幸せへのまわり道

アメリカで、1968年から2001年にかけて放送された子ども向け番組「Mister Rogers’ Neighborhood」で知られる司会者のフレッド・ロジャースを、トム・ハンクスが演じて久しぶりにアカデミー賞にノミネートされた映画。と言うことだけ知っていて映画館に見に行ったのだけど、この映画、今年もっとも心に残る映画になった。

事実を元に脚本が作られているようで、雑誌のエスクワイアの記者でもあるロイドが、編集長の命令でフレッド・ロジャースの紹介文を頼まれる。渋々引き受けたその仕事によって、彼自身に思いもよらぬ変化をもたらす。

人生の中で、もっとも難しいことは「許すこと」ではないだろうか。

複雑な生い立ちを持つ主人公の身の上に、自分の身の上を重ねながら見て、胸が締め付けられる思いだった。何年後かに見返したいと思うとてつもなく美しい映画。

🌟幸せへのまわり道https://www.misterrogers.jp

2分の1の魔法

予告篇を見てからずっと楽しみにしていたディズニー映画『2分の1の魔法』は、予想を裏切るストーリー展開だった。

このところ、映画の予告編って、かなりsトーリーがわかってしまうくらい見せているのが残念に思うのだけど、この映画は思っていたものとちょっと違って、いい意味で裏切られた。

妖精の世界で暮らす兄弟が、亡くなったお父さんに会うために旅に出ると言う話なのだけど、妖精の世界ではマジックはもうほとんど使われなくなってしまっていて、人々はもうマジックなど信じずに暮らしている。

ストーリー展開は単調なのだけど、様々なキャラクターがとてもおもしろい。兄弟の声優にはクリス・プラットとトム・ホランドと言うのもみていて臨場感が増す。そして、クライマックスでは思わず涙が頬をつたってしまった。

軽く楽しいデートにはもってこいの映画。

⭐️2分の1の魔法https://www.disney.co.jp/movie/onehalf-magic.html

ロープ

なんと、1948年に作られたアルフレッド・ヒッチコックによるゲイ映画「ロープ」を観た。

この映画は、「レオポルドとローブ事件」として実際に1024年に起こった殺人事件を元に作られており、殺人犯の二人の男性はユダヤ人の裕福な家庭のゲイだった。ニーチェの超人思想の信奉者であり、隣人の遠い親戚にあたる16歳の少年を殺害し終身刑になった。

実際には、舞台が先にあったものを映画化、1948年当時、ゲイなどというものを公に出せない世の中において、ヒッチコックがギリギリのところで緊張感を表現している。

殺害の動機が、ニーチェの超人思想であることや、彼らが人を殺しても全然平気で入られたことなど、奥に隠された心理をとても知りたくなる不思議な映画。

⭐️ロープhttps://eiga.com/movie/50961/

風の谷のナウシカ


宮崎駿監督の作品を、TOHOシネマズで上映していて、宮崎駿監督作品の中で僕の一番好きな作品である「風の谷のナウシカ」をKと一緒に見に行った。

「風の谷のナウシカ」をご覧になっていない方はいないと思うので、ここではストーリーは省くけど、この映画を見た時に僕はまだ16歳だったようだ。

それから36年経ったあとで見る「風の谷のナウシカ」は、がっかりするのではないかと思っていたのだけど、あの頃と同じように心が動き、後半はずっと泣いていた。

今の時代にも色あせない底に流れるテーマに唸らされ、ナウシカのありようがキラキラと輝いて見えた。

ちなみに、今回次の日に「千と千尋の神隠し」を見たのだけど、見ている時は楽しめたのだけど、見終わった後に「風の谷のナウシカ」のようには、心に強く残るものがなかった。また、数年前に見た「風立ちぬ」などには全く心が動かなかった。同じ監督の作品でも、感じ方は全然違うものだ。

