春には、クラムチャウダー。

昔、上司とパリにロケに行った時のこと、その日の撮影が終わって、日本人スタッフだけで晩御飯に行こう!という話になり、上司に何がたべたいか尋ねた。すると、上司は暫く考えた挙句、
「…グラタン」と言った。
僕は、「いわゆるグラタンは日本の料理で、フランスでグラタンと言っても、グラタン・ド・フィノアのような、牛肉の皿についてくるような付け合わせになってしまいます」と答えた。
上司「じゃあ…クラムチャウダー…」
僕「え?クラムチャウダー?
クラムチャウダーは、多分、アメリカのニューイングランドの料理です…」
そう答えて、その後はうむを言わせずビストロに連れて行ったことがある。上司は和食が大好きで、フランス料理など馴染みがなかったのだ。
寒い日と暖かい日を繰り返しながら春になって来た。アサリもハマグリも美味しくなる季節に、簡単なクラムチャウダーはいかがだろうか?
★クラムチャウダー
〈材料〉
アサリかハマグリ300〜400グラム
ベーコン4枚
ジャガイモ1個
ニンジン半分
玉ねぎ半分
セロリ10センチ
イタリアンパセリ少々
バター大さじ2
薄力粉大さじ2
牛乳300ml
お湯300ml
白ワイン50ml
塩胡椒
〈作り方〉
1.ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ、セロリを7ミリ角くらいの食べやすい大きさに切る。ベーコンも7ミリくらいに切る。ジャガイモは水にさらしておく。
2.鍋を温め、バターを入れてベーコンを炒める。そこに野菜を入れる。全体に混ぜながらバターで炒めたら、薄力粉を入れて絡ませる。
3.アサリを入れて白ワインを入れて混ぜて一呼吸置いたら、お湯を注ぐ。沸騰したら蓋をして弱火で12分。
4.蓋を取って牛乳を注ぎ、全体を静かに混ぜる。温まったら塩胡椒で味を整える。(アサリやベーコンに塩気があるので、塩は少しずつ味を見ながら入れること)
5.イタリアンパセリを散らして、完成!

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅

映画『ネブラスカ』は、100万ドルの宝くじが当たったと信じ込む年老いた父親と、その家族の話。賞金を手に入れるために、モンタナから遠く離れたネブラスカまで長い旅に出ることになる。
アレクサンダー・ペイン監督の作品は、いつも派手さは無いのだけど、どの映画も驚くほど丁寧に人間の性格や感情を描いている。
今回、年老いた父親役のブルース・ダーンが圧倒的な演技を見せてくれている。意固地で耳も遠くなり、都合の悪いことは聞こえないふりをしているのか、本当に聞こえないのかわからない。
家族は、ネブラスカへ向かう途中に昔の故郷に立ち寄ることになる。そこで様々な親戚や幼なじみにもう一度出会い、このお父さんとお母さんがどんな人物でどのような人生を送って来たのか、子どもたちも知ることとなる…。
映画を観ているうちに、これは、特別なウディ・グラントファミリーの話ではなくて、まるで僕の父親や母親の話でもあるように思えてくるから不思議だ。
今は亡き、父親のろくでもなさを思い出しながら、父へのさまざまな感情がこみ上げて来て、白黒の画面を深く見入ってしまった。
主役のブルース・ダーンはじめ、奥さんのジューン・スキップも、素晴らしい演技を魅せてくれる。作品賞、監督賞はじめ、主演男優賞、助演女優賞など6部門にノミネート。
★ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅 http://nebraska-movie.jp/

