目に見える幸福。

天国というのがあるとしたら、こんなところかもしれないな…。
そんな風に思える結婚パーティーが、豊洲でおこなわれた。結婚したのは、『irodori』のシェフであるもっちゃんと、映像編集の仕事をしているらおちゃん。
ふたりの友人たち200名以上が、ふたりの好きな青色のものを身につけて集まった。
会場は、ところどころ笑いで包まれて、誰も彼も、何もかもが幸福そうに見えた。
もっちゃんも、らおちゃんも、彼らはふたりともストレートなのだけど、周りには沢山のセクシュアルマイノリティの友人たちがいて、セクシュアリティなど関係なくみんなが緩やかに繋がっているのだ。
ご両親もふたりに、セクシュアルマイノリティを含めた沢山の友人たちがいるのを目の当たりにして、とても喜んでいらっしゃった。
こんな時間が、ずっと続けばいいなあと、幸福をみんなで分かち合い、かみしめた。

SAANA JA OLLI

サーナ ヤ オッリは、フィンランドのデザインユニット。
この不思議なグラフィカルな文様を見た時に、「浴衣にしたら、かわいいかもしれませんね・・・」と口をついて出た言葉。
そんな一言が発端となり、僕の浴衣を作ってくださることに。(ありがたすぎる・・・)
先日、ここにも上げた墨田区の呉服屋さんに採寸に行き、この100%ヘンプ繊維という素材がどれくらい縮むのだろう・・・などと話し合いながら、やっとのことで出来上がった浴衣が、ついに家に到着したのです。
今年の夏は終わってしまったけど、来年の夏、この不思議な柄の浴衣を着ることを、今から楽しみにしている。
★SAANA JA OLLIhttp://www.ecomfort.jp/SHOP/101433/list.html

最後の昼餐。

料理をしながら読んだりしたので汚れてしまった

建築家である宮脇檀による軽やかなエッセイ。
60歳を迎えた時に、ゴルフ場の会員権がキャンセルになりお金が戻り、それと引き換えに手に入れた青山の広いバルコニー付きのマンションで暮らす日々が綴られている。
宮脇檀のエッセイは、インテリアや旅行や食べることが好きなら間違いなく好きになると思う。
中でもこのエッセイは、自分の家の設計から始まり、バルコニーの植物の選択から配置、週末のたびに繰り広げられる手作りの料理のパーティーと、季節が進むごとに彼と内縁の彼女が人生を謳歌している様子が伝わってくる。
イラストは彼女が描いていて、またそのイラストにさりげなく歌が詠まれているのだ。
僕は昔、この本を読んだ時にとても感動して、当時の恋人のMと何度も一緒にこの本を読んだのを思い出す。
イタリア人のように美しく生きることにこだわり、旅に生き、食を何よりも楽しみに生きた宮脇檀の生き方は、僕たちの心をがっちりとつかんだのだった。
残念ながら、宮脇檀は癌で亡くなってしまったのだけど、彼の遺した素晴らしいエッセイは、いつまでも僕のお気に入りで、晴れた週末なんかに取り出しては、懐かしく読み返している。
時々Mのことを思い出しながら。

