暖かいのか、寒いのか、わからない春の日に。

何故か朝から芹が食べたくて、鼻息荒くスーパーに行ったら、あまりいい状態の芹が無くて、またクレソン(クレソンは、芹の親戚だから、いいか?)をたっぷり買って帰って来た。
暖かいのか、寒いのか、わからない、今日のような春の日には、美味しい出汁に、香りづけ程度の薄口醤油とお酒を入れた鍋を(ふふふ、これは、片手付き土鍋)。
豚肉の薄切り肉を一枚ずつ入れて、たっぷりの芹(もしくはクレソン)を入れる。すぐに火が通るので、椀によそい、あれば木の芽を叩いてのせる。そこに黒七味を。
日本酒を飲みながら、今日も、日本に生まれて幸せだと感じた夜でした。
★芹と豚肉の鍋
1.出汁600ml に、薄口醤油大さじ1と1/2、塩ふたつまみ、酒大さじ2を鍋に入れて火にかける。
2.熱くなった鍋に豚肉を一枚ずつ入れる。その後芹を入れると、そのまますぐに食べられる。
3.碗によそい、あれば木の芽、そして黒七味をたっぷりと。

天使の分け前

敬愛するイギリスのケン・ローチ監督によるこの映画は、テアトル銀座の閉館を惜しむかのように公開された。
今回は、若者たちが主役になっている。彼らが奉仕活動を義務づけられるのだけど、周りの人たちとの温かい交流や、家族の励ましによって生活に少しずつ変化が訪れる。
世の中には、性善説を信じる人と、そうでない人がいると思うけど、僕が感じるケン・ローチは、正に性善説の人。
中流家庭や労働者階級、生まれながらの環境で重荷を背負った人物などを、優しく見つめる彼の眼差しを、映画のあらゆるところで感じることが出来る。
観ている僕もいつの間にか、人生の敗者や、報われない人たちに、そっと寄り添うかのようにやさしい気持ちを感じられるから不思議だ。
それにしても、テアトル銀座の閉館は、本当に残念だ。シネコンばかりになるのではないかと、これからの日本の映画環境を憂いてしまう。
★天使の分け前 http://tenshi-wakemae.jp/

good gardener is always praying

バラの蕾が姿を現し、日毎に量感を増して来た。
「good gardener is always praying」
という諺がイギリスにある。
真の園芸家は、
いつもいつも祈っていると言われている。
この時期の植物の日々の変化は著しい。
鋭い棘を露わにしていたほとんど裸の木から、
香しいバラの花が姿を表すことを見ても、
この世界の不思議な力を感じずにはいられない。

HOLY MOTORS

13年振りのレオス・カラックスの新作と聞き、映画館に駆け込んだ。
ボーイミーツガール、汚れた血、ポンヌフの恋人…僕が若い頃、衝撃的なデビューを果たし、激情的とも言える作品を次々と生み出したカラックス。
今回、映画人の間でも評判が比較的いいみたいだけど、僕の感想は、「なんか、ジム・ジャームッシュみたいな映画だな…」と思ってしまった。(あまり、一般的には、お勧め出来ない…笑)
監督自ら発言している通り、ホーリーモーターズは、SF映画というジャンルだ。彼の映画の寵児とも言える、ドニ・ラヴァン(オスカーと言う名前)が今回も主役を務めている。
オスカーは、とても不思議な仕事をしている。それは、クライアントのオーダーに従って、なるべき人物になる。というか、演じる。映画の中で、結局オスカーは、11人の様々な人物を演じることになる。
映像が比喩するものや、意味を探ろうとすると、難しい映画かもしれない。もしかしたら、意図や意味など無い映画なのかもしれないから。
それでもあえて、思ったことを書いてみると、
人間は、生まれてくる時に、誰かになろうとして生まれて来るのだろうか?
誰かを演じるという使命のようなものがあるのだろうか?
違う誰かになることも出来るのだろうか…?
僕は時々、他の人の人生を想像してみることがある。自分がもし、あの人だったら、どんな風に人生を感じて、捉えるだろうか…と。
そんな不思議な思いに囚われた映画だった。
★ホーリー・モーターズhttp://www.holymotors.jp/

年齢も、国籍も、職種も超える。

台湾から、Rが来た。
Rは、台北で何度も会っている友人。
トロントの大学を卒業後、台北に兵役のために一時帰国、今は兵役を終えて世界各地を旅行しているところ。年齢は25歳。これからまた、カナダの大学院に進み、将来は、カナダの外交官になろうとしている。
はじめて僕がRに会った頃、僕たちは互いに惹かれ合い、僕も、距離を超えて、ふたりでつきあったらどうなるだろうかと考えたこともある(外交官夫人というのも、悪くはないかなと…笑)。
その後、僕とほとんど時を同じくして、別の人が現れて、それぞれがつきあいだした。今ではいつの間にか、兄弟(姉妹)というか…そんな間柄になってしまった。
それでも、人との出会いというのは不思議なもので、言葉を超えて親しみを感じる人とは、前にどこかで会ったように感じるし、この先も何かの縁で結ばれているように感じる。
家の周りを散歩しながら、お互いの近況を語り合ったのだけど、よくよく考えてみると、僕とRは、ほぼ20歳年齢が離れていることを改めて発見した。
年齢差もさることながら、生まれ育った国も違えば、専門や職種も全然違う。それでも、こうやって様々な話を気兼ねなく出来るのは、やはり、ゲイというセクシャリティーだからだろうなあ。

