いちじく。

熟した果実を家に飾っておく

家のベランダには、小さないちじくの木がふたつある。
いちじくは、本来ならばとても大きく育つ木なのだけど、僕の家では鉢植えにして、あまり大きくなりすぎないように時々剪定をしながら育てている。
いちじくの木の魅力は、その美しい葉っぱにあって、時々日を浴びた切れ込みの入った美しい葉っぱを見るだけで、豊かな時間の流れを感じられる。
小さないちじくの木には、毎年気づいた時に実がなって(というのも、いちじくはわかりやすい花は咲かないので、本当にふと気づいたら実がなっている感じなのだ。)今年も何度か熟しては、鳥に食べられたりしながらこの夏を過ごしてきた。
先日Kとふたり、「せっかくだからうちのいちじくを食べてみよう」と言って、小さないちじくの実を取って、包丁で割って食べてみた。
家で取れたいちじくは、小さいながらちゃんと味がして、当たり前なのだけど「ほんとうにいちじくの味がするね!」などと言ってふたりで食べたのだった。
家に果樹があるのは、とても楽しいものだ。小さな実が木になって、時間をかけて熟していく様をふたりで話しているのも楽しい時間になるから。
落ちた果実を家に飾っておくのもいい。
自然にできた果実は、昔から何度も何度も繰り返し人々が絵に描いてきた美しさをたたえている。

酷暑に咲くバラ。

フランボワーズ・パニーユ

今年の夏のあまりの暑さに、我が家のベランダのいくつかの植物は息も絶え絶えだ。
そんな中でこの暑さにも負けず、一輪のバラが開きはじめた。
バラの原種ははだいたい春の一季咲きか、春と秋の二季咲きなのだけど、原題のバラは改良が進んで、四季咲きと呼ばれるように年間を通して花を開き続けるものが増えている。
四季咲きと言っても、大抵は春と秋が延長する感じで咲き続け、真冬と真夏はほとんど咲くことはないのだけど、このバラは休むことなく咲き続けている。
真夏に咲くことは、木にも負担になるため、早めに蕾を取って、部屋の中で飾ることにした。
たった一輪の花がリビングにあるだけで、空気が変わるのがわかる。
この国で暮らして来た先人は、当たり前のようにそんなことを毎日の生活に取り入れていたのだなと改めて思う。

夏場の植物の水やり。

最後の紫陽花。

旅行から帰ってきて、真っ先に見るのはベランダの植物たち。
夏場の鉢植えの植物の水やりは、基本的には毎日が理想だけど、僕は家を空けることが多いので、どんなに暑い夏でも中二日間空けるくらいでお水をあげるようにしている。
植物は、水をもらえる頻度をわかっているのだ。
毎日水をあげていると、水は毎日貰えるのだと思ってそれに合わせて日々を過ごすようになる。毎日貰える水が急に4日間くらい来ないと、弱い植物だと枯れてしまう。
でも、中二日頑張ればお水が貰えると思っている植物だと、4日間くらい空いてもかろうじて生きながらえていたりするものなのだ。
この夏、ニューヨークとサンフランシスコに10日間行った僕は、出発の直前にお水をあげた後に、日曜日近辺と水曜日近辺の2回、友人に頼んでお水をあげるようにお願いしておいた。
週に2回しかお水をあげなかったわけだけど、帰国した後にベランダに出ると、植物たちは皆けなげに猛暑の中生きながらえていてくれた。
毎日お水をもらえないうちの植物たちはちょっとかわいそうな気もするけど、猛暑でしかもたびたび家を空ける僕のような家では、ちょっとひからび気味に育てた方が長生きしてくれる。

切った紫陽花の水あげ。

土曜日に遊びに来た友人が、紫陽花を持って来てくれた。
そのまま花瓶に入れて食事をしていたのだけど、翌朝起きたら紫陽花はぐったりと萎れかけていた。
生け花をやっていた人は知っていると思うけど、紫陽花は、とても水あげの悪い植物なのだ。庭で咲いた綺麗な紫陽花も、切って花瓶に生けた途端にどんどん元気をなくしてゆくもの。
僕が生け花をやっていた頃に当たり前のようにやっていたことは、水あげの悪い植物は、茎を煮てみること。
小鍋に水を入れ沸騰したら、紫陽花の葉や花に熱が当たらないように新聞紙や布などで巻いてから、茎をお湯に浸けて煮るのだ。
1分くらい煮たら引き上げて、そのまま水の入った花瓶に生ける。
しばらくすると水を吸い上げて勢いを取り戻した紫陽花にびっくりするだろう。

あじさいの季節。

ディープパープル

アナベル

バラが咲きはじめたのが今年は5月11日頃だったので、バラはもう1ヶ月以上咲いていることになる。今はもう盛りを過ぎたように見えるバラは、今月いっぱいが見納めだろうか。
どんな花であっても、花の咲く期間は、だいたい2週間くらいと言われている。
植物を選ぶときは、季節を見渡して、どの時期にどんな花の咲く植物を植えるかによって、庭やベランダのテーマが変わってくるのだ。
バラを選ぶ時に、春の間のほんの2週間くらいしか咲かないバラを選ぶか、季節を通して何度も咲く品種改良されたバラを選ぶか迷うところだけど、僕はこの、春一度きりのオールドローズの美しさを知っているから、バラは一季咲きでいいと思っている。
我が家のベランダでは、バラとクレマチスが終わりを迎える頃、アジサイたちが蕾を静かに延ばしはじめる。
昨年買った『ディープパープル』は、今年もきちんと花芽をつけてくれたようだ。ずっと昔からある『アナベル』は、今年伸びる枝に花をつけてゆくタイプ。これから梅雨に向かってゆくベランダで、アジサイはやさしく咲き続けてくれるだろう。
忙しくて、気にも留めない毎日の中でも、植物は季節ごとに命を謳歌している。

