友人のお見舞い。

自分が50歳になったせいか、周りの友人たちも僕と同じように年を重ねてきた人が多くなってきて、中には手術をしたり病気になって入院をする人が増えてきた気がする。
50歳を越えた僕たちの毎日には、病気や入院や手術ということが、日常の中にあたりまえのように存在しているのだ。
60歳を越えている友人は特に何らかの病気を患っていることが多く、SNSなどでマメに動向を掴んでいる人はいいのだろうけど、僕のようにSNSをまったくやらない人にとっては、誰が今どんな状態なのか、なかなか知らずにいた。(SNSをやらなくなって不便に感じることは、このことくらい。あとは良いことばかりな気がする)
そんな中で、70を越える友人が入院したのを知ったり、久しぶりに長い闘病生活を続けている友人と連絡が取れて、今の状態を知ることができたり、今日は、前から知っている60代の友人Dが僕の家の近くで入院していることを知り、友人とともに急遽お見舞いに行くことができた。
久しぶりに会った友人Dは、脊椎の痛みに苦しんでいるのだけど、コルセットをつけてとても元気そうに見えた。肌艶もよく楽しそうにしゃべり、エネルギーに溢れ、今までとほとんど何も変わらないように見える。毎日3回リハビリを繰り返しているようなのだけど、本当は転倒したら大変なことになるのだそうだ。
僕たちが部屋で話していると、急にノックがしてまだ30代はじめくらいだろうか、若い男性が入ってきた。
どうやらDの仕事を一緒にやっている人のようで、僕たちは一瞬話しをやめてその青年をじぃーーーっと目で追ってしまっていた。(年をとったゲイ3人が若い男性をじぃーーーーーっと目で追う全世界共通の絵を思い浮かべてもらいたい)
「Dちゃん。あの人のおかげで、きっと肌ツヤがいいんだね!若いエネルギーもらってるんだね!」
僕がそう言うと、Dは笑った。
「やっぱり若い人を見ているだけでいいんだよね・・・」
そんな風に言うDを見ながら、僕も大きく頷いた。
いくつになっても僕たちゲイは、ドラキュラのように若い男性の精気を目や肌で吸いながら、生命をもやし続けているのだ。

ダブルハンバーガー

チーズバーガー

新宿1丁目に、なかなか美味しいハンバーガー屋さんがあった。
場所は、新宿1丁目の花園公園に面した場所で、名前は『CHATTY CHATTY』。ダイナーというよりもカフェに近い雰囲気で居心地もいい。バンズやハンバーガーの肉自体にも彼らなりのこだわりがあって、メニューも熱い。
ハンバーガーは、かなり巨大。バンズは柔らかく、中のソースもお肉に合ってとても美味しい。
時々無性にハンバーガーが食べたくなるのはなんでなんでしょうね?Kとふたり、ハンバーガーを頬張りながら、レモンサワーを飲んで至福の時間だった。
⭐️

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運び屋

88歳になる偉大な映画監督であり役者でもあるクリント・イーストウッドが、久しぶりに自ら主演と監督をしたというので楽しみに観に行った。
クリント・イーストウッドというと、僕にとっては『グラン・トリノ』で見事な主演・監督だったことが思い出されるのだけど、今回の映画は、まさしく『グラン・トリノ』の、崇高なおじいさんではなく、まるっきり反対のロクでもないおじいさんだった。
映画がはじまって少しして、このおじいさんのやっていることを見ているうちに、僕は正直、「もう、このまま見ないで帰ろうかな・・・」と席を立ちたい衝動に駆られた。何度も何度も席を立とうかと迷いながら、Kの顔を見るとKは見入っていたので、もう少しもう少しだけ・・・と自分を騙しながらなんとか最後まで見ることができた。
映画を観終わって、「何がいやだったのだろう・・・」と自分なりに分析をすると、この主役の爺さんの生き様が、心の底から自分とは相入れないものだったのだ。それゆえに映画を見ていてもなんだか乗れなくて、先に行くに従って苦しくなるストーリー展開も予想できたので、見ていて気持ちのいい映画ではなかったのだ。
でも、結果としては、見てよかったと思う。88歳にもなってそれでもまだ映画で何かを表現しようとするイーストウッドの気概を感じたし、彼のメッセージを全力で探そうとしたから。
もしまだ、『グラン・トリノ』をご覧になっていなかったら、『運び屋』と合わせてご覧になるといいと思う。
⭐️運び屋http://wwws.warnerbros.co.jp/hakobiyamovie/

