Patti Austin

シーラカンスみたい…

僕にとって一番贅沢な週末は、今週末のようになんにも予定を入れない週末だ。
会社に入りたての忙しい時に、二つ年上の人とつきあいかけたことがあり、その彼から当時彼の好きなCDを2枚もらった。 それらは20年近く経った今、僕の宝物のようになっていて、時々思い返しては聴き続けている。
今日のような初冬の曇りがちな日に、一人で家でのんびりと読書や料理などをしながら、『Patti Austin』を聴いていると、彼女の抑えた歌い方が胸に沁み入って来る。
Patti Austinは、僕の周りではあまり話題に登るシンガーではなかったけど、時代に残るヴォーカルがあるとしたら彼女のような人なのではないかと思わせるちょっと複雑な歌声だ。
Quincy Jonesという天才に見出され、多くは無いけれども着実にアルバムを重ねて来たPatti Austinは、YouTubeで見る限りライブも見応えがありそうだし、日本のブルーノートにも来ているようなので、いつか機会があったら、是非ライブを観てみたいと思う。
昔は好きなアルバムを恋人に送ったりしていたけど、今はダウンロードして交換したりするのだろうか?
僕は、CDという形になっているアルバムが、ジャケットも含めて作り手の思いが込められている気がするしとても好きだ。これからたとえ20年経ったとしても、大好きなCDは変わらないのだろうと思う。
★How do you keep the music playing?http://www.youtube.com/watch?v=Y-4Nc84uEK8&playnext=1&list=AL94UKMTqg-9B94TIWGtiWh09qpTj3ncmk

S太郎のハッピーバースデー。

僕と一緒によく飲み歩いたり、色々な国に旅行に行くS太郎の45歳の誕生日を、K太郎と祝った。
何が食べたい?と聞くと、韓国焼肉が食べたいとすぐに返信があったので、歌舞伎町の『TEJI TOKYO』へ。
『TEJI TOKYO』は、梅山豚や、イベリコ、ハンガリーのマンガリッツア豚などの肉の塊を、お店の人が丁寧に焼いてくれる店。
年を取ると、独りの誕生日ほど寂しいものはない。
たとえ恋人などいなくても、友達とワイワイ騒ぐ誕生日が、僕は一番楽しい気がする。
三人の話題はいつも、先日の台湾旅行での男の話だったり、次の旅行先の話しだったりする。
散々食べて、飲んで、二丁目でハシゴして、帰り際に「誕生日おめでとう!」と言ってS太郎とハグをして別れた。
『ヨボヨボになっても、一緒に台湾に遊びに行こうね!』というメッセージがS太郎から届いた。
★TEJI TOKYOhttp://s.tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13019553/?lid=header_restaurant_detail_menu

いつも変わらずにある場所。

Bridgeで平日によく入っていたHが、新しい仕事につくので少し遠くに引っ越すため、一旦Bridgeを休むことになった。
まだ32歳のHは、鼻が高く目がつぶらで、実は繊細でやさしい性格だ。昨夜はHの少し早い誕生日と新しい門出を祝うために、常連のお客さんたちがBridgeに集まった。
みんなで大声でハッピーバースデーを歌いながら、うれしそうなHもさることながら、カウンターで大声で楽しそうにはしゃいでいる仲間たちを見ていて僕も幸せだった。
Hの人生に色々なことがあったように、Bridgeで出会って、ある時期は親しく飲んだり、仲良くなった人たちがいるけど、様々な理由からあまり来なくなってしまったり、なかなか会えなくなってしまった人たちが沢山いる。
常連と言われる人たちが、時代とともに確実に入れ替わってゆくように、今、周りにいる友人たちだって、もしかしたら僕にしたってこの先色々な事情で遠く離れたり、来られなくなったりするに違いない。
でも、そんな風にいつか時が経って、もう来られなくなってしまったとしても、昨夜のようなひと時を憶えていられたらいいだろうなぁと思う。
たとえ離れてしまったとしても、いつも変わらずにある温かい場所が心の中にあるのは、幸せなことだ。
H、お誕生日おめでとう!
いってらっしゃい!