新入社員。

天香回味 銀座店の火鍋

キノコの山

今日は、研修二週目に入った新入社員9人と食事をした。
ワイシャツは目が痛くなるほど白く、瞳は必要以上に輝き、胸は夢と希望に膨らみ過ぎている…
矢継ぎ早に、会社や仕事に関する質問を浴びせられた。
会社に入って、成功した仕事はなんですか?失敗は?新入社員に必要なものは?どんな風に、ストレスを発散しているのですか?今まで行った所で、どこの場所が一番好きですか?
なんだか、僕が面接受けてるみたいだなあ…などと思いながらも、話が盛り上がるのは、やっぱり、自分が楽しかった仕事や、苦労をしたけど、達成感のあった仕事。
新入社員と飲むと、あの頃の不安や期待を思い出し、自分はきちんと生きてきたのだろうかと考えさせられる。
今は、分からないかもしれないけど、会社人生、10年や20年なんて、本当にあっと言う間なのだ。
最後に、新入社員のみんなに何かお言葉を…と言われて、こういうの、いつも困るのだけど…
「とても楽しい会社に入ったと思うけど、実は配属は、ただの通過点であってゴールではないということ。
自分のやりたいことを明確にして、なんとかそれを実現して欲しい。
できれば、誰もやったことのないような、新しいことを。
そして何よりも、ひとりの人として幸福になってもらいたい」
会社で上に行こうが行くまいが、給料が高かろうが低かろうが、幸せな人が一番だと、今は思う。
★天香回味 銀座店http://s.tabelog.com/tokyo/A1301/A130101/13099229/

楽しい時間が終わる時に。

お花屋さんから貰った、燃えるようなラナンキュラス。

Kは、あまり感情を出さない。
それは、そういう環境で育ったのか、小さい時に何かがあって、自分で決めたのかは、わからない。
「今まで、誰かを好きになったことはないような気がする…」と言うのが、はじめにKに会った頃に聞いた言葉。
「どういうことが、人を好きになることなのか、自分の中で今一はっきりとわからないんです」
時々、一緒にいる時に、あまり感情表現をしないKを見ながら、「いったい僕のことどう思っているんだろうなあ…」と思うことがある。
でも、付き合い始めて、半年が経とうとしているけれども、Kも少しずつ変わって来ているような気がする。
月曜日は、僕は代休だったので、家でお粥の朝ごはんを食べて、伊勢丹にKのパンツを買いに行き、映画『シュガーラッシュ』を観て楽しんだ後、鰻を食べようとお店に入った。
すると、Kは、「あと、数時間しか、一緒にいられないんですね…」と、ぽつりとつぶやいた。
九州と東京で、離れ離れに暮らすふたりは、今のところふたりで精一杯頑張っても、会えるのは、月に二回がいいところ。ふたりで一緒にいられるその限られた時間が、とても愛おしく感じられる。
寂しそうなKを見ながら、堪らなく、守ってあげたいと思った。
羽田空港にまた、送って行く時に、寂しくなるのは嫌だから、『時間がない』ということに焦点を当てるのではなく、『今度会う時には、どこに行こうか?』という、次の楽しい時間のことに話題を持って行くようにしてみた。
別れる時も、姿が見えなくなるほど手を振りながら、せつなくならないように、見送ることが出来ました。

