素敵な成功者。

今年も、台湾パレードの季節がやってきた。
10月最後の週末は、アジア最大およそ8万人とも言われる台湾パレードが台北で行われる。
僕は、はじめて台湾に行った年から、毎年欠かさず台湾パレードの時期に台北を訪れている。
このところ毎年恒例になっているのだけど、東京レインボープライドのみんなで集まってパレードに参加するのだ。
その時にみんなが着るTシャツのデザインを僕が手伝わせていただいているのだけど、今年は予算の都合上、Tシャツを作ることは出来ない予定だった。それが急遽、ビームスがご協力してくださることになり、Tシャツを作ることが出来ることになった。
土曜日に連絡があり、休み明けの火曜日にビームスで打ち合わせに。その時にはTシャツのデザインをお見せしながら、彼らに相談するということに。
休み中に家であれこれ考え、デザインを起こし、火曜日の朝早くデザイナーに説明して夕方の打ち合わせに間に合わせた。
ビームスの方々も快くデザインを気に入ってくださり、ホッと胸を撫で下ろしたところ、社長に呼ばれ社長室へ通された。
「なんて自由な空気が流れる社長室だろう…」
温かな笑顔と僕たちへの心配りに、僕たちの胸は熱くなり、世の中にはこんなに素敵な成功者がいるのか…とうれしくなった。
はじめは僕と同じ会社に勤めた社長の人生は、はたから見ると物凄いサクセスストーリーだろう。
こんな風に、世の中にはスイスイと自分の人生を膨らませていく人がいるのだ。

身近なロミオとジュリエット。

友人というか、弟のように思えるFが、5年以上つきあっている彼女のご両親と食事をすることになり、急遽援軍としてその食事会に参戦した。
なぜ参戦なのかというと、Fは彼女とつきあう前から彼女のご両親とは仲良くさせてもらっていたのだけど、実際に彼女とつきあいはじめたことを知った時から、彼女のご両親は娘とFとの恋愛を決して許さなかったのだった。
その間、Fは直接会ってどんなに彼女をたいせつに思っているのかを直訴したり、Fのご両親まで出て来て彼女のご両親と会ったり、友人を連れて会いに行ったり、ご両親に交際を認めてもらうために、それこそあの手この手と涙ぐましいまでの努力を続けて来たFだった。
しばらくしたのち、お父様は少しずつFを受け入れはじめたような兆候を見せ始めたのだけど、お母様は頑なにFとの交際を認めず、Fの存在すら目に入らないかのような状態が5年経った後も続いていたのだった。
お母様が娘の交際を許さなかった原因は、
Fが、FtMだからだろう。
恐らく、セクシュアルマイノリティの存在など身近に感じたこともなかったであろうお母様には、まさか、自分の可愛がって育ててきた1人娘が、トランスジェンダーと交際をするなんて考えもしなかったのだ。
僕たち周りの友人たちは、あんなに仲良く愛し合っているように見えるお似合いのFカップルを、なんとしてでもご両親に認めて欲しくて、まるで、『ロミオとジュリエット』を応援するかの様な気持ちでいたのだ。
5年間のお母様の無視のような状態が過ぎ、この先も許されることはないかに見えた矢先、先にニューヨークに訪れていたFと、娘さん一家は旅先のニューヨークで会うことになった。
そこでなんと不思議なことに、お母様の態度がころっと変わったのだった。
旅先の開放感、人生にはなんでも起こりえるというポジティブな空気がニューヨークにはあったのかもしれないし、見るに見かねた神様が、Fにそっとギフトを贈ってくれたのかもしれない。
そんなことがあり、東京へ帰ってきてしばらくしたのち、娘さんのご両親とFとの食事が急遽決まったのだ。(そこへ、なぜか、僕と妹のGが隣の席で偶然ワインを飲んでいるという設定…)
実際にお会いしたお父様は、とても知的な方で素敵な人だった。
そして、アーティストのように情熱的なお母様も、とても華やかで楽しい人だった。
何よりも僕が一番うれしかったことは、緊張しながらも、幸福そうに顔をほころばせていたFを見守ることが出来たことだ。
Fと彼女の笑顔を見ながら、僕たちまでこの上なく幸福な気持ちに包まれたのだった。

