々と働いてくれると言う。もしかしたら、僕が死ぬまで壊れないのではないか。さすが、ドイツが世界に誇る実直さを体現したブランドだ。
それにしても、8年分の紙パックを顧客に送るなんて、なんて豪快な会社なのだろう。
Miele のことが、ますます好きになってしまった。
次は洗濯乾燥機を前から狙っているのだけど、お値段がちっともかわいくないので、当分は買えそうにない・・・。

フライパン。

はじめて買ったフライパンは、テフロン加工だった。
そのフライパンは、焦付かないのでオムレツも簡単に作ることが出来た。
でも、使っていくうちにテフロン加工のフライパンは、高温にしてはいけないとか、空焚きしてはいけないとか、時間が経ったら剥げてきて有害だと知り、おまけに、信頼出来るメーカーは実験の結果、人体に影響があるためテフロン加工の調理器を撤廃していることがわかった。
その後、すぐに鉄のフライパンに変えようと思っていたら、随分昔に料理好きな先輩に勧められたフライパンを思い出し、すぐに買ってみた。かれこれ10年前くらいだろうか?
そのフライパンは、独自の技術によりフライパンの厚みを通常の三分の一くらいにすることに成功、炭の粉が全体に入っているため遠赤外線を生み出し熱の伝導率がよく、ムラなく均一に熱を伝えることができるという三重県の会社のものだった。
使ってみてすぐにいいなあと思ったことは、お肉を焼く時にじっくりと火が入り、美味しく焼けたことだった。そして感動したのは、オムレツを作った時に、全然フライパンに焦付かず、綺麗に出来上がったこと。軽いため、手首の微妙な返しも簡単に出来るのもいい。
それ以来、使うたびにこのフライパンを買って良かったなあと感心しているのだけど、それから5年くらいしたら、テレビで評判になったようで、伊勢丹などでも品切れになってしまった。
先日、小さいフライパンが欲しいと思い調べると、なんと24ヶ月待ち!(しかも、アマゾンで出ているものは仲介業者が入り、販売価格よりも6千円くらい高めに売っているのだった)
フライパンは、鉄製に限る。手入れの仕方さえ間違えなければ、錆び付くことはないし、調理をするたびに、鉄分も補給されるのだ。
⭐︎錦見鋳造株式会http://www.nisikimi.co.jp

有次の玉子焼き器。

京都の錦小路に、和食の料理人なら絶対に知っている『有次』はある。
僕はこの店が大好きで、なにも買わずとも毎回京都に行くと立ち寄るのを楽しみにしている。市場に面した店内は狭く、無駄を削ぎ落とした美しい包丁や、型抜き、銅の鍋なんかが整然と並んでいて、和食に興味のある外国人なんかも日本の調理用具を手に入れるために押しかけるようなお店だ。
東京で有次の道具を手に入れようとすると、日本橋の高島屋に行けば手に入るのだけど、やはり京都の錦小路で買うと胸が高鳴るのだ。
写真は、有次の玉子焼き器。銅で出来たもので、熱の伝道が素晴らしい。
僕ははじめ、この玉子焼き器を買い求めてから、なかなか使いこなすことができず、途中焦げたようになってしまい、しばらく鉄の玉子焼き器を使っていたのだけど、ふと思い立ち、有次に焦げた玉子焼き器を持って行き修理をお願いした。(銅で出来た道具は一生もので、高価だけどきちんと修理してくれるのだ)
なんでも、使い始めは卵だけでなんども焼き、その後、少しづつ出汁を足して玉子を焼いていく。更に、油は拭き取るだけでよくて、一生洗剤などで洗わずに使えるというのだ。(僕はこの、洗わずに使うというのがなんとも苦手で、結局毎回洗っていたのだった)
数ヶ月ののち戻ってきた玉子焼き器を、僕はまた焦がしてしまうのではないかと思い、使わずにしまっていたのだけど、先日思い立ってこの銅の玉子焼き器で出汁巻き卵を作ってみた。すると、前に手間取って焦げつかせていたのが嘘のように、綺麗な黄色に出汁巻き卵が出来上がったのだった。
そして、言いつけも聞かずその玉子焼き器をまた洗剤で洗い、また取り出して出汁巻き玉子を作ってみた。それが驚いたことに、一切くっつかずまたしても綺麗に出汁巻き玉子が出来たのだった。
料理人が認める道具には、きっと理由があるのだろう。ここの包丁も、驚くほど高価なのだけど、トマトを置いたまま手を添えずに真横にスライスできる映像を見ると、流石だと唸らずにはいられない。
一度は焦がして、ほったらかしにしていたこの玉子焼き器と、僕はこの先も一生、一緒に暮らしてゆくのだと思う。