ありふれた週末。

新宿御苑の八重桜

土曜は夕方から、『オズ はじまりの戦い』を観賞、素晴らしい作品だった。Kは、3Dを始めて観たのだけど、とても楽しかったようだ。
日曜日の朝ごはんは、木曜日に仕込んでおいた鰆の西京漬、芹の煮浸し、大根の味噌汁、納豆、出し巻き玉子、白いご飯。家でふたりで食べるご飯は、本当に美味しい。
嵐が去り、朝から快晴だったので新宿御苑に行ってみた。桜は期待していなかったのに、八重桜や鬱金など、いつもとは趣の違う桜がたくさん咲いていた。
Kが財布を買いたいというので、伊勢丹へ。ふたりで散々悩んで、white house coxの紺色のジッパーつきの財布にした。
ランチの後、迎賓館へ。ユリノキが新芽を出し始め、外苑の樹々も芽吹き始めた。日差しが暑いのでTシャツになって、歩いて一度家に帰ると、Kがまた、ソファで寝はじめた(笑)。
Kを叩き起こして、散歩がてら表参道にガレットを食べに、『le bretagnehttp://www.le-bretagne.com/j/creperies/omotesando.html』へ。Kは、始めて食べるガレットに喜んでいた。
その後、渋谷の友人の店『スタンド7』へ。Kを紹介した後、家に歩いて帰る。
夜は、家ですき焼きを。
先日の伊勢丹の京都展で三嶋亭の上質な肉が安くなっていたので、買っておいたのだけど、これが肉だけで甘さを感じるほどのいい肉だった。金沢のノンケの友達にいただいた銘酒を飲みながら、家で食べるすき焼きで、身体中がほどけて行った。
特別なことを何かしたわけではないけど、こんな風に散歩をしながら過ごすありふれた週末こそ、離れて暮らすふたりにとっては、かけがえのない時間だと思える。
これからも、ふたりで、こんな週末を重ねていけますように。
※すき焼きは、家でなかなか作らないという人が多いようだけど、簡単で、リーズナブルで、満足感があると思う。注意しなければならないことは、割りしたの配分だけ。
★すき焼きの割りした
醤油100ml
みりん100ml
砂糖大さじ2〜3
出汁200ml
一度鍋で煮たてること。
先ずは1枚、牛脂で肉を焼き、鍋に牛肉の旨味を移す。一枚目は塩胡椒で食べてもよいし、割りしたをほんの少しかけていただくもよし。肉は焼きながら、割りしたを少しずつかけて、次第に野菜を入れて行くと、それぞれ美味しくいただける。

幸福な週末。

昼寝をするK

嵐の前にふたりで散歩をして買ったパンジー

昨日は遅くまで飲んだので、朝ごはんは、新玉ねぎと牛肉の煮込み。カブの葉と油揚げの煮浸し。明太子。そして、にゅうめん。
にゅうめんは、飲み過ぎた翌日に食べることが多い温かい素麺だけど、Kは、美味しいと言って喜んで食べていた。
僕が洗濯をしながら、のんびりと洗い物をしている横で、Kは、携帯をいじってゲームをしている…と思っていたら、いつの間にか、ソファですやすや昼寝をし始めた。
家でご飯をふたりで食べて、恋人がソファで昼寝をしている。とぼけた寝顔を時々そっと覗いてみた。
そんななんでもないことが、今の僕には、この上なく幸福に感じられる。
★にゅうめん(二人分)
1.
出汁700mlに、薄口醤油大さじ1、酒大さじ1、みりん大さじ1/2、塩小さじ1/2強を入れて煮る。片栗粉小さじ1を同量の水でといて入れる。
2.
素麺1束を茹でて水ですすぎ、水を切りどんぶりに。
3.
温ためた煮汁を上からかけて、三つ葉と手毬ふ、湯葉などをのせて、あればゆずの皮かおろしたしようがを乗せる。
美味しいよ!

羽田空港へ。

夕方のプレゼンが長引いてしまい、慌てて家に帰った。
Kが仕事を終えて、夜の便で東京に来るのを迎えに、着替えて羽田空港へ。
Kはいつも車で迎えに来てくれるけど、僕はマイカーは無いので電車で。
(一度、外苑前駅までKを独りで電車で来させたところ、寂しそうだったので…)
送りに行くのは、いつもせつないけど、
迎えに行くのは、なんとも恥ずかしいような変な気分だ。
遠距離恋愛を始めて、間も無く半年になろうとしている。
その間、Kからは、毎朝、LINEで「おはようございます」
というメッセージが来て、「おはよう」という言葉を返している。
時間があれば、話したいことを話して、夜も何を食べたとか、
飲んでるとか、写真を自由に送り合いながら。
二日前くらいに、朝から連絡が無いことがあって、
さすがに毎朝挨拶が来ていたから心配になった。
携帯をどこかに落としたのか?身体の具合が悪いのか?
もしかして何か怒らせてしまったのだろうか?
お昼を過ぎる頃、Kから「おはようございます」
「今日は、朝早かったから、連絡出来なかった」とメッセージが。
僕は、ほっとして、ちょっと心配していたと送った。
「毎朝、半年間おはようを言い合って来たのに、
何も連絡が無かったら、Kだったらどう思う?何も心配しないかな?」
「心配すると思います」『ごめんなさい』と返って来た。
離れて暮らしているふたりは、
会いたい時に思うように 会うことができないから、
メールのやり取りでお互いの状態を知り、確かめ合う。
そうやって、相手を気遣い、信じる気持ちを、
毎日毎日少しずつ積み上げている気がする。
「僕は、Tさんに会いたいから、東京に行くんです」
メッセージの終わりの方に、わざわざそんな言葉を伝えて来た。
今は、なんとか羽田空港に時間ギリギリで着いたところ。
もうすぐ、とぼけたKの顔が見えそうです。
(2013/4/05/21:45)