今年一番はじめのバラ。

洗濯物を干しにベランダに出ていたKが叫んだ。
「ただしくん!バラが咲いてる!」
僕は朝ごはんの支度を止めてベランダに見に行くと、季節外れに咲き出したバラが二輪、ひっそりと咲いていた。
12月に咲くことはあっても3月にバラが咲くなんて、今までなかったことだ。
今年の暖冬のせいで、うちのバラも季節がわからなくなったみたい。
それでも、せっかく咲いてくれた一番花をそっと切って、テーブルの上にいけてあげた。
ふたりで、「きれいだねー」「ピンクがかってるね」なんて言いながら、バラを眺めながらの朝ごはん。
毎日の生活はさもないことの繰り返しだけど、小さな発見は僕たちの暮らしを、豊かにしてくれる。

春の競演。

黄色いクロッカスぎ咲きはじめた。

水仙が伸びはじめた。

バラの枝の誘引。

日記を読み返すと、昨年は3月12日にバラの枝の誘引をやっていたようだ。
毎年遅くても2月にやろうと思いながら、寒さのため外で園芸作業をする気にならず、いつも暖かくなってきてから慌ててやる羽目になる。
今年は春の芽出しが早いみたいで、バラの芽もすっかり動き出したので、慌てて会社に行く前にバラの枝の誘引をした。
本来ならば、芽がまだ動き出す前にやるのが望ましい。葉が出はじめた頃のバラはその葉も取れやすく、それは蕾を落としているのと同じことになるから。
我が家のベランダにも、春が一気に来たようで、球根を植えたいつもの大鉢も、水仙やクロッカスが芽を伸ばしはじめた。
毎日慌ただしい仕事に追われていても、ふと気がつくと季節は確実に春になっていたのだ。
今年の我が家のベランダの花々たちは、いったいどんな春の競演を繰り広げてくれるだろうか。

ヒヤシンス

11月から12月にかけて、水耕栽培を仕込んでいたヒヤシンスが、家中で盛りを迎えている。
水を入れた容器の中で、球根の下の部分だけ浸かるようにして、それを5個ずつダンボール箱に入れて寒さに3週間くらい当てて起き、今度は家に取り込むと、春が来たかと一斉に芽を伸ばす。
今の時期、ぼくの家では買ってきた切り花は必要なく、家のあちらこちらに置かれたヒヤシンスが濃密な香りとともに美しい姿をたたえている。
時々思いついた時に水を替えてあげるだけで、こんなにも長く楽しませてくれるヒヤシンスの球根、毎年のことだけど綺麗に咲いてくれる姿を見ているだけで宇宙の不思議を感じるのだ。

プリムラ・ハイブリッド・ワンダ

寒い冬から春まで、屋外でひたすら咲き続けてくれる花に、『プリムラ』がある。
プリムラには種類が沢山あって、そのどれもが魅力的なのだけど、先日見つけた『ハイブリッド・ワンダ』という種類は、ヨーロッパの香りのするシックな花だった。
葉っぱが深い銅色をしていて、その中に咲く高彩度の花は、奥行きを感じさせる美しさだった。
長年の園芸家は特に、花よりも葉っぱの美しさを大切にする傾向にあるのは、葉っぱには多様な形と色、そして質感があるから。
いつもの北欧の5つの鉢に入れて、部屋の窓辺に置かれたプリムラは、そこにまるで、絵画があるような不思議な美しさで佇んでいる。

色の持つ力。花の持つ力。

プリムラ

パンジー

ガーデンシクラメン

色には、力があるのだと思う。
花にも、力があるのだと思う。
何があったわけでもなく、たとえば冬の寒い日に、胸の中にぽっかりと穴が空いて今ひとつ元気が出ないような日がたまにある。
そんな日はベランダに、小さな花を見にいく。
ピンク色の花や黄色の花は、温かさと元気を与えてくれる。
町を歩いていてもまだ身体の中に元気が足りていなかったら、道に咲いている花を探してみる。
今の時期だと木瓜の花が咲き始めていたり、早い梅が咲いていたりする。
ピンクや赤の花を見ていると、不思議と元気がもらえる。

消えてゆくお花屋さん。

下からみるとこんな感じ。変わった花。

町の本屋さんがどんどんなくなっていっている・・・。
本なんて直接見なくても、今やアマゾンやネットで簡単に買える時代。しょうがないといえばしょうがないのかもしれないけど、自分の知らない分野の本や今まで気にも留めなかった本に、本屋さんで偶然出会うことを楽しんでいた頃が懐かしく思える。
そして、『お花屋さん』も、町からどんどん姿を消していっているように感じるのは僕だけだろうか?今では青山フラワーマーケットのようなチェーン店を時々見かけるくらいになってしまった。
本屋さんもお花屋さんも消えてゆくなんて、なんだか戦争が始まる前のような気がする・・・。お花は、生活の中では必需品ではないしなくても困らないもの。でも、花のない生活はちょっと寂しいと思うのです。
新宿2丁目の仲通りに入る手前の左側にあるお花屋さんは、僕がちょくちょく覗くお花屋さん。昔はご夫婦でやってらしたけど、いつの頃から店の経営が変わったのか、今では比較的若いスタッフが働いている。
お洒落な花はほとんど売っていないのだけど、お正月用の南天や門松なんかはここが一番手頃でいいものが置いてある。
先日この花屋さんの前を通りかかったら、シクラメンが2つポツンと置いてあって、ふと値段を見るとひとつ300円!シクラメンの時期はもう過ぎ去っているためか、それにしても安すぎる。
「年末に入ってたんですけど、下を向いて咲く品種だからか売れ残ってしまって・・・」
僕はその2つのシクラメンを300円✖️2で600円で買って、たいせつに家に持って帰った。
このシクラメン、近くでお水をあげる時に気づいたのだけど、仄かに香りがする品種だった。それに、少し高めの場所に置くと、下を俯いて咲く花がそれはそれで健気でかわいいのだ。
思いがけずラッキーな買い物をしたと思って、水をあげるたびにKに話しかける。
「このシクラメン、いくらだったか知ってる?」
何度も聞いているKは、毎回「安かったね」と、半ば強制的に言わされている。

