家のこと。

Kはこの家に引っ越してきて、時間さえあれば家のあれこれをしている。

庭の雑草を取ったり、芝刈りをしたり、ドアを直したり、掃除をしたり、車庫を片付けたり。

今日も黙々と倉庫をひとりで片付けしていた。

Kが思いがけずつぶやいたことがあった。

「家のことをするのが好きなんだ」

病院で検査技師をしていたKは、意外にも家のあれこれをすることが好きだったのだ。

家の片付けをしたり、雑草をとったり、修理なんかをしながら、少しずつ家が良くなっていくのを感じるからだろうか。

黙々と動いているKを見ながら、この家に引っ越してきて本当によかったと思うのだった。

高校の同級生からのコメント。

朝起きたら、このブログにコメントが届いていた。

差出人には僕の知っている名前。高校時代の友人の名前が書いてあった。

内容を何度も読んで、ニューヨークにいるはずの友人のことを思う。

本当にあいつなんだろうか?同姓同名かもしれないけど、珍しい苗字だからそれも考えづらかった。

高校時代は僕の人生の中で、もっとも楽しかった数年間の一つだ。

でも当時すでに自分がゲイバーであると分かっていた僕は、いつも一緒に連んでいるような友人たちにさえ、自分のセクシュアリティのことを正直に話すことができずにいた。

それでいて心の中では友人たちに嘘をつき続けているような罪悪感に囚われながら生きていたのだ。

コメントは、本当に高校時代の友人からなのだろうか?なんでこんなブログを見つけることができたのだろうか?

いつかまた、一緒にお酒でも飲めたらうれしいな。

海と太陽を迎えに。

11時頃の飛行機に乗り、宮古島には14時半頃に到着した。

まずは、海をトリミングサロンに引き取りにいく。2泊も海を預けたのは本当に久しぶりだったので心配していたのだけど、サロンのおばさん曰く、甘えん坊でとてもいい子だったとのこと。Kの顔を見るなり聞いたこともないような声で甘えていて可愛かった。

その後、一旦家に帰ってから夕方に病院に太陽を迎えにいく。去勢手術は無事に終わり経過も良好とのこと。「人懐っこくてほんとかわいいです。癒されます」と看護師さんに言ってもらった。

家に帰り食事を済ませ、4人でベッドに入る。

Kがすぐに眠ってしまい、僕は海や太陽を眺めている。

Kや海や太陽を眺めながら、僕はなんて幸せなのだろうと思ったのだった。

東京地裁判決

3年9ヶ月かけて争ってきた裁判の判決が14時に言い渡された。

請求はいずれも棄却されたものの、裁判所が24条二項において、現在の僕たちの置かれている状況(現在同性カップルが家族と認められず国によって法律で守られていない状態)は違憲状態であるとハッキリと認めた判決だった。

14条が合憲であったり、24条一項が合憲であったり、結婚と別の制度も含めて国で議論するように促したり、納得の行かない部分は多々あるのだけど、憲法の違反を問う裁判で違憲を勝ち取ることは本当に難しいそうだ。

なので、今回の東京地裁の判決は手放しで大喜びというものではないにせよ、関係者は皆一様に大喜びしていた。

判決が出たことによって、判決の問題点も浮き彫りになった。

これから控訴に向けて動き出すと思うけど、ひとまずお疲れ様でした。そして、ありがとうございました!