同じ映画でも時間を経て、中身はほとんど忘れてしまっているし、自分も成長して変わったのではないかと思いながら見ることの面白さを改めて感じさせられた。

ぶあいそうな手紙

何も前知識もなく観に行った映画「ぶあいそうな手紙」は、ほっこりするようなかわいいブラジルの映画だった。

78歳のエルネストは妻を亡くした後、一人でひっそりと大きな家に暮らしている。年々視力が落ちて来ていて、今ではぼんやりとした輪郭しか見えない毎日。隣家のおじいさんが、毎朝気にかけてくれている。

息子は都市に住んでいて、父親のことを心配しながら、古い家を売っぱらって一緒に住もうとしている。

そんなある日、散歩から帰って来たおじいさんは、たくさんの犬を散歩させていた若い娘に出会う。おじいさんの元には昔の友人から手紙が送られて来ていて、その手紙を若い女の子に読んでもらうことから、人生が思いがけない方向に転がり始める。

カエターノ・ヴェローゾの艶やかな歌声と、美しいブラジルの詩が重なる。目の見えない78歳のおじいさんと23歳の女の子は、年齢の差を超えて、人生を膨らませていく。

ストーリーの行方のわからない展開の、とてもよくできた脚本。

⭐️ぶあいそうな手紙http://www.moviola.jp/buaiso/

在りし日の歌

久しぶりに、ある意味「完璧」と思えるような映画を見た。

中国の映画『在りし日の歌』は、3時間以上ある長尺であるにもかかわらず、映画の中に入り込み、中国が経済発展を遂げていく激動の80年代から現代までの30年間くらいの年月を彼らとともに過ごしたような気がする。

見終わった後、あの夫婦に会って、しっかりと抱きしめたいと思った。

ヤオジュンとリーユンという夫婦、そして一人息子のシンシン。そして彼らの周りで暮らす友人夫婦たち。80年代の中国では多くの人々がまだ貧しく、工場でのきつい労働を強いられる中、「一人っ子政策」が国から強制的に発動されている。

貧しいけれど、友人夫婦とともに肩を寄せ助け合いながら過ごしている毎日、そんなある日、突然事件が起きて、夫婦の生活は地獄に叩き落される・・・。

絶望の淵にたどり着いた時に、夫婦は言葉少なく、息を殺しながら毎日を重ねていく。大切なものをもう二度と失わないように。

辛抱強くこの映画を見続けたならば、物語の後半に光を見るだろう。

それは、人間の信じられないようなやさしさと強さであり、美しさだ。

⭐️在りし日の歌http://www.bitters.co.jp/arishihi/

ブリット=マリーの幸せなひとりだち


スウェーデンで数々の世界中の対策を押しのけ、初登場No.1ヒットになった映画『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』は、心温まるかわいい映画だった。

ブリット=マリーは、結婚して40年、夫を支え、毎日毎日決まったことを完璧にこなす主婦。掃除洗濯をこなし、窓ガラスを磨き上げ、カトラリーを秩序を持って揃えて入れて、毎晩6時に晩御飯をはじめるために全ての料理を用意する。そんなルーティンの暮らしから、あることをきっかけに今まで全く考えもしなかった外の世界に飛び出すことになってしまう。

予告編でかなり見せているので、僕たちはストーリーをほぼ知っている状態で見たのだけど、それでも、笑わされ、泣かされ、見終わった後も心に温かいものが残るような作品だった。

デートで見るには最適な映画。

⭐️ブリット=マリーの幸せなひとりだちhttps://movies.shochiku.co.jp/bm/

レイニー・デイ・イン・ニューヨーク

大好きなウディ・アレンの新作というか、2017年製作の作品をやっと見ることができた。

映画は、今をときめくティモシー・シャラメとエル・ファニングが大学の同級生で恋人同士。エル・ファニングは地元の新聞に映画に関する記事を時々書いているようで、その仕事でNYに行き、著名監督とのインタビューをすることになる。ふたりは、それにかこつけ、週末のNY小旅行を企てる。NYで楽しいデートになるはずが、映画監督との出会いで物語は思わぬ展開を見せ始める。