綺麗なシャツ。

綺麗なシャツに一番必要なことはなんだろうか?
「色」ではない。「デザイン」ではない。「素材」でもない。「ブランド」でもない・・・
それは、『自分の身体にぴったりと合っていること』 ではないだろうか。
これはスーツでも同じことで、どんなに高価なブランドもののスーツを着ていても、着ている人の身体にフィットしていないスーツは、存分にその価値を発揮していないと言える。逆に、安価なスーツでも、もし身体にぴったりと合ったサイズであれば、そのスーツはその人をより美しく見せてくれるだろう。
東京では、町を歩くほとんど90%以上の人が、自分の身体と違った大きめのスーツやコートやシャツを着ていると思う。
イタリアで、きちんと採寸してその人の身体に合わせてスーツを作る人が多いのは、自分に合った形のスーツに身を包むことでより自分らしく見えるのを知っているからかもしれない。
数あるシャツの中で、僕がとても気に入っているのが、『GITMAN BROS(GITMANBROTHERS)』のもの。オックスフォードのシャツが特に有名だけど、VINTAGEシリーズUSAのSサイズが自分の身体にちょうどフィットするのだ。
学生の頃は、ブルックスのボタンダウンなんかを少し大きめで着るのが好きだったけど、今はこの、GITMAN BROSのボタンダウンをぴったりサイズで着るのが一番のお気に入り。
春になって来たので、新しい真っ白なシャツを見つけたいな。

渚のふたり

Facebookで、ポルノスターになりたかったというセックス狂の若い子と繋がっている。その子が先日、『love is illusion』と書いていたので、「本当にそうだろうか…?僕はそうは思わない」とメッセージを書いた。
そもそも、FBで、なんでそんな人とつながっているのか?と疑問もあるかもしれないけど、僕はそんな若い子にとても惹かれるのだ。自分に正直に生きて、自分なりの真実をつかもうとしているに違いないと・・・。
韓国映画『渚のふたり』は、視力と聴力を失っている夫ヨンチャンと脊椎障害で小柄な妻スンホのドキュメンタリー映画。
ふたりのコミュニケーションは主に、指点字(両手の6本の指を点字の6つの点に見立て、指で点字を打つこと)で成り立っている。
ヨンチャンがご飯を食べるときは、そのお皿の位置と何が入っているのかをスンホが指で教える。
寝室の蛍光灯が切れた時は、ふたりで協力してやっとのことで取り付ける。
外を歩く時は、背の高いヨンチャンがスンホの肩に手を置き、ふたりはぴったりと一つになる。
目が見えなくて耳もはっきりと聞こえないヨンチャンは、スンホを通して世界を感じとることが出来る。
ふたりはいろいろなものを触りながら確かめる。俳優の動きも、波の冷たさも、松ぼっくりも、雨が降って雷鳴が轟く中で、雨のしずくをふたりでそっと手のひらで感じながら、「雨の雫は柔らかい」と表現する。
彼らを見ていると、お互いをこれほどまでに必要とし、必要とされている関係がうらやましくさえ思えてくる。きっと彼らは、「顔が好きだから」とか、「身体がタイプだから」とかといったことではないところで、深く結びついているのだろう。
これを、『愛』と呼ばずに、何が『愛』だろうか?
ヨンチャンとスンホ、お互いが思いやる気持ちほどリアルなものが、この世界にあるだろうか?
★渚のふたりhttp://nagisanofutari.jp/

台湾ナイト。

豆苗炒め

台湾ビール

干し大根入り卵焼き

台湾人の若い友人Qと晩ご飯を食べた。
いつもは僕がお店を選んでしまうのだけど、たまには若い子に選ばせるのも面白いかと思い今回はQに選んでもらった。新大久保の駅から明治通りの方に行った台湾料理の店『台湾食堂 帆』。中に入るとQの台湾人の友人もいて、店内は留学生などで満席だった。
Qはいつも僕のことを『お母さん!』と呼ぶので困るのだけど、友人たちに僕を紹介する時は、「僕の保護者のような人です」と紹介していたので笑ってしまった。
いつもは和食でもイタリアンでもなんでも美味しいと言って食べるQが、久しぶりに食べる故郷の台湾料理に目を細めていたのがかわいかった。そこにK太郎が仕事帰りに加わり、話題は台湾の話で盛り上がった。
Qは今回台北に帰省する時に、妹さんから日本製のジョギングウエアを買って来てほしいと頼まれたらしい。僕が、「なんで化粧品とかではなくてジョギングウエアなの?」と聞くと、QはiPhoneの中の妹さんの写真を見せてくれた。
そこには、『THE LESBIAN!』と思う疑いようのない妹さんの写真があった。
二人兄妹なのに、お兄さんはゲイで妹はビアン・・・。不思議なことに僕の周りでは、兄弟そろってゲイとかっていう人が意外に多い気がする。
これじゃあ全人口の5%がLGBTというデータは、もしかしたら10%くらいなのではないかと思わざるをえない・・・。

