愛しいもの。CH24(Yチェア)。

僕が、新居に引っ越す時の若い人に何かアドバイス出来ることがあるとしたら、
「家具は、慌てて全部揃えない方がいいよ」
ということだろうか。
家具に関しては、自分が心から好きになったものを、ひとつひとつゆっくりと買い足していくことをおすすめする。
なぜならば、家具は、この先の人生をずっと一緒に生きてゆくことになるからだ。
自分の好きなものがなんなのかもわからずに、お金がないため付け焼き刃的に買った家具であろうとも、結局はそのまま長い時間をともに過ごすことになってしまうものだ。
一番最初に選ぶものは、『椅子』がいいだろう。
自分にとって心地よい椅子を探すことは、実はとても難しい。
好きな形を選ぶこと。
好きな材質を選ぶこと。
そして何よりも、自分で座っていて心地よいものであること。
僕が、人生ではじめて買った椅子は、ハンス・J・ウェグナーの『Yチェア』だった。
どこから見ても美しく、食卓で座っていて心地よくて、並んだ姿がまた美しい椅子だ。
最初の家は小さかったので、先ずは二脚だけYチェアを買って、その椅子でふたりで食事をしたり、話し合いをしたり、ケンカをしたのだった。
家が少し大きくなると、客人用にもう二脚椅子を買いたいと思い、迷わず同じYチェアを買った。
そして今も、このYチェアに恋人や友人と座る時に彼らの寛ぐ姿を見ながら、この椅子を買って本当によかったなぁとつくづく思うのだ。
見ても美しく、触っても気持ちよく、座っても心地よく、時間が経っても飽きることがない。
人生でそんな家具に出会えたら、とても幸せなことだと思う。
※Yチェアは、日本で販売されて来たものと、海外のカタログに載っているものとでは、脚の長さが違って見えたので、どうしてなのかと近所の『カール・ハンセン&サン』で伺ったところ、日本で発売されているものが元々ウェグナーがデザインしたものに忠実であって、その後、海外で脚をほんの少し長くしたデザインが作られたそうだ。(今後、これが世界共通規格サイズになっていくとのことだが、この椅子の高さには、テーブルの高さが72センチくらい高くないと合わないだろう)

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