東京と地方の格差。

『OUT IN JAPAN』の大阪撮影のために夜から大阪入りをした。
先月、大阪での撮影が決まった後に、僕は一度大阪のゲイバーを何軒か訪れて、『OUT I N JAPAN』のパンフレットを置かせてもらっていたのだけど、その後数名の方から応募があり、撮影へと繋がったのだった。
今回僕は、あるゲイバーのマスターに、出てもらえないかと交渉をしていた。
そして、ひとりは出演してくれることになったのだけど、もう一人のマスターからは、やはりカミングアウトすることは難しいと聞いていたのだけど、撮影を前にもう一度直接そのバーに行ってお願いしてみることに。
マスター「いやあ、僕は堂山で店をやっていても、実家や親戚にはただの飲食店をやっているとしか言ってないんですよ。やっぱりゲイバーとは言えなくて…」
マスター「それに、甥っ子たちにはどうしても知られたくないんです…東京と大阪では、やっぱり状況が全然違うんですよ」
これは最近、LGBTの話題の中でも様々なところで耳にする言葉だ。
「東京のキラキラLGBTと地方のLGBTたちとの差が大き過ぎる」
今年のようにLGBTという言葉が、これほどこの国で話題に登ったのは、はじめてのことだろう。
勢いが強ければ強いほど、今までは目に見えにくかった問題も様々なところで表に浮き上がってきたように思える。
セクシュアルマイノリティーにとってより暮らしやすい世の中になるために、自分たちが出来ることを身近なところで少しずつ自らやっていくほかはないのだ。

台湾から、E&Rカップルがやってきた。

Eは43歳、Rは36歳、仲良しの台湾人カップルが来日したので、妹のGや弟のFと一緒にイロドリでご飯を食べた。
ふたりのことは前にもここに書いたのだけど、彼らは結局1年間新宿にマンションを借りることにしたようで、しょっちゅう日本に遊びに来るようになった。
彼らは『台湾パレード』での、日本人と台湾人の架け橋のような役目もしてくれていて、日台交流のパーティーや観光ツアーも企画してくれている。
僕自身は今まで、6回くらい連続で台湾パレードに参加していたので、もうそろそろいいかなと思い、今年は台湾には行かないつもりでいた。
でも話をしているうちにふたりが熱心に誘ってくるのと、GやFが一緒に行きましょうと騒ぐのと、イロドリスタッフも台湾に行くというので、急に台湾に行こうかどうしようかぐらぐら迷いはじめることに・・・。
今回ふたりは、この週末東京でゆっくりと滞在するだけのつもりだったのだけど、僕たちが『OUT IN JAPAN』の撮影と『関西パレード』のために大阪に行くことを知り、一緒に大阪にも行こうかなあ・・・という話にまでなってしまった。
隣のテーブルでは、『OUTIN JAPAN ♯002』で撮影に参加した人たちがFacebookで自然に繋がり、楽しそうに会話をしていて、しばらくすると、近くの出版社の編集長やドラァグのEまでがゆるやかにイロドリに集まって来た。
イロドリで、人と人が偶然のようにどんどん繋がってゆく様子を目の当たりにしながら、「本当にこの場所を作ってよかったなあ・・・」としみじみと思える夜だった。
★E&Rカップルhttp://jingumae.petit.cc/banana/2356594
辛い料理など、秋の新メニューが続々追加されました!
★irodorihttp://irodori-newcanvas.com

気になるお店。

千駄ヶ谷小学校下から、北参道の駅に向かう道の途中に、とても気になる店がある。
正確に言うと、気になるマンションの一室とでも言おうか。
外から見えるのは、明るくて綺麗なキッチンだけで、いつも、二人の若い男の人が、何か料理を作っているのだ。
そして、僕が気になるのは、彼らがいつもとても楽しそうに料理を作っているように見えるから。
客席が見えるわけでもなく、看板が出ているわけでもない。周りを見回しても、レストランが隣にあるわけではなく、かといって仕出しを作っているような、切羽詰まった感じもないのだ。
先日店の前を通ったら、珍しく三人の若い男の人が料理を作っているのが見えた。
見ていると、メガネをかけた男の人が、楽しそうに話しながら、ふと左手の甲にソースのようなものを載せてペロリと味見をした。
楽しそうな顔が、ほんの一瞬だけマジになったのを見て、思わずグッときた。
看板も何もないので、いきなり「ここはどんな店なんですか?」と聞くこともできず、おじさんはひとり、想像をたくましくしている…。

