味方。

46歳にもなるのに、時々、仕事の忙しさと重圧に疲弊することがある。
連休期間中、なるべくKと過ごすためにプライベートを優先していたのだけど、あまりの仕事メールの多さに僕自身くたびれてしまい、しまいには夜中にクライアントから無理難題のメールが来て酷く落ち込んでいた。
朝になって、僕はなんだか起き上がる気力もなく、ベッドの中でKにしばらく愚痴を言っていた。
僕「年をとったら、もっとラクになるのかと思ってたんだけど、いくつになってももっと大きな問題が降りかかってくるし、働いても働いてもラクにならない…もう、仕事早くやめたいなあ…」
K「ただしくんの会社、早死にだって聞いたよ。もう、会社辞めちゃった方がいいよ」
僕「え?」
K「大分で掃除のおばちゃんやってもいいし、お母さんの家で暮らしたっていいんだから…もう、会社なんてやめてあげて!」
僕の会社の平均寿命が50代だったことを知り、Kは本気で僕のことを心配しているようだ。ストレスで僕が押し潰されてしまうのではないかと、この頃いつも心配してくれる。
ベッドで弱音を吐いてばかりの僕を、後ろからずっと抱きしめながら、僕に早く会社をやめろと言うKの声を聞いていたら、なんだかちょっとかわいくて元気が出てきた。
本当に辛い時に、どんなことがあっても味方でい続けてくれる人がいることは、なんて幸せなことだろうか。
いくつになっても僕は、こんな風に誰かに支えられながら、なんとか生きているのだ。

玉笑

海老の味噌漬け焼き

せいろ蕎麦

熱盛せいろ蕎麦

ふいに、お蕎麦が食べたくなり、久しぶりに渋谷の玉笑を訪れた。
ここはミシュラン一つ星の蕎麦屋。平日は予約が出来るのだけど、土日は予約の出来ない蕎麦屋。昼前に着くと、すでに階段に人が並んでいたが、それほど待たずに中に入ることができた。
出汁巻き卵、焼き味噌、海老の味噌漬け焼きをつまみながら、濁り酒をいただく。美味しい蕎麦屋は、決まってつまみがどれも美味しいものだ。
せいろ蕎麦は弾力があり、香り高い。酒を菊姫に変えてもう一枚いただく。
蕎麦湯を入れて蕎麦猪口を傾ける頃には、お蕎麦って本当に美味しいなあとしみじみと思う。
麺類の好きな順番は、うどん、パスタ、蕎麦、素麺…なのだけど、年をとって来て、蕎麦のことがどんどん好きになってゆく気がする。
不思議なものだ。
★玉笑http://tabelog.com/tokyo/A1306/A130601/13129390/

天府舫

棒棒鶏

麻婆豆腐

担々麺

Kが、四川料理が食べたいというので、数ヶ月前に訪れた新宿西口裏手にある『天府舫』へ。
ここは、日本にはあまりない本場の辛い麻婆豆腐が食べられる店。
干し豆腐やピータンをつまみながら、紹興酒をいただく。棒棒鶏は、辛味の効いたタレが美味しいし、豆苗は綺麗な緑色でほっとする味。揚げた鶏肉と唐辛子や花椒の効いた一品は、四川料理の中でも大好きな一品。
麻婆豆腐を一口食べたKが、思っていた麻婆豆腐と違って驚いたようだ。辛味が効いて、山椒の痺れるような味わいは、日本で食べる麻婆豆腐とはまったく違う料理だと言わざるを得ない。
オススメの汁なし担々麺を食べる頃には、Kはこの店をとても気に入ったようだった。
熱いお湯に入った、茹でたばかりのお団子をいただいたのだけど、このデザートもとても美味しかった。
また辛いものが無性に食べたくなったら、すぐにでも再訪したい。
★天府舫http://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13129407/

