ブルーベリー。

『メイン・デイト』ラビットアイ系の品種

前は、ずっと大きなブルーベリーの木が家にはあったのだけど、引越しとともに母の家に送ってしまっていた。
でも、ジューンベリーと並んで好きな木は実はブルーベリーで、春の小さくて楚々とした花から、透き通るような緑色の実、その実が熟していく過程、そして秋の美しい紅葉と、ブルーベリーは実は、1年間を通じて楽しめる植物なのだ。
帰り道にふと寄った外苑前のFUGAで、小さなラビットアイ系のブルーベリーが売っていたので、思わず買って帰ってきた。
今はまだ透き通るような緑色の実は、これからゆっくりと青い色に変わってゆく。その色の変化も楽しいものだ。
洗濯物を干す時にKが気づいたようで、僕に聞いてくる。
K「ただしくん、また植物買って来たの?なにこれ?」
僕「なんだと思う?当ててみて」
K「うーん………山椒!」
植物を知らないKは、青い実だからとっさに山椒と思いついたようで、朝から僕は大笑いしたのだった。どんな植物であれ食べられそうなものだと、Kはうれしそうに見ている。

深い青。

漆黒の夜の闇のように美しい、深い紫色の紫陽花を見つけたので、思わず買ってしまった。
その名も、『ハイドランジア ディープパープル』。
紫陽花は海外でもどんどん品種改良されていて、時々驚くような色合いのものを見かけるけれども、久しぶりにその深い青色にため息が出た。
日差しが強い僕の家のベランダでは、日陰が好きな紫陽花を育てるのはとても難しいのだけど、少なくてもこの梅雨の間は、深く美しい青色を堪能できそうだ。

泰山木。

千駄ヶ谷の駅前に、泰山木の花が咲いていた。
泰山木は、よく小学校なんかに植わっている常緑の背の高い樹木だ。朴木やモクレンと同じ種類に分類され、マグノリアとも呼ばれている。
花のない時期には、暗く重たい光沢のある葉っぱがなんとも地味に見えるのだけど、花の季節になると今までの重厚さはなんだったのかと思うような、原始的でドラマチックな花を咲かせる。
泰山木の花の魅力は、その作り物のような象牙色の肉厚の花弁と、彫刻的な形の美しさ。そして何よりも、その爽やかで甘い香りだろう。
学生の頃生け花を習っていたのだけど、先生がいつもおっしゃっていたことは、
「桜と泰山木。これが花の両巨頭ですね。どちらも全く違った美しさがあります」
そんな話を聞きながら、桜はすごいのはわかるけど、いつか大人になったら泰山木の魅力がわかるのだろうか・・・と思っていたものだが、今頃になって、泰山木の美しさに気づかされるようになったのだ。

ぶどう。

ベランダのぶどうの蕾がついているとついこの間思っていたのだけど、久しぶりに覗くと、蕾がそのまま実になっていた。ぶどうの花は気がつかないくらいとても地味だったのに、人知れず実になっていたようだ。
昨年鉢に植えつけて、昨年は花も実も見ることは出来なかったのだけど、今年は3房くらい実をつけてくれたようだ。
ベランダにKを呼んで、ぶどうに実がなったことを知らせると、とてもうれしそうな顔をした。
きっとぶどうが食べられると思っているのだと思う。
イタリアのぶどうだから、全く甘くないと思うのだけど…。

フェリシテ・パルマンティエ

「一番好きなバラは何ですか?」
と聞かれたら、とても迷いながらいくつかの育てたことのあるバラの名前をあげる。
その中のひとつが、『フェリシテ・パルマンティエ』。
オールドローズの中でもアルバ系に属するフェリシテ・パルマンティエは、花の時期は他のバラに比べて少し遅いけれど、マットな美しい葉と、棘の多い奔放な枝の中に、貴族のドレスのように繊細で美しい花を咲かせる。
花はピンクから白に向かう美しいグラデーションで、このバラの魅力は何よりも爽やかな芳香にある。
何百年も前から姿形を変えずに愛されて来たオールドローズの魅力を今の時代にも伝える、まさにオールドローズの中のオールドローズのひとつだ。
メイデンズ・ブラッシュというバラともとても良く似ているけど、こんなオールドローズのバラがたわわに咲くお庭があったらいいだろうなあと、毎朝香りを嗅ぎながら夢見ている。