ニューヨークでカミングアウト。

お土産の『イカスミ塩』

Cは古くからの友人で、40代になってから仕事を辞めて、オーストラリア人のパートナーの暮らすシドニーに移り住んだ。年に数回帰国するのだけど、昨夜はそんな日で、パートナーの他にCの実のお姉さんも一緒に飲みに来た。
ぺんぺん草は、女の人は決められた3人以外入ることは出来ないのだけど、今回は特別にひろしさんが許してくれた。
お姉さんにカミングアウトをしたのは、15年くらい前にニューヨークでお姉さんと食事をしている時らしい。お姉さんに、どこに行きたい?と聞くと、「素敵なゲイがいっぱいいるところに行きたい」と。
そこでCはすかさず、「実は僕もゲイなんだ」と言って、なんと、あの裸の男たちが水しぶきを浴びたりしながらカウンターで踊りまくっていた『Splash』にお姉さんを連れて行ったというから、あきれてしまった。きっとあの、自由な空気の漂うニューヨークがそんなことを実現させたのだろう。
僕の周りの友人たちの中で、CはパートナーのVとつきあい出してかなり経つのだけど、人生における色々な大きな決断を下しながらも、今のCはとても幸せそうに見える。
先日はお母さんも来ていたし、お姉さんも、ゲイバーに来られてとても嬉しそうで、家族に自分のセクシャリティーを偽りなく話し、理解してもらえているCを見ていて、とてもよかったなあと心から思った。
お土産、ありがとう!

愛しのモッツァレラ。

食品偽装の問題が、また日本中で話題になっている。これは無いだろう?と思うものから、これくらいはまあ、あってもしょうがないのでは?というものまで。人の口から入るものだからこそ、厳しい管理がされて当然なのだけど、日本の規定は、恐らく世界一厳しいのではないだろうか。
本来、モッツァレラは水牛のチーズが本物なのだけど、巷でカプレーゼを頼むと、出て来るモッツァレラは、99%牛のチーズだと思って間違いない。これは偽装ではなくて、イタリア本土でもかなりの確率で水牛でないモッツァレラが出てくるのでいたしかたない。
もともとモッツァレラ自体、味が強いチーズではないので、それ自体で物凄い違いがあるわけではないとされるものの、それでも、イタリア人(特に南部)が愛してやまない水牛のモッツァレラは、どこがどんな風に美味しいのか、たまに確かめてみたくなりませんか?
僕の冷蔵庫にはたいてい写真のモッツァレラが入っていて、急なお客さんなんかの時には、ワインを開けながらでも5分も経たずに出すことが出来るから重宝している。日持ちがいいのもよい所だと思う。先日も、Kが来た時に、外出先から結局外食を諦めて家に戻り、ご飯を食べようと思った時に、すぐに出せて、しかもその早さと美味しさに驚いていた。Kはきっと、はじめて水牛のモッツァレラを食べたのだと思う。「カプレーゼって何?」って聞いていたから。
さて、このモッツァレラ、よく豆腐に例えられる柔らかさと繊細な味を持ち、仄かに香る風味までイタリアだ。小さな大きさの少し違うモッツァレラが4つ入っているのだけど、食べ方は僕の場合、選んだトマトを横に(これが重要)まっ二つに切って、その切り口上に軽く塩をふり、それと同じくらいの大きさに切ったモッツァレラを乗せてほんの少し塩をふり、オリーブオイルをたっぷりとかけてからバジルの葉を乗せる。
口に頬張ると、口の中いっぱいにえもいわれぬハーモニーが広がり、ナポリやソレントやアマルフィイ海岸の懐かしい思い出が甦るようだ。
モッツァレラ、トマト、バジル、オリーブオイルという完璧な組み合わせは、いったい誰が思いついたのだろうか。それぞれの素材が美味しいため、手をかけずに組み合わせるだけでさらに美味しい一品に仕立て上げる。和食にも似たイタリアを封じ込めたかのようなこの一品を、僕はこのうえなく愛している。