いつものウディ・アレンの映画のように、主人公の男は、ウディ・アレン自身であり、彼自信を投影した人物だろう。

NY生まれで、アッパーイーストサイドに暮らす育ちのいい大富豪家族の男は、IQも高く、賭け事に長けていて2万ドルくらいを一瞬にして稼いでしまうのに、先の人生を完全に見失っている。恋人である天然系のエル・ファニングと、正反対の刃物のようなセレーナ・ゴメスの対比が面白い。

映画としては、少し残念な作品だったのだけど、久しぶりにニューヨークの空気を感じ景色を見ることができたので、そういった意味では存分に楽しむことができた。

今年85歳になるというウディ・アレンは、長い間映画界の巨匠のような存在だったのに、一昨年の♯Me Too運動の中でウディ・アレンの過去の行いが標的になり、今では実質上ハリウッドを干された人と言っても過言ではないだろう。

実際のところ、ウディ・アレンと養女の間にどんなことがあったのか、大昔に一旦裁判ではウディが勝訴していることもあり真相はよくわからない。なので、今の僕の立場としては、ウディ・アレンの映画を拒絶する気はない。昔から大好きなウディ・アレンの作品を、最後まで見届けたいと思っている。

⭐️レイニー・デイ・イン・ニューヨークhttps://longride.jp/rdiny/

WAVES

「ムーンライト」や「レディバード」を世に送り出した映画制作会社であるSTUDIO24が製作した映画と聞いて見に行った『WAVES』は、人生を描いた素晴らしい作品だった。

裕福な黒人の家庭で生まれ育ったタイラーは、レスリングの選手になろうとしている。母は後妻で、すぐ下に優しい妹がいる。タイラーは、黒人として苦労を重ねてきた厳格な父の元で、常に監視されているように生活している。

アレクシスは、ごく普通なら典型の少女。自由で快活で、タイラーと青春を満喫している。そんなある日、タイラーとアレックスの毎日が、日常の些細なことをきっかけに変化していくことになる。

この前半が終わったところで、僕はもう、この映画は終わりだと思った。「人生って、所詮こうだよな・・・」と。しかし、この映画はこの後から本番が始まったのだった。

家族がバラバラに砕け散り、ゆっくりと崩壊していく中で、輝くような光が差し込んでくるのだった。

これは、「赦し」と「人生」を描いた作品。時に不可抗力とさえ思える津波が襲い掛かり、荒波に飲み込まれて息もできなくなってしまった時に、人はどうやってもがきながらも息をして次につなげることができるのか、その後どうやって生きてゆくことができるのか。

見終わった後に、しみじみと愛おしくなる素晴らしい作品。

⭐️WAVEShttps://www.phantom-film.com/waves-movie/

召使


新宿2丁目のBridgeのマスターのセレクトで、『ゲイ映画』として有名な『召使(The Seravant)』という1963年のイギリス映画を鑑賞した。

ジョセフ・ロージーという監督の代表作なのだけど、これがとても不思議な映画だった。

貴族のトニーが、南米から戻って来てこれから住む家を決めたのだけど、そこでバレットという男を召使いとして雇うことにする。バレットは、スフレが上手で、身の回りの世話から料理、家の内装、花をいけるまで、家のことは何もかもやっている。

トニーには婚約者がいて、彼女とのデートを重ねるうちに、トニーが連れ込んだ妹が家に住むことになり、関係性が変化していく。

見終わった後に、「昨年話題になった韓国映画のパラサイトに似てる1」と思ったのだが、設定がそっくりだった。そして、映画を見ているうちに不思議な世界にはまり込んでしまったのだけど、この映画をゲイ映画と呼ぶのかどうか、ちょっと最後まで疑問に思ったのだ。

というのは、そこここに匂わせる程度にゲイテイストは出てくるものの、あからさまなゲイ描写はないのだ。

それでも、最後まで息の抜けない不思議な映画だった。

⭐️召使https://eiga.com/movie/50065/