OUT IN JAPAN #004 in TOKYO

渋谷で、第4回目のOUT IN JAPANの撮影が行われ、総勢121名のセクシュアルマイノリティの方々が参加してくださった。
スタッフは、朝の7時から夜の11時まで、ぶっ通しでボランティアで関わり、途中何度も気が遠くなるような疲れや眠気に襲われながらも、なんとか全員撮影を終えることが出来た。
撮影前にほんの少しずつそれぞれの人とお話ししながら、こんな境遇の人もいるのか…こんなトランスジェンダーの人もいるのか…と感心することがたくさんある。
今回、とても綺麗な23歳の女の子がいて、なんというか、ちょっと女優みたいな透明感のある子なのだけど、プリントアウトにはFTMと書いてあって、最初、何かの間違いかと思ってセクシュアリティをもう一度聞き直した。
すると、やはりFTMで、「まだ勇気がなくてカミングアウト出来ていないけど、これを機に周りにカミングアウトするつもりです。」と言うのだった。
そして、「私もあんな風になりたいんです」と彼女の次の人を指差すと、そこにはどこからどう見ても30代の毛むくじゃらの男にしか見えない、大胸筋の盛り上がった日に焼けたFTMがいたのだった。
23歳の彼女の場合、もの心着いた時から自分が男だと感じていたのだけど、身体の性である女性の方として長い間生きてきたのだ。それが今になってやっと男になれるのだと、顔を赤らめて興奮していたのだった。
彼女にとって、今回のOUT IN JAPANがちょっとした勇気を出す機会になったのかと思うと、僕たちもとてもうれしかった。
まだまだこれからが、彼女というか、彼にとっての正念場なのだろうけど、高揚して輝く顔を見ていると、きっとあと3年もすれば、見違えるようなかっこいい男になるのだろうと思えるのだった。
★OUT IN JAPAN #003 in OSAKAの写真とプロフィールが公開されました。http://outinjapan.com

秋のバラ。

秋のマダム・アルフレッド・キャリエール

例年は、僕のベランダでは秋のバラはあまり咲かないのだけど、今年は忙しく、ほとんどほったらかしで週末のたびにどこかへ出かけていたのに、なぜだかバラがいくつも咲いている。
オールドローズの『マダム・アルフレッド・キャリエール』は、僕の大好きなツルバラなのだけど、春にはたくさんの奔放で華麗な花を咲かせ、秋には少し色褪せたような大人な雰囲気の花を咲かせる。
僕が育てて来たバラの中では、このバラが一番強健で、環境に順応しやすく、虫もつかないことから、誰かにバラを勧めて欲しいと言われた時には真っ先に名前を挙げるバラだ。
秋の花の香りはかなり弱いけど、春の花はなんともいえない爽やかないい香りが楽しめるのも魅力の一つ。
いつかこのバラを思いっきり延ばして、春にはバラの家と言われるくらいに咲き誇る家に暮らすのが僕の夢なのです。

台湾の包丁。

昔、まだ台湾に行ったこともなかった時に、当時つきあっていた恋人が台湾に行ったお土産で包丁を買って来てくれた。
チタンだったかなんだったか(笑)、とにかく硬い金属で出来た包丁なので、骨だってくだけるよと言って。
包丁は四角くて、ある程度重く、しばらく引き出しにしまってあったのだけど、数年経ったのち、まだ凍っている肉を試しに切ってみたら、気持ちがいいくらいにスパンと切ることが出来た。
それから、時々この包丁を使うようになったのだけど、使ってみて驚いたのは、なるほど、中国4千年の知恵が詰まっているように感じる。
たとえば、九条ネギなんかを僕はまとめて買って来て、使いきれない分は一気に刻んでしまって冷凍庫に保存するのだけど、長いネギを端から一気に切るなんて時に大活躍するのだ。
使う前は重さが気になっていたのだけど、使ってみると、その重さが実に使いやすく、持ち上げると勝手に包丁自体の重さで切ってくれる感じといったらわかりやすいだろうか・・・とにかく、単純な端から端まで切ってゆく作業なんかに力を発揮することがわかった。
それと、その切り刻んだ細かなネギをバットやボウルなどに取り分ける時に、包丁の腹に一気にネギがすくい上げられるのも素晴らしいと思っている。
切れ味が抜群なので、見かけに寄らず繊細にイカを砂漠なんてのも出来てしまう。
日本の包丁は日本人敵な切れ味や魚さばきには最適だけど、台湾の包丁は台湾らしい様々な食材を大胆に切ってゆくために作られたのだろう。
使うたびに、感動してしまう素晴らしい包丁なのです。