夢と希望に溢れる細い目。

27歳の台湾人Keは、台湾の大学を出た後、日本の大学で学びながら、日曜日以外の日はアルバイトを2つ掛け持ちしている。来年の4月に大手の日本の企業に内定が決まり、今は会社の研修が始まったところ。
長引いた風邪が治ったのと内定のお祝いを兼ねて、台湾ではお店はたくさんあるけれども、日本ではあまり見かけない火鍋を食べに、『小肥羊』に行った。
台湾の火鍋は、肉も練り物も海鮮も、みんないっしょくたにごった煮のように入れてしまうことがほとんどだけど、僕たちは少しずつ日本式に入れては食べて、美味しいね。などと言いながらゆっくりと食事の時間を持てた。
故郷の味に近いのか、笑うと目が細くなくなってしまうKeはさらに顔をほころばせて、美味しいと言って火鍋のタレなどの様々な解説をしてくれる。
若い時にお母さんを亡くし、お父さんはタイのチェンマイで働いていて、妹は台湾で暮らすKeにとって、故郷から離れた東京では、時々寂しくなることもあるだろうけれども、幸い彼の周りには、台湾人も日本人も友人が何人もいて、みんなから可愛がられているのがわかる。
研修の課題に対して、僕が、「もっとこんな風にも考えられるし、こんなことをしてもいいよね?」などとアドバイスをするうちに、Keの目が明るく輝きはじめた。今のKeは夢と希望に溢れ、新しく始まる生活に胸を高鳴らせている。若い人たちと話をすると、その希望に溢れた表情を見ているだけで、いいなあとしみじみ思う。
Keからしたら、僕はどうやらお兄さん。というか、お母さんのような存在なのだろうけれど、時々こうして話を聞いてからかいながら、少しずつ成長してゆく弟のようなKeを見ていられたら幸せだ。
★小肥羊 新宿店 http://s.tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13047261/

竹葉亭。

朝は、にゅうめんを作ってのんびりと過ごし、昼から伊勢丹に買い物に行き、銀座の竹葉亭でうなぎをいただいた。
竹葉亭は、数あるうなぎの老舗の中でも、昔から変わらずに通い続けている店。僕たちの前に70代後半だろうか、お婆さんが一人座って待っていた。
すると店員さんがお婆さんのところに来て、「地下が空きましたけど、地下のお席になさいますか?それとも、一階をお待ちになりますか?」と聞いた。
するとお婆さんはすかさず、「私は独りだし、誰も家で待っているわけではありませんから、このままここでいつまででも待ちますよ。」と言った。
それは、寂しいというよりも、どこかウィットに富んだ言い方で、僕はなんだか、このお婆さんが東京っぽくてかわいいなあと思った。膝には三越の買い物袋、いつも銀座に買い物に来ては、たまに竹葉亭でうなぎを食べて帰るのだろう。
柔らかいうなぎと、肝吸いと、ビールは、絶妙なコンビネーションでKをすっかり魅了したようだった。
その後、東京駅まで行き、成田エクスプレスの乗り場で手を振って別れたところ。
別れる時は、僕も苦手で、どうしてもしんみりしがちなKだけど、ふたりで大きく手を振って笑いながら別れることが出来た。
★竹葉亭 http://www.unagi-chikuyoutei.co.jp/