消えてゆく記憶。

友人Mのお母さんは90歳。先日お見舞いに行った時には、僕のことさえもはやわからず、ここ数ヶ月でぐっと痴呆が進んだように思っていたのだけど、Mが数日前に会いに行っていた時は、百人一首の上の句を言えば、その続きをスラスラと答えていたそうだ。
僕の祖母も90歳を過ぎて痴呆になった時に、小学校で習ったのか唱歌だけは覚えていて、よく歌っていたのを思い出す。人には、ずっと忘れずに覚えていられるものがあるのだろう。
その友人Mと、5年前くらいだろうか、いつものようにニューヨークに一緒に行き、ついでにワシントンD.C.に二泊くらいで芝居を観に行ったことがあった。
その時にワシントンD.C.を案内してくれた韓国系アメリカ人のRが先日東京に遊びに来ていたのだけど、Rを連れてMの店『Bridge』に遊びに行ったのだけど、なんと、MはすっかりRのことを忘れてしまっていたのだった。
ご飯を食べて、ワシントンD.C.の観光名所を巡り、博物館にも行き、ゲイバーにも連れて行ってもらい、ホテルに帰ったらMがスマホを店に忘れていて、それを連絡するとRがわざわざ店に行って持って来てくれたのだった。
Mは、その一部始終を忘れていて、いくら説明しても思い出せないし、Rの恋人のアメリカ人のTのことも、まるで記憶にないようだった。(驚くことに、Mは観たミュージカル以外のことは全て忘れてしまっているみたい)
ここまで書いておいて、これではまるで、”Mはただの痴呆”のような話に見えるけど、そうではなくて、僕もよく考えてみると、ワシントンD.C.の旅行のことは所々うる覚えなのだ。
ホテルに豹柄のバスローブがあって、「女豹になれということか…」と思ったこととか、名所でもあるリンカーンの説明があるところや博物館は覚えている。
でも、5年前の旅の記憶を事細かに思い出せるかと言うと、全然思い出せないことの方が多いのだ。
人間は、毎瞬毎瞬目の前の出来事に触れているのだ。そのすべてを覚えていたら、恐らくすぐに気が狂ってしまうに違いない。(きっと思い出せないだけで、潜在意識の中には、経験したすべてがそっくりそのまま残っているのかもしれないのだけど)
でも、たとえ記憶の底から思い出すことが出来なくなってしまうとしても、旅に出たり、美味しいものを食べたり、誰かと笑ったり、様々な体験をするということは、僕たちにとっては宝物のように思える。
いつか時が経って記憶として蘇ることがなくなったとしても、体験しているその時は、僕たちはきっとキラキラと輝いているのだ。

ゲイの鑑。

ぺんぺん草で飲んでいたら、もう20年以上前からよく知っているTKが入って来た。
鼻息荒くTKが言うことには、これから家族会議をやるのだそうだ。
家族会議と言っても、TKは49歳くらいで年下39歳くらいのKYと二人暮らし。昔はTKのお母さんも一緒に暮らしていたから、お母さんも交えて何か話し合うのかなと思ったら、KYの長崎のお姉さんの息子27歳を春からしばらく預かっているのだとか。
その27歳の甥っ子の進路について、TKとKYと甥っ子の三人で話し合うらしい。
僕「いいなぁ、27歳なんて…年齢だけでイケるんだけど…」
TK「いやぁそれが、若い子なんて本当に臭いだけだということがよーくわかったわ。本当に死ぬほど臭いのよ…若い子の臭いがいいなんていう人の気がしれないわ!」
僕「それにしても、そんなに大きな子、何を話し合うことがあるの?」
TK「それが、海外に勉強に行きたいんだって言うのよ…それで、一度チャンスをあげてテスト受けさせたんだけど、6点取らなきゃいけないのに5点しかとれなくて…
あの子、馬鹿正直だから、勉強しなかったことも素直に言うし…」
僕「それで、KYはどんな感じなの?」
TK「KYは、私が甲高い声で散々わめき散らした後に、最後に出て来て一言言うのよ。まるでお父さんみたいに威厳を持って…
なんだか私が意地悪なお母さん役みたいになっちゃってんのよ!頭にくる!」
僕「もしかして、学費も出してあげるの?」
TK「どうせ私たちゲイなんて、自分だけ美味しいもの食って、旅行ばっかり行くくらいなんだから、ちょっとは家族のために何か出来たら…と思うのよ…
だいたいあんたも同じでしょう!美味しいもの食って、旅行ばっかりして…」
その臭い甥っ子が(笑)、ゲイのおじさんカップルと暮らしていること自体、ちょっと信じられないのだけど、ゲイのおじさんたちは甥っ子をなんとか海外に留学させてあげようと必死なところもなんだかまるで映画みたいだ。
TK「狭いところで三人で暮らしていてもう大変なのよ!私たちその子がいるからいちゃいちゃすることも出来ないし…」
僕「あんたたち、長くつきあってて、まだいちゃいちゃしてんの?気持ち悪い!」
そんな話をしながらみんなで大笑いしたのだけど、そんなことをしようとしているTKとKYカップルのことを、なんだかすごいなぁと思ったのです。
まさに、ゲイの鑑。

