銀杏並木。

台湾から戻ると、東京がぐっと寒くなって来ているのを感じた。
気温は最高が14度最低が10度。少しずつ冬が近づいて来た証だ。
朝、会社に行く前に早めに家を出て、外苑の銀杏並木を見に行った。
こないだKとふたりで見に来た時は、葉はほとんど緑色だったのに、ちょっと見ない隙に随分黄葉が進んでいた。樹々は、15度を切るあたりから、少しずつ紅葉をはじめる。
この銀杏並木は高校の頃、どんなに走ってももう絶対に遅刻だとわかると、学校をサボって逃れて来た場所だった。
しばらくすると、仲間の誰かしらも顔を出して、そのまま原宿に流れて、夜まで青山界隈でうろついて遊んでいたのだ。
友達とよく覗いたのは古着屋さん。その当時、VOICEという古着屋さんがキラー通りにあったのだ。
それから、プロペラというアメカジの店。僕たちにとってはまだ見ぬアメリカに憧れて、男臭いアメカジにはまっていた。
お腹がすくと、原宿か青山通りにあったウエンディーズによく立ち寄った。
アイスティーが石鹸のような香りがして、チリにかけるソースがワキガのように臭いと言って笑った。
あれから30年もたち、随分と原宿や青山の町並みは変わってしまった。
変わらないのは、今でもまだ大人になりきれない僕だけのようだ。
銀杏並木に来ると、今でも自分があの頃のままなのだとはっきりとわかる。
1つ望みを叶えたとすると、この並木道を手を繋いで歩く人がいるということくらいだろうか。
コートを着ながら、銀杏並木を愛する人とふたりで歩くことが、その頃からの僕の夢だったのだ。

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