◯東京地裁第一審判決のご報告https://www.marriageforall.jp/blog/20221205/

◯東京地裁一審判決後記者会見と報告会https://youtu.be/8Ix16kdNEik

前夜祭。

明日の東京地裁による判決のための前夜祭が神谷町で開催された。

僕とKは朝から太陽を動物病院に連れていき、太陽の去勢手術の手続きを済ませた。手術のあと2泊病院で預かってもらう予定。

その後僕だけ飛行機を変更して午後3時頃には羽田空港に到着し、Kは夕方に海をトリミングサロンに預けたのちに空港に向かい夜8時頃羽田空港に到着する予定。

当初の予定だと、同じ原告の「小野春」さんと「西川」さんカップルが前夜祭には登壇する予定だったのだが、2人ともコロナにかかりオンライン参加になってしまった。

18時から20時まで明日の裁判における意気込みを語ったり、ブルボンヌ司会の元、インフルエンサーの方々とお話したりした。

あまり人前でお話するのが苦手なのだけど、ブルボンヌとはかれこれ30年近く知り合いなので、緊張せずに話をすることができた。

いよいよ明日は判決の日。ドキドキしながら眠りについた。

◯東京地裁判決前夜祭https://www.youtube.com/watch?v=COGMlhONuOk&t=3246s

継母。

Kはなぜか猫の太陽に厳しい。

海にはやさしくて、太陽にだけやたらと厳しいのだ。

太陽が椅子やソファを引っ掻いて爪研ぎをすると、怒って部屋中を追い回す。

太陽がテーブルに上がると、手で払って下に落としてしまう。

K「猫歯身体能力が優れてるから大丈夫」なんて言うのだ。

K曰く、先住犬の海を一番に考えて上げて、太陽には悪いことをしたらきちんと教えないといけないそうだ。

でもその接し方をみていると、血のつながった我が子とどこかから貰ってきた子を育てている継母のように見える。

ペンキ塗りは続く。

ここに何度も書いてきたペンキ塗りはまだ終わっていなくて、敵の良い日を見つけては少しずつ続けている。

今日は庭に面した内側のペンキを塗って、だいたいのところは塗り終わった。残るは正面の入り口付近の1階と片方の側面の一部、そして裏側になる。

ペンキを塗るときは、海も太陽も部屋でお留守番で、ラジオをつけっぱなしにしている。犬も猫もラジオがついている方が、誰かがいるような気配がして落ち着くみたいだ。

ペンキ塗りがこんなに大変だとは思わなかったけど、実際にこれを塗装屋さんに頼んだら、200万円はくだらないみいつもりだったから、自分達でやってよかったと思っている。

りんごあざみ

ある日、庭の片隅に紫色のあざみのような花が咲いていた。

咲いていたというよりも、気がつけ棒ここ何ヶ月もずーっと咲いている。

花はあざみよりも小さく棘が少なく、調べてみると、「ムラサキルーシャン」という種類で「りんごあざみ」とも呼ばれ、葉を擦るとりんごのような香りがするらしい。

きっとこの宮古島で自生する植物で鳥が種子を運んできたのだろう。

その土地の植物は虫にも強く丈夫でよく育つ。おまけにその土地に合った美しさを秘めている。

このりんごあざみを大切に育てようと思っているところ。

離島割引

宮古島や石垣島在住者には、離島割引というものがある。

那覇と宮古島は直前にチケットを取ろうとすると12000円くらいするのだけど、それが8250円くらいになる。

数ヶ月前の旅行であれば安いチケットもあるけど、急に那覇に行く石垣島に行くなどの場合にはとてもお得な割引だと思う。

市役所に写真1枚と申請書とマイナンバーカードを渡せばすぐにその場でカードを発行してくれた。

早速29日の那覇行きのフライトに使わせてもらうつもり。

結婚によって得られるもの。

このところ、新聞社3社、テレビ局1社の取材を立て続けに受けている。

先日TBSの取材を受けた際に、「結婚によってどんな利益が得られるのでしょうか?また、今はどんな不利益があるのでしょうか?」と聞かれた。

僕は、わかりやすく具体的な不利益をあげた。

◯パートナーが倒れたり意識がなくなった時に病院や医師が家族と認めてもらえる。

◯遺産を遺すことが出来る。

◯税金の控除。

◯2人で子どもを育てている場合に相手の子どもであっても親権が持てる。

◯外国人パートナーでも在留資格が持てる。

でも、よくよく考えてみたら僕たちが望む婚姻によってもたらされるものはこれらだけではないのだ。

それは、パートナーとの関係性が国や社会に承認されることによって、まずは個人の尊厳が守られるということ。

そして、2人の関係が国や社会に認められることによって、法に守られながら、周囲に認められながら、ふたりで安心して人生を生きていくことが出来るということ。

結婚によって得られる具体的な社会保障にしたら1500以上あるとも言われているけど、何よりも個人の尊厳と社会でふたりの関係が認められることによる絶対的な安心感が大きなものだと改めて気づかされたことだった。