桜が終わったら、ハーブを育てる。

冬から春まで楽しませてもらったチューリップや水仙などの球根とパンジーやネモフィラなどを植えていた大鉢が、だいたいお花が盛りを過ぎていたので、ゴールデンウィークのはじまりに、今度はハーブをいくつか買い求めて植えることにした。
写真の上から時計回りに、
バジル・パクチー・チャービル・紫蘇・イタリアンパセリ
真ん中がディル。
家にハーブがあるととても便利で、たとえば、アサリを買って来てボンゴレを作るときでも、イタリアンパセリを摘んでくれば使えるし、バジルだってすぐに香り高いバジルが手に入るのだ。
地中海性気候を好むハーブは全般的に梅雨の湿気や夏の暑さは苦手だけど、全滅することはほとんどなく、弱ってもまた秋になると復活することが多い。
バジルやパクチーだって、スーパーで買えばすぐに300円くらいするけれども、手元に置いておけばそんな必要はないのだ。芽を摘むと、そこから分岐してどんどん枝数が増えて、太陽に向かってすぐに大きく成長してくれる。ハーブなんて、ひとつ150円とか200円で買える苗なのに、家で育てない手はないと思うのだ。
僕のベランダではこの他にも、ローレルとローズマリーは常にあるし、セージとタイム、チャイブ、オレガノ、山椒も植えてある。今回、はじめて万願寺とうがらしの苗を手に入れたのだけど、実をならせることが出来るか楽しみにしている。

4番目のバラが、咲きはじめました。マダム・アルディ

マダム・アルディ

マダム・アルフレッド・キャリエールとローブリッターと白万重(クレマチス)

「バラの話ばかり、もういい加減にして欲しい」と思っている人もいるかもしれないけど、家の8本あるバラの4番目のバラが咲きはじめた。
名前は『マダム、アルディ』。
1832年フランスで作られた純白と評されるバラ。『もっとも美しいオールドローズ』などと形容され、オールドローズ愛好家の中でも一番好きなバラにあげる人が多い。
ティッシュをくしゃくしゃとしたようなオールドローズらしい花びらと、中心のグリーンアイがのぞくのが特徴。
マットな葉も美しく、枝も柔軟で扱いやすい。清々しいレモンにかすかに甘いハチミツの香り、オールドローズとしての完璧な美しさを持っているバラ。たとえ一季咲きであったとしても、決して手放したくはないバラだと言える。
このバラが咲きはじめる頃、僕の家のベランダは少しずつクライマックスに向かってゆく。

3番目のバラが、咲きはじめました。アルバ・セミプレナ

古くからバラは、赤いバラと白いバラが存在していたようだ。
赤いバラの代表格は、ガリカ系と言われるオールドローズで、赤と言っても真紅ではなく、濃いピンク味を帯びた色。香りが強く、野趣があり、ロサガリカ・ヴェルシコロールという紅白の混じったバラは、僕の最も好きなオールドローズのひとつ。
白いバラの代表格とされるのがアルバ系と言われるオールドローズで、青みを帯びた葉といい、香り高い花といい、古くから伝わるバラ本来の原種が持つ魅力を最大限に兼ね備えたバラといえよう。
その中でもこの『アルバ・セミプレナ』は、一重よりも少し花びらの多い二重のような花で花芯がのぞき、強く清々しい香り、まるで野ばらのような美しさを持っている。
品種改良されたバラにはない葉や萼、蕾から花へ変わってゆく姿の美しさは、いつまで見ていても飽きることがない。
昔一緒に仕事をしていた写真会社の女性Yさんに、どのバラが好きかと聞くとこの『アルバ・セミプレナ』の名前を挙げたのを思い出す。このバラに似て、純粋で美しい人だった。
ボッティ・チェッリのヴィーナスの誕生に出てくる白バラは、この『アルバ・セミプレナ』だと伝えられている。
そんな話を知るたびに、オールドローズへの思いは強くなるのだ。

2番目のバラが、咲きはじめました。ローブリッター

この春、2番目に咲き始めたバラは、『ローブリッター』。
1935年にドイツで作られたバラで、ピンク色のカップ状の花がコロンコロンといくつも連なって咲く。
ほとんどのオールドローズは春のみの一季咲きなのだけど、このローブリッターも一季咲き。それでも花数が多く、1ヶ月くらいはゆうに咲いている。
香りは、爽やかでほんの少し甘く、洗面所などに生けてふと鼻を近づけると、朝からちょっと優雅な気分になれる。
この独特な花の形をティーカップ咲きというのだけど、一度にたくさん連なって咲く姿は、少女が並んでいるようでなんともかわいらしい。
今年もたくさんの蕾を持って、これから楽しませてくれそうです。

ビカクシダ。

昔から、ビカクシダ(コウモリランとも呼ばれる)が好きで、会社のデスクにもあったし、家にも長いこと置いてあった。
10年くらい生きただろうか、僕が仕事で慌ただしくなっていた頃に枯らしてしまって、またいつかビカクシダを手に入れたいと思っていた。
先日、渋谷の東急本店の屋上で、昔家にあったようなビカクシダを見つけて、すぐに買い求めた。
1週間に一回くらい思いついた時にお水をあげて、時々葉っぱに霧吹きで水をかけてあげるとよい。ビカクシダは、手入れも思いのほか簡単なのだ。
リビングの置いたビカクシダは、トナカイの角のような葉っぱを思い切り伸ばし、不思議な存在感を放っている。
植物か作り出す彫刻のような形は見飽きることがなく、そばにあるだけでどこかほっとするものだ。