ゲンちゃん。

今から15年くらい前だろうか、二丁目の新千鳥街の中、ぺんぺん草の向かいに、伝説的なバー『GEN PAPA』があった。
狭い店内にムキムキやらガチムチ系の男たちが集まり、トイレの中は外国のゲイポルノ雑誌から取られたヌード写真が張り巡らされていた。
マスターはゲンちゃんで、身体を鍛えて、レザーやら、袖を切ったネルシャツやら、ゲイゲイしいコスチュームでお客さんの気分を盛り上げていた。
なんでGEN PAPAという風にパパがつくのかというと、ゲンちゃんは昔は女性と結婚していたことがあって、子どもがふたりいたから。
週末はあまりにも人気で、お客さんがぎゅうぎゅうになって入れない…なんていう状態のまま7年間営業をしたのち、ゲンちゃんが身体を壊したこともあり、閉店となったのだった。
そのゲンちゃんが、もう一度お店をはじめようと思い、身体を鍛え直していると聞いたのは、ここにも書いた少し前のこと。それからどうなったのかな…と思っていたら、『MAGMAG』という店で火曜日だけ、一人で入ることになったそうだ。
お店を覗くと、元気なゲンちゃんが迎えてくれた。
ゲンちゃんとは、その昔、僕が当時つきあっていたMと一緒に、修善寺や京都など、旅行に行ったことがある。当時の話を懐かしくしながら、今となっては亡くなってしまったMのことをふたりで思い出した。
大病を患ったゲンちゃんが、数年を経たのち、今こうしてもう一度お店をはじめようと思ったことが、僕にとってもとてもうれしいのだ。
人生、山あり谷ありだけど、またこうして内側から輝くようなゲンちゃんの姿を見ながら、お酒をゆっくりと傾けた。
★MAGMAG(MAG2と小さな2がサインになっている)新千鳥街。AiiRO CAFEの右側を入った通りに面した2階。http://magmagtokyo.web.fc2.com

2 Colori

バーニャカウダ

牛タンのボロネーゼ

2 coloriは、イタリア語で2色という意味だろうか。
神宮前三丁目のワタリウムの前を、熊野神社に抜ける道に入ってすぐ左側に出来たイタリアンは、かれこれ3年くらい経つそうだけど、なかなか訪れる機会がなく、やっとランチで入ることが出来た。
小さな入り口から階段を降りて行くと、25人くらい座れそうな隠れ家的なお店がある。この場所は昔、『青海』という和食屋さんだったのだけど、その後店が変わり、なかなか長続きせずに潰れていた場所だ。
『2 colori』の成功は、お肉屋さんを挟んで隣に2店舗目のワインを気軽に飲める店のオープンでも知っていた。それでいてなかなか店に入らなかったのは、僕自身がイタリアンにはかなり厳しいので、美味しくなかった時にとても残念な気分になるから。
千円でパスタ5種類の中から選ぶことが出来るランチは、周囲の会社の人たちにも人気なのか、男女問わず満席のように混んでいた。
パスタの前に蒸し野菜のバーニャカウダ的なものが運ばれてくる。これはニンニク臭くなく安心した。このバーニャカウダが、レタスの適当なグリーンサラダなんかよりもずっといいと思った。
牛タンのボロネーゼは、酸味が効いているため重た過ぎず食べやすい味だ。甘くなくて安心した(日本でこの手のミートソースを頼むと、砂糖が入っていることが多い)。
スパゲティも、茹で加減もいい感じで、お客さんがまた来ようと思えるのがわかる気がした。
軽く美味しいパスタを食べたいな…
なんて時に、この店を利用するのはいいかもしれない。
大袈裟な食事のコースになってしまうイタリアンが多い中、気軽に入れて、好きなものを頼めて、値段が手頃な設定なのもありがたい。今度は夜に友人と来たいな。
★トラットリア ドゥエ・コローリ
03-6434-5226
東京都渋谷区神宮前3-41-2 岡本ビル B1F
http://tabelog.com/tokyo/A1306/A130603/13147345/

パンセクシュアルって知ってますか?

