海と太陽。

犬の海と猫の太陽は、最初に太陽が外に捨てられていた日に家に招き入れると、

太陽が海を怖がって毛を逆立てることがあった。

海はやさしいので太陽に尻尾を振っていたが、太陽は必死で自分の身を守ろうとしていたのだ。

でも、時間が経つ中で二人はどんどん近づいていった。

時々太陽にいうことを聞かせようと首根っこから頭をがっぽりと海が口の中に入れてしまったり、本気で追っかけっこをすることはあるものの、二人はすっかり家族のように見える。

動物同志のやりとりはわからないのだけど、見ている限り一度たりとも本気でお互いを傷つけようとしている場面を見たことがない。

そして今では二人で一緒にいる場面もよく目にするようになった。

犬と猫の間にはきっと言葉なんて存在しない。

それでもこうやって家族のように親しくなれるのかと思うと、無闇に殺し合いをしている人間の方が下等な生物であると思わざるをえない。

太陽の誕生日。

猫の太陽は生まれてから3ヶ月か4ヶ月の頃に家の庭に捨てられていた。

あれは10月1日だったので、7月10日を太陽の誕生日にした。

太陽のためにスーパーで美味しそうなチュールを買ってきてあげた。

なぜ10日にしたのかというと、僕の父の誕生日であり命日だったから。

同じ日にしておけば、うっかり忘れることもない。

父はお酒好きで最後まで飲み通しで70歳で逝ってしまったのだけど、

生きていたらもっともっと話したいことがあったのにと思う。

父のことを思い出しながら太陽を撫でてみる。

もう2度と父には触れることさえできないのが寂しい。

早起きな太陽

猫の太陽はとても早起き。

朝4時ころから騒ぎ出すこともあるけど、だいたい今は5時すぎには起きて騒ぎ出す。

ベッドから起きてキッチンの方で鳴き出したり、テーブルの上に上がって叫び出したり、時々僕やKは怒って太陽を捕まえに行っては、またベッドの中に連れ戻すのだけど、すぐにまた外に出て走り回ったりし始める。

猫は夜行性なのか、朝方なのかわからないけど、もう少しせめて6時くらいまで静かにしていてほしいと思う。

でも、猫はやってはいけないことを教え込もうとしても絶対に教え込むことはできない。

猫とクラスということは、家の中に自由気ままな野生動物が一緒に暮らしているということなのだ。

愛と安らぎと笑い。

太陽は、昨年の10月倉庫の裏の塀のところで鳴いていた。

小さな茶トラ猫がいたのでどこか他のところに行って欲しくて追い立てたのだけど、逃げることなくむしろ母屋の縁側の外に来て鳴き続けた。

太陽はたぶん家で飼われていたのだと思う。僕達にすり寄り甘えてくるのだ。しょうがなく家の中に入れて海が昔使っていたケージを組み立て中に入れた。

最初は食事はアグレッシブだし捨て猫のような野生味があったけど、一緒に暮らすうちに太陽はどんどん変わっていった。

今では僕たちの枕に丸まったり身体をピタッとつけて寝ているし、ソファにいても床にいてもすぐにそばに来て身体をつけて甘えてくる。

頭や顔を撫でてあげるとゴロゴロと音を立てて喜ぶ。猫は気持ちがいい時やリラックスしている時にゴロゴロ音を立てる。

トイレにいくとついてきて、中に入ってしばらくすると今度は「どこに行っちゃったの?」といった感じに鳴き出す。

トイレから出てくると安心したように身体を擦り付けてくる。

動物が生きていく上で一番大切なものは、食糧や水だ。

そして、同じように誰かに教えられたものではなく、彼らが自然と求めるものは、愛情なのだと思う。

親や兄妹、家族から愛情をたっぷりと与えられ見守られながらすくすく成長していく。

そして、誰に教えられたわけでもなく、僕たちに愛情を返してくれる。

太陽は時々寝ている僕の髪を舐めたり、顔を舐めることがある。顔を舐められた時は紙やすりで顔を擦られるような違和感に驚いてしまうのだけど、太陽からすれば愛情の表現なのだ。

この、3キロしかない(家に拾った当時は1.6キロ)愛すべき動物を、人間は簡単に捨ててしまう。

毎日毎日僕たちに愛と安らぎと笑いを与えてくれる宝物に気づかなかったなんて、かわいそうな人間だ。

海と太陽。

海と太陽を見ていると飽きずに眺めていられる。

海は大型犬のスタンダードプードルで、熱海にいる頃に奈良のブリーダーさんから分けていただいた。

そして宮古島に移住して、海が2年経って成犬になる頃にうちの庭に子猫の太陽が捨てられていた。

太陽ははじめTNRという方法で外で自由に過ごさせて餌だけあげようと思っていたところ、人に飼われていたようで僕たちの家のまえから離れずに泣き続けていた。

見るに見かねて家に入れてあげ、海との相性を見てみると海はやさしい犬なので太陽のことを敵視することもなく一緒に暮らすようになった。

海は太陽のことを弟分のように思っているみたいで、小さな頭をカポッと丸呑みするように咥え込むことがあるけど、決して本気で噛んでいるのではなく、ふんわりと包み込んでいるといった感じ。