シンデレラ

シンデレラ。

僕も出ている。

ディズニーのシンデレラをご覧になっただろうか?
子どものためのお伽話だと思ってバカにしている人もいるかもしれないけど、本当によく出来た作品だったので大人にもお勧めしたい。
ストーリーは、みんなが知っている昔からのシンデレラだ。
それを知りながらも、最後まで惹きつけられてエンディングでは手を叩きなるくらいに楽しめたのは、すべてはケネス・ブラナー監督の力量、継母役のケイト・ブランシェット、そして妖精のおばあさん役のヘレナ・ボナム=カーターなど脇を固める豪華なキャストだろう。
見どころは、とにかく変身のシーンだ。
シンデレラのドレスが変化するところ、ネズミやトカゲやカボチャやアヒルが、それぞれ変身するシーンはとても緻密に作られており、夢中になるに違いない。
お城に到着して、舞踏会の会場に現れるシンデレラ、12時の鐘が鳴り始め、長い庭園を駆け抜ける美しい青いドレス姿のシンデレラは、女装願望のない僕でさえ、シンデレラになりたいと思わせる、美しい演出だった。
それにしても、なんでシンデレラをわざわざ観に行ったかというと、BridgeのMに、Kと映画に行こうと思うのだけど、今やっている映画の中で何かいいかな?と相談したからだった。Kは僕のような映画好きではないので、わかりやすい映画が好きだから…。
Mは色々考えた挙句、「そうだな…Kちゃんが行くならシンデレラかな…」と言った。そしてすかさず、
「それに、ただしが継母役で出てるから…」と言って、お客さんみんなが笑っていた。
★シンデレラhttp://www.disney.co.jp/movie/cinderella.html

ゴールデンウイークのはじまり。

息をつく暇もなかったこの3ヶ月間あまり。パレードがやっと終わったと思ったら、珍しく風邪をひいた。それでもハードな出張をこなし、いつしか風邪もどこかへ飛んでゆき、大分からKが病院の仕事の後、羽田に来る日に。
イタリア映画祭の最終回をキャンセルして、羽田空港に向かう。本当は、羽田空港から新宿か外苑前まで電車で来てくれたらラクなのだけど、僕が迎えに行くことが、Kにはうれしいようだ。
30日に来て、3日までしかいられないKを思うと、できる限り一緒にいてあげたいと思う。
本当は、撮影が2日3日4日のどこかに入ることになっていたのだけど、天気のことを考えながら散々迷った挙句、僕の一存で撮影を4日にずらしたのだ。
もし、3日に撮影をしたら、最後の日はほとんどKの相手をすることが出来なくなってしまう。せっかく大分から飛行機のチケットを買って僕に会いに来てくれたのだ、周りには申し訳ないけど、僕のプライベートを優先させてもらった。
朝から、お米を精米して、サンマの干物を焼いて、明太子と納豆、九条葱の味噌汁、白米を土鍋で炊いて朝ごはん。
みんなにとっては当たり前の朝食さえ、僕たちにとっては、幸福な朝の時間だと思える。
洗濯をすると、Kが張り切って干してくれて、僕が植物に水をあげる…。
ごはんを食べたらKは眠くなったようで、今はソファーですやすや眠りはじめた。
特に何もスペシャルなことはないのだけど、こんなことが、僕にとっては幸せなのだと、改めて思ったのでした。

イタリア映画祭

イタリア映画祭が開幕した。
はじまってから15年目になるイタリア映画祭は、東京で開催されている映画祭の中でも成功している映画祭の一つであろう。この日、朝日ホールは2作品ともほぼ満席で、イタリアからも監督や出演者らがたくさん来日していた。
『ラスト・サマー』は菊池凛子主演、吉本ばなな脚本、英語の映画で、まるで吉本ばななの短編小説を呼んでいるような、多くを語らない映画だった。
『レオパルディ』は、イタリアの詩人ジャコモ・レオパルディの人生を描いたイタリア映画らしい大作だった。
実はこの日、あまりにも疲労が溜まっていたため、僕にしては珍しく、2作品ともはじめの方でうとうと寝てしまった・・・。
そしてつくづく思うことは、『映画館で眠ることの、なんと幸福なことだろう!』
劇場でシートに腰をうずめ、暗転してゆく時の幸福。
うとうと眠りに陥ったりしながらも、それでも映画館にいるという幸福。
いくつになっても、世界中の映画を、ずっと見続けていきたいと思ったのでした。
★イタリア映画祭2015http://www.asahi.com/italia/2015/