Miele

今回、カーペットの家に引っ越しするにあたって、掃除機を買おうと決めていた。
前の家はフローリングだったので、クイックルワイパーなどを使い、あまり大きな掃除機は必要なかったのだけど、カーペットではマメな掃除機がけが必要だからだ。
僕は、迷うことなく『Miele』を選んだ。
派手に広告しているダイソンではなく、他の日本のメーカーでもなく、ほとんど日本ではあまり知られていないドイツが誇るミーレ。
もともと家の冷凍冷蔵庫は、ミーレだ。
それは、日本のほとんどのメーカーの冷凍冷蔵庫のように、冷凍と解凍を繰り返す冷却の仕方ではなく、−18度まで一気に冷凍したら、そのまま冷凍してくれる。そのため、食材の持ちがとてもいいのだ。
その代わり、時々霜取りをしなければいけないのだけど、慣れてしまえば霜取りは、冷凍庫と冷蔵庫の整理のように思えて、かえってスッキリするものだ。
家に届いたミーレの掃除機で、カーペットの上を掃除してみると、グッと吸いつくようにカーペットを捉えて、物凄い勢いで吸い込んでいるのがわかる。
ミーレの掃除機は、年数が経過しても抜群の吸引力を誇り、なんと、20年は壊れずに使えるという代物なのだ。そう思うと、この値段も高いとは感じない。
機能に徹したドイツの知恵が集結されたこの堅牢な掃除機を、時々ほれぼれと眺めている。

愛しいもの。CH25。

Yチェアの作者であり、デンマークが世界に誇るデザイナー、ハンス・J・ウェグナーの作品に、CH25がある。
Yチェアはテーブルと一緒に使われることを想定して作られている椅子だけれども、CH25は、イージーチェアと言って、リビングなどで寛いで過ごす椅子であり、ソファの存在により近いものだ。
ある時、この椅子の美しさに惹かれ、寝ても覚めてもこの椅子のことが頭から離れず、まるで恋に落ちたかのようになってしまったことがある。
写真集やカタログを何度も眺め、溜息をつき、お店に行って実際に触ってみたり、座ってみたり。
真横から眺めて、後ろから眺めて、前から眺めて、その完璧な美しさに、もう僕の頭の中は、この椅子のことで頭がいっぱいになってしまったのだ。
そんな日々が続いたあとに、やっとのことでこの椅子を手に入れた。
僕が木の椅子が好きなのは、お風呂から上がった時や、暑い時などに裸で椅子に座ることもあるからだ。座った時に、金属の椅子の脚が自分の足に触れると、冷やっとするのが嫌いなのだ。
箱から出されて、自分の部屋に運ばれたCH25は、お店で眺めていた時の美しい姿そのままで、僕の部屋にそっと馴染み、なんとも言えない安心感と温かさをもたらした。
この椅子が家に来て、もう10年くらいになるだろうか。
疲れて帰ってきて腰掛けても、朝の慌ただしい時に歯を磨きながら眺めても、休日に紅茶でも飲みながらのんびりと座っていても、つくづく素晴らしい椅子だと思うのだ。
そして、こんなに美しい椅子をデザインしたハンス・J・ウェグナーの仕事を、改めて尊敬してしまう。これこそ、真のデザイナーの仕事だと。
この椅子を見るたびに、触れるたびに、座るたびに、人生をともに生きる伴侶のような、何ものにも代えがたいものを手に入れたような幸福感を感じている。

愛しいもの。CH24(Yチェア)。

僕が、新居に引っ越す時の若い人に何かアドバイス出来ることがあるとしたら、
「家具は、慌てて全部揃えない方がいいよ」
ということだろうか。
家具に関しては、自分が心から好きになったものを、ひとつひとつゆっくりと買い足していくことをおすすめする。
なぜならば、家具は、この先の人生をずっと一緒に生きてゆくことになるからだ。
自分の好きなものがなんなのかもわからずに、お金がないため付け焼き刃的に買った家具であろうとも、結局はそのまま長い時間をともに過ごすことになってしまうものだ。
一番最初に選ぶものは、『椅子』がいいだろう。
自分にとって心地よい椅子を探すことは、実はとても難しい。
好きな形を選ぶこと。
好きな材質を選ぶこと。
そして何よりも、自分で座っていて心地よいものであること。
僕が、人生ではじめて買った椅子は、ハンス・J・ウェグナーの『Yチェア』だった。
どこから見ても美しく、食卓で座っていて心地よくて、並んだ姿がまた美しい椅子だ。
最初の家は小さかったので、先ずは二脚だけYチェアを買って、その椅子でふたりで食事をしたり、話し合いをしたり、ケンカをしたのだった。
家が少し大きくなると、客人用にもう二脚椅子を買いたいと思い、迷わず同じYチェアを買った。
そして今も、このYチェアに恋人や友人と座る時に彼らの寛ぐ姿を見ながら、この椅子を買って本当によかったなぁとつくづく思うのだ。
見ても美しく、触っても気持ちよく、座っても心地よく、時間が経っても飽きることがない。
人生でそんな家具に出会えたら、とても幸せなことだと思う。
※Yチェアは、日本で販売されて来たものと、海外のカタログに載っているものとでは、脚の長さが違って見えたので、どうしてなのかと近所の『カール・ハンセン&サン』で伺ったところ、日本で発売されているものが元々ウェグナーがデザインしたものに忠実であって、その後、海外で脚をほんの少し長くしたデザインが作られたそうだ。(今後、これが世界共通規格サイズになっていくとのことだが、この椅子の高さには、テーブルの高さが72センチくらい高くないと合わないだろう)