劇団ぺんぺん 第27回目公演『瞼の母』

第2回目からずっと観ている劇団ぺんぺんの公演がいよいよ近づいて来た。
今回の演目は、『瞼の母』。
昔、20年くらい前だろうか、劇団ぺんぺんはこの『瞼の母』と『明治一代女』を合わせて上演したことがある。
その時は、「なんで時代劇なんかやるんだろう?」なんて思って観に行ったのだけど、まんまと罠に引っかかって、泣かされてしまったのを思い出す。
『瞼の母』を全編通してやるわけではなくて、恐らくそのエキスを濃縮して演じるのだろうけど、はじめからわかりきっているストーリーなのに、また泣かされてしまうのだろうかと、今から楽しみにしている。
『劇団ぺんぺん』と言えば、突然のハプニングがつきもので、実際に芝居が無事にはじまるまで、いったい土壇場で何が起きるかわからないのもハラハラさせられるところだ。
みんなが他に仕事を持っていながら、毎週水曜日日曜日と自分のプライベートを犠牲にしながら、ほぼ9ヶ月間をかけて練習を続けるのだ。
何かあって当たり前なのかもしれない。
今年は、演出家でもあるぺんぺん草のひろしさんが、久しぶりに出るかもしれないという噂がまことしやかに流れはじめている。
そんな噂を聞くと、残り4回しか公演をやらないと言い出したひろしさんも女優魂が疼き出したのだろうか…とも思う。
今年も、バカみたいに笑って、ちょっとほろっとさせられて、みんなのかわいい踊りが終わって『ONE』がかかる頃には、なんとも言えない温かい気持ちになっているのだろう。
またここの芝居を観たことのない人にも、ぜひ一度観て欲しいと思う。新宿二丁目が生み出した、他のどこにもない独自の文化を堪能出来るに違いない。
〈公演日程〉全5回公演
12月
4日(金)19:30〜
5日(土)13:00〜 17:00〜
6日(日)13:00〜 17:00〜
★チケットは、新宿二丁目新千鳥街にある『ぺんぺん草 03 3354 6039』にて発売中。一枚3000円。
場所は、新宿にあった厚生年金会館の向かいのTheater BRATS(だったと思います。今年から新しい劇場に変わりました)。

柿。

母から電話が午前中に来た。
「柿を送ったから、今日の夕方そちらに着きます。うちの柿は甘いのよ・・・唐揚げも入れておいたから・・・」
クロネコヤマトは、このごろ、その日のうちに配達するようになったようだ。アマゾンといいクロネコといい、いったいどんなシステムなのだろう・・・
思えば、『柿』というものを、店頭で買ったことがない。自分から敢えて面倒くさそうで買わないのもあるが、お店にある時期も限られているからか。
夕方になり段ボールが届く。開けてみると、いびつな柿がいくつか入っていた。
母は、素朴な人だ。
人や物事を疑うことをせず、逆境にある時もあるがままの境遇をそのまま受け入れて生きて来た。エキセントリックだった僕の父と別れてから、今の旦那さんに出逢い、今では平穏な毎日を送っている。
柿を剥いてみると、驚くほど甘かった。自然に木になったものが、なんでこんなに甘いのだろう・・・。
母のような人はきっと、幸せが何かを知っているのかもしれない。
デパートには並ばないような、いびつな柿を手にしながら、そんなことを思った。