A-LAND

二丁目で、僕の行く店は本当に限られている。ぺんぺん草、タックス・ノット(正確には三丁目)、そしてBridgeだけだ。それ以外の店にはほとんど行くことはない。
どの店も僕にとってはたいせつなお店なのだけど、どこも馴染みのお客さんが僕と一緒に年をとってきていて、ほっとする安心感はあるものの、イマイチ新鮮味には欠けるのだ。
時々は、ちょっとドキドキしたいじゃないですか?
そんなある日、ムーンが、「とてもいい店があるから、行ってみない?」
と言うので行ってみたら、二丁目にしてはちょっとびっくりするくらい広くて、若い子ちゃんが沢山いて驚いた。
場所は、二丁目の仲通りの真ん中の交差点に第七天香ビルがある。店はそのビルの後ろ側のビルで、外国人で賑わっているAiiRO CAFEの隣のビルと言えばわかりやすいだろうか。
エレベーターがちょっと不安になるくらい小さくて古い感じなのだが、店はスッキリとしていて九州男に近いくらい大きい。
ワインもちゃんと美味しいものがあるのもうれしいし、週末に行くのがちょっと楽しみなお店なのです。
★A-LANDhttps://mobile.twitter.com/a_land0612

パートナーがいるということ。

晴天に恵まれた日曜日、朝起きてにゅうめんと出汁巻玉子を作って食べたあと、Kと一緒に歩いて新宿御苑に向かった。
新宿御苑は、実は千駄ヶ谷駅の近くの千駄ヶ谷門から入るととても空いている。
芝生には家族連れやデートや友人同士が連れ立ってピクニックをしていた。
「この木は大きいねえ…樹齢どれくらいなんだろ?」
「こないだ来た時は八重桜が咲いていたね…」
「あ、スッポンがいる!」
何もイベントなどなく、買い物や、贅沢などしなくても、こうして晴れた日に、公園をふたりで歩いているだけで、心は膨らみ満たされているのがわかる。
たとえどんなに外が嵐のように吹きすさんでいようとも、凍えるように寒かったとしても、世界中が皆敵だらけに思えたとしても、パートナーがいれば大丈夫。

鳥はな

絶品の鶏皮

ほわほわのつくね

花園神社の横を過ぎた辺り、明治通り沿いに薄汚れた焼き鳥屋『鳥はな』がある。
大将は、人生で色々なことを経験してきたんだろうなぁ…と思うような眼光の鋭い人。熊本出身らしい。そして、この大将にこの奥さんという感じのご夫婦でやっている。(見かけは一瞬怖いけど、とても感じのいいおふたり)
何を頼んでいいのかわからないので8本のコースを頼むと、一つ一つ丁寧に焼かれた鳥が出てくる。
中でも絶品は、皮。これは、他の焼き鳥屋さんでは味わったことのない驚くような美味しさ。普通の店ではありえないくらい煙が出るので、こんな皮はうちだけだよと大将は言っていた。
それと、つくねがほんわりと柔らかく美味しかった。
多分、こういう焼き鳥屋さんって、大阪なんかには沢山あるんだろうなあと思うけど、東京ではなかなか見当たらない。なんというか、店と屋台の中間の感じとでも言おうか。
創業30年を過ぎていて、場所柄歌舞伎町にいるような不思議なお客さんも次々に来店していた。
★鳥はな
03-3232-0947
東京都新宿区新宿5丁目18-18
http://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13058653/

Bridge 8周年、おめでとう!!!