今回、『OUT IN JAPAN #003 in OSAKA』の撮影で何気に多く見られたセクシュアリティは、『パンセクシュアル』だった。
『パンセクシュアル』とは、男女の性別にこだわらず、いろいろなセクシュアリティに恋愛感情を抱いたり、性的欲求を抱く人のこと。(ちなみに『バイセクシュアル』は、男か女という二極のどちらもという意味なので、パンセクシュアルとは違う)
マイリーサイラスがパンセクシュアルを公言してから、若い世代にはかなり広まった言葉のようだが、僕も最近までパンセクシュアルの人を知らなかった。
セクシュアルマイノリティのことを知り出すと、その新たな多様性に気づき出し、どんどん新たな驚きが増えてくる。
『Xジェンダー』というのも、最近グッと身の回りに増えて来ているのだけど、Xジェンダーとは、男女という二者択一ではない性自認を持つ人。無性(男女いずれでもない)、両性(男女いずれでもある)、中性(男女の間、中間)がある。
様々なセクシュアリティの人たちに会って話していると、もしかしたらこの世界は、パンセクシュアルやXジェンダーの人たちは、自分が認識していないだけでもっともっと沢山いるのではないかとさえ思えてくる。
僕たちが小さな頃から勝手に教え込まれ、信じて疑わなかった、『男と女』というふたつの性別で全てをカテゴライズすること。そのこと自体が、どうやらおかしなことだったのだと、これから世界が気づいていく過程にあるのかもしれない。

関西レインボーパレード

大阪のパレードに参加するのは、昨年に続き2度目になる。
会場は堂山の近くの扇町公園。この日、パレードには900人を越える人々が集まった。
大阪のパレードを歩いていつも感じるのは、沿道の無関心さだ。東京と同じくデモ行進として申請されているので一車線を使って3人横並びに歩くのだけど、周りの人たちからしたらいったい何の団体なのかわからないというのが本音だろう。
パレードの運営側は、自分たちが何のために歩いているのかを、見ただけでわかるように、音で聞いたらわかるように、周りにいかに伝えていくのかということを考える必要があるだろう。
僕たちの周りは、オナベ軍団(FtM)が取り囲み、前にはMtFの人たちに挟まれて歩き続けた。
ここにこうして集まった一人一人を見ていると、セクシュアルマイノリティといった言葉でさえ一括りに出来ないくらいそれぞれが違っていて、なんとなく笑ってしまうくらい変わっているように見えるのだ。
男と女、その2つの中に収まりきらない多様な人たちに囲まれながら、なんだかみんな笑ってしまうようなおかしい雰囲気だけど、その中にいるのはなんとも居心地がいいと感じることが出来る。
僕たちの少し前を、高校生の女の子たちが先生と歩いていた。先生は教育の現場で、セクシュアルマイノリティのことをきちんと教えているそうだ。
日本も少しずつ、変わっていってますね。

ポリアモリーって知ってますか?『OUT IN JAPAN #003 in OSAKA』

朝の8時からスタッフはスタジオに入り、夜の10時半までぶっ通しで撮影が行われた。総勢120名のセクシュアルマイノリティーの方々が撮影のために集まってくださったのだ。
今回、改めてセクシュアリティの多様さに驚かされてばかりいた。
来てくださった方の中に、メガネをかけた色白のストレートの男性がいて、彼には家に二人の女性の恋人がいるということ。
彼は二人の女性と関係を持ち、愛し合っていて、尚且つ二人の女性同士も仲が良く、その全てを認めている関係なのだそうだ。
そのような、一夫一妻制ではない一人の人が複数の人と恋愛を楽しむことを、ポリアモリーというそうだ。
聞いていると、不倫と何が違うんだろう?と思うけど、すべての人が関係を了承しているというところが違うようだ。世界には、一夫多妻制の国も沢山存在しているのだから、セクシュアリティに関しても何が絶対的に正しいなどということはないのだろう。
それにしても驚いたな…。家で二人の彼女とご飯なんかを彼は普通に食べたりしているのだろう。
不思議ですね…。
★ポリアモリー(英: polyamory)とは、つきあう相手、親密な関係を同時期に、一人だけに限定しない可能性に開かれていて、全ての関係者が全ての状況を知る選択が可能であり、全員がすべての関係に合意している、という考え方に基づく行為、ライフスタイル、または恋愛関係のことである。