ありふれた週末。

晩秋の朝顔。

ソファで僕は読書。Kは昼寝。

花園神社の酉の市。

土曜日の午後に成田に到着したKは、朝まで仕事仲間と飲んでいたようで、朝から何も食べていなくて小さなリュックで特攻隊のように渋谷に乗り込んで来た。家でおでんを食べてゆっくりした後、夜は花園神社の酉の市に。
はじめて見る熊手と、沢山の人出に驚いていた。明治の頃に始まった酉の市は、意外と地方の人には知られていないけど、晩秋を感じさせる東京の風物詩だ。
この日は『Tack’s Knot』で軽く飲んだ後、『Bridge』で遅くまで飲んでいたのだけど、友人たちが入れ替わり立ち替わり現れKも驚いていたけど、楽しいひとときを過ごすことが出来た。
大分には、二つゲイバーがあるけど、来る人も知れていて、東京のゲイバーの人の多さとは比べものにならない。
地方で暮らすゲイたちは、インターネットのおかげで出会いは容易になったと思うけど、やはり、リアルに人に出会えるバーのような存在が少ない生活は、セックスする人は見つかったとしても、友達は出来にくくきっと寂しいに違いない。
翌日は天気に恵まれて、朝は軽めに牛肉うどんを作り、家の周りから表参道、骨董通りを散歩して、昼は家に戻りイタリアンを作って、ワインを飲みながらのんびりと過ごした。
夜は『Bridge』と『GAB』でほんの少しだけ飲み、早めに家に帰りゆっくりと過ごした。
もしも、Kが東京に住んでいたら、毎週のようにこんなありふれた週末を二人で過ごすのだろうと思う。
特別な豪華な食事などはせず、僕のささやかな手料理と、近所を散歩したり、2丁目にふたりで飲みに行ったりしながら…
それでも、ひとりではなく、恋人と過ごすさもない週末は、ほのかな幸せを感じさせてくれる。

冷蔵庫の世話。

熱いお湯で庫内の温度を上げる

綺麗になった冷蔵庫

今日は、久しぶりに冷蔵庫の霜取りをした。
うちの冷蔵庫は、ドイツのMieleのもので、多くの日本の冷蔵庫とは違う冷却の仕方なので、時々霜取りが必要なのだ。
慣れない人は、なんて面倒くさいことを…と思われるかもしれないが、食材の保存度が圧倒的に違うので、他社の冷蔵庫にはしようと思わない。
それに、定期的に冷蔵庫と冷凍庫の中身をすべて白昼のもとに出して、それらが賞味期限が切れていないか、そして、本当にとっておくべきものなのか吟味できるとてもいい区切りになっている。
氷が溶けるように鍋でお湯を沸かしながら、同時に、沢山の出汁を引き、おでんの仕込みをしていると、Kからメッセージが入った。
「成田に到着しました。これから成田エクスプレスで渋谷に向かいます」
「冷蔵庫の霜取りにかかりきりだから、迎えには行けません。家まで来てあげて!」
台湾から帰って、やっとのんびり3連休だー!のつもりが、Kが突然東京に来ることになり、結局また賑やかな連休に突入した。

生まれ変わった伊勢丹のタータンチェック。

昔、つきあっていた人に、「誕生日には、何が欲しい?」
と聞かれて、「伊勢丹」と答えたことがある。
その人は当然あきれていたのだけど・・・。
10月30日に、伊勢丹のショッピングバッグが変わった。いままでのタータンチェックから、少し明るくなったようだ。
館内では、矢野顕子の曲『ISETAN‐TAN‐TAN』が流れていた。
ショッピングバッグは、その店のアイデンティティでもあり、街を歩く人が自然とそのブランドを宣伝することにもなる。
タータンチェック柄を取り入れている伊勢丹のバッグは、カジュアルな服装には自然と溶け込むだろうけど、たとえば、シックな黒のみの恰好の人が持つと、かなり袋が目立って見えるだろう。
伊勢丹というデパートは、この国の最先端を独走していて、海外からも目利きが地下の食料品売り場などを訪れている。
香港や台湾の友達も、東京に来て、伊勢丹をのぞくのを楽しみにしている人が多い。
これだけ多くの人に愛されて、日常生活だけでなく、人生のありとあらゆるシーンにおける『夢』を見せ続けている伊勢丹は、僕にとって、ちょっと嫉妬してしまうような存在だ。