親子旅行。

Kが、お父さんとお母さんと一緒に東京へ旅行に来た。
Kは毎年ご両親と一緒にどこかに旅行に行っているのだけど、昨年に引き続き今年も、なぜだか東京に来ることにしたようだ。2泊するうちの中日は日光に行ったらしい。
それに伴い、旅行を決める間、ホテルはどこにするか、どこに東京観光に行くか、ごはんはどこが美味しいか、Kは何度も何度も僕に聞いてきた。
昨年泊まった帝国ホテルは、Kのご両親は敷居が高く感じられてしまい、緊張してしまったので、もっと庶民的なホテルにしたいと言って来た。
レストランも高いところではなく、安くて東京らしくて美味しいところ…なかなか難問が重なった。
それに加えて、Kはまったくの方向音痴なのだ。いつもは僕の後にくっついてぼんやりしていれば目的地に着くのだけど、お父さんお母さんを引き連れて東京案内するほど、東京の地理が全くわかっていないことに気づき、慌てはじめた。
そこで僕が、Googleマップで新宿の地図と歩き方、ホテルから築地までの行き方、銀座の歩き方などの地図をわかりやすく作ってホテルに届けておいた。Kが道に迷わないように。
ところが、新橋の地下でさえ、どこかいつもと違った場所に出てしまうとどこにいるのかわからなくなってしまうようで、初日は浅草線の出口からホテルに帰るまでに相当苦労したようだ。
そして土曜日、またKから連絡が入った。カレッタ汐留の地下の鼎泰豊で食事をしているのだけど、ホテルまでどうやって帰ったらいいのかわからないと…
僕が逐一説明するけど、何度も何度も聞き返してくる。地下が広くてわからない…
結局、指示した通りに地下を通り、銀座に向かいホテルに帰ることが出来たのだけど、地方で暮らす人にとってみたら、東京は巨大過ぎて、新宿の地下なんかは全くもって迷宮にしか思えないようだ。
それにしても、物凄い方向音痴なのに、ご両親と一緒に毎年旅行しているKを、なんだかかわいいと思える。旅行の間中、お父さんとお母さんがケンカしはじめた…などとLINEを送ってきたりしてハラハラしたけど、ご両親思いのやさしい子だ。
本当は、お父さんお母さんに僕が恋人ですと挨拶をして、ゆっくり一緒に東京を案内して回りたいと言ったのだけど、すかさずKは僕に、
「そんなことしたら、ふたりとも泡ふいて失神しちゃう…」
と言って、とりあってくれなかった。

Xの誕生日。

上カルビと上ロース

僕と同じ年のXが日曜日に誕生日を迎えるので、一緒に焼肉を食べた。
歌舞伎町にある『味楽亭』。
塩でタンやカルビを食べた後、上カルビ上ロースをタレで。
それにしても、実感がわかないのは、47歳になるということ。47歳なんて、なんだかまるで誰か他のおじさんの年としか思えないのだ。
でも、こうして焼肉を食べていても、若い頃とは食べる量が明らかに違ってきていることを、僕たちは知っている。
そして、久しぶりに会う友人の名前がどうしても思い出せなかったり、昔は手帳など見なくても、すべてのスケジュールが頭の中に入っていたのに、今ではそのスケジュールさえうっかりと忘れてしまうこともある。
それに、Xが盛んに言うのは、昔のようにやりたいと言う強烈な欲望が薄くなってしまったということだ。
「台北やソウルにふたりで遊びに行っては、あんなに遊びまくったのにね…」と、昔を懐かしく思い出した。
でも、たとえ物忘れが多くなったとしても、体力が落ちてきたとしても、暗いところや小さな文字が見えにくくなったとしても、年をとって人間としてより美しくなれることもあるような気がする。
それは、自然に対して畏敬の念が増すことだったり、自分が宇宙の小さな一部に過ぎないと思えたり、他者に対する思いやりだったり、年寄りや弱者に対してやさしくなれることだったり、自分は取るに足らないごく普通の人間だということがわかってきたりすることだ。
X、47歳のお誕生日おめでとう!
これからも一緒に、いろんな国々に旅行に行こうね!
★味楽亭03-3200-1919
東京都新宿区歌舞伎町2-23-10 第1本間ビル 1F
http://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13000019/

