東北の3種類の麺。

麻婆焼きそば

じゃじゃ麺

冷麺

仙台で、バーで飲んだ後に『麻婆やきそば』。
『麻婆焼きそば』って、なんだか名古屋のあんかけスパゲッティのように奇妙な食べ物だと思うけど、上にかかっているものは麻婆豆腐で、下のそばは、少しカリッと焼けた焼きそばで、意外とこれも合うね・・・と美味しく食べることが出来た。
★中華そば 嘉一
022-265-5907
宮城県仙台市青葉区国分町3-8-12
https://tabelog.com/miyagi/A0401/A040101/4009075/
盛岡で、バーで飲んだ後に『じゃじゃ麺』。
僕がバーで、「じゃーじゃー麺ってどこで食べられますか?」と聞くと、ママに、「じゃーじゃー麺は、中華でしょ。盛岡はじゃじゃ麺なのよ。」とピシャリと言われてしまった。
この『じゃじゃ麺』。何が変わっているかというと、食べ方だ。出て来たじゃじゃ麺に、お酢やラー油を好きな加減でかけていただくのだけど、それを混ぜながら全部食べてしまう前にほんの少し残しておいて、そこへ生卵を割って溶いて入れたら、お店の人にそのお皿を差し出す。すると、お店の人がそこへお湯を入れてくれて、それでかき玉汁のようになってスープとしていただくのだ。
「なんか・・・貧乏臭いね・・・」と言う僕を、Kが「シーッ」と制した。
★盛岡じゃじゃ麺 ちーたん
019-656-2338
岩手県盛岡市上太田痩野71-1
https://tabelog.com/iwate/A0301/A030101/3001147/
盛岡で、お昼に『冷麺』。
盛岡の冷麺は、『盛楼閣』や銀座にもある『ぴょんぴょん舎』が有名だけど、僕は、盛岡冷麺の元祖と言われている『食堂園』の冷麺が美味しいと思う。スイカとか洋梨が冷麺に入っているのがあまり好きになれないのだ。ゴムのような歯ごたえの冷麺は、盛岡に行くと必ず食べておきたくなる。
食道園
019-651-4590
岩手県盛岡市大通1-8-2
https://tabelog.com/iwate/A0301/A030101/3000025/

平泉へ。

毛越寺

中尊寺月見坂

奥州藤原三代が築いた極楽浄土の夢の跡『平泉』に行くことは、今回の旅の一つの目的でもあった。
平泉には、修学旅行で行ったきりでほとんど記憶にも残っていなかったのだけど、岩手が誇る世界遺産を、もう一度この目で観てみたいと思ったのだ。
盛岡を昼には出て花巻温泉で一泊のんびりと寛ぎ、朝目が覚めると山々は雪景色だった。岩手ではずっと天候に恵まれ、日曜の夜から降りはじめた雪は月曜日の朝にみぞれに変わり、あっという間に上がった。
平泉までは、田園に家々が点在する景色を眺めながら2両編成の電車で到着した。
まずは、毛越寺(もうつうじ)へ。
平泉世界遺産の一つをなす毛越寺は、美しい庭園を持つ寺である。京都の庭園を今まで観て来た者にとっては、まるで外国人が作ったような、おおらかで斬新な庭園に感じる。
それは、庭園の広さが圧倒的に大きいのと、日本庭園の形式を自由に拡大解釈しているからだろう。池のほとりを歩きながら、藤原三代が夢見た戦のない世界のことを考えた。
毛越寺から中尊寺までは、るんるんバスという周回しているバスですぐに到着。急な勾配の月見坂を息を切らせながら上ってゆくと、中尊寺とは、山を丸ごとお寺にしてしまったのだなと気づく。
金色堂は、細部までこだわり作り込まれた執念の建物だと思う。当時金が発掘されたこの地だからこそ作ることの出来た芸術なのだと言う。
中尊寺の山から下界へ降りる時にふと外を見ると、眼下には田園風景がどこまでも広がっていた・・・。
中尊寺の美しさは、金色堂の煌びやかな装飾のあとに、人々が平和に暮らすこの美しい田園風景を見ることにあるのかもしれないと思う。
平和であるというだけで、今ここが天国のようだと感じられた。