ヒヤシンスの球根。

およそ、1ヶ月前の12月15日頃に水につけ始めたヒヤシンスの球根は、ダンボールに入れて蓋をしたままずっと外の寒い場所に置いておいた。
一週間に一度部屋の中に持ってきて様子を見がてら、お水を取り替えては、またダンボールの蓋を閉じて元の寒い場所へ。
1ヶ月経ったヒヤシンスをいよいよ家の中に入れようとダンボールから出してみると、白い根っこがびっしりと伸び始めていた。
これは2回目に水をつけたヒヤシンスなので家の中に入れたヒヤシンスは全部で10個になった。
キッチンのテーブルの上、リビングのテーブルの上、僕とKのベッドサイドの両脇、洗面所、お風呂…
家中のいろいろな場所にヒヤシンスを並べて、それぞれが芽を伸ばしてくる様子を見ながら、春が近づいてくるのを心待ちにしている。

ヒヤシンスの水耕栽培。

昨年の日記を見てみると、12月9日にヒヤシンスの水耕栽培のことを書いていた。毎年同じ時期に同じことをしている自分に、我ながら可笑しくなってしまう。
今年はヒヤシンスの球根を15球買って来てあり、5個ずつに分けて時期をずらせて花が咲くように調整することにした。
第1弾の球根5個は、12月3日に水につけてダンボール箱の中に入れ、外に出したのだ。
そして第2弾の球根5個を、12月15日に水につけてダンボール箱に入れて外に出した。
第3弾は、12月27日頃に準備をすれば、それぞれ10日おきくらいに咲いてくれるだろう。
第1弾の球根は、年末に部屋に出し、明るい光に当てることにするつもり。球根は太陽の光を受け始めると、ぐんぐん伸びていって花を咲かせるだろう。
お正月後の東京が一番寒い1ヶ月半を、球根の成長を楽しみながら乗り越えられますように。
⭐️ヒヤシンスの水耕栽培
◎用意するもの
水耕栽培用の容器。または球根が上で止まるような小さなコップ。ヒヤシンス。
◎水耕栽培のやり方
ヒヤシンスの球根は、水に浸けっぱなしにすると菌が水の中で繁殖してすぐに腐ってしまうので、珪酸塩白土などをひとつまみ水に中に加えてから球根の下部の黒っぽい部分だけ水に浸かるようにして、暗く寒い場所に1ヶ月間くらい置く。(ダンボールなどに入れて光が入らないようにガムテープで蓋をしておく)
その間、1週間に1度くらいはお水を替えてあげて、やがて白い根が伸び始めて、芽が顔を見せ始めたら、やっと明るい室内に移動にさせる。
小さな球根をひとつ育てるだけで、宇宙の力を感じるに違いない。

秋から春まで楽しめるコンテナ。

毎年のことなのだけど、秋から冬に変わる頃、大きなコンテナに球根を沢山仕込んでおくようにしている。
チューリップ、水仙、ムスカリ、クロッカス・・・それぞれ様々な品種があるので、選びながら、今年も球根を沢山購入した。
そして、必ず春に咲く球根と一緒に草花も植えておくこと。冬の間も寒さに負けずに咲き続けてくれる草花は、見ているだけで元気をくれるし、草花が植わっていると、水あげを忘れなくて済むのだ。
パンジー、ビオラ、スイートアリッサム、ガーデンシクラメン、斑入りのアイビー、タイム・・・花だけでなく、美しい葉っぱの植物を数種類入れるのがポイント。葉っぱの造形や色は、花の美しさをを何倍にも引き立ててくれる。
毎年恒例のことなのだけど、Kを呼んで手伝ってもらう。大きなコンテナに生い茂っていた大葉とバジルを抜いて、土を捨て、一番下にチューリップの球根を並べて土をかけ、その上に水仙の球根を並べまた土をかけて、最後にクロッカスやムスカリなどの小さな球根を並べ、一緒に草花を配置して土をかける。
今年も、寒い冬を迎え、春を待つ準備が整いました。

ゼラニウム『カリオペ』。

家の大きなコンテナには、未だに大葉とバジルが勢いよく繁っているけれど、そろそろ球根を植える季節になってきた。
しょっちゅう顔を出す渋谷東急本店の屋上の園芸店で、お店の人に「そろそろ球根が少なくなってきましたよ」と言われ、「今のうちに買っておくか」とチューリップや水仙やヒヤシンスの球根を買い求めた。
そしてそのついでにゼラニウムの鉢をいくつか。
クリスマスのような深紅のゼラニウム『カリオペ』は、丈夫で長く咲いてくれる花だ。大衆的で鮮やかなピンクのゼラニウムもかわいいけど、このシックな深紅はクリスマスシーズンにぴったりだろう。
ベランダの柵に均等に6鉢並べて、道を通る人が見上げて気づいてくれたらうれしいな。