渋谷区で、『同性パートナーシップ証明書』発行。

念願の『同性パートナーシップ証明書』が発行され、友人であるK&Hカップルが、晴れて第一号となった。
ハチ公は虹色のタスキをかけ、テレビでもネットでも沢山のニュースに取り上げられたようだ。
夜になり、神宮前二丁目ファミリーがイロドリの2階に、K&Hカップルの証明書を仲間同士で祝うために集まった。
そこには、Hのお父さんとお母さんもお見えになり、みんなと一緒に感動を味わった。
証明書を実際に見てみると、なんとも感慨深いものがある。区が認めた紙切れとはいえ、きちんと書かれたふたりの名前と、そのふたりの関係を認めると書かれた文字を見ていると、日本もここまで来たのだなあと思ったのだ。
こんな紙切れ、なんの法的な効力もない。そういう人もいるのは知っている。
でもどうだろう?
この渋谷区や世田谷区のことが日本中で話題になり、携帯会社や保険会社など民間企業にも次々と変化が見え始めた。
ライフネット生命保険が真っ先に名乗りを挙げて、第一生命、日本生命までもがこの証明書を生かしてくれると言い出したのだ。
どんな国の変化も、最初は小さなところからだったに違いない。この国に同性パートナーの権利が平等に認められていくためには、これからまた、みんながそれぞれ、自分たちに出来ることをコツコツと積み重ねていくしか道はないのだろう。
ふたりの幸せそうな顔を見ながら、それをともに喜び祝える仲間たちと美味しい祝杯を挙げた。

點水楼。

トリュフ入りの小籠包

鶏の紹興酒漬け

豆腐の煮物

台湾に行くと、必ず決まって鼎泰豊に小籠包を食べに行く。
でも今回は、あまりにも慌ただしく、仕事も半分持ち込んでいたため、気がついたら鼎泰豊に行く時間がないことがわかった。
鼎泰豊のために書いておくと、日本の鼎泰豊と台湾の鼎泰豊は、やはりちょっと違うのだ。日本で食べる小籠包も美味しいのだけど、台湾には日本にはないトリュフ入りの小籠包があったり、他の料理の種類も豊富で、どれを頼んだとしてもハズレがないくらい美味しいのだ。
そこで、ホテルの近くでなんとか美味しいものが食べたいと思い、昔入ったことのある『點水楼』をSOGOの中に見つけたので入ってみた。
以前に入った本店は点心が有名で、小籠包以外のものもとても美味しかったので入ったのだけど、ここにもトリュフ入りの小籠包があり、鶏の紹興酒漬けも絶品だった。
昼はなんと、予約をしておけば小籠包の食べ放題があるというし、散々悩んだ挙句頼んだ豆腐の鍋も、あっさりとしていてどこか懐かしく美味しい味わいだった。
「こんな店が東京にあったらいいのにね」と、店員さんに言うと、驚いたことに、新宿にもうすぐ『點水楼』の新宿店が出来ると言うのだ…。
これで、東京の小籠包にも、鼎泰豊以外の選択肢が出来ますね。
★點水楼http://www.dianshuilou.com.tw/jp/

銀杏並木。

台湾から戻ると、東京がぐっと寒くなって来ているのを感じた。
気温は最高が14度最低が10度。少しずつ冬が近づいて来た証だ。
朝、会社に行く前に早めに家を出て、外苑の銀杏並木を見に行った。
こないだKとふたりで見に来た時は、葉はほとんど緑色だったのに、ちょっと見ない隙に随分黄葉が進んでいた。樹々は、15度を切るあたりから、少しずつ紅葉をはじめる。
この銀杏並木は高校の頃、どんなに走ってももう絶対に遅刻だとわかると、学校をサボって逃れて来た場所だった。
しばらくすると、仲間の誰かしらも顔を出して、そのまま原宿に流れて、夜まで青山界隈でうろついて遊んでいたのだ。
友達とよく覗いたのは古着屋さん。その当時、VOICEという古着屋さんがキラー通りにあったのだ。
それから、プロペラというアメカジの店。僕たちにとってはまだ見ぬアメリカに憧れて、男臭いアメカジにはまっていた。
お腹がすくと、原宿か青山通りにあったウエンディーズによく立ち寄った。
アイスティーが石鹸のような香りがして、チリにかけるソースがワキガのように臭いと言って笑った。
あれから30年もたち、随分と原宿や青山の町並みは変わってしまった。
変わらないのは、今でもまだ大人になりきれない僕だけのようだ。
銀杏並木に来ると、今でも自分があの頃のままなのだとはっきりとわかる。
1つ望みを叶えたとすると、この並木道を手を繋いで歩く人がいるということくらいだろうか。
コートを着ながら、銀杏並木を愛する人とふたりで歩くことが、その頃からの僕の夢だったのだ。