盛岡の魅力。

櫻山神社

石割桜

中津川

東北の町の中でも、とりわけ盛岡が好きなのは、盛岡が決して東京になろうなどと思っていないところとでも言えばいいだろうか。
町中を中津川がのんびりと流れ、いい味出している櫻山神社や古い建物が昔の面影を残したまま残っているところだろう。
また、宮沢賢治ゆかりの地でもあり、小さな生物から宇宙までの不思議な世界が感じられるのも魅力のひとつだ。
モダンな南部鉄器で有名な『釜定』では、以前南部鉄器やすき焼き鍋を買い求めたし、『光原社』では、アケビの籠や陶器など、美しい民芸品を見つけることができる。
実際にはハッキリとはわからないのだけど、岩手の名前の由来にもなった、『鬼の手形』のついた大きな岩を見ることも出来るし、巨大な岩を割って尚、逞しく生き続ける『石割桜』を見ることも出来るのだ。
盛岡は、大昔の神話や昔話と現代が緩やかに繋がっているような町なのだ。

shin’s bar

盛岡の繁華街のすぐ近く、ホテルロイヤル盛岡の斜め前に、『shin’s bar』はある。
ビルの最上階にあり、斜めになった屋根には大きく窓があり星空が見える。カウンターがメインだけど、後ろの座席も十分にあり店内はとても広い。
マスターは、58歳。白髪でメガネをかけていて、お洒落でハンサム。話し好きでどんな世代のお客さんとも楽しく会話が出来る人だ。ちなみに、店内の音楽の趣味がとてもいい。
盛岡に来る旅人と、盛岡在住の人が自然に交わるお店は、自然と盛岡のどこに行ったら面白いかという話になり、お客さんが、冷麺はあそこへ行けばいい、ここのじゃじゃ麺がうまいだの、親切に教えてくれる。
旅先のほとんど右も左もわからない町であったとしても、僕たちはゲイというだけで、こんなにたやすく繋がることができるのだ。
改めて、ゲイバー万歳!!!

燈弥

ひらめ

白金豚の唐揚げ

前沢牛

15年ぶりくらいで盛岡に来た。
盛岡といえば、『冷麺』か『じゃじゃ麺』か『わんこそば』。でも今回は、目星をつけておいた『燈弥』という料理屋へ。
店内は、中心地の目抜き通りに面していて、カウンターがあり、お座敷も手前と奥にあって結構広い。そうであるにも関わらず、お店には大将一人しかいなくて、すべてのオーダーを大将が聞いて、ドリンクもサービスもすべてひとりで仕切っている。そのためか、時々店内を大将が走っている。
メニューは、前沢牛や白金豚などのお肉を中心に組まれているけど、お魚も手を抜いていなくて、マグロもきちんと美味しいもの(あえて大間ではない)を仕入れている。
お通しからはじまり、おすすめのヒラメをいただくと、えんがわがとても美味しい。
白金豚の唐揚げは、肉に味をしみ込ませて揚げていて、驚くほど柔らかい。
あん肝は臭みがなく身がしまっている。
前沢牛の南部鉄焼きは、しっとりとした熟成肉で、本当に肉が柔らかくて美味しい。
お客さんが引いたこともあり、大将を暫く美味しいもの談義になったのだけど、肉の熟成のさせ方からマグロの選び方まで、料理気狂いとしか思えないこだわりがあり、とても楽しかった。
盛岡に行くことがあったら、またこの店に再訪したいと思う素晴らしい一軒。
★燈弥
019-623-6123
岩手県盛岡市大通3-2-4 川口ビル 1F
https://tabelog.com/iwate/A0301/A030101/3005549/

