「ムーンライト」や「レディバード」を世に送り出した映画制作会社であるSTUDIO24が製作した映画と聞いて見に行った『WAVES』は、人生を描いた素晴らしい作品だった。
裕福な黒人の家庭で生まれ育ったタイラーは、レスリングの選手になろうとしている。母は後妻で、すぐ下に優しい妹がいる。タイラーは、黒人として苦労を重ねてきた厳格な父の元で、常に監視されているように生活している。
アレクシスは、ごく普通なら典型の少女。自由で快活で、タイラーと青春を満喫している。そんなある日、タイラーとアレックスの毎日が、日常の些細なことをきっかけに変化していくことになる。
この前半が終わったところで、僕はもう、この映画は終わりだと思った。「人生って、所詮こうだよな・・・」と。しかし、この映画はこの後から本番が始まったのだった。
家族がバラバラに砕け散り、ゆっくりと崩壊していく中で、輝くような光が差し込んでくるのだった。
これは、「赦し」と「人生」を描いた作品。時に不可抗力とさえ思える津波が襲い掛かり、荒波に飲み込まれて息もできなくなってしまった時に、人はどうやってもがきながらも息をして次につなげることができるのか、その後どうやって生きてゆくことができるのか。
見終わった後に、しみじみと愛おしくなる素晴らしい作品。