ウガンダの反同性愛法案。

ウガンダの大統領が、反同性愛法案に署名した。これは、死刑こそなくなったものの、同性愛者に対して終身刑という最大の重刑を認める法案だ。
オバマ政権は非難をし、オランダをはじめ、デンマーク、ノルウェーなどは次々と経済制裁を打ち出した。
以下、ムセベニ大統領の発言を聞いていただきたい。
>福音主義キリスト教の敬虔(けいけん)な信者であるムセベニ氏は、同性愛の男性がなぜ「美しい女性らには目もくれず、男に引かれる」のかが理解できないとして、「これは本当に深刻な問題だ。(同性愛者には)何か非常におかしいところがあるのだ」と語った。また、「同性愛者は実際のところ、金銭を目当てに働く者たちだ。異性愛者なのに、金のために同性愛者を名乗っている。金のために売春をする者たちだ」と断じた。
特に同性愛者間のオーラルセックスについて、「あそこに口をおしつければ、間違った行いであるがゆえに虫がくっついてきて、その虫が腹の中に入ってしまう」と生々しい表現で不快感をあらわにした。
以上。
この大統領と、同性愛について論理的に話をしても、きっと説得出来ないだろうと無力感に襲われる。彼らの、『自分と違っているものに対する憎悪』は、いったいどうすれば変えることが出来るのだろうか?
以前にもオランダのドキュメンタリー映画で、ウガンダで暮らすビアンの女の子が矯正レイプされた挙句、割れたビール瓶を性器に突き刺され殺されたドキュメンタリーを観たのだけど、国が法的に違法だと認めた同性愛行為は、国民のヘイトクライムを助長するに違いない。
アフリカで生きる、多くの同性愛者は、どれくらいいるのだろうか?
彼らが、自分らしく生きることが出来る日が来ることを、願わずにいられない。
★ウガンダ大統領、反同性愛法案に署名http://www.afpbb.com/articles/-/3009256

みそ床(肉用)。

みそ床

6時間後

焼いたら完成

『糠漬け』が家にあったら、はじめて家に来たボーイフレンドは引くと思うし、手間がかかるので長期の旅行は出来ないだろうけど、『みそ床』が家にあると、結構重宝するものだと思う。
週末の昼間に『みそ床』にお肉を入れておけば、夕飯は取り出して焼くだけで味わい深い味噌漬けのお肉が出来るのだ。しかも、お味噌を継ぎ足してやれば、ずーっと使えるのだから、『みそ床』は、エラい!
★みそ床の作り方
1.田舎みそなど合わせて1kgに、にんにく1玉の皮を剥いて入れる。
2.お酒を100mlくらい入れてかき回して、馴染ませて冷蔵庫で2週間おいたら完成。
<豚肉の味噌漬け焼き>
ステーキ用の厚みのある豚肉をキッチンペーパーで巻いて、みそ床に入れる。
豚肉ステーキ用だと6時間くらい(肉の厚さによって漬ける時間も適当に)。
取り出して、へらなどでみそを拭き取り、脂肪との境目のスジを断ち切り、焼いて完成。
好みにより、レモンなどを絞ると美味しい。みそ味がしっかりとしみているので生野菜と。
※魚用の西京漬用のみそ床は、あまり使い回しがきかないけど、あると重宝するのでまた今度書きますね。

ダラス・バイヤーズクラブ

1985年。テキサス州でロン・ウッドルーフはHIV陽性の反応とともに、余命30日間という宣告を受ける。
同性愛者でない彼が、この未知の病、国、製薬会社に対して戦いを挑む。それは、純粋に自分が生きるためだった。
ドラマティックな作りではないけれども、それゆえにとてもリアリティを感じる。マシュー・マコノヒーはロン・ウッドルーフになりきるために21キロの減量をしたようだ。
80年代、HIVやエイズのことはあまりにもわからないことだらけで、実験的にAZTなどが使われ、副作用により多くの生命が亡くなっていった。
そんな中でロンは、アメリカ政府や製薬会社を敵に回しても、まだアメリカで認可のおりていない薬を密輸して、人々に売りさばき、実際には多くの生命を救うことになる。
今回、主演男優賞をマシュー・マコノヒーが取ってもおかしくないと思えるのは、『マジック・マイク』でも、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でも不思議な魅力の脇役を演じているのだけど、どれも全くの別人にしか見えない。映画の中の彼を観ていると、マコノヒーではなくてその人物としか思えないのだ。そんな俳優って、なかなかいないと思う。
一週間後に控えたアカデミー賞が楽しみですね。
★ダラス・バイヤーズクラブhttp://www.finefilms.co.jp/dallas/

F T M の若者。

弟のようなFと、妹のようなGと打ち合わせを兼ねて食事をしたら、FがFと同じF T M(female to male)の若者を連れて来た。
ぱっと見、真面目そうな男の子Kao君は24歳で医学部に通い、これから半年出版会社でアルバイトをして、その後半年旅行をして、来年から病院へ就職するという。今回は、出版社の面接で東京に訪れたようだ。
就職の前に、胸の手術をして、今度は下もタイで手術を受けるらしい。今度の手術は、50万円。
彼の場合は、自分の就職先にも自分のセクシャリティをきちんと明かしていて受け入れてもらっているという。
トランスセクシャルの人たちの就職も、長いことずっと大変だったようだ。自分のセクシャリティを完全に隠して就職するか、セクシャリティに正直に生きて、夜の商売をするかの二者択一。
挙句の果てに、何十万何百万というお金をかけて手術を受けても、『変態』という言葉が浴びせられたりするという。
彼らは、この世に生まれて来ただけだ。他のみんなと同じように両親の愛情を受けて育って来た。彼らが持って生まれたそのままのセクシャリティを、矯正など出来ないし他人に否定される必要はない。
FがNHKなどのメディアに出るようになって、救われたというトランスの人たちは、想像を絶するほどの数になっている。中には、生命を救われたという人たちも…
今まで、トランスの子どもたちは、自分一人で悩みを抱えていたり、周りから変態扱いされて、自分だけがおかしいのではないかと悩み続け、自殺をする人たちもとても多かったようだ。
Kaoに、好きな女の子のタイプを聞いたり、これから、小児外科になりたいという夢を聞きながら、期待に膨らむKaoを見ていたらとてもうれしくなった。
FのBAR『緑』に移り、別の打ち合わせをしていたら奥の方で「やった〜!」という声が響いた。なにごとかと思ったら、Kaoの一発目の出版社の面接が通ったらしい。
これから東京暮らしが決まって、今度は慌ててスマホで不動産を探し始めた…。
身体も小柄で152センチしかないKaoは、就職用のスーツもなかなか身体に合ったものがなくて、お母さんが袖や裾を直してくれたそうだ。
そんなKaoが、満面に笑みを浮かべて喜んでいる姿を見ながら、素敵な仲間たちと乾杯をした。

友人の別れ話。

3年以上つきあってきた友人カップルが、別れたという話を深夜に聞かされた。前の日も一緒に過ごしていたのに、前の日は彼の口からはふたりの話は出て来なかった…
ついこないだも、僕の家に遊びに来て、楽しそうにしていたカップルなのに、ふたりは別々の道を歩き出すことに決めたようだ。
幸い、泥沼のような別れではなく、話し合いによってふたりできちんと別れることを決めたようだ。(きちんと話し合って別れることはとても重要だ。一方的な別れは、どちらかの人生を破壊することにもなりかねない)
どんなに穏やかな別れであっても、別れる時は想像以上の大変さを伴うものだ。まして、一緒に暮らしていたふたりは、単純に物を分けることから始まり、あらゆるものが半分なくなってゆくことは、自分の身体や心に穴が空くような不思議な感覚に違いない。
生まれも育ちも、性格も好きなものもまったく違うふたりが、惹かれ合いつきあいだしたのだ。三年の間には、本当に色々な出来事があったに違いない。それは、また経験しようと思っても二度と出来ない今となっては宝物のようなものだろう。
そして、ふたりがともに経験した様々な瞬間は、きっといつまでもふたりの中にそのまま残り続けることだろう。
しばらくはふたりの様子が心配ではあるけれども、親しい友人や兄弟のような人たちが彼らにはついている。僕もここで、兄のように彼らを見守っているつもりだ。
ふたりにとって、これが転機となり、もっともっと幸せに近づくことが出来ますように。