スパイダーマン:スパイダーバース

アカデミー長編アニメーションを受賞したのは、『スパイダーマン:スパイダーバース』だった。
どんなアニメーションなのだろう・・・と楽しみに観に行くと、時空が歪められた世界で、次元を超えてスパイダーマンが戦う凝りまくったアニメーション作品だった。
3DのIMAXで観たのだけど正直目がとても疲れたのは、アニメーションのテイストが、日本のアニメが入っていたり、昔のアメコミが出てきたり、さまざまにテイストの違うアニメーションだから。
観終わった後に何かが残る類の映画ではないけど、観ているときは思い切り楽しめると思う。アニメーション可能性を感じさせてくれる作品。これには『未来のミライ』は勝ち目はないかな・・・とも思ってしまった。
⭐️スパイダーマン:スパイダーバースhttp://www.spider-verse.jp/site/

今年一番はじめのバラ。

洗濯物を干しにベランダに出ていたKが叫んだ。
「ただしくん!バラが咲いてる!」
僕は朝ごはんの支度を止めてベランダに見に行くと、季節外れに咲き出したバラが二輪、ひっそりと咲いていた。
12月に咲くことはあっても3月にバラが咲くなんて、今までなかったことだ。
今年の暖冬のせいで、うちのバラも季節がわからなくなったみたい。
それでも、せっかく咲いてくれた一番花をそっと切って、テーブルの上にいけてあげた。
ふたりで、「きれいだねー」「ピンクがかってるね」なんて言いながら、バラを眺めながらの朝ごはん。
毎日の生活はさもないことの繰り返しだけど、小さな発見は僕たちの暮らしを、豊かにしてくれる。

白貝。その2

会社から帰ってきて、すぐに風呂場に行くと、今朝塩水を取り替えておいた白貝が、またニョロニョロと小学生のアレのように伸びていた。
今日のメイン料理はこの白貝のワイン蒸しにして、その他のパスタ用のプチトマトのソースを作り、そこへKが帰って来たので、豚肉のカツレツのパン粉や卵などの衣をつけさせたりしながら慌てて仕込む。
白貝のワイン蒸しは、本当に美味しかった。
臭みが全くなく、あっさりしているけどしっかりと白貝の旨味が感じられる。
食べる前に慌てて写真を撮ると、Kがお母さんに送ったようだった。
少ししたらお母さんから返信があり、僕たちが美味しく白貝をいただいたのを知り、喜んでくれたようだった。
K「お母さんね…ニュース見てて、ただしくんの名前もう覚えたみたい。ただしさんは?って書いてくるよ」
こんな風にドキドキしながら少しずつパートナーのご両親と近づいていく僕たちは、なんだか普通のどこにでもある新婚さんカップルのようだな…と感じたのだった。

白貝。その1

ニナ貝と白貝

干し椎茸

晩ごはんの唐揚げ

夕飯の用意をしていると、発泡スチロールに入った郵便物が届いた。送り先は、大分のKのお父さん。
僕は大分県人であるKの好物の唐揚げを揚げて、仕事から帰ってくるKが中を開けると、見たこともないような巨大なハマグリのような貝と、円錐形のニナ貝がたくさん入っていた。
ネットで貝を調べて見ると、白貝と出てきて、正式名はサラ貝だった。ハマグリの5倍くらいあるだろうか?直径が7センチとか8センチあって、巨大な貝の頭がにょろにょろと出ている・・・。
「Kちゃん、この貝、なんだかこわいね・・・」
「かわいそう。お父さんが採ってきてくれたのに・・・」
ニナ貝は、僕の父がよく海に行った時に採ってきては、塩茹でにして食べていたのを思い出して塩ゆでにした。でも、この巨大な白貝はどうしたものか。量が2人では到底食べきれないくらい沢山あるではないか・・・。
ご飯を食べていたら、Kのお母さんから電話が入った。電話の向こうではうれしそうに白貝の食べ方を、バターで焼いたら美味しいとか、臭くなかったら生で食べた方がいいとか、Kに話して聞かせているのが聞こえる。(臭くなかったら・・・って、臭かったら焼こうが煮ようが食べたくないのだが・・・)
それにしても、Kのお母さんもお父さんも、採ってきた貝を送ってくれたり、カボスを送ってくれたり、名物の干し椎茸を送ってくれるのは、陰ながら僕たちカップルをしょうがないなあ・・・と受け入れはじめてくれている兆しなのかもしれない。
そんなことを思いながら、今日はひとまず白貝はお風呂場で砂抜きをすることにした。
時々お風呂場でそーっと白貝を覗きに行くと、白貝の頭がニューーーッと出ていて、なんだか子どものおちんちんみたいだと思った。