シーモアさんと、大人のための人生入門

俳優のイーサン・ホークが、実は舞台に立つこと自体が恐怖症だったことがあるという。
そんな時に、84歳のピアノの先生シーモアさんに出会った。
「天才ピアニストというほどに、かつては人々に評価されたシーモアさんが、自分のキャリアをすべて捨てて、今度は人にピアノを教える人になったのは、一体どうしてなんだろう…」
そんな風に思いながら映画を見ていたのだけど、見ているうちに、これは、『本当の自分のやるべき仕事を見つけた人の話』なのだとわかったのだ。
僕をはじめほとんど多くの人が、自分自身や自分の本当にやるべき仕事を見つけられず、探し続けているうちに一生を終えてしまうのではないだろうか?
『愛』というものがあるとしたら、このシーモアさんは、まさしく『愛』そのもののように感じられた。
やさしく、あたたかく、生徒さんにピアノを教えているように見えて、生徒さんをやさしく包み込みながら、本来のあるべき姿に近づけるように、そっと寄り添っている愛そのものように見えた。
ひとりのピアノ教師を追いかけた、心に残るドキュメンタリー映画。
いつか、シーモアさんに実際に会いたいな。会ったらぎゅっとハグをしたいな。
★シーモアさんと、大人のための人生入門http://www.uplink.co.jp/seymour/

人間の値打ち

イタリアのアカデミー賞と言われる『ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞を7部門受賞したという映画『人間の値打ち』が、ル・シネマではじまった。
貴族で大金持ちの一家と、中流家庭の一家、金持ちの息子と中流階の娘が高校で恋愛関係にあり、2つの家族には接点がある。
金持ちの主人は、金融でお金を儲けることしか頭になく、奥さんは暇を持て余し、自分の存在意義さえ見つけられずにいる。
中流家庭の旦那さんは、地味な不動産の仕事ではなく、株で一発儲けたいと目論んでいる。
中流の娘は、新しい恋愛が始まり、金持ちの息子との恋愛を終わらせたいと思っている。
そんなある夜、金持ちの家のそばで、人命に関わる交通事故が起きる。その交通事故を巡って、登場人物たちの視点で、同じ時間が何度も描き出される。
中流の旦那が体験している現実。
金持ちの奥さんが体験している現実。
中流の娘が体験している現実。
目の前で起こっている出来事は、その人の立場や捉え方によって、こうも違うものなのかということが、見事な演出によって浮かび上がる。
上質なサスペンスを見ているうちに目が離せなくなり、最後に『人間の値打ち』というタイトルの意味が明かされる。
見事な俳優たちの演技、先を読ませない脚本、息をつかせぬ演出。イタリア映画界のレベルがハッキリとわかる一本。
★人間の値打ちhttp://neuchi-movie.com/

満月

蛸と空心菜のチャンプルー

ポテトサラダアーサーの包み揚げ

ヤゲンの唐揚げ

石垣島の素敵な雑貨店『KAYAK』のオーナーが、とても美味しい粉物屋さんがあるというので、最後の夕食に行ってみた。
晩ごはんのお店は、石垣島に行くことが決まった時点ですべておさえていたのだけど、最後の日だけ、何も決めずにいたのだ。
店は、石垣島の美崎町からすぐの場所にあり、それほど広くない店内は、旦那さんと奥さんふたりだけで切り盛りしている。
メニューは、沖縄らし料理が並び、締めに鉄板焼きを食べられる感じ。沖縄料理ばかりに飽きて来た時には丁度いい感じの内容だ。
島らっきょうを頬張りながら、ポテトサラダのアーサー揚げ、ヤゲンの唐揚げ、蛸と空心菜のチャンプルーをいただく。
大将は、大阪出身で、奥さんは山形出身。物凄く感じのいいご夫婦で、気さくになんでも話しかけてくれる。
天兵焼きには、中にチーズが入っていたり、普通の鉄板焼き屋さんとは一味違って味わい深い。
最後になんでも入りの満月焼きをいただいて、石垣島に帰って来たら、またぜひ食べに来たいと思ったのだ。
★鉄板居酒屋 満月
0980-87-6338
沖縄県石垣市大川17-2
https://tabelog.com/okinawa/A4705/A470501/47017095/