それは母犬が子犬に見せる仕草のようなのだけど、太陽は太陽で気が強く、海に服従することはしない。

太陽の方から寝ている海にちょっかいを出してふたりで追いかけっこをしたりしている。

ふたりは全然違う動物で言葉も違うだろうし表現も全く違うのだけど、どこかでお互いを愛し守りあっているのがわかるのだ。

犬と猫がいる生活がこんなに幸福だとは、まったく予想もしなかったな。

動物のいる暮らし。

海が家に来てから2年と少し経つ。

太陽が庭で鳴いているのを家の中に入れてから3ヶ月以上経った。

犬や猫が家に来てから、僕たちの暮らしは本当に忙しくなったように思う。

海は1日に2回、外に散歩に行く。一回だいたい45分間くらい。雨が降っていても休まずに外に連れて行ってあげる。

ご飯は朝晩2回で、それぞれ体調を見ながら量は加減する。

毎日気になるのは、便がきちんとした硬さかどうかだ。

立派なうんちが出ると僕たちもとてもうれしいものだ。

犬も猫も、一緒に暮らすにはたくさん手間がかかるし、旅行にも行けないし、ご飯代や病院代でお金もかかるし病気をしたらかわいそうでたまらない。

でもそれをしてでも動物と暮らすことで感じられる幸福感は、何物にも変えることはできないと思える。

少し買い物に行っていて帰ってきた時に玄関でうれしそうに迎えてくれる海を見ると、毎回のことだけど泣きたくなるのだ。

そのまっすぐな愛情は、人生の中で僕が得た最も尊く美しいもののひとつだ。

猫はテレビ好き。

猫の太陽はパソコンやテレビ画面をよく見ている。

海も映像に犬が出ていると興味津々で見ることはあるけど、太陽はどんな映像でも興味があるみたい。

時々映像の世界があるのではないかと思うのか、パソコンの裏側に回って探しているさまはとてもかわいい。

裏側に何もないことがわかると、また表に出てきて首を傾げながらパソコンを覗いているのだ。

猫のしつけ

犬とは違って、猫にはしつけは出来ないものなのかもしれない。

猫はなんというか、野生動物を家で飼っているようなものだ。

ソファで爪を砥いだり、キッチンのコンロに登ったり、iPhoneの充電器の線を齧ったり、スウェットの紐に飛びついて来たり、自分がその瞬間興味のあるものに好奇心のままに行動を起こす。

その場でそれはしてはいけないと叱っても、全く学ぶことはないと言える。少ししたらまた同じことを繰り返すからだ。

夜にシンクやコンロに飛び乗ったり、洗ったフライパンを舐めるので気になり、テープを上がって欲しくないところに貼ってみた。

暗闇の中テープが身体に巻き付いて慌てて降りたのがわかった。

猫と暮らしていくことは、これから先もこの猫の好奇心との戦いというか、共存なのかなと思う。

犬は何万年と人間と一緒に暮らして来た中で人間との親密な関係を築くことに成功したのだろう。

猫は家族というよりも、ただ同じ空間を共有しているに過ぎない感じがする。

太陽の狩り。

猫の太陽を時々庭に放って遊ばせてあげるのだけど、今日庭に放ってしばらくしてから窓を開けたら、口に何か咥えていた。

よく見ると、鳥なのかネズミなのか毛があったので、僕は思わず叫んだのだ。

「ぎゃー!太陽が何か咥えてる!」

Kが飛んで来て太陽を掴んで外に出した。

それからなんとか口から獲物を放そうとするのだけど、太陽は獲物は決して離すまいとして食いしばっている。

見ると、雛鳥のような毛ですでに死んでしまったのか身体はぐったりとうなだれたまま。

手袋をして口を開けさせてなんとか雛鳥を放してから、死体をKが庭に埋めてくれた。

これからまた同じ様なことが起こったら恐ろしすぎるので、今後はしばらく外には出さないようにするつもり。

太陽の目

猫の太陽が右目を細めているのでとうかしたかと心配になり、動物病院に連れて行った。

診断は「結膜炎」とのこと。

毎日庭に遊びに出かけるので何か菌をもらって来たのかも知れない。

眼薬を指してあげたらすぐに治って来てホッとした。

動物は話すことができないからどこが痛いのかも言えずにかわいそうに思う。

太陽にも早く元気になって欲しい。