塩竈すし哲

塩竈物語

仙台は、伊達政宗の銅像のある仙台城跡(青葉城)以外に観光スポットがほとんどない。(ちょっと名古屋に似てる)
仙台の人に、どこか仙台のオススメの場所を聞くと、必ず『松島!』『塩竈でお寿司!』などと返ってくるのだけど、どちらも正確には仙台ではない…。
話は逸れるが、『塩竈(しおがま)』という文字と響きを聞くと、なんだか他人のように思えないのは僕だけだろうか?
塩竈に行っても特に何もないので、駅に隣接した地下街にある有名な塩竈の寿司屋さんで早めのランチを。
すし哲は、塩竈を代表するお寿司屋さん。仙台店も塩竈と全く同じネタが並ぶ。
『塩竈物語』をいただくと、少なめのシャリに小ぶりで綺麗なネタを配したお寿司が運ばれてきた。
江戸前とは違って醤油をつけて食べる寿司は、久しぶりだけどとても美味しかった。(若い子は、量的に足りないので、この後冷麺やじゃじゃ麺を食べるといいかもしれない)
★塩竈 すし哲
022-716-1075
宮城県仙台市青葉区中央1-1-1 エスパル仙台店 B1F
https://tabelog.com/miyagi/A0401/A040101/4000160/

TANK DUMP

仙台には、TANK DUMP というとても素敵なゲイバーがある。
震災後にオープンしたのでまだそれほど経っていないお店だけど、ママは34歳のワタルさん。背が高くて声が大きくて明るくて、話もとても面白い。
お店は国分町の中心部にあり、店内はかなり広く週末はお客さんで後ろのテーブル席もいっぱいになる。
正月に実家に帰っていたのだけど実家のリビングでぞんざいに寝かされてあまりにも寒く、予定を切り上げて早めに帰って来たそうだ。
このお店がやる女装のクオリティがあまりにも高くて驚愕したのだけど、写真を見せてもらったら、ひとつはアフリカ人が写っていて、「こ…これ何?」と聞く僕に、ワタルさんは、
「なんか…ケニアをやりたくて、アジアの雑貨屋さんで布を買って、髪の毛は全部剃って、身体中黒く塗って、羽根の冠をつけたの…」
「ケニアって…女装なの…???」
写真を見ながら大笑いしていると、また別の時の写真が出て来て、それは、全身ほとんど真っ白になったワタルさんと店子さんふたりで、ドラゴンボールの『フリーザ』に変身しているのだ。
目からは涙のような跡がつたい、そんな姿でお店で営業していた写真を見せられて、あまりの怖さにみんなで爆笑になった。
「今度はどんな女装しようかしら…クオリティをもっと上げたいわ…」
遠い目をするワタルさんの、頭の中にある次の女装というか仮装を、僕も楽しみにしている。
★TANK DUMPhttps://mobile.twitter.com/tank0411

都留野

牛タンたたき

牛タン焼き

トマトサラダ

夕方、Kとふたりで仙台に到着。
実は、先月も用事があり日帰りで仙台に来たのだけど、新幹線を降りると牛タン通りがあるくらい、仙台と言えば牛タン。
今まで、チェーンになっている牛タン屋さんはいくつも食べたけど、僕の感想は、どこもあまり変わりなく似たり寄ったり。「牛タンは牛タン」だった。
「だって、牛の舌でしょ…」
そこで今回は、食べログの中で一番上位の牛タン屋さん『都留野』に行ってみた。(正確に言うと、都留野は牛タン屋さんではなく、牛タンをメインに扱うお店)
国分町にある店は、雑居ビルの地下。店内は家族経営か?と思うくらい、白髪でシャイな大将ひとりに、高校生のような小さな女の子ひとり、大学一年生のようなあどけない男の子ふたりがいるだけなのだ。
お店はこの小さな女の子がほとんど仕切っている。(まるで女将さんが高校生のきぐるみを着ている感じ)
メニューは少なく、食べるべき品も決まっているようで、牛タンたたき、牛タン焼き、トマトサラダを注文。
牛タン焼きは、今までどこで食べた牛タンよりも美味しかった。肉厚だけど硬くなく食べ応えがある。
トマトサラダは、薄くスライスしたトマトに市販の甘めのドレッシング。牛タンなど濃いものを食べる時にサッパリさせてくれる。
一番美味しかったのは、『牛タンたたき』。
これは、法律的に大丈夫なのかわからないのだけど、外側だけ焼いてあって、中身は冷たく完全な生肉なのだ。
これは、タンだと言われないとわからない感じで、今まで食べた牛タンの中で、僕としては一番好きな牛タンだった。(つまり、牛タンらしいものよりも、牛肉らしいものが好きなのだろう)
仙台に行くことがあったら、ぜひ『都留野』の牛タンたたきを食べてみてください。
★都留野新料理 都留野
022-221-0806
宮城県仙台市青葉区一番町4-5-40 おの万一番町ビル B1F
https://tabelog.com/miyagi/A0401/A040101/4000212/