とうふの比嘉

畑の中にあるお店

ゆし豆腐セットに目玉焼き

オープンな店内

石垣島の友人に勧められていた『とうふの比嘉』に、今回の旅行でやっと行くことが出来た。
『とうふの比嘉』は、ちょっと不安になるくらい町から離れていて、なんと畑の中にある。
沖縄らしい開放感あふれるお店は、常に満員に人が入っていて、店員さんも次から次へとお料理を運んでいる。
相席で座り、オススメの『ゆし豆腐セット』をいただく。島豆腐の味は濃く、お酒を飲みすぎた翌朝でも身体の奥深くに沁みる美味しさだ。
豆乳は、昔近所にあったお豆腐屋さんの匂いがした。
僕たちが食べている間も、次から次へとお客さんは途絶えることなく、老舗豆腐屋さんを目指して人はやってくる。
全部食べ終わっても、スッキリとしているのは、お料理に無駄なものが一切使われていないからだろう。
石垣島に来たら、ホテルの朝食なんかではなく、一度はこの老舗のお豆腐屋さんの朝食を味わってみて欲しい。
★とうふの比嘉
0980-82-4806
沖縄県石垣市字石垣570
https://tabelog.com/okinawa/A4705/A470501/47001361/

和食こんどう

イワシクジラのユッケ

甘鯛と松茸のお吸い物

鰆のマヨネーズ風味

久しぶりに、四谷三丁目にある『和食こんどう』へ。
すっかり人気店になってしまった『和食こんどう』のお料理は、秋の香りがたっぷりと詰まった内容だった。
焼いたカマスにいくらと菊の花を添えた土佐酢のジュレは酸味があり食欲を誘う。
イワシクジラのユッケは、生のレバーを食べているようなコクがある。
お造りは、大分の鯛、長崎のマグロ、五島のシロイカ。どれも鮮度よく素晴らしい。
お吸い物は、甘鯛と松茸、アワの練り物。
鰆をマヨネーズ風味で焼いたものと、石川の蓮根。
飛騨牛のビーフシチュー味噌仕立て。
シマエビと百合根の天ぷら。
松茸と栗のごはん、キノコの吸い物。
さつまいものプリン。
9品で9千円。東京にも、こんなに素敵な和食店があることに感謝。
★和食 こんどう
03-6457-8778
東京都新宿区荒木町8 ネモトビル 1F
https://tabelog.com/tokyo/A1309/A130903/13150477/

石垣島の素敵なお店。

カヤックの蜂蜜

和井津

石垣島のゲイバー『玉屋』で教えていただいた『KAYAK カヤック』は、美崎町からすぐの商店街を少し入った通りにある。昼間はオーナー家族が店番をしていて、夜はオーナーがいてとても親切に対応してくれる。
カヤックにある器は、ガラスだったり焼物だったり、漆だったりするのだけど、どれも沖縄在住の作家によるもの。
グラフィカルなTシャツは、オーナーのパートナーがデザインしたものだという。水牛のTシャツやミンサー織りのイツヨの文様からヒントを得た5と4なTシャツなど、どれも洒落ている。
他にも、いい香りのアロマオイルや石鹸、リップバームなど、どれもゲイ好みの商品が揃る。
「石垣島はちみつ」は、無添加、非加熱であり石垣島内だけの限定販売。味見をしてみたら、すっと口の中にその自然な甘さが広がった。
オーナーは、東京浅草出身とのこと。「ご飯はどこに食べに行かれるんですか?」と聞かれ、今日は特に決めてないと答えると、紙を広げてサラサラとお店の周りのオススメの飲食店を書いて紹介してくれた。
石垣島に行ったら、必ず立ち寄りたいお店がまた出来た。
★KAYAKhttp://okinawaclip.com/ja/detail/1043
カヤックに教えていただいた素敵な喫茶店が、『和井津』。カヤックのオーナー曰く、「石垣島で雨の日には、この和井津に行くととってもいい時間が過ごせるんですよ…」とのこと。
和井津は、カヤックからも歩いてすぐにあり古民家を改造したお店。
オーナーは茨城県出身なのだけど、石垣島を好きになり、リタイアして石垣島に移り住んだ。
カウンターに座ると、話好きのオーナーが相手をしてくれる。
ずっとタイの島々やチェンマイ、バリ島なんかが好きで、休みのたびに旅行に行っていたけど、終の住処を探しはじめて、ハワイでもない、タイでもない、沖縄本島でもない…と旅行をするうちに、石垣島に降り立ち、まるで恋をしたように好きになったらしい。
今では、茨城に残してきた家にも帰らず、のんびりとした喫茶店で美味しいコーヒーをゆっくりと淹れながら、石垣島で暮らしている。
この喫茶店にいると、生きていく上で、自分にとって何がたいせつなのだろうと、ふと考えさせられる。
オーナーの語る人生は、誰か他の人の人生ではなく、自分の人生のようにも感じられたのだ。
★和井津http://waidu.jp