母の変化。

先月、母と父と食事をしようとしたら、雪が降るとの予報で、東京はほとんど降らなかったのだけど千葉では結構降ったようで予定をキャンセルした。
12月に父と母に今回の『同性婚訴訟』に原告として出るという話をした後に、父と母には正確な知識を持ってもらうために本を数冊送ってあった。
実のところ、その本を読んだのかどうかはわからない。その後、2月14日の提訴の日に。母がテレビのチャンネルをいじっていたら、いきなり僕が映ったようで、その場で電話をくれて、「あなた、あんなことで有名にならなくても、もっと他のことでテレビに出るようにすればいいのに・・・」などと言っていたことはここに書いたhttp://jingumae.petit.cc/banana/2856050。
そこで、今週末は久しぶりに食事をしようかと電話で切り出すと、母が言った。
「あなた、こないだマラソンで走っていたでしょう?・・・昭和記念公園の・・・」
僕は、ごく親しい友人たちが企画して先週末の土曜日に行われた『レインボーマラソン』のことだとすぐにわかり、笑いながら「僕はマラソンには出なかったよ」と告げた。
「あらそう?あなたみたいな人が走っていたから・・・」
母はあれからきっと、テレビや新聞で、ゲイだとかLGBTだとかの文字を気に留めて追いかけているのだろう。自分では息子の性的指向を未だに受け止められていないのかもしれないけど、母なりに関心を持ち気にしてくれていたのだと思う。母が再婚して、今は僕の父でもある父は、急に義理の息子にカミングアウトをされて、今はまだ、どうしたらいいのかわからないに違いない。
そうであっても、今まで通り、僕たちは週末にいっしょにご飯を食べる約束をした。
母は久しぶりの僕との食事がうれしいのか、自らお店を選んで予約を入れてくれたようだ。
今までは僕の性的指向に気づいていただけの母も、僕から駄目押しをされて最初は少し戸惑ったようだった。時間がかかったとしても、母は本当の僕のことを目をそらさずにゆっくりと受け入れはじめたようだ。

同じ夢。

なぜだかわからないけど、しょっちゅう見る夢がある。
それは、スマホがおかしくなってKに繋がらず、早く帰ってKに伝えようとするのだけど、簡単に帰れないくらい遠くにいて、連絡も取ることができずもがいてるうちに、家に帰ってもKはいなくて、探しまくるのだけど見つけられず、結局Kとは離れ離れになってしまうという夢。
夢から覚めた時に、隣に手を伸ばすといつもKがいるのだけど、朝起きた時に夢の話をすると、「かわいそう・・・ただしくん・・・なんでそんな夢見ちゃうんだろうね・・・Kちゃんいつもただしくんと一緒なのに・・・」と言って僕にキスをしてくれる。
自分でも、なぜ同じような夢ばかり見るのかわからないけど、自分なりに分析すると・・・僕が以前つきあっていた人に、都合が悪くなると音信不通になってしまう人がいたことが原因かなと思う。その人は、自分が怒ったり話をしたくなくなると、一方的に電話もつながらなくなるし、メールも返信が来なくなってしまう人だった。
Kは今までどんなに怒ってもそんなことはないのだけど、未だに自分の中にその時の不安な気持ち、どこにもやり場のない寂しい思いが残っているかもしれない。
そんな夢を見た時は、自分で自分に言い聞かせる。
「大丈夫だよ。いつもKはいっしょにいるから」
僕たちは、つきあいはじめて7年目になって、ふたりでいるのが当たり前に思える。たいせつな宝物を持っていることを知っているから、失うことを夢の中で想像してしまうのかもしれない。
いくつになっても人間とは、なんて小さく、傷つきやすい生き物なのだろうか。

ビールストリートの恋人たち

キキ・レイン

レジーナ・キング

黒人作家として評価され、キング牧師らと共に公民権運動の旗手としても活躍したジェイムズ・ボールドウィンの原作「ビール・ストリートの恋人たち」を、『ムーンライト』でアカデミー作品賞を受賞したバリー・ジェンキンス監督が作った作品。
1970年代のニューヨーク。ふたりの幼馴染の黒人のカップルは、純粋に相手を思いやる気持ちにあふれ深い恋愛関係になってゆく。
やがて、信じられないような黒人に対する差別が横行していき、ふたりの運命は翻弄される。僕たちは、てっきり単純な恋愛映画だと思って劇場に向かったのだけど、全然違っていて、1970年代の黒人差別の映画だった。
昨日と今日と続けて人種差別の映画を見たわけだけど、これらはもうとっくにアメリカで終わったという話ではなく、トランプ政権の現在、もう一度その意識が表立って強くなってきているのだろう。
主役の娘役のキキ・レインがとても美しい。そして、アカデミー助演女優賞を獲得した母親役のレジーナ・キングが、心もとない娘のそばで寄り添い続けるどっしりとした母親役に、見事な演技だと唸らされるに違いない。
⭐️ビールストリートの恋人たちhttps://longride.jp/bealestreet/