久しぶりに、ある意味「完璧」と思えるような映画を見た。
中国の映画『在りし日の歌』は、3時間以上ある長尺であるにもかかわらず、映画の中に入り込み、中国が経済発展を遂げていく激動の80年代から現代までの30年間くらいの年月を彼らとともに過ごしたような気がする。
見終わった後、あの夫婦に会って、しっかりと抱きしめたいと思った。
ヤオジュンとリーユンという夫婦、そして一人息子のシンシン。そして彼らの周りで暮らす友人夫婦たち。80年代の中国では多くの人々がまだ貧しく、工場でのきつい労働を強いられる中、「一人っ子政策」が国から強制的に発動されている。
貧しいけれど、友人夫婦とともに肩を寄せ助け合いながら過ごしている毎日、そんなある日、突然事件が起きて、夫婦の生活は地獄に叩き落される・・・。
絶望の淵にたどり着いた時に、夫婦は言葉少なく、息を殺しながら毎日を重ねていく。大切なものをもう二度と失わないように。
辛抱強くこの映画を見続けたならば、物語の後半に光を見るだろう。
それは、人間の信じられないようなやさしさと強さであり、美しさだ。