やまもと

ねぎタン

焼きしゃぶ

ニコたん

石垣島には、石垣牛がある。
石垣牛とは、石垣島の豊かな自然の中で育った牛たちで、昔は神戸や松坂や近江などブランド牛の産地に送られていた牛。
ほんの数年前に、石垣牛として自ら名乗りを上げたところ、日本一の名を欲しいままにする事態となったのだった。今ではA5などのお肉はそのまま東京や関西の料亭に行くほどの人気を誇っている。
「石垣島に行くことが決まったら、その時点で『やまもと』を予約しなさい」
それほどまでに人気があり予約困難なお店として知られる『やまもと』に、今回は行くことができた。
店内は、その1/4ほどがオープンのキッチンで、大将がちょっと難しい顔をしている。その横で、本当は綺麗なんだけど、眉間に皺を寄せている50代のおばさんがいて、これまた難しい顔をしながら、スタッフの動向をにらみきかせている。
有名な『焼きしゃぶ』は、絶対頼むべき一品。肉が柔らかく、しゃぶしゃぶするように軽く火で炙ったら、そのままポン酢でいただく。
『ニコタン』は、タンの煮込み。甘くなくすっきりとした煮込み料理で、冷たいけどお肉自体は柔らかく味が沁みている。
『上ロース』や『ハラミ』も、しっかりとして食べ応えがある。
『豚トロ』や『塩バラ』は、野菜で包んで味噌を付けて食べると全品の味だった。
今度また石垣島に行くとしても、また予約をして行きたいなあ・・・とさえ思わせる、素晴らしい焼肉店。
★炭火焼肉 やまもと
0980-83-5641
沖縄県石垣市浜崎町2-5-18
https://tabelog.com/okinawa/A4705/A470501/47001010/

鳩間島へ。

誰もいない海

黒いのはアオリイカ

小学校

西表島に上原港という港があり、そのすぐ上に『鳩間島』がある。
島は小さく、一周するのに歩いて1時間とかからないくらい。
人口は43人だそうだ。
上原港は外海に面しているため、風が強い日はすぐに船が欠航になってしまう。石垣島からは一日に2本くらいしかない便だったので、日帰りで行って帰ってこようと思っても、海の荒れ具合によっては帰っては来られなくなってしまう。
実は今回、台風17号がやっと去ったと思いきや、すぐに台風18号が発生した。そんなこともあり、台風が近づく日曜日に離島に行けるのだろうかと台風の進路を見ながら気がかりだったのだが、日曜日も最高の天気となり、海は凪いだまま、鳩間島行きの船に乗った。
石垣島から西表島の上原港までは45分。そこから鳩間島までは10分程度。小さな港に近づくと、今まで深い青みをたたえていた海は、明るい青色で輝きはじめた。
港に降り立つと、両側の海にたくさんの小魚が群れている。それを目当てに魚釣りをする島の人たち。それになんと、ぼんやりと黒い物体が浮いているかと思ったら、アオリイカが何尾もぷかぷかと浮いていて、島人はそれを躍起になって捕ろうとしていた。
さて、ビーチを目指す前に、飲み物を買おうとするのだけど、船着き場には自動販売機すらないのだ。そこで、民宿を地図で探し、とぼとぼ向かうと、オープンの民宿では朝から酒盛りが行われていて、島のおじさんが僕たちに声をかけた。
おじさん「生ビールがあるから飲んでく?」
僕「いや、今は結構です。あとでランチを食べたいんですけど、何かありますか?」
おじさん「カレーくらいだったら出せるから、12時過ぎにおいでー」
ビーチには人っ子一人なく、海は限りなく透明で、僕たちは飽きることなくシュノーケルを楽しんだ。
今までに離島は、『波照間島』、『竹富島』、『鳩間島』と行った僕たちは、どの島にもそれぞれの魅力があるけど、この『鳩間島』をとたんに好きになってしまった。
東京とはまるっきり反対の何もない島。そこには、とびきり美しい海と、広い空、そしてのんびりとした島の人たちがいました。