シェフ

2015年に劇場公開されたこの映画を、僕は時間を作って必ず観に行こうと思っていたのだけれど、なんだかバタバタとしているうちに終わってしまった。
映画の制作者に対する尊敬から、日頃はDVDなどで映画を観ないようにしているため忘れていたのだけど、何気なくNETFLIXに上がっていたので、空いた時間にパソコンで見始めたら、これが衝撃の完成度で観終わった後に叫び出したくなるくらい素晴らしい映画だったのだ。(強いて言えば、『最強のふたり』を観た後のような圧倒的な気持ちよさとでも言おうか。
ロサンゼルスにある星付きレストランのシェフであるキャスパーは、売り上げ第一と考えるオーナーと対立し、著名なブロガーとも一悶着あり、店を追い出され何もかも失ってしまう。そこで向かったのは、自分がはじめにシェフになった町マイアミだった・・・。
美味しいものが大好きな人なら、映画を観ながらキューバサンドを今すぐ食べたくなるだろう。音楽も素晴らしく、サウンドトラックを買いたいと思うほどだ。
脚本、監督、主演をつとめるジョン・ファヴローは天才的とさえ言える。
家で家族や恋人、友人と観たら、観終わった後にとても幸福な気持ちになるに違いない。
★http://chef-movie.jp

ストーンウォール

その当時のアメリカでは、警察はゲイバーに頻繁に取り締まりに踏み込み、そこにいた全員の個人情報を記録し新聞で発表することもあった。
ゲイに成りすました警察官がゲイに近づき囮捜査も行われていた。1969年当時アメリカでは、性的指向を理由とする解雇は違法ではなかったし、ほぼ全州において、同性間性交渉を禁止するソドミー法を維持していた。それは驚くことに、たった50年前の話なのだ。
この映画を観ることは、実は、身近なトランスジェンダーのアクティビストからは禁じられていた。
「あの映画は史実に基づいていないから、絶対に観なくいていいからね」
映画が史実と違っているというのは、白人のゲイがまるで主人公のように描かれているから。資料を読むと、ストーンウォールの反乱を起こした中心人物は、黒人の女装、そして、有色人種のFtMだとされる情報が有力のようで、それが彼らの怒りを買ったようだ。
それを知った上で、僕はこの映画をKと一緒に観てよかったと思う。
なぜなら、『ストーンウォールの反乱』なんて、そもそも今の日本で自由に暮らす若者は知らない上に、いったいどんな意味を持っているかなんて考えもしないだろうから・・・。
『ストーンウォールの反乱』がきっかけでゲイパレードが始まり、同性愛やトランスなどセクシュアルマイノリティへの理解が急速に広まっていったのだ。
そして今の僕たち(セクシュアルマイノリティ)の暮らしがあるのは、この『ストーンウォールの反乱』の延長線上と言っても過言ではないだろう。
この映画を観ると、今の僕たちの暮らしが、どんなに幸福かがよくわかる。そして、今のこの状況を築くために、どれだけ沢山の人たちが戦ってきたのかということを想像せずにはいられない。
⭐️ストーンウォールhttp://www.stonewall.website