ファンテーヌ…

友人Mがゲイバー『Bridgehttp://www.bar-bridge.com』を始めてから、あっと言う間に8年が経ったようだ。
昔は物凄いマッチョで、とてもモテたMは、その筋骨隆々でセクシーな体躯からか、『世界のお兄さん』と呼ばれていた。(笑)
その頃、僕はそれほど仲が良かった訳ではないのだけど、ミュージカル好きなMと偶然ニューヨークの劇場で、『サンセット大通り』を見ていた幕間でバッタリ出会ったこともある。
その場で食事に誘われたのを、僕がアッサリと断ったということが、今でも彼の常套句になっていて、時々思い出しては僕を責めるのだ。
8周年パーティーは、ゲストにエスムラルダを迎え、スタッフたちによる踊りあり、歌ありで、本当に楽しませていただいた。
中でも、『レミゼラブル』の輪唱は、それはそれは見事で、吹き出すように笑ってしまった。
思えば、この『Bridge』で、本当に沢山のかけがえのない人たちに出会って来た。
友人だけでなく、弟や妹に娘まで、いつ行っても誰かしら知り合いに会える、僕にとってはなくてはならないホームバーだ。
Bridge 8周年、おめでとう!
そして、8周年、ありがとう。

Gloria Estefan

その昔、僕がまだ高校生だった頃に兄が南米でコンサートに行って感動して帰ってきて、僕ははじめてグロリアエステファンのことを知った。
80年代にマイアミサウンドマシーンというグループで活躍していたグロリアエステファンは、その後独立してアメリカを代表する女性シンガーとなったのだけど、大きな交通事故に遭い、奇跡の生還を遂げた。
その後、DIVAというコンサートでホイットニーヒューストンなどと一緒に出て歌ったり、シナトラとのデュエットなどでも活躍していたのだけど、年をとってからか、高音があまり出なくなってしまい、残念に思っている。
このスペイン語のアルバム『mi tierra』をはじめて聴いた時は、彼女の母国語であるスペイン語の響きの美しさに圧倒されたものだ。
今でもこのアルバムを聴くと、まだ行ったことのないキューバに想いを馳せ、いつか行ってみたいと思うのだ。
★con los anos que me quedan http://www.youtube.com/watch?v=l6LjNOYvhMk&sns=em

いつも僕を守っていてくれるもの。

25年くらい前の僕がまだ大学生だった頃、毎日のようにクルマに乗っていた。
そして、遠出をした日に、真夜中にひとりで高速を飛ばしながら帰って来る時に、あまりにも眠くて運転をしながら寝てしまったことがある。それも、何度も。
二丁目に週末のたびによく遊びに行っていたのだけど、その頃は二丁目の仲通りにクルマを駐車出来るようになっていて、沢山の人がクルマで二丁目に遊びに来ていた。
朝起きた時にハッと我に帰り、「いったい自分はどうやって家まで帰って来たのだろう…」と思ったことが何度もあった。
「どうやって自分が無傷のまま家まで帰って来られたのだろう・・・」と思うと、何者かが僕を守ってくれていたとしか思えないのだ。
僕は無宗教だし、神様も霊も見たことがない。それでも、46年間こうして無事に生きてこられたのは、何者かが僕をいつも守っていてくれたからだと思える。
そして、何か先行きが不安に思えても、その存在を思い出すことが出来たら、きっとなんとかなると思えるのだ。

OUT IN JAPAN #002

先日東京で撮影がおこなわれた、OUT IN JAPAN #002のホームページが公開された。
この企画をして、みんなで制作していて、いちばんよかったと思えることは、自分とはまた違ったゲイの人たちや、様々なセクシュアリティの人たちに出会えること。
ひとくくりにセクシュアルマイノリティといっても、虹色のグラデーションのごとく多様であることを目の辺りにすることができる。
そこには想像もできなかった苦悩や、痛みを感じるほどの大手術をした人、カミングアウトで家族と今もうまくいっていない人など、それぞれの境遇を知ることが出来る。
そして様々な人とお話をするうちに、たとえセクシュアリティは全然違ったとしても、何とも言えない不思議な仲間意識が芽生えているのを感じることが出来ることだ。
ぜひホームページを覗いていただきたいのだが、目をつぶっている写真はクリックすることにより、目が開いた写真に変わる。
そして、その人の名前、年齢、職業、セクシュアリティ、カミングアウトに関するその人のメッセージが出てくる仕組みになっている。
公開になった F t M の友人のページをここに添付させていただく。http://outinjapan.com/yasuki-nakamura/
僕はこれを読みながらランチを食べていたのだけど、
彼のお父さん、お母さんのことを思って、胸が熱くなった。
★OUT IN JAPANhttp://outinjapan.com