シューメーカーチェア。

久しぶりに椅子を買った。
WERNERのデンマーク製シューメーカーチェア。
元々は、靴職人が長時間座っているのに座りやすいように座面を削った椅子がデザインの土台になっているらしく、お尻にフィットする座面は、とても座りやすい。
なぜこの椅子を買ったかというと、玄関で靴を履くときに、毎回毎回腰をかがめるのがとても億劫に思えるからだ。
これは、僕が年をとってきたのもあるのだろうけど、そもそも西洋に似せて作られた日本のマンションの建築というのは、玄関から室内まで高低差がほとんどないため、靴を履いたまま室内で生活するにはいいのだけど、実際に日本のように、玄関で靴を脱いだり履いたりするのには適していないのだ。
どんな人も、玄関で靴を履くときに、よっこらしょっていう感じになるからだ。
ずっと玄関に低めの椅子を置きたかったのだけど、引っ越しにより少し玄関に余裕が出来たので、思い切って買ってみた。
木の触感も素晴らしく、玄関で靴を履くときに、毎回毎回惚れ惚れとしている。
そして、家に遊びに来てくれたお客さんにも、「あ、その椅子で靴を履いてみて!」というと、とても喜んで椅子を使ってくれる。
そんな姿を見ながら、本当にいい買い物をしたと思っている。

ハンガーのこと。

洋服ダンスを開けると、ハンガーにかかった洋服がバラバラに見えた。朝行く時も、帰って来た時もいつもいつもバラバラ。
スーツを買った時についてくるハンガーや、クリーニングをした後について来たハンガーを、そのまま使っていたのだからバラバラに見えるのもしょうがあるまい。
ハンガーがバラバラだから、洋服もバラバラになっていたようだ。
洋服を着る時に出して、酔っぱらって帰って来て、そのままボタンもかけずに乱暴にハンガーにかけて戻す・・・。戻された洋服は、手前や奥に傾き、踊っているように見えた。
今回、引っ越しをするので、ずーっと思っていたけど出来ずにいたこと、『すべてのハンガーを揃える』ということを思いきってやってみた。
一度に沢山のハンガーを揃えるのは、お金もかかるし難しいものだ。でも、最近はIKEAをはじめ、安い木製のハンガーが買えるようになっている。
もちろん、ハンガーにもピンからキリまであって、良いハンガーは数万円するのだけど、それは洋服が数十万円するものばかりお持ちの方にお任せして、僕は、すべての洋服のハンガーを買い替えることが出来る手頃な値段のハンガーにしてみた。
写真は、洋服ダンスの中。すっきりと収まった洋服は、心地良さそうに見えるではないか。自分で言うのもなんだけど、「まるで、洋服屋さんみたい!」
なんでもっと早くやらなかったのだろう!と思ったのであります。

思いがけないプレゼント。

今月の終わりに、僕はまた一つ年をとる。
自分が47歳になるなんて、到底受け入れられずにいるのだけど・・・。
年末の慌ただしさと引っ越しの段取りですっかりそんなことも忘れていたところ、思いがけず年下の弟のようなKTから、誕生日プレゼントをいただいた。
MoMAのデザインショップの削ったチーズを入れる容器。
引っ越しが落ち着いて、友人たちが集うようなパーティーに活躍してくれそうで、とてもありがたかった。
僕がもし、僕のような人にプレゼントを選ぶとすると、本当に面倒くさいと思う。
大抵のものは持っているだろうし、変に自分の好き嫌いがハッキリしているのでうるさすぎるからだ。
そんな面倒くさい僕のような人間に、素敵なプレゼントを選んでくれて、ありがとう。きっと沢山迷ったに違いない。
たいせつに使いますね!KT