今年もバラが咲きはじめました。

ゴールデンウイークのはじまり頃、決まったようにベランダのバラが咲きはじめる。
今年も一番乗りは、『マダム・アルフレッド・キャリエール』。昨年も、4月26日に咲いたのを、このブログに書き留めてあった。
ほとんど世話をせず放ったらかしでありながら、春になると示し合わせたかのように枝中に蕾をいっぱいつけて咲いてくれるバラたちを見ていると、今年も、この小さな暮らしをなんとかやってこられたことに感謝をせずにはいられない。
ここになんども書いている『マダム・アルフレッド・キャリエール』は、蕾のうちはほんのりとピンク色を含み、花が開いて来ると象牙色の温かみのある白色に変わってゆく。
虫がつきづらく強健で、比較的半日陰にも強い。棘の比較的やさしい枝を奔放に伸ばし、木全体で咲く姿は、社交的なフランスの貴族の婦人のように華やかだ。
ほのかに甘く清冽な香りは、この花をこの先も手放すことはできないと思わせる。
これからうちの小さなベランダは、バラの日々を迎える。

スノーボール。

僕の好きな花木に、『スノーボール』がある。
切り込みの入った美しい葉っぱに、緑色から白にゆっくりと変わってゆく丸い玉のような花を咲かせる。
もともと緑色の花が好きなのだけど、オオデマリという似たような植物もある。オオデマリはオオデマリで綺麗なのだけど、オオデマリはもっと頑丈な感じで、それと比べるとスノーボールの可憐な佇まいは、乙女心に訴えて来るのだ。
裸木の中からゆっくりと緑色の新芽が見え始め、少しずつ花らしきものが現れ、ゆっくりと緑色の玉になってゆく姿も美しい。
今の時期、お花屋さんでも大きなスノーボールが売られているのを見ると、その緑色の玉のような花を見ながら、「なんて綺麗なんだろう…」とため息をついてしまう。
あんな風に大枝で咲くくらい大きくなったらうれしいだろうな…なんて、うちの小さなスノーボールを見ながら夢見ているのだ。

ぶどうの蕾。

この時期、ベランダの植物たちは、日に日に目まぐるしく成長を遂げる。
僕は毎朝ベランダに出て、それぞれの植物の小さな変化を見逃さないようにと思って目を凝らしている。
うちには、二本別々の種類のぶどうの木が植えてある。
ぶどうの葉っぱの形が美しいので、ここへ引っ越して来た時に買い求めたのだ。何千年も前から、人々が絵画の中でぶどうの葉っぱや実を描いて来たことからすると、昔の人もぶどうの葉っぱの美しさに魅せられていたのかもしれない。
昨年は見られなかったことなのだけど、ぶどうの木に蕾がついているのを発見した。
ぶどうの蕾は所々にあって、大きさもまちまち。今は硬い小さなつぶつぶが、やがてほころび、うまくいけば受粉されて、実を結ぶのだろう。
うちの場合は、ヒヨドリやメジロなどの様々な鳥が遊びに来るから、きっと実にならないうちに食べられてしまうんだろうな。

ナツメグゼラニウム。

大濠公園の周りを、散ってゆく桜と咲き始めた八重桜を眺めながら散歩をしていた時に、素敵なお花屋さんがあった。
そこで、大好きな香りのよいゼラニウムを見つけて、「あ、これ買おう!」と即決したものが送られて来た。
ペラルゴニウム属のゼラニウムはとても種類が多いのだけど、その中でもハーブに分類されるセンテッドゼラニウム(ハーブゼラニウムとも言う)は、葉っぱに何とも言えない清々しい香りを持っているものがある。
ローズゼラニウム・アップルゼラニウム・パイナップルゼラニウムなどで、この斑入りの葉が美しいゼラニウムはなんと、ナツメグの香りがするというナツメグゼラニウム。
花は地味でかわいいのだけど、このゼラニウムの魅力は美しい斑入りの葉っぱと、触ると爽やかに匂い立つ香りだ。ナツメグゼラニウムは僕のベランダに、爽やかな香りと輝きを運んできてくれた。

イタリアの貴婦人。

Kと一緒に12月に植えたパンジーがずっと咲き続け、桜の咲く暖かさを迎え溢れるほどに咲き誇っている。
その後を追うかのように、チューリップの蕾が見え始めたコンテナは春を凝縮したように華やかだ。
どの花も太陽の光欲しさにどんどん背丈を競うように伸ばしているので、後の花々に場所を譲るために伸び過ぎたパンジーを少し切ってリビングに飾ってみた。
繊細でシックな微妙な色合いといい、美しく波打つフリルといい、まさに『イタリアの貴婦人』と評されるパンジー『ムーランフリル』は、僕たちの家の中に、気品を運んで来た。