OUT IN JAPAN 最終日。

GAPでの展示が最終日を迎えたので、撤去される前にまたスタッフが集まった。
この3ヶ月間あまり、それぞれに様々な苦労があったこともあり、なんだか文化祭が終わってしまうような寂しいような気持ちになっていた。
今回、それぞれの人とお話が出来たこともあり、OUT IN JAPANの撮影に臨んでくれた人々のことを考えると、なんとも愛おしい気持ちになる。
親が大好きだから、親を悲しませたくないから言えずに自分の中だけに閉じ込めて生きて来た人。
友人に嫌われたくないから、ひたすらノンケを演じてきた人。
兄弟や友人のような、みんなに祝福される結婚や子どもを持つ暮らしは自分には出来ないのだと思って生きて来た人。
自分には、周りのみんなのような幸せな未来は描けないと思っていた人。
いじめられた人や、自傷行為、自殺未遂を繰り返した人。
そんな痛みや苦しみや悲しみを、ここにいる人たちはそれぞれに味わい生きて来たのだろう。だからこそ、他の人の痛みや苦しみや悲しみを想像することが出来るのだ。
スタッフはもう一度、GAPのレインボーTシャツを着て、思い思いに写真を撮った。
次の新しいみらいに、どうか、つながっていきますように。

小石

岩牡蠣

牡蠣の太白胡麻油漬け

うにクレソン

広島で、そんなに高くなくて、でも何か地元の美味しいものが食べたい…そう思って、探して入った『小石』は、とてもセンスのいい店だった。
季節によって種類の違う牡蠣が食べられるし、お造りも新鮮。出汁巻きもきちんとした出汁の薄味の出汁巻き。
季節の野菜を工夫したメニューは趣向が凝らされており、何を頼んでも甘い味つけなどなく日本酒とぴたりと寄り添ってくれる。そして日本酒の品揃えは100種類。
岩牡蠣の大きさに驚き、牡蠣の太白胡麻油漬けは濃厚で肝のようだ。
一番驚いた美味しさは、ウニとクレソンを炒めたもの。クレソンの爽やかな苦味にウニが絡みつき、まさに日本酒泥棒だった。
★小石
http://tabelog.com/hiroshima/A3401/A340101/34019527/

宮島へ。

会社に入ってまだ間もない頃、クリエーティブ研修をしている時に局の次長が僕に行った。
「アイデアというものは、丁度、海に鳥居を建てるようなものだよ」
その頃、この人は何を言ってるんだろう?なんて思っていた僕は、宮島の厳島神社へ来て、彼の言いたかったことを考えた。
厳島神社は、推古元年(593年)創建の世界遺産だ。昔から神の島と崇められていたので、御社殿を敢えて海水の満ち引きする場所に建てたそうだ。
はじめて降り立つ宮島は、ここがこうして美しいまま残されていることに感謝したくなるような、日本人として誇らしく思うような美しい島だった。
町を流れる小川には、ゴミひとつ落ちていることはなく、町のいたるところに鹿がのんびりと歩いている。
そして、山全体を覆うかのように輝き続ける新緑のもみじは、紅葉の美しさを想像させる。
仕事でほんの数時間滞在しただけだったのだが、またすぐに訪れたいと願った。
恐るべし、世界遺産。

HAPPY PRIDE!

カミングアウトしたKI-YOさん

空は高く晴れ渡り、TOKYO RAINBOW PRIDEの会場は朝から沢山の人が押し寄せた。パレードは3000人、会場へ足を運んだ人は、55000人を超えたという。
パレードは先頭で、僕の弟で主催者のF、妹のG、レスリーやレスリーの恋人のライアン、そしてOUT IN JAPANの曲を作ってくれたKI-YOさんたちと一緒に、みんなで大きく笑いながら歩いた。
会場では沢山のLGBTたちが、男同士女同士が自由に手をつなぎ肩を並べて歩いていた。みんなの顔に笑顔が溢れ、会場いっぱいに愛が放たれているようだった。
KI-YOさんはこの日、ステージの上でWE ARE ONEを歌う時に、みんなの前でカミングアウトをした。ミュージシャンとしてカミングアウトすることは、リスクも伴うものだろう。それでも自分のセクシュアリティに正直に生きる道を選んだKI-YOさんを、僕はとても勇気のある人だと思った。
4オクターブもでるという歌声は声量があり、会場も拍手でこたえていた。
人生のうちでは時々、幸福感でいっぱいになって、胸がはちきれそうになる時がある。僕にとってTOKYO RAINBOW PRIDEは、そんな幸福感でいっぱいの二日間だった。
イロドリに戻りご飯を食べていると、渋谷区長選の結果、長谷部さんが当選出来そうだから、すぐに事務所に来るようにと呼ばれて慌ててタクシーで駆けつけた。パレードに加えて長谷部さんの当選は、僕たちに大きな喜びをもたらした。
今日